魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第二話『覚醒と雷光と出会い』

地球には数多の災害がある。

その中でも現在、特に危険性が高いとされているものがある。

 

それが特異災害『ノイズ』。

 

ノイズは何処からともなく現れては人間を襲い、人間を炭素転換してしまうという厄介な性質を持っている。

しかも出現する時は大抵の場合が大群単位なので余計に質が悪い。

時間が経てば自然消滅するとは言え、現在は対処らしい対処法が確立されておらず、いつ発生するかわからない災害に戦々恐々としている人々も少なくはない。

 

そして、不幸にもその特異災害が海鳴市で発生してしまったのが、つい先頃の夕方である。

 

そんな中、一人の少女が幼い女の子を連れて海沿いの街をノイズから逃れるために走っていた。

 

「お、お姉ちゃん…」

 

「大丈夫、私が付いてるから」

 

少女…『立花(たちばな) (ひびき)』は女の子を安心させるように笑ってみせた。

 

「(とは言ったものの…ノイズを相手にどう逃げたらいいんだろ…)」

 

しかし、内心では響もまたどうしたらいいのか悩んでいたが、女の子の手前そんな表情は見せないように努めている。

 

その時だった。

 

「あれ? 今、山の方で光が…?」

 

響は山…神社の近くで光がぶつかった様なものを見た。

しかも一回ではなく数回。

 

「なんだろう?」

 

「お姉ちゃん?」

 

「あ、ごめんごめん。さ、早くここから離れよ」

 

響は女の子をおんぶすると、その場から離れるために移動を始めた。

 

そして、その後ろにはノイズが迫っていた…。

 

………

……

 

~同刻・山の神社付近~

 

「ガァ!!」

 

「ふふっ」

 

そこでは忍とカーネリアによる戦いが行われていた。

忍が持つ光の槍をカーネリアが自身の黒い光の槍で捌いていた。

 

「いいわね。その獲物を狩り損なった獣の眼…レイナーレを殺せなかったのがそんなに悔しかったのかしら?」

 

そう言いながらもカーネリアは黒い光の槍を振るって忍の攻撃を完全に受け流している。

 

「それにしても理性は無いのかしら? このまま一方的っていうのも面白みに欠けるわね」

 

忍の様子を見て理性が半ば無いことも理解している。

まるで本当に獣になってしまったかのような…。

 

「けどまぁ…これはこれでいいわね。純粋な怒り…その怒りがその力を生み出しているのは事実なんだから…」

 

そう呟いていると、反対側にある街、海鳴市の方が騒がしいことに気づいた。

 

「そうね。ちょっと試してもいいかしら…」

 

そう言うや否や、カーネリアは再び空を飛ぶと…

 

「さぁ、こちらにいらっしゃい」

 

今度は海鳴市の方へと飛んでいく。

 

「グァァ!!」

 

光の槍を捨てると、狼のような四足歩行で走ってカーネリアを追い掛け始める。

 

「(ふふっ…人の中でどう戦うのかしらね)」

 

カーネリアは心底楽しそうな笑みを浮かべながら忍を街へと誘導していく。

 

………

……

 

~同刻・とある建物の屋上~

 

「お姉ちゃん…!」

 

響と女の子はノイズに追い詰められていた…。

 

「大丈夫、絶対に助けてみせるから!(あの人みたいに…)」

 

響は2年前にもノイズが引き起こした災害に巻き込まれており、生死の堺を彷徨ったことがある。

そして、それは胸元に楽譜にあるようなフォルテみたいな傷痕として今も残っている。

その時、響を助けたのは…当時有名であったツインボーカルユニット『ツヴァイウイング』の『天羽 奏』であったらしい。

 

「(この子を守りたい!)」

 

響がそう強く願った時だった。

 

「~♪」

 

響の内から何かが自然と歌として発言しようとした。

 

「うわあああああああああ!!」

 

そして、それは響の胸元からオレンジ色の光を放射し、その形を作っていこうとする。

 

………

……

 

~???~

 

とある場所でノイズを観測していた組織があった。

 

「何が起きた!」

 

「ノイズと異なる高エネルギーを感知!」

 

「波形の照合結果、出ます!」

 

「これは…アウフヴァッヘン波形?! それにこの反応って…!?」

 

そこでは情報を集める中、響の異変を察知し、それを分析していた。

 

そして、その結果とは…

 

≪GUNGNIR≫

 

「なっ!? ガングニール!?」

 

中央のモニターに映るその表示を見て司令塔と思われる場所の一番上に立っていた男性が驚く。

 

「-----っ!!?」

 

