魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第七十六話『覚醒せし紅の冥王、射手座の輝きと共に…』

イッセー達がルーマニアに来て早二日が過ぎようとしていた今日この頃…。

 

この二日間、ギャスパーと小猫はヴァレリーの招待でお茶会に参加していた。

アザゼルはアザゼルで吸血鬼側の神器研究機関に招かれ、色々と情報を開示していた。

イッセー達はイッセー達で町の様子を見たりもしていた。

リアスはギャスパーの父親であるヴラディ家当主と正式にギャスパーを引き取る会談を行っていた。

 

そして、イッセーも参加した最初のお茶会で、マリウスも顔を出し、ヴァレリーを『解放する』と約束した。

しかし、この『解放』とは…聖杯を"抜き取る"ということだ。

そういった神器に関する堕天使の技術は既に流出しており、マリウスのバックにはリゼヴィム率いる禍の団とノヴァ率いる絶魔がいる。

『解放』を口にしたことからマリウスも近々行動を起こすことだろうと予想されていた。

 

そんな中、これからのアザゼル達が会話している時、滞在している部屋と外を結界を通して繋げたベンニーアが現れ、ルガール、そしてエルメンヒルデも部屋へと転移していた。

この時、エルメンヒルデは着地に失敗したようだったが…。

ともかく、エルメンヒルデが言うにはマリウス一派が聖杯を巡る一連の出来事の最終段階に入るとのことであった。

それを阻止するべく、火力バカとも言えるグレモリー眷属達が本城地下へと進撃することになる。

 

………

……

 

グレモリー眷属が行動を起こす少し前…。

ツェペシュ領の外部では…。

 

「ちっ…まさか、そのようなモノを作っていたとは…」

 

禁手化したヴァーリがユーグリットを前に珍しく悪態を吐く。

 

「"これ"はレプリカですが、私自身が持ち主以上の力を持っていますので…」

 

そう言うユーグリットの体には"赤い龍を模した鎧"が纏われていた。

 

「それよりも…何故、あなたは本気を出さないのですか? 極覇龍の情報は私共も把握しております。それになればさらに高度な戦闘を繰り広げられると思いますが…?」

 

そんなユーグリットの言葉にヴァーリは…

 

「そんなことか。下らな過ぎて答える気にもならないな」

 

一蹴していた。

 

「ふむ…?」

 

しかし、ユーグリットはその理由がわからないでいた。

 

「わからないか? なら、教えてやる。俺が極覇龍を使いたいと思う赤龍帝は兵藤 一誠だけだ。偽りの赤い龍にアレを使うなど、俺のプライドが許さない。お前は俺が死力を尽くして戦いたい赤龍帝とは違う…!」

 

そう言うとヴァーリは右手から魔力砲撃を放つ。

 

「よくわかりませんね」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

ユーグリットもまた倍加した魔力弾を放ち、ヴァーリの砲撃を真正面から受け止める。

 

「それほどの価値が現赤龍帝…兵藤 一誠にあるのですか?」

 

「お前にはわからないさ。偽者のお前ではな…!!」

 

ゴオォォォッ!!

 

ヴァーリとユーグリットの拳がぶつかり、周囲の雪が吹き飛ぶ。

 

 

 

「おほほほ、これが噂に聞く白龍皇のチーム。真正面からは戦いたくないわねん」

 

ゴシック調の傘にゴスロリ風の衣装を身に纏った女性が空から高らかに笑っていた。

 

「って、お前はほとんど何もしてねぇだろ!!」

 

「そーだそーだ!」

 

「つ、疲れます…」

 

それに文句を言うのは早紀、紗奈、沙羅の冥王3人(既に冥王化済み)だった。

しかも早紀はアーサー、沙羅はフェンリル、紗奈は美猴を相手にしている。

 

「何を言ってるのん? ちゃんと要所要所で援護してあげてるでしょう?」

 

そう言って女性は苦戦してる早紀達と美猴達の間に十字架の形をした紫色の炎を立ち昇らせる。

 

「ね?」

 

が、一歩間違えれば味方も巻き添えになるようなタイミングでの援護である。

 

「"ね?"、じゃねぇぇぇ!!」

 

「危ない、かなり危ないから!!」

 

「もう、やだ…」

 

かれこれ同じようなことを何度もされて早紀達も疲労困憊といった具合だ。

 

「ちっ…こっちの嬢ちゃん達は大したことないんだが、あの姉ちゃんの紫炎が厄介だぜぃ」

 

「そうですね。とは言え、彼女達の連携もなかなか侮りがたいと思いますが…」

 

『………』

 

個で勝るヴァーリチームとやり合えてるのはひとえに早紀達の連携にあった。

早紀と紗奈が前に出てアーサーや美猴、フェンリルの攻撃を何とか凌ぎつつ、後方から沙羅が魔法で援護し、その沙羅を早紀と紗奈が交代で守ってるのだ。

 

「(ま、別に冥王の小娘共も纏めてやってもいいんだけどね♪)」

 

そう考えていた女性は…

 

「行くぞ、沙羅、紗奈!」

 

「おー!」

 

「はい…!」

 

次に早紀達が美猴達に仕掛けるこのタイミングを見計らい…

 

「(ここかしらねん♪)」

 

