魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第七十五話『交錯する悪意』

ルーマニアで動きがあった。

 

その報せをアザゼルから聞くべく、オカルト研究部、ソーナ会長、真羅副会長、天界サイド(シスター・グリゼルダ、ジョーカー・デュリオ)、紅神眷属、神宮寺眷属が兵藤家のVIPルームで一堂に会していた。

 

アザゼルが言うには吸血鬼の領内…ツェペシュ側でクーデターが起きたらしい。

男尊派の当主であるツェペシュの王も首都から退避したらしい。

その影響か、ツェペシュに出向いていたリアスと木場が巻き込まれて拘束されている可能性が高いらしい。

 

ツェペシュは『禍の団』に裏から支配されたものと推測される。

それは聖杯に関係しての事であることが窺えた。

 

裏に吸血鬼以上に厄介な存在がいることが予期されたため、急遽増援としてルーマニアへの遠征が決まった。

遠征メンバーはグレモリー眷属とイリナ、シトリー眷属からルガールとベンニーアの2名が実戦経験を積むために選抜された。

その他にヴァーリが現地にいると聞き、紅牙も自ら吸血鬼領に行くという意志を示して同行を許可された。

残ったシトリー眷属や紅神眷属、神宮寺眷属、天界サイド、刃狗は駒王町の防衛に当たられることとなった。

グレモリーの客分であるレイヴェルもまた居残り組として駒王町に残る。

忍は忍で夜琉のことが心配なようで、今回の遠征には不参加を自ら申し出ている。

 

こうしてルーマニアへ発つメンバーは転移魔法陣を使って一気にジャンプすることになった。

 

………

……

 

ルーマニアに着いた一同をアザゼルとカーミラ派の吸血鬼達が出迎えていた。

その際、ルガールを見て吸血鬼達は嫌悪と畏怖の視線を向けていたが…。

 

そこから車で移動し、特別なゴンドラでツェペシュ側の城下町へと入る一同。

その途中で状況を色々と聞かされた。

 

ツェペシュ側の新たな王は、ギャスパーの恩人でもあるハーフ吸血鬼の女性『ヴァレリー・ツェペシュ』であること。

裏で禍の団が働きかけ、ツェペシュ側の反政府組が現政権の不満と吸血鬼の『弱点克服』クーデターを引き起こしたこと。

カーミラ派も報復する相手がわかったので、今回のクーデター鎮静に参戦するらしい。

既にその準備も進んでおり、ゴンドラもカーミラ派が確保できたツェペシュ城下町へとのルートの一つらしい。

さらに黒幕はアザゼル曰く『あの野郎』で、高い確率でろくでもないことになるようだ。

 

ゴンドラがツェペシュ城下町近郊のゴンドラ乗り場に到着した途端、ツェペシュ側の吸血鬼数名が現れた。

その吸血鬼曰く、リアスはツェペシュ本城にて待っているとのこと。

その際、ルガール、ベンニーア、紅牙の三名は別行動を取ることになっており、音も気配もなく既に姿を消していた。

理由は独自に町の様子を探るのと、脱出用のルート確保である。

 

但し、紅牙には別の意図があったので、そちらを優先させていた。

 

「(ここが吸血鬼の城下町…何とも静かな場所だ)」

 

周囲からの視線など気にせず、目的の者達を捜す紅牙。

 

「(アザゼル前総督の話では、既にこちら側に来ていてもおかしくはないはずだが…)」

 

周囲の気配を探りながら紅牙は町中を歩いていく。

 

「(紅神のように匂いを辿れば簡単なんだが…流石にそこまでの芸当は俺には出来ないしな)」

 

天狐の血を引いているとはいえ、匂いに敏感なわけではないのだ。

 

「(足で捜すしかない、か…)」

 

そう思い直してから再び捜索を開始しようと街角を曲がろうとした時だった。

 

「「「……ぁ…」」」

 

「ん?」

 