そして、それは別の少女にも少なくない衝撃を与えていた…。

 

………

……

 

「あら、何かしらね?」

 

カーネリアが興味を抱いたその光には何かがあった。

 

「今日は良い日ね。一度に二度も見つけられたんだから…」

 

カーネリアは面白そうな笑みを再び浮かべると、オレンジの光が上がった方へと進路を変更した。

 

「ガァ!!」

 

当然ながら、忍もカーネリアを追ってオレンジの光を目指すのであった。

 

………

……

 

「こ、これって…?」

 

響は自分に起きた現象がわからなかった。

自らを覆うオレンジ、白、黒の三色で彩られたアーマーを装着していた。

 

「と、とにかく今は…」

 

女の子を抱き抱えると、響はその場から跳ぶのだが…

 

「うわあぁ!?」

 

思いの外、跳躍力が凄くて屋根から人気のあまりない道路に着地したのだが…

 

すぐさまノイズ達が追い掛けてきた。

 

ノイズの追撃を凌ぐため、再び跳ぶものの調整がわからないのか、姿勢制御もままならず建物の壁に激突してしまう。

そして、落ちてしまわないように近くにあったパイプを掴んで何とか落ちるのを防ぐ。

 

「いてて…」

 

それでも女の子を放さなかったのは行幸だろう。

 

「お姉ちゃん、カッコいい」

 

そんな響の姿に女の子はそう言った。

 

「いや、そうでもないような…あはは…」

 

女の子の言葉に響も思わず苦笑してしまう。

 

すると…

 

「あらあら、随分と面白い格好ね」

 

そこへ黒い翼を広げたカーネリアが現れる。

 

「あ、危ないですよ!? すぐそこにノイズが…!」

 

カーネリアの出現に"何故、飛んでいるのか?"よりも先に響が言ったのはその言葉だった。

 

「ノイズ? あぁ、例の特異災害の…」

 

そう言いながらもカーネリアは背中から襲ってきたノイズを振り返ることなく上昇して回避した。

当然、響達にとばっちりが来る位置にいた。

 

「ちょっ!?」

 

響は思わず、パイプから手を放してしまい、再び落下する。

そこへノイズが襲い掛かる。

 

「っ!!?」

 

反射的に振るった右腕がノイズに直撃する。

すると、ノイズの方が砕け散っていた。

 

「え?」

 

その結果に響自身も驚いてしまう。

 

「ふ~ん…」

 

カーネリアは興味深そうにその様子を見ていたが…

 

「ガァ!!」

 

満月を背に建物の屋上から忍が跳び出してきた。

 

「あら、もう追い付いてきたのね」

 

そう言ってカーネリアは黒い光の槍を複数出現させると…

 

キュィンッ!!

 

ノイズと忍に対して迎撃行動を行った。

ノイズに対しては多少なりともダメージになったものの…

 

「グルルゥゥ!!」

 

忍はカーネリアの放った光の槍を足場にしてノイズの突撃や光の槍を片っ端から回避していた。

 

「なかなかやるじゃないの」

 

カーネリアは戦闘を楽しそうに行っている。

 

「けど、時間切れかしらね…」

 

そう言うと同時に一台のバイクがこちらに向かってくる。

 

「また、遊びましょう。坊や達」

 

言うが早いか、カーネリアはその視線を忍と響にだけ向けると、その場から消えるようにして居なくなった。

 

「き、消えた…?」

 

さっきからずっとノイズから逃げ回っていた響は困惑し…

 

「ウオオオオンッ!!」

 

悔しさからか忍は月に向かって吠えると…

 

カッ!!

 

カーネリアの行っていた複数の光の槍を飛ばす技を弾幕代わりにノイズへと放つと、その隙に山の方へと駆け出していた。

 

「私達だけ置いてけぼり!?」

 

不憫に思える響達だが、その後すぐにバイクに乗ってやってきた少女に助けられたのだった。

 

………

……

 

「グルル…」

 

山の中へと入った忍だったが、新たに敵意のある存在と出くわしていた。

 

『ア゛ア゛ア゛ア゛』

 

全身が黒い皮膚に覆われ、紅い眼をギラギラさせた人型の異形。

まるでゾンビのようなそれは忍の前方に10体ほどいた。

 

「グゥゥ…!!?」

 

しかし、忍も方も限界に近かった。

何故なら慣れない力をこれだけ使ったのだ。

その反動があってもおかしくはない。

 

「が、ぁ…ぐっ…」

 

徐々にだが、忍の瞳の色が真紅と紫を行ったり来たりし始める。

 