特大の紫炎を地面から噴き出さそうとしていた。

 

「「「っ!?」」」

 

それに気付いた時には遅く、早紀達も対応が出来ないでいた。

 

だが、その時…

 

「ブレイジング・フィールドッ!!」

 

紅の焔が立ち昇ろうとした紫炎を抑え込んでいた。

 

「あらん?」

 

思わぬ邪魔に女性も驚く。

 

「『紫炎のヴァルブルガ』。まさか、味方ごと敵を焼き払おうとするとは…いや、そもそもが味方という認識ではなかったか?」

 

冥王化した紅牙が腕組みしながら紅の翼を翻し、女性…『ヴァルブルガ』…と対峙するようにして空に飛翔していた。

 

「「「紅牙様!?」」」

 

「おぅ、紅の冥王じゃねぇかぃ!」

 

「紅の冥王、助かりました」

 

『ッ!』

 

紅牙の登場に早紀達はもちろん美猴達も驚いていた。

 

「ヴァーリは?」

 

「向こうでルキフグスの生き残りとやり合ってんぜぃ」

 

「そうか」

 

紅牙は美猴にヴァーリのことを聞くと、そのままヴァルブルガに狙いを定める。

 

「裏切り者が何のつもりですのん?」

 

わかってるとは思うが、一応の理由を聞くヴァルブルガ。

 

「なに、お前のような奴に"俺の部下達"をやらせる訳にはいかないだけだ」

 

そう言って紅牙は早紀達を軽く見る。

その眼は優しさと力強さを感じさせるものだった。

 

「部下、ねぇ。ということは冥王派は前から裏切ってたってことかしらん?」

 

ヴァルブルガの探るような視線に…

 

「……少なくとも、俺自身は既に禍の団と決別したつもりだ」

 

紅牙はそう言い切る。

 

「おほほほ、語るに落ちるとはこのことですわん。なら、そこの小娘共や先の作戦で捕まった冥王派のメンバーはなんで禍の団に居続けたんですのん?」

 

「俺の不徳だ」

 

ヴァルブルガの言葉に紅牙はそれだけ返していた。

 

「……………」

 

「……………」

 

しばらく睨み合いが続き…

 

「………ふんっ、面白くもない答えですわね」

 

ヴァルブルガがそう吐き捨てると同時に…

 

「燃えなさい!!」

 

紅牙の体を紫炎が襲う。

 

「紅牙様!?」

 

それを見て沙羅が叫ぶ。

 

ボアァッ!!

 

「騒ぐな。熱には慣れてる。それに悪魔ではないから必殺とまではいかん」

 

紅の焔で紫炎を吹き飛ばしながら紅牙が沙羅に告げる。

それでも少なくないダメージは受けているんだが…。

 

「おほほほ、いくら冥族と言えど魔の存在なのだから紫炎が効かないなんてことはないわよん?」

 

こればかりはヴァルブルガの言う通りだろう。

何度も無防備に受けていれば、いずれ紅牙でも取り返しのつかないことになりかねない。

 

「だからどうした?」

 

しかし、紅牙は腕組みを崩さないままで答える。

 

「なんですって?」

 

その答えにヴァルブルガも眉を顰める。

 

「俺はもう二度と後悔しないと決めた。それがどのような結末に繋がっていようと、己の道を進み続けると俺は義弟に教わった。ならば、俺も迷うことなどしない。俺は俺の意思で貴様ら外道と戦う…!!」

 

ゴオオオォォォォォッ!!!

 

紅牙の意思を示すかのように紅の焔が紅牙の全身より勢いよく立ち昇る。

 

「紅牙様…」

 

「これが本当の…紅の、冥王…」

 

「熱い…熱いですよ…紅牙様…!」

 

その紅牙の姿を見て沙羅、紗奈、早紀が奮い立つ。

 

「ならば、今一度問う。早紀」

 

「はい!」

 

「沙羅」

 

「はい…!」

 

「紗奈」

 

「は~い!」

 

紅牙の声に早紀達が答える。

 

「我が眷属となり、俺の進む道に再び付き合う気はあるか?」

 

「愚問だぜ!」

 

「もう、さっきみたいなことされるのも嫌ですし…」

 

「ここが去り際ってやつですよね?」

 

三者三様の反応だが、要は禍の団から抜ける決心がついたということだろう。

 

「ならば、目の前の魔女に名乗ってやれ!」

 

「応! 神宮寺眷属、兵士! 天宮 早紀!」

 

「同じく神宮寺眷属、兵士。葛原 沙羅…!」

 

「同じく神宮寺眷属、兵士! 水杜 紗奈!」

 

トクンッ!×3

 

早紀達の名乗りを受けてか、それぞれが手にしていた兵士の駒が彼女達の中に溶け込んでいく。

 

すると…

 

「ふっ…ついに君も本格的な眷属集めか?」

 

ユーグリットの相手をしていたはずのヴァーリが紅牙の横に飛来する。

 

「ヴァーリか。そっちの相手はどうした?」

 

「先程、用事が出来たとかで去っていったよ。だが、これで俺は心置きなく奴の元まで進める…!」

 

珍しく憎悪の言葉を口にしたヴァーリを見て…

 

「そうか。なら俺も付き合ってやろう」

 