紅牙の眼の前に3人の少女がバッタリといった感じで鉢合わせる。

どの娘も低めの身長に少し幼さを残した感じの可愛らしい顔立ちをしているが…

 

「姉貴!」

 

胸元辺りまで伸ばした緋色の髪と藍色の瞳を持ち、体つきは均等の取れた平均的な少女も…

 

「お姉さま…」

 

腰まで伸ばした黒髪と紫色の瞳を持ち、体つきは3人の中でもふくよかな少女も…

 

「お姉ちゃん!」

 

肩に掛かる程度に伸ばした水色の髪と黄色い瞳を持ち、体つきは全体的にスレンダー気味な少女も…

 

三者一同に紅牙の地雷を踏む。

 

ブチッ!

 

「………………」

 

いくら女顔で間違われることが多いとしても言われた本人はそのことに関してはかなり気が短く…

 

結果…。

 

ゴンッ!!×3

 

「いってぇ~!?」

「ぁぅぅ…」

「ひぎゃんっ!?」

 

盛大な音と共に少女達の悲鳴も木霊する。

 

「誰が姉貴だ? 誰がお姉さまだ? 誰がお姉ちゃんだ? あぁ? 殴るぞ、貴様ら!」

 

いや、既に拳骨で3人の頭を殴った後では…?

 

「す、すみません…久し振りに会ったから、つい…」

 

「つい…?」

 

緋色の髪の少女の言葉に眉をさらに吊り上げる紅牙。

 

「い、いえ…その、お、おねえ…じゃない、紅牙様の方こそ、どうしてこちらに…?」

 

黒髪の少女が慌てて緋色の髪の少女の援護とばかりに紅牙に質問する。

 

「それはこちらの台詞でもある。何故、お前達が此処にいる?」

 

しかし、その質問は藪蛇だったらしく、紅牙の方も質問返しをしていた。

 

「え、え~っと…それはぁ~…」

 

水色の髪の少女はあからさまに視線を逸らしていた。

 

「……………」

 

その様子を見て紅牙は考える。

 

「再編した禍の団か?」

 

「「「っ…」」」

 

ズバリ言い当てられて3人の表情はわかりやすいくらいに動揺する。

 

「先の魔法使い達との連合でも姿が見えなかったから、どうしたものかと思えば…」

 

先の駒王町で起きた事件のことを思い出していた。

 

「まさか、こっちにいたとはな。ちょうどいい…今の禍の団の頂点が誰なのか、聞こうじゃないか」

 

飛んで火にいる夏の虫とでも言うかのように紅牙は3人から情報を聞き出そうとする。

 

「えっと…紅牙様? その、今更なんですが…本当なんですか?」

 

「何がだ?」

 

黒髪の少女の言葉に紅牙は首を傾げる。

 

「悪魔との和平に冥族が応じて…悪魔嫌いな紅牙様もそれに賛成してる、って…」

 

そんな黒髪の少女に…

 

「そ、そーだそーだ! あの悪魔嫌いで有名だった紅牙様が賛成なんて何かの間違いだよな!?」

 

「そうですよ! 紅牙様がそんな選択するなんて…あたし達には信じられません!」

 

緋色の髪の少女と水色の髪の少女も紅牙に向けてそれが真実か確かめようとする。

 

「事実だ。俺もその場で聞いていたから間違いない。そして、俺もまたその決定に賛同することにした。俺の意思でだ」

 

そんな3人の思いとは裏腹に紅牙は力強く言い放っていた。

 

「「「……………」」」

 

それを聞き、目の前の3人は…

 

「なんか…紅牙様、変わったよな…」

 

「はい。前はあんなに禍々しい程でしたのに…」

 

「うん。今は何というか…清々しいみたいな……憑き物が落ちたみたい」

 

過去の紅牙と今の紅牙を比較し、今の紅牙の方が好ましく思っていた。

 

