第七十九話『修行の日々』
地球の駒王学園。
二学期の十一月も終わりを告げ、十二月に突入していた。
イッセー達、学生組は二学期最後の学事、期末テストも終わっていた。
そんな中、休日を利用して初代孫悟空による修行の日々が繰り広げられていた。
参加者は基本的にD×Dに参加している者達である。
ちなみに修行場として提供されているのは『第47無人世界』である。
参加する人数が人数だけに改装された兵藤家の地下トレーニングルームだけではとても収まらないとしてゼーラが極秘裏に場所の提供を行ったのだ。
さらに専用の次元間転移魔法陣をアザゼルが用意したので、兵藤家の地下や明幸邸の地下からの転移が容易となっている。
修行場ではいくつかのチームを作って修行を行っていたりする。
イッセーとヴァーリの二天龍。
忍と紅牙、智鶴のエクセンシェダーデバイス組。
リアス、朱乃、ロスヴァイセ、アーシア、フェイト、シルフィー、ラピス、ティラミス、なのは、はやて、シャマル、リインフォースⅡ、シルヴィア、シェーラの魔力魔法組。
木場、ゼノヴィア、イリナ、朝陽、萌莉、シグナム、ヴィータ、エリザ、ラルフ、翼の剣士騎士組。
ラト、夜琉、秀一郎、ジェス、響の格闘組。
吹雪、シア、早紀、沙羅、紗奈の冥王組。
クリス、調、切歌の装者組。
黒歌、小猫、ギャスパーの師弟組。
暗七、エルメス、カーネリア、ザフィーラの異形組。
匙とデュリオの進化促進組。
グレモリー眷属、シトリー眷属、紅神眷属、神宮寺眷属を始め、
また、特務隊や管理局員であるなのは達、特にどこの眷属にも属していない装者2人(響と翼)は半ば強引に参加させられている。
では、それぞれの修行様子を観察してみよう。
………
……
…
・冥王組
山の麓にある岩場付近。
「まさか、アンタ達と組んで修行することになるなんてね…」
「それはこっちの台詞だっての」
「人生、何があるかわからないもんだねぇ~」
吹雪の言葉に早紀と紗奈が反応する。
「あ、もしかして…」
「はい、シア様。私達は当時の作戦で遭遇戦を繰り広げてましたので…」
そのやり取りを見ていてある事を察したシアに頷くように沙羅が補足してくれた。
冥王派がまだ禍の団に所属していた頃、雪女の里を襲った事件があった。
忍やイッセーが紅牙と交戦していた時、早紀達は氷姫と別行動になってしまった吹雪と交戦していたのだ。
「まぁ、あの時は悪かったよ。冥族の末裔だなんて知ってたら紅牙様も侵攻は考えてただろうし…」
「まぁ、もう過ぎたことだし…許せないけど、許してあげるわよ」
どっちだ?
「ともかく全員、冥王化しましょうか。せっかく集まったんですから、それぞれの冥王スキルを見せ合って他にどういう使い道があるか、考えましょうよ」
この中で仕切り役はシアになりそうだった。
「はい、シア様」
「オッケー♪」
「よっしゃ、行くぜ!」
「わかってるわよ」
その場で全員が冥王化する。
冥王が5人も揃うと圧巻と言わざるを得ないな…。
「まずは…私からいきます」
シアが先陣を切るようだ。
「冥王スキル、スカーレット・ソーサラー」
そう呟くと共にシアの周りに四つの異なる色をした焔が灯る。
「赤は魔、黄は気、青は霊、紫は妖をそれぞれ表しています」
わかりやすくシアはそう説明する。
「これらを媒介に様々な術式を展開するのが主な使い方です」
そう言うと、赤い焔で砲撃、黄色い焔で身体強化、青い焔で結界、紫色の焔で誘導弾をそれぞれ繰り出していく。
「もちろん、別々の力を合わせて使うことも出来ます」
そう言うと、赤と紫の焔を合わせて砲撃の威力を増していた。
「後衛としては破格の能力だけど…接近されたらちょっと苦しそうよね」
それらの行動を見ていて吹雪がそう漏らす。
「はい。そこは私も痛感してます。私自身、兄さん達よりもあまり運動神経は良くありませんから…」
「わかります。シア様」
シアの言葉に沙羅が同意するように頷いていた。
沙羅もどちらかと言えば、後衛で真価を発揮するタイプなので、シアの事情は痛いほどわかるらしい。
「まぁ、短所を埋めるよりも長所を伸ばす方がいいわよね。特にシアはこの中じゃ唯一の僧侶なんだし…」
「そっか。そういう考え方もあるんだよな」
「なるほど~」