紅牙がそう言いだす。

 

「悪魔嫌いの君がかい?」

 

「不満か?」

 

その言葉を受け…

 

「いや、今の君なら背中を預けられる」

 

ヴァーリも不敵に笑む。

 

「美猴、ここは君らに任せる」

 

「早紀、沙羅、紗奈はそこの魔女に冥王の力を見せてやれ」

 

それぞれ仲間と部下にヴァルブルガの相手を任せるようだ。

 

「冥王が味方になってくれたんならいくらでもやりようが出てくるぜぃ」

 

「昨日の敵は今日の友、とも言いますし…」

 

『……………』

 

「やってやるぜ!」

 

「魔女狩り…」

 

「さっきのお礼もしないとね!」

 

それぞれがヴァルブルガに視線を向ける。

 

「あららん? これはちょっとばかり不利だわねん」

 

しかし、当の本人は少し余裕がありそうだった。

 

「行くぞ、紅牙!」

 

「あぁ、ヴァーリ!」

 

そう短く言葉を交わし、ヴァーリと紅牙が共に飛翔する。

 

目的地は…ツェペシュ本城地下。

 

………

……

 

結界の外でそんなことが起きていたとも知らず、グレモリー眷属は地下に進撃していた。

 

その中で聖杯で強化されたであろう元人間の吸血鬼を死神騎士のベンニーアと魔女と狼男のハーフであるルガールが相手取り。

次の階層では上階よりも格上の吸血鬼が相手になったが、小猫の新たな技『白音モード』による浄化の力で吸血鬼達を一蹴していた。

ちなみに白音モードの際の小猫の姿は黒歌並みの美女になっていた。

 

そして、次の階層では…グレンデルが待ち構えていた。

この後に控えているだろう存在のことからイッセーは真紅の鎧にはならず、チーム戦でグレンデルに立ち向かうこととなった。

この馬鹿げた防御力を誇るグレンデルに一行は苦戦する一方だったが、リアスの新必殺技『消滅の魔星(イクスティングイッシュ・スター)』によって頭半分だけを残して消滅した。

しかし、そこへクロウ・クルワッハが登場し、グレンデルを後退させ、それと交代するようにして一行の前に立ちはだかる。

 

だが、そこへ…

 

ズガンッ!!

 

その階層の扉をぶち壊し、ヴァーリと紅牙の両名が到着する。

 

「お前がクロウ・クルワッハか」

 

「あぁ、そうだ。現白龍皇」

 

ヴァーリとクロウ・クルワッハから尋常でない戦いのオーラが滲み出ていた。

 

「ヴァーリ! それに紅牙! 遅かったじゃねぇか! だが、無事に合流出来てたようで何よりだが…何故、ここまで到着が遅れた?」

 

アザゼルがヴァーリと紅牙の2人に問う。

 

「合流出来たのはついさっきだ。正直、城下町外で戦闘していたとは思わなかったんでな」

 

そう答えるのは紅牙だった。

と、そこで…

 

「合流? 紅牙、君は俺と合流するために単独で動いていたのか?」

 

「………悪いか?」

 

「ふっ…随分と変わったものだと思っただけだ」

 

紅牙とヴァーリのそんな会話を聞き…

 

「城下町外での戦闘だと?」

 

アザゼルが眉を顰める。

 

「あのルキフグスの者と『魔女の夜』に所属する聖十字架の使い手、さらには冥王派の残党が襲撃してきてね」

 

「但し、冥王派についてはもう味方だから安心していい。俺の眷属にしたからな」

 

「眷属にしたって…マジかよ?」

 

紅牙の言葉にアザゼルは耳を疑った。

 

「事実だ。元々は部下だし、何の問題もない」

 

「今は美猴達と共に聖十字架の使い手と戦ってもらっている」

 

「そうかよ。しかし、レリックが聞いて呆れるな。滅神具のレリックは全部テロに加担してるじゃねぇかよ、聖書の神よぉ…!!」

 

アザゼルが苦虫を潰したような表情で呟く。

それもそうだろう。

聖槍、聖杯、聖十字架…そのどれもが禍の団に加担してしまっていた。

 

「兵藤 一誠。君はクロウ・クルワッハに勝てる自信はあるかい?」

 

「身に纏うオーラから察するに…尋常でない強さなのはわかる」

 

「そうだな。今の君よりも遥かに格上の存在だろう……かく言う俺も勝算があるようでないんだが…」

 

いつになくヴァーリから自信がないように聞こえた。

 

「だが、俺はこの先にいる者に用がある。だから余計な消耗は出来るだけ避けたいと思っている。このドラゴンを追い求めてたのは事実だが、それはそれだ。そこで…」

 

そこでイッセーはヴァーリが何を求めているのか、理解する。

 

「つまりは共同戦線ってか?」

 

「嫌か?」

 

「いや、悪くねぇ。ギャー助の身内を助けるにも苦労してな。俺も余計な体力は使いたくないのが本音だ」

 

イッセーの言葉を聞き…

 

「交渉成立だ。ふっ、ロキ戦以来か」

 

ヴァーリも不敵に笑う。

その後、真紅の鎧となったイッセーだが、ヴァーリは極覇龍にはならなかった。

 