「俺自身も驚いていることだ。だが、悪い気分ではないのも確かだ」

 

それが一体、誰の影響なのかは…今の紅牙にとって難しい問題ではなかった。

 

「(紅神(あいつ)のせいだろうな…)」

 

ふとそんなことを思ってから紅牙は改めて少女達を見る。

 

天宮(あまみや) 早紀(さき)

 

「うぇ?」

 

葛原(くずはら) 沙羅(さら)

 

「は、はい…?」

 

水杜(みずもり) 紗奈(さな)

 

「うにゃ?」

 

いきなり名前を呼ばれ、3人の少女…早紀・沙羅・紗奈…は驚いて紅牙を見る。

 

「禍の団を抜け、今より我が眷属となれ」

 

そう言って兵士の駒3個を左手で取り出していた。

あれだけ眷属集めに消極的だったはずの紅牙が眷属を増やすと言い出したのだ。

一体どんな心境の変化だろうか?

 

「今の禍の団にいてもお前達のためにはならない。先の作戦の人数から考えて、少数だった冥王派はもうお前達くらいしかいないのだろう?」

 

冥王派の頭を張っていただけあって紅牙は人数を把握していたらしく、今の人数を逆算したようだった。

 

「そ、それは…」

 

何か言おうと沙羅が反応するが…

 

「し、知ったような口をきくなよ! 紅牙様や秀一郎の奴が抜けてからボク達がどれだけ苦労したか…!」

 

「そ、そうだよ! 今更現れて、悪魔と和解したし、紅牙様の眷属になれだなんて…そんなの身勝手だよ!」

 

沙羅と紗奈が紅牙が抜けてからの事を思い出し、抗議する。

 

「そうだな。お前達があれからどんな苦労をしてきたかまでは俺にはわからん…。俺は紅神との勝負に優先し過ぎて、お前達のことを置いてきてしまったことには変わりないしな」

 

その抗議を甘んじて受ける紅牙。

 

「そ、そーだろ?」

 

早紀が当然とばかりに胸を張る。

 

「だが…」

 

「「「?」」」

 

紅牙はその場で深く頭を下げた。

 

「……すまない…」

 

「「「え…?」」」

 

紅牙の行いに3人は鳩が豆鉄砲を食ったような反応を示してしまう。

 

「お前達が…冥王派の同志達が、理由は皆それぞれあったにも関わらず、何故俺の決起についてきてくれたのかを知っていたのに…俺はそれに応えられなかった。それどころか私怨を募らせ、1人の男を標的にするようにしていき…あまつさえ勝手に冥王派から抜けてしまった」

 

「「「……………」」」

 

紅牙の独白に3人は静かに耳を傾けていた。

 

「そして、お前達が苦労している間も俺は安穏とした生活を送っていたのかもしれない。周りからどのような非難や(そし)りを受けようが、お前達を探し出して接触するべきだったんだ。そして、どのようなことをしてでも、裏切り者と誹られようと説得するべきだったんだ。その覚悟が、俺には足りなかった…」

 

そう言う紅牙の右拳は無意識なのか、強く握られていて爪が食い込んで血を滲ましている。

 

「ここでお前達と再会して…正直、どうしようか迷った。捕縛するべきか、見逃すべきか……しかし、お前達3人が冥王派に加わった時に聞いた理由は…あの気持ちは痛いほどわかる。俺も悪魔に両親を殺されたからな」

 

それが直接的な動機かは別として、同じ境遇である3人をどうするか、紅牙は迷っていたのだ。

 

「だからこそ、という訳ではないが………いや、どう言い繕っても同じか…」

 

一度言葉を区切ってから紅牙は…

 

「俺はただ…償いたいだけなのかもしれない。俺が先導していた冥王派の皆に対して…俺が出来る精一杯のことをしてでも…」

 

そう、言葉を続けていた。

 