「(ぼ、ぼくは…なに、を…?)」

 

さっきまでの記憶を辿るが、力による負荷で上手く思い出せないでいる。

 

「(それに…これ、は…?)」

 

目の前にいる異形に疑問を向けるが、今にも倒れそうな状態である。

 

「(もう、少し…だけでも…)」

 

力を振り絞ろうとするが、あれだけ尋常じゃない動きをしたのだからそのツケが回ったとしても不思議ではない。

 

『ア゛ア゛ア゛ア゛』

 

ゾンビの1体が意外にも軽快な動きで忍へと突進を仕掛ける。

 

「ぐぁっ!?」

 

それをまともに受け、忍は背中から木にぶつかり…

 

「(ちぃ姉…ご、め…ん………)」

 

その意識を手放してしまい、ずるずるとその場に座り込んでしまった。

そして、髪の色が白銀から黒に戻り、狼の耳と尻尾もまた消えてしまう。

 

『ア゛ア゛ア゛ア゛』

 

その忍へと群がろうとする異形達。

 

と、そこへ…

 

『THUNDER BLADE』

 

電子音声と共に…

 

グサッ!!

 

金色に近い黄色の剣が異形達を背中から突き刺していた。

 

「ブレイク!」

 

ドゴンッ!!

 

その言葉の共に剣は爆発し、異形達を粉々にしていた。

爆発と共に放電によるダメージが周辺を襲ったが、忍の周りには半球状の幕が張られていたので忍へのダメージは(自分の負った分を除いて)皆無であった。

 

「この子は?」

 

そこへ死神を連想させるような黒い衣装を身に纏った金髪の少女(年の頃は16歳くらい)が降りてきた。

 

「…………」

 

忍の姿は…ぶっちゃけ普通の子供。

しかも小学校高学年くらいの容姿をしているから勘違いされやすい。

 

「こんなに小さい子が、どうしてこんな夜になりたての森に? それにさっきのは…?」

 

少女は忍を見ながら先程倒した異形達の残骸をサンプルとして回収しようとしたが…

 

「あれ? 何も無い?」

 

異形達の残骸は消えていた。

木端微塵に吹き飛ばしたとはいえ、破片の一つくらいは落ちていてもいいものだが、そこには文字通り綺麗さっぱり何もなかった。

木々が邪魔で暗くて見えにくいのを差っ引いたとしても、いくらなんでも不自然である。

 

「……それにさっきの魔力反応は…」

 

魔力反応は忍が意識を手放した瞬間から途絶えていた、

明らかに目の前の少年が魔力…リンカーコアを有する存在であることを語っていた。

 

「とにかく、手当だけでもしないと…親御さんには後で説明するとして…」

 

完全に小学生っぽい扱いの忍だが、少女とあまり変わらない歳であることを少女は知る由もなかった。

 

「こちらフェイト。転送をお願いします。治療しないとならない子もいるみたいですし…」

 

少女…フェイトは目の前の空中に魔法陣で作った画面を浮かべるとどこかに通信をしていた。

 

『こちらアースラ。了解だよ。すぐに転送するから待っててね』

 

画面に映る女性がそう言ってしばらくすると、フェイトと忍の下に転送魔法陣が展開されて2人を次元航行艦『アースラ』へと転送するのだった。

 

………

……

 

一方で、その頃…。

 

「しぃ君…遅いなぁ…」

 

明幸の屋敷で忍の帰りを待っている智鶴だが…

 

「何かあったのかな?」

 

縁側を行ったり来たりしてそわそわとしていた。

……………抜身の日本刀を片手に持って…。

 

「や、やべぇ、お嬢が超不機嫌だぞ!」

「は、早く忍坊ちゃんを見つけださねぇと!」

「組員、総出で探し出せ!」

「お、応っ!!」

 

そんな智鶴の姿を見てか、近くにいた組員達が恐怖を抱きつつも携帯を取り出して外回りしている組員に忍の捜索を指示していた。

 

たかだか一人の学生を捜すのに組員総出とは…なんて傍迷惑な…。

しかし、誰もそんなことは言わない。

何故なら智鶴の忍に対する感情を皆知っていたし、小さい頃から見守ってきた2人だからこそ組員達も必死で忍を捜すのだった。

智鶴を悲しませないため…そして、自分達の身の安全のために…。

これも一つの絆……なんだろうか?

 

結局、朝になっても忍は見つからず、智鶴は忍が心配のあまり全然眠れなかったとか…。

とうの忍は今、地球にいないのだから仕方ないんだが…。

それを彼らが知ることはなかった…。

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