「やはり、奴との戦いで消耗していたか…」

 

その様子に紅牙が言葉を漏らす。

 

二天龍とクロウ・クルワッハの戦いは…正直に言って二天龍の劣勢だった。

対邪龍用に開発したクリムゾンブラスター+アスカロンによる砲撃もクロウ・クルワッハの片翼と人間としての皮を剥いだくらいだったからだ。

その戦いの中、新事実が発覚する。

キリスト教の介入によって現地民の信仰心が弱まって滅んだとされるクロウ・クルワッハではあるが…。

その実、キリスト教の介入が煩わしくなり、かの地を去ってから修行と見聞を広めるために人間界や冥界を渡り歩いていたというのだ。

つまり、今のクロウ・クルワッハは一度も滅びず、聖杯の強化ではなく"自身の鍛錬"によって磨き上げた肉体と精神で戦っていたことになる。

 

その事実を聞き…

 

「くくく…ははははは! 戦いを司るドラゴンと呼ばれるだけある。俺以上に戦闘と探求を求めるドラゴンがいたようだな」

 

ヴァーリは可笑しそうに笑っていた。

 

「ドラゴンの行き着く先を見てみたいのでね」

 

「俺と似たタイプか。ますます興味を抱かされるよ、クロウ・クルワッハ」

 

要はこの邪龍と現白龍皇は似た者同士だったということだ。

 

「俺も参加すべきか?」

 

ヴァルブルガによって受けた紫炎のダメージを完治しないまま紅牙が前に出ようとする。

 

「仕方ない。これ以上は時間をかけられん。アーシア、呼べ。ファーブニルを!」

 

が、アザゼルが提案したのはファーブニルの召喚だった。

 

そこからまた酷い時間が始まった。

今回、ファーブニルにはアザゼルとの契約時に与えていた宝物の中から魔弾タスラムのレプリカを出してほしいと頼んだ。

そして、ファーブニルは今回もまた宝物を要求してきた。

それは…………アーシアのスク水だった。

ハッキリ言って、そんなものこんな地に持ってこれるはずがない。

のだが、そのことを読んでいたソーナ会長のご助言により、アーシアはスク水を持ち込んでいたようで、それをファーブニルに与えていた。

そのスク水をファーブニルは咀嚼していた。

当然と言えば、当然なのだが…あまりにあまりな現実にアーシアは現実逃避をしてしまった。

 

その際、アルビオンにも被害が及び…。

アルビオンがおっぱいドラゴンで苦しむのはドライグだけではないと語り始め、二天龍はお互いの傷を癒すかのように語らい始めたのだった。

こんなことで二天龍が和解しようとしてるのだ。

正直、これもこれで大概と言えるだろう。

 

ちなみにタスラムのレプリカだが、クロウ・クルワッハは"噛んで"、その回避不可の魔弾を受け止めてみせた。

魔弾を受け止めて吐き捨てた後、クロウ・クルワッハは足止めは十分だろうと判断し、その場での戦闘行為を終了させていた。

追撃もせず、グレモリー眷属達を地下へと向かわせた。

ただ、その際…彼はギャスパーを見ていたという…。

 

………

……

 

ツェペシュ本城の地下最下層。

そこでヴァレリーから聖杯を抜き取る儀式が行われ、実行された。

その光景を見てイッセーは嫌な記憶を思い出す。

それは以前、堕天使レイナーレによってアーシアから神器を抜き取られた時の光景だ。

それを今度は後輩の目の前で行われたのだ。

 

しかし、滅神具を抜き取られたにしては妙だと感じる者がいた。

アザゼルである。

 

ヴァレリーに駆け寄るギャスパー。

短い言葉を交わし、ヴァレリーはその意識を手放していた。

 

その悲しい光景を見ても何とも思ってもいない風にマリウスがグレモリー眷属を挑発する。

リアスの怒りの滅びの魔力を食らったにも関わらず、マリウスは超速再生していく。

ヴァレリーから抜き取られた聖杯の力である。

そこにマリウスに加担していた上役の吸血鬼達が現れる。

彼らの危険極まりない思想にリアスやアザゼルは聖杯の明け渡すように促す。

しかし、それをマリウスは笑うだけで渡す気はさらさらないようだった。

 

その時だった。

最下層を闇が覆い尽くしたのは…。

その闇はギャスパーから広がり、ギャスパー自身もまた異形の存在へと変貌していったのだ。

その闇からは闇の魔物が生まれ、その魔物は吸血鬼の上役達を次々と屠っていく。

強化されたはずの吸血鬼達がこうも簡単に屠れるには理由があった。

それは強化された吸血鬼の"能力を停止"させているからだ…。

そして、最後に残ったマリウスもまたギャスパーだったモノの逆鱗に触れ、闇の魔物に喰われていた。

それは聖杯を持っていようと関係なく、だ。

 

その後、闇のフィールドは解除されたが、ギャスパーだったモノは未だ黒い魔物のような姿をしていた。

ヴァレリーの変化を訝しんだアザゼルによって違和感の正体が判明した。

聖杯は複数で一個とカウントされる亜種の滅神具だったのだ。

マリウスが引き抜いた分を戻せば意識が回復するかもしれないと早速アザゼルが作業を開始する。

 