「禍の団に加わってしまった冥族の処遇については俺も最大限、配慮してもらうように働きかけている。だが、それでもテロに加担したという事実は重い。俺も眷属を得て特例で動けてはいるが、未だ不自由な立場にいるからな」

 

それでも駒王町内限定ではかなり自由に暮らしているように感じるが…。

 

「その償いの第一歩として…お前達を俺の眷属に迎えたい。お前達がどのような感情を抱いていようが構わない。この誘いを蹴って俺への不満をぶつけても構わないとも思っている」

 

そう言うと、紅牙はその場に兵士の駒を置き…

 

「背後から襲いたければ襲え。その資格がお前達にはあるんだからな…」

 

3人の合間を抜けるようにして先へと歩いていく。

 

 

 

紅牙が去ってから数分…。

 

「「「………………」」」

 

結局、3人は紅牙を襲うことはなかった。

 

「紅牙様…本当に変わられたよね…」

 

紗奈が一番に口を開く。

 

「そう、ですね。昔はあんなにお優しくはなかったはずですけど…」

 

沙羅もまた紅牙の変化に驚いていた。

 

「だからって…どうしろっていうんだよ…!」

 

早紀は早紀で何とも言い表せない感情に苛まれていた。

 

「まぁ、早紀の気持ちはわからなくもないかな。あたしもどうしたらいいかわからないし…」

 

「私もです…」

 

早紀と同様に沙羅と紗奈もまた揺れていた。

 

「で、どうするよ、これ…?」

 

紅牙が置いていった眷属の駒を指す。

 

「どうするもこうするも…」

 

困ったように紗奈も駒を見る。

 

「私は…持ってようと思います…」

 

沙羅はそう言うと、駒の一つを拾い上げる。

 

「沙羅?」

 

「沙羅ちゃん?」

 

沙羅の行動に2人は少なからず驚く。

 

「あの紅牙様が…シア様の言うような優しいお方に戻られたなら…持ってた方が、良い気がするから…」

 

そう言うと沙羅は駒を懐にしまう。

 

「ん~…小難しいことはわからないけど…あたしも貰っとこうかな?」

 

沙羅を真似てかどうかはわからないが、紗奈も駒を手に取ってズボンの後ろポケットにしまう。

 

「紗奈まで…2人とも、正気かよ?」

 

早紀は未だに警戒心を高めていた。

 

「まぁ、紅牙様のことを全面的に信用したわけじゃないけど…あんな態度の紅牙様は初めて見るし…持っててもいいかなって…」

 

「紅牙様は…きっと変わられたんだと思うよ?」

 

紗奈と沙羅が早紀にそう言っていると…

 

「皆さま、ここにいましたか」

 

ユーグリットが現れる。

 

「っ!?」

 

一瞬の事だった。

反射的に早紀は駒を拾い上げると、それを素早くチノパンのポケットにしまってそのまま手をポケットに突っこんだままにする。

 

「? どうかしましたか?」

 

その一瞬の出来事を見てなかったユーグリットは早紀に尋ねる。

 

「な、なんでもねーよ! それで、ボク達に何か用かよ?」

 

若干慌てた感じで早紀が質問返しをする。

 

「えぇ、仕事を一つ依頼したく捜していましたよ…」

 

「仕事?」

 

沙羅は既に紗奈の後ろに隠れ、早紀がユーグリットに対応する。

 

「えぇ。私と『魔女の夜(ヘクセン・ナハト)』と共に白龍皇が率いる一派に仕掛けてもらいます」

 

「魔女の夜…確か、聖十字架の…」

 

紗奈の後ろから沙羅がそう呟く。

 

「はい。いくら白龍皇でも私と聖十字架、それに冥王3名が相手ですから無視することは出来ないでしょう」

 

「………わぁったよ。行けばいいんだろ、行けば…」

 

今の早紀達に拒否するような権利はなく、3人はユーグリットの後ろについていくように歩いていく。

 

「(反射的とはいえ、取っちゃったよ…)」

 