吹雪の言葉に早紀と紗奈がなんだか納得したような感想を漏らしていた。
「………あたし達は兵士の駒を与えられてるんだから、昇格した場合の事を考えてそれぞれの能力幅を上げないとでしょうが」
早紀と紗奈の反応に少し頭を抱えつつ吹雪はそう言っていた。
「えっと…昇格先は女王、騎士、戦車、僧侶だから…」
「能力全般、速度、攻防、魔法という感じですね」
紗奈の確認するような言葉にシアが答える。
「それを踏まえた上であたし達はそれぞれの能力を見るわよ」
そう言って吹雪は自身の能力を発現させる。
「スノーウィザード。それがあたしの冥王スキルよ。簡単に言えば、自分の魔力と妖力を冷気に変換して氷を操る感じの能力よ」
そう説明しながら右手から魔力、左手から妖力のオーラを出すと、それを冷気へと変換させていた。
「僧侶向きっぽいけど、やりようによっては騎士や戦車とも相性良さそうだよな」
「そうね。あたしはこうやって近接戦もやってるし」
早紀の意見に吹雪は両手のオーラを変換した冷気で両手を覆い、氷の爪を作り出していた。
「それにあたしは堕天使でもあるから、こうやって光力を出力することも出来るし」
光の球を作り出してレーザー状に撃ってみせる。
「全体的にバランスが良いんですね」
「いいな~」
沙羅と紗奈がそう言う反面…
「でも、突出するような…一撃に欠けないか?」
早紀がそう指摘する。
「それを言われるとちょっと痛いわね」
バランスが良いということは、ここぞという時の…特に必殺技的なモノがないのと同義である。
「そういえば、吹雪さんが強力な攻撃をしたりするのをあまり見たことが無いような…」
言われてシアも吹雪のこれまでの戦闘を思い返してみる。
「あたしの課題はそれかしらね…」
吹雪は吹雪で一撃の重さが課題となるようだった。
「次はボクだな。冥王スキル、バーニング・チャクラム!」
そう言うと、早紀の周りに炎で作られた戦輪がいくつも出現する。
「炎の戦輪か…」
吹雪はそれを見て少し考え込む。
「戦輪の使い方も色々ありますからね」
「投擲、拘束、防御…」
シアの言葉に考え込んでいた吹雪が答える。
「ボク的な目標としてはこれで身体強化も出来ればいいと思ってんだけどな」
そう言って早紀は戦輪を手足に装着し、大きな戦輪を背中に光輪のように背負った姿を見せていた。
「出たよ、早紀の見栄っ張りモード」
「あはは…」
何回も見てきた沙羅と紗奈には呆れられていた。
「なんだよ、2人して…いいだろ、別に!」
沙羅と紗奈の反応に早紀は口を尖らせてしまう。
「いや、一概に見栄っ張りとも言えませんよ?」
「そうね。少なくとも今は何とかなるでしょ」
しかし、シアと吹雪の見解は違うようだった。
「「え…?」」
沙羅と紗奈はそんな2人の反応に驚いていた。
「今は兄さんの眷属…それも兵士なんですから、女王に昇格さえすれば、全体的な能力も上がりますから。その状態でも十分に強化出来るんじゃないかしら?」
「そうね。今まではわからないけど…これからはそれも絡めて自分の能力を上げることだって出来るだろうし、気を使っての身体強化なら冥王スキルとも併用出来るわけだし…要はやり様の問題なんじゃないの?」
こんなことを真面目に理解し、アドバイスまでしてくれるシアと吹雪に早紀は…
「………………」
間抜けそうな表情で口を半開きにしてポカンとしてしまっていた。
「ちょっと、聞いてんの?」
「ぇ、ぁ…うん…」
吹雪の問いに早紀は生返事するくらいしか出来なかった。
「気の扱いならシアに聞くか。あの黒猫(黒歌)に聞くことね。その方が効率がいいし…」
気の代わりに妖力を持つ吹雪には教えられない部分でもあった。
「それじゃあ、次は?」
「ぁ…じゃあ、私がいきます。冥王スキル…カラミティ・ショック」
沙羅はそう言うと地面に手を当てて震動を発生させ、軽い地震を起こす。
「私の冥王スキルは目に見えないので…こういう形でないと認識されにくいんです」
自嘲するように沙羅は自分の能力を分析する。
「地震を発生させるのが冥王スキルなの?」
「いえ、正確には"震動を与える"能力です」
「震動を与える?」
沙羅の冥王スキルが初見な吹雪は聞き返していた。
「はい。さっきみたいに簡易的な地震を起こしたり、空気に震動を与えて衝撃波を発生させたりすることが出来るんです」