魔物は自身もまたギャスパーだと言い、その正体を語った。

彼はギャスパーが母体にいた時に宿った、ケルト神話の魔神バロールの断片化した意識の一部だと言う。

本来のバロールはルー神によって滅ぼされており、その神性は失っていて魔の力だけが残ったのだと推測された。

故に彼はバロールであって、バロールではなく、『ギャスパー・ヴラディ』であると語った。

何故、ギャスパーにバロールの意識が宿ったのか…その真実は推測の域を出ないが…まだ神器に覚醒してなかったヴァレリーが無意識の内に聖杯の力を使っていたからかもしれないという。

そして、その禁手であるようで、そうでもないこの状態を『|禁夜と真闇たりし翳の朔獣《フォービトゥン・インヴェイド・バロール・ザ・ビースト》』と自ら命名していた。

その特異性から"14番目の滅神具"になりうる可能性も見出されていた。

力を使い、消耗した彼は再び眠りにつく。

 

しかし、ここで問題が発生する。

蘇生術式が完了したヴァレリーが目を覚まさないのだ。

そこに第三者が現れる。

 

「こいつも戻さないと本格的な覚醒は無理なんでない?」

 

リゼヴィムとノヴァである。

そのリゼヴィムの横には聖杯らしき杯が宙に浮かんでおり、さらにはリリスもいた。

 

「此度の聖杯三個一組という特異な滅神具だったようでしたので、リゼヴィムさんが既に一つ拝借していたのですよ。彼…マリウスさんも聖杯研究者を自称するのであればこれくらいの事は知っておいてほしかったのですが…残念ですよ。あまりにも無能でね」

 

ノヴァはマリウスのことをそう評していた。

 

「うひゃひゃひゃ、ノヴァっち。そりゃ言い過ぎってもんだぜ。でも、まぁ、そうなんだけどね♪」

 

「私は事実を言ったまでです。それにしても…」

 

そう言ってからノヴァはグレモリー眷属、アザゼル、ヴァーリ、紅牙と一瞥する。

 

「これだけいて、"これ"の存在に気付かないとは…いえ、持ってない者が勘付くはずもありませんか」

 

そう言ってノヴァは最下層の一角に黒い布と埃を被ったモノに向けて魔力弾を放つ。

 

ボワァ!!

 

魔力弾の着弾と共に黒い布が燃え尽き、中から…

 

「白銀の人馬像?」

 

特徴的な弓を構える白銀の人馬像が現れた。

 

「まさか、こんな場所でお目に掛かるとは思いませんでしたよ。射手座のエクセンシェダーデバイス」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

ノヴァの言葉にヴァーリやリゼヴィム以外の者が驚く。

 

「エクセンシェダーデバイスだと!?」

 

「ふふふ…形態から見るに未だ選定中ですか。果たして、どういった性質を求めるのでしょうね?」

 

ノヴァは楽しそうに射手座のエクセンシェダーデバイス(選定形態)を見る。

 

「それにしても、あのメソメソしてた孫がこんな立派な殺意を向けえてくるなんて…お祖父ちゃんは嬉しくて泣きそうだぞ☆」

 

「…………ッ!!」

 

ノヴァの横ではリゼヴィムがヴァーリから向けられる殺気に対してそんなことを言っていた。

 

「落ち着け、と言っても無駄だろうな。あのふざけた態度を見れば事情をよく知らない俺ですら殺意が湧く」

 

ヴァーリの横で紅牙がリゼヴィムの言動にイラついているのがわかる。

 

「おやおや、ヴァーリきゅんのお友達は冥族かい? また、珍しい組み合わせだねぇ。冥族って悪魔の事を恨んでなかったっけ?」

 

「生憎と、今は和平政策の進行中だ」

 

「あら、そう。時代は変わるもんだねぇ~」

 

そんなやり取りをした後、アザゼルがリゼヴィムに問う。

 

「その聖杯で何をやらかすつもりだ? 邪龍共を復活させて何を企んでやがる?」

 

その問いに、リゼヴィムは…

 

「多次元世界。俺っち達が認識してた世界観を根底から覆すような実例だ。それは太古から続いてたっていうじゃん? まさか、そんな楽しいことが昔からあったとは俺も知らなかったぜ。でも、それは最近になって徐々に冥界や天界、果ては人間界にも認識されつつあるよな?」

 

「私の一計もありましたからね」

 

「ったく、世界ってのは広いもんだな。俺っち達のいるこの世界もその多次元世界の一つでしかないっていうから困ったもんだ。でもよ、そんなこの世界にも別次元の神様が接触してきただろ? それで僕ちんは考えました。向こうが接触してきたなら、こっちも接触してみようぜ? ってな! し・か・も…こっちは接触は接触でも、多次元世界に対して攻め込んでみようってな!!」

 

そう答えていた。

 

「攻め込むだと!? 別次元の世界に対して宣戦布告でもするというのか!」

 

その答えにアザゼルが叫ぶ。

 

「おうさ! でも、それはちっと厳しいんだな。だって次元の狭間にはグレートレッドがいるからね。いくら遭遇率が低くても絶対に遭遇しないって保証はない。なら、先にグレートレッドちゃんを倒した方が後々楽じゃね? ってね」