そんな中、早紀はさっきの自分の行動に驚いていた。

 

「(……紅牙様……………まぁ、持っててやるよ)」

 

そう思いながら早紀はポケットにしまったままの駒を強く握っていた。

 

………

……

 

一方で、ツェペシュ本城では…

 

イッセー達がリアスと木場と合流を果たし、謁見の間でヴァレリーと暫定政府の宰相であり、クーデターの首謀者でもある王位継承第五位の『マリウス・ツェペシュ』と会談していた。

マリウスは神器研究最高顧問でもあり、本職はそちらだと言っていた。

但し、マリウスの言動は最悪で、自身は聖杯を自由に扱える環境を整えることにしか頭になかったのだ。

そのためには実の親兄弟でも関係なく退陣してもらったという…。

 

さらに、マリウスには強気に出られる要因もあった。

それは護衛だと言う邪龍最強格の筆頭『三日月の暗黒龍(クレッセント・サークル・ドラゴン)』クロウ・クルワッハがいたからだ。

 

怪談が終わり、用意された部屋へと向かう途中…。

彼らは出会う。

"悪意の中心人物達"と…

 

「やっぱり、テメェだったのか…!」

 

その人物の片割れと対面してアザゼルが怒気を含んだ口調でそいつを睨む。

 

「おろろ? アザゼルのおっちゃんじゃん! 元気してた?」

 

そいつは…銀色が目立つ魔王の衣装を身に纏い、四十代くらいの銀髪中年男性であった。

しかも軽口を叩いてアザゼルに話し掛けていた。

 

「アザゼル、誰なの?」

 

男性の正体を知らないリアスが一行を代表してアザゼルに尋ねる。

 

「……………リゼヴィム。若いお前でも親から聞いてるだろ。グレモリーなら尚更知っていてもおかしくはない男だ」

 

「?! ウソ……でしょ…?」

 

アザゼルの言葉にリアスは絶句していた。

 

「他の連中にもわかりやすく教えてやる。こいつの名は『リリン』。いや、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。前ルシファーと悪魔にとって始まりの母たる『リリス』との間に生まれた正真正銘の息子だ。そして、歴代歴代最強と名高い現白龍皇ヴァーリの実の祖父だ…!!」

 

「「「「「「「「っ!!?」」」」」」」」

 

アザゼルの説明にその場にいた全員が驚く。

 

「そして、こいつが現禍の団の首領。俺がここまでくる間に言ってた『あの野郎』ってやつだ…!!」

 

その言葉を受け、もはや一行に言葉はなかった。

 

「もう1人は俺も見たことが無いが…こいつに付き合ってることから禍の団の新幹部ってとこか?」

 

もう1人の男を見てアザゼルはそう推測する。

しかし、この場に忍がいればもっと早く分かったことだろうに…。

 

「うひゃひゃひゃ♪ それはちっと違うんだよなぁ。アザゼルのおっちゃん。こいつは俺の部下じゃない。いわば…そう、お友達さ。お・と・も・だ・ち♪」

 

リゼヴィムがそう言うと…

 

「ふふふ…堕天使元総督様は狼さんから聞いてませんか? 私の名前を…」

 

隣の男は不快な笑みを浮かべていた。

 

「忍から…?」

 

忍の名が出た瞬間…

 

「ッ!! まさか…!!」

 

アザゼルは忍から聞かされていた絶魔の話を思い出す。

 

「えぇ、お察しの通りですよ、元総督様。私の名は『ノヴァ・エルデナイデ』。山羊座のエクセンシェダーデバイス『リデューション・カプリコーン』を預かり、絶望の使徒『絶魔』を率いさせてもらっています。赤龍帝やその他の皆さまも以後お見知りおきを…」

 

そう言って男…ノヴァはゆっくりと頭を下げて挨拶をしていた。

 

「ッ! じゃあ、前に俺と忍を雪女の里に飛ばしたのは…!?」

 