 

「ですが、グレートレッドは強大です。いくら邪龍が束になろうとも、超越者であるリゼヴィムさんがいても…不完全な存在となったオーフィスさんでも…勝てる見込みは少ないでしょう」

 

「そこで考えたのが…黙示録の一節を再現しようってな!!」

 

リゼヴィムとノヴァの答えを聞き、アザゼルは貌を青褪めさせる。

 

「『666(トライヘキサ)』…!!!」

 

「ビンゴ! 正解、大正解! 流石はアザゼル君! 何か景品が欲しいかい? でも、残念。そんな特典ありません! でも、正解は正解だから教えますよ? そんな『黙示録の皇獣(アポカリプティック・ビースト)』と赤龍神帝をぶつけたらいい勝負になるんじゃね? てか、なるよね? ならない訳ないじゃん!!」

 

アザゼルの答えにリゼヴィムは嬉々として言葉を紡ぐ。

 

「アレは存在の可能性が示唆されてるだけで何処にいるかは未だわからんから、どの勢力も議論の最中だったはずだ!!」

 

「それがねぇ。い・た・の・よ♪ 聖杯使って命の理に潜った結果、俺達は見つけたのさ。忘れ去られた世界の果てでね」

 

「しかし、リゼヴィムさん達よりも先に666に接触し、堅い封印を施した存在がいました。それが聖書の神です」

 

「いやぁ~、驚いたわぁ。まさか、あんな超弩級に禁止級の封印術式がわんさかと組まれてたからね。あんな封印術式した後で三大勢力の戦争じゃ、聖書の神も疲労困憊で消滅しても仕方ないかもよ?」

 

リゼヴィムとノヴァの言葉にアザゼル達は言葉を失う。

聖書の神の死因がそのような可能性もあったとは…。

 

「つーわけで、俺達は666君を復活させ、グレートレッド君を撃破、撃滅、撃退してから悠々と各次元世界に攻め込む訳だ。その中の一つを俺だけのユートピアにしてもいいかな? どうよどうよ? なかなかに素敵で素晴らしい考えだと思わない!?」

 

「私も以前言いましたよね? 次元戦争の始まりだと…その第一歩をリゼヴィムさんがやってくれるというので私も協力させていただいております」

 

「本格的な次元戦争の第一人者! こんなのなかなか出来るもんじゃねぇよな!」

 

リゼヴィムとノヴァの言葉にグレモリー眷属は2人を睨んでいた。

 

「はっは~。嫌だね~。何その眼。そいつは『正義』の眼だ。今の悪魔はろくでもねーな。俺らは悪魔よ? 悪魔だったらもっと別の眼があるでしょうよ?」

 

そう言ってリゼヴィムは手で眼鏡を作ると、それを前後に移動させる。

 

「言ってろ、この野郎!!」

 

イッセーが特大のドラゴンショットをリゼヴィムに向けて撃ち出す。

が、リゼヴィムもノヴァも特に何をする訳でもなく、ドラゴンショットを無防備で受けようとしていた。

しかし、ドラゴンショットはリゼヴィムに当たると途端に霧散してしまった。

 

「ッ!?」

 

その結果にイッセーも驚く。

 

「奴の能力は悪魔の中で唯一の異能…『神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)』だ。神器によるいかなる特性、神器によって底上げされた全ての能力が効かないんだ…ッ。つまり、イッセーの赤龍帝の力も、木場の聖魔剣も神器である以上、奴に一切のダメージを与えられない…!」

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

アザゼルの言葉にグレモリー眷属が絶句する。

 

「なら、聖剣で!」

 

ゼノヴィアがデュランダルから聖なるオーラを飛ばす。

しかし、これはリリスによって防がれてしまう。

 

「ならば、俺がやる!」

 

紅牙が周囲に火炎弾を展開する。

 

「俺は別に神器を持っているわけでもない。それに今の動作からそいつは動きが遅いと見た!」

 

そう言って紅牙は展開した火炎弾を全方位から仕掛けさせる。

 

「私もいることをお忘れなく」

 

ギュイイィィィン!!!

 

カプリコーンを瞬時に起動、さらには纏い、リデュースパイラルによって火炎弾の魔力を削り取っていく。

 

「うひゃひゃひゃ! 流石はノヴァ君。このくらいの焔…いや、弱火なら問題なく払えるわな」

 

そう言ってパッパと弱くなった火炎弾を振り払う。

 

「ちっ…だったらこれならどうだ!」

 

そう言うと紅牙は冥王化から天狐モードへと一瞬で変化すると右手を突き出し…

 

「包囲結界」

 

リゼヴィム達の周りを包囲するかのように結界が張られる。

さらに紅牙の周りに今度は青白い焔が灯りだす。

 

「これは…?」

 

ノヴァの表情が少しだけ変わる。

 

「天狐妖術の一つ、狐火だ。魔力が効かない以上、他の力を使ってみるだけのこと!」

 

そう言って紅牙は結界内に狐火を送り込んでいく。

 

「ノヴァ君!」

 

「申し訳ありません。マナリデューションは魔力のみにしか働かないのですよ」

 

「え? マジ?」

 

まさかのことにリゼヴィムも驚く。

 

「えぇ、困ったことに」

 

ノヴァは困った表情で肩を竦めていたが…。

 

「リリス、リゼヴィム、守る」

 

迫る狐火をリリスが拳圧で吹き飛ばす。

 

ビキビキ…!!

 

リリスの拳圧で結界が罅割れていく。

 

「くっ…拳圧だけで壊れそうになるとは…流石はオーフィスの分身体ということか…!」

 

紅牙が表情を歪める。

 

すると…

 

『いいね。良い塩梅の人がいるじゃん。ここってなかなか候補が多かったけど…これなら"彼女"に決まりかな?』

 

射手座のエクセンシェダーデバイスの胸部プロテクターに嵌め込まれたアメジストが点滅する。

 

『ここに来て選定が終わったと? 相変わらず、空気を読まないことですね、サジタリアス』

 

その声に反応し、カプリコーンが口を開く。

 

『あ、カプリコーンってば酷いこと言うなぁ。でも決めたものは決めたんだから気にしない気にしない♪』

 

対するサジタリアスは陽気な風に言い放つ。

 

『ちっ……マスター。ここは退くべきかと…サジタリアスが本格的に起動したら少々厄介なことになります』

 

サジタリアスに対し、舌打ちっぽい音を出しながらカプリコーンがノヴァに後退を進言する。

 

「ほぉ? それは楽しそうだ。誰が選ばれたのか気になりますし、しばし静観しましょか」

 

しかし、ノヴァは狐火を己の蒼炎で払いながらサジタリアスの定めた人間を見ることを選ぶ。

 

『じゃあ、そこの"狐のお嬢さん"。君を俺の選定者にしたいんだけど…問題ない?』

 

狐+お嬢さん+彼女……それはもしかして…

 

「……………まさか、俺のことか?」

 

今にもキレそうな勢いの紅牙がサジタリアスを睨む。

 

『あれ? なんか俺、間違った?』

 

真実に気付かず、サジタリアスは疑問を口にする。

 

「俺は男だぁぁぁぁッ!!!」

 

怒りによって狐火の火力も上がる。

 

『わぉ! そりゃメンゴ! でも、俺が見込んだ選定者なんだ。君の力になるから、それで勘弁してちょ♪』

 

そう言うが早いか…

 

バリンッ!!

 

射手座の像がバラバラになると、紅牙の身に纏い始め、余ったパーツは別の生き物へと形成されていった。

 

『我が名は"アークドライブ・サジタリアス"。主の名前は?』

 

「……神宮寺 紅牙だ」

 

サジタリアスの軽い口調に頭を抱えそうになるが、一応名乗っておく律儀な紅牙だった。

 

『よろしくね、マスター紅牙。じゃあ、いっちょ俺の機能を見せちゃるよ!』

 

そう言うと…

 

『行くぜ! アームドドライバー!!』

 

余ったパーツで出来た生物達『アームドドライバー』がサジタリアスの表面に後付け装備のように装着する。

装着箇所は背中、両腕、両足で、左手に弓が持たれる。

 

「ほぉ、ドライバーとしての機能を有しつつも基本は鎧型と同じという訳ですか」

 

興味深そうにノヴァはサジタリアスを見る。

 

「ハッキリ言って初見のものを使うのは主義じゃないが、そうも言ってられんか!」

 

新たな力を手に紅牙が攻勢に出ようとした時…

 

「はい、注も~く♪」

 

突然、リゼヴィムが叫んで全員の視線を集める。

 

「ふむ…少々時間を浪費し過ぎましたか。申し訳ありませんね、リゼヴィムさん」

 

その意図に気付いたノヴァがリゼヴィムに謝罪する。

 

「いやいや、気にしないでいいよ。それよりもだ。君らには見せておくもんがあるんだな~」

 

そう言って展開された魔法陣にはカーミラ側の城下町が映し出される。

 

「俺がこうして指を鳴らすと……」

 

パチンと軽快に指を鳴らすリゼヴィム。

 

「ん~、ちょ~っと待っててね……あ、ほらほら、"アレ"を見てみ」

 

するとどうだろう。

魔法陣に映し出された城下町に次々と黒いドラゴンが現れ始める。

 

「これはどういうことだ、リゼヴィム!?」

 

アザゼルの絶叫にリゼヴィムは…

 

「いやね、カーミラ派にもツェペシュの甘言に乗っかてくる奴らはいるんだわ。それでそいつらとはカーミラ側からの情報を流す契約をしててね。その代わりに強化してやったのよ。だが、ここがポイント! なんと改造された吸血鬼は俺様が指を鳴らすと量産型邪龍になるという豪華特典を付けておきました~~!!」

 

「なっ!?」

 

今、カーミラ側の戦闘要員はツェペシュ側に集中している。

このままではカーミラ側の城下町は元吸血鬼の量産型邪龍によって全滅しかねない。

 

ゴゴゴゴゴ…!!

 

さらに地響きが地下最下層まで伝わってくる。

 

「おっと、言い忘れてた。俺が指を鳴らすとこっち側の豪華特典も発動するのでした~☆」

 

「それでは皆様も気になるでしょうから…」

 

最下層の床一面に見たこともない魔法陣が展開される。

 

「これは絶魔が使う魔法陣でしてね。ちょうどいい具合に魔力も散らしたの転移もスムーズにいきますよ」

 

どうやら先程の紅牙の火炎弾から削り取った魔力を用いて転移魔法を可能にしたようだ。

 

カッ!!