「えぇ、私です」

 

イッセーの言葉を簡単に肯定する。

 

「ついでに言うなら、以前のフィライトでの紛争模様を多次元世界へと放送したのも私です」

 

「「「「「「「「っ!!?」」」」」」」」

 

一行の何度目かの絶句である。

 

「あなた達にも見せて差し上げたかったですよ。皇帝ゼノライヤさんとその騎士ギルフォードさんの最期の瞬間を……まぁ、私が現地に行ったせいで放送も途中で終わってしまいましたが…」

 

そう語るノヴァの瞳は完全に濁り切っていた。

 

「腐ってやがるな…!!」

 

「絶望こそ絶魔にとっては最高の甘露なんですがね」

 

「おっと、ついでに紹介しとくと…」

 

リゼヴィムの背後から小さな少女が現れる。

 

「……………」

 

オーフィスそっくりの少女である。

違うとしたらオーフィス以上に無口で無表情なところだろうか。

 

「この子は『リリス』。俺っち専属のボディガード。まぁ、曹操君が奪ったオーフィスの力を再構築した娘だからか~な~り強いよ? まぁ、ユーグリット君が留守の間はこの娘が俺っちを守ってくれるのさ♪」

 

ふざけた口調でリゼヴィムはリリスを紹介する。

 

「リゼヴィムさん、楽しいところで申し訳ありませんが、そろそろ行かないとマリウスさんとのお話に間に合いませんよ?」

 

「おおっと、そうだったそうだった。まぁ、ノヴァっちも結構時間に厳しいからねぇ~。そいじゃま、まったねぇ~♪」

 

そう言ってリゼヴィム、ノヴァ、リリスの3人がアザゼル達の横を通り過ぎようとした時…

 

「あ、そうそう。カーミラ派と組んでんのは知ってるし、クーデター返しするならいいでもいいよ♪ 俺っち、結構期待してっから♪」

 

「ふふふ…狼さんがいないのが残念ですよ。ま、此処では仕方ないでしょうが…」

 

リゼヴィムとノヴァはそう呟いていた。

 

3人の姿が消えてから…

 

ズガンッ!!

 

アザゼルが怒りのあまり、廊下の壁を拳で破壊していた。

 

「ヴァーリ、お前の気持ちが理解出来て仕方ないよ…」

 

その後、用意された部屋に通された一行は地下に幽閉されているギャスパーの父親へと面会することになったとか…。

 

そこでギャスパー出生の秘密が語られた。

 

………

……

 

~???~

 

『桐葉? 桐葉……!!!』

 

「(これは…?)」

 

忍は不思議な夢を見ていた。

 

『う、うう…うわああああああああああああああああああああ!!!!!』

 

愛する人を失い、絶望する男の慟哭。

 

「(夢…? にしてはどこか他人事とは思えない…)」

 

忍は知る。

それが誰の記憶なのかを…。

そして、どれだけ辛く凄惨で重苦しいものだったかを…。

 

………

……

 

~???~

 

『どうして? どうしてしぃ君は戦うの? 私が守ってあげるのに…』

 

「(なんだ、これは…?)」

 

『俺が戦うのは…ちぃ姉…あなたを守りたいから…いつまでも守られてばかりは俺も嫌なんだよ』

 

愛する者を守るため、戦うと決めた男の言葉…。

 

『俺はもう…小さな忍じゃないんだ。戦える力もある…だから守らせてほしい』

 

「("忍"、だと…?)」

 

牙狼は知る。

それが誰の記憶なのか…。

どれだけ現実を甘く見ている男の幻想かということを…。

 

………

……

 

悪意は止まらない。

ここからが本当の悪夢の始まりだと、誰もが知ることになる。

これから起きるだろう戦いで、聖杯の巡る一連の出来事の行く末が一先ずは決まる。

そして、並行世界での同一人物の死闘も始まる。

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