 

転移魔法陣が光り輝く。

 

 

 

次の瞬間、一行は外に出ていた。

カーミラ、ツェペシュの両城下町は酷い惨状になっていた。

 

「リゼヴィム達は?!」

 

しかし、一緒に転移したはずのリゼヴィム達の姿が無かった。

 

「リゼヴィムッ!!」

 

ヴァーリは空を見上げてそいつの姿を見つけていた。

 

「やっほ~☆ ヴァーリきゅん。お祖父ちゃんが遊んでやるぞい♪ それで肩を叩いてくれんかねぇ?」

 

その挑発に乗り、ヴァーリは光翼を広げると高速で移動し、リゼヴィムを追う。

 

「ノヴァの奴は既に消えてるな。俺はヴァーリのフォローに入りつつ邪龍を片付ける」

 

ノヴァの気配がないことを確認してから紅牙はヴァーリを追う。

 

それからグレモリー眷属はツーマンセルで邪龍の駆除に向かった。

イッセーとアザゼルは単騎での出撃となったが、真紅の鎧と堕天使の元総督にその心配は無用だろう。

 

その途中、イッセーはユーグリットと対峙した。

そこでイッセーはレプリカの赤龍帝の籠手と相対することになり、真紅と互角に渡り合うユーグリットに戦意を失い掛ける。

だが、ドライグの言葉で吹っ切れたイッセーと思いの丈をぶちまけたドライグによって新たな力…いや、以前奪った白龍皇の力が形を変えて具現化する。

それを用いてユーグリットとの戦闘を優位に進めるイッセー。

そこに起きてきたギャスパーも量産型邪龍退治に参戦する。

さらにそこへリゼヴィム、、それを追ってヴァーリと紅牙もやってくる。

強制転移で撤退しようとするリゼヴィム達を神器保有者3人が攻撃しても無意味だった。

唯一紅牙だけが攻撃を通せたが、その攻撃もリリスによって防がれる。

その際、リゼヴィムは『禍の団』に代わる新たな組織名を『クリフォト』とすることを宣言していた。

理由は生命の樹「セフィロト」の逆位置を示し、セフィロトの名を冠する聖杯を悪用し、尚且つ悪の勢力という意味合いも多分に含まれていた。

 

リゼヴィム達が強制転移した後…

 

「俺の夢はグレートレッドを倒すことだった……。クソッ。俺の夢は奴と一緒なのか!? いや、違う! 俺は……俺は奴とは…!!」

 

ヴァーリが怒りに打ち震えているのを見て…

 

ズガンッ!!

 

「ッ!?!」

 

「…………」

 

紅牙がその顔面にグーパンチを決め込んでいた。

しかも結構な威力のもので、ヴァーリの鎧のマスクが破壊されていた。

 

「こ、紅牙…?」

 

まさか、紅牙に殴られるとは露にも思わず、ヴァーリは紅牙を見る。

 

「貴様はバカか? あいつは666とかいう化物をグレートレッドにけし掛けるのに対し、お前は自らの手でグレートレッドを屠り、真なる白龍神皇になるのではなかったのか? それが同じ夢などと、バカバカしい」

 

「そ、それは…」

 

紅牙にそう言われ、ヴァーリは困惑する。

 

「ふんっ…あんな外道と夢が似通っているからとこんな様では目も当てられん」

 

わざとらしくキツイ言葉を言い放ってから…

 

「ライバルの目の前で弱気な姿など見せないことだな。現に見ろ、この間抜け面を」

 

イッセーを指差す。

ちなみにその様子はポカンとした表情でイッセーが見ていたりする。

 

「ッ!?」

 

見られていたことに気付き、珍しくヴァーリが驚きの表情を見せる。

 

「まったく…こんな奴を認めていたとは、我ながら見る眼が無かったか?」

 

「……………」

 

紅牙に散々な言われ様をされたヴァーリだが…

 

「……そうだな。こんな程度で我を忘れるとは…俺らしくもない。奴は確かに憎いが…それとこれとは話が別だったな…」

 

不思議と笑っていた。

 

「俺は俺の手で必ずグレートレッドを倒す。あのような奴と夢が同じなどと言わせるものか…!」

 

その眼には闘志が再び宿っていた。

 

「それでこそだ」

 

紅牙もそれを受けて不敵に笑みを浮かべていた。

 

「(あれって…絶対に励ましてるよな?)」

 

イッセーは紅牙とヴァーリのやり取りを見てそう思ったとか…。

 

 

 

その後、吸血鬼の領土で起きたテロは一先ずの収束を見せた。

今後、吸血鬼達がどのような変化を見せるかはわからないが、とにかくこれで事件は一段落した。

 

だが、新たな問題も浮上した。

新生禍の団『クリフォト』の今後の動向、レプリカの赤龍帝の籠手、奪われたままの聖杯、次元戦争の開戦…。

これらの問題はいずれ少しずつ片付けなくてはならない。

 

しかし、吸血鬼達の領土でテロが起きていたのと時を同じくして…日本でも死闘が行われていた。

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