「……何気にえげつないわね」
震動を与えるという能力に吹雪はそんな感想を抱いた。
「よく言われます…」
沙羅の性格上、それほど大胆なことは出来ないが、それでも震動を与える能力には脅威を覚えてしまう。
「使い方によっちゃ周囲の魔力素に震動を与えて他の連中を魔力酔いとかに陥れるとかしてたよな」
「あ~、アレはあたし達も結構被害を被ったよね~」
そんなことを思い出しながら早紀と紗奈が笑い合う。
「震動を与える対象は特に固定じゃないのね…」
「多分、体術に組み込んで相手を吹き飛ばすことも可能なんでしょうが…私と同じで沙羅さんは肉弾戦が苦手ですから…」
「それはそれで結構なダメージを体内に与えると思うけどね…」
ともかく沙羅の冥王スキルは危険な部類に入るという認識を共有出来た。
「じゃあ、次はあたしか。冥王スキル、ミスティック・クリア」
紗奈の周りに魔力の通った水が霧状に散布される。
「清涼感はあるわね」
吹雪の第一印象はそんなものだった。
「でもこれって意外に役立つんだよ?」
そう言うと、紗奈は霧状の水を用いて分身を作ったり、収束して槍を作ったりと色々と芸を見せていた。
「随分と多芸ね」
「一応、この霧を吸って魔力を少し回復なんてことも出来るけど…結局は放出した魔力を再補給する感じだからねぇ」
「……ん? それって結構重要じゃないの?」
話を聞いていた吹雪がそう漏らす。
「え? なんで?」
当の本人はわからないようだ。
「だって、少なくとも魔力で放出したんだから周囲の魔力素を少しは取り込んでるだろうし、少なくとも回復量はマイナスって訳じゃないだろうし……それにアンタ以外が吸っても補給は可能なはずでしょ?」
その説明を聞き…
「…………お~!」
やっとその有用性に気づいたようだった。
「…………シア、こいつら本当に大丈夫なの?」
「あ、あははは…」
今更ながら吹雪はシアにそう尋ねていた。
それに対してシアは苦笑するしかなかったようだが…。
不安要素もあるが、概ね冥王組の修行は順調(?)と言えた。
………
……
…
・格闘組
草原地帯では…
「よっしゃ、行くぜ。テメェら!!」
変則四対一の模擬戦を行っていた。
秀一郎1人に対してラト、夜琉、ジェス、響の4人が相手取るというものだった。
「ほ、本当にいいんですか!?」
その模擬戦内容に響は躊躇していた。
「兵士2人に拳闘士、装者くらい1人で捌けなきゃ戦車の駒を貰った意味がないからな。遠慮なく来い!!」
秀一郎は既にデバイス『シュティーゲル』を起動させて臨戦態勢を作っていた。
「なら遠慮なくいくぜ!!」
「あたし的にはフィーと一緒の方がやりやすいんだけどなぁ。でも、そうも言ってられないか」
ジェスとラトの2人が秀一郎に左右から飛び掛かる。
「魔拳ッ!!」
「ストレイト・ナックル!!」
共に魔力を込めた拳を秀一郎に向けて打ち込んでいた。
「甘ぇ!!」
2人の拳を両手を広げるような感じの裏拳で対処すると…
バチバチ!!
「ライトニング・フォース!!」
防いだ拳から雷撃をジェスとラトの体へと流し込む。
「あばばばばばば!?!?」
「あわわわわわわ!?!?」
いくら非殺傷設定を設けているとはいえ、雷撃をまともにくらって無事ではいられまい。
ジェスもラトも雷撃の影響で体中が麻痺してしまう。
「烈神拳、蜘蛛の巣!」
それを見た夜琉はまず相手の手足を封じることを選択する。
「妖力で練られた糸か…! 解呪が面倒だな!!」
四肢を蜘蛛の巣で絡め取られた秀一郎は力任せに糸を引き千切ろうとする。
「動きが止まってる内に一撃を加えましょう」
そう提案する夜琉に対し、響は…
「い、いいのかな…?」
まだ躊躇している様子だった。
「戦闘とはそういうものです。特にこれからあたし達は色んな敵と相対することになりますから、躊躇は自分の足枷になりますよ?」
まだ"人(と、それに近しい存在)"との戦闘に慣れていない響に夜琉の言葉は少し辛辣かもしれない。
まぁ、代わりにノイズなどの存在との戦闘には慣れているのだが…。
「よく言った。それでなきゃ模擬戦の意味がないから、なッ!!!」
ブチブチブチッ!!!
夜琉の言葉を褒めながら、秀一郎は無理矢理に蜘蛛の巣を引き千切っていた。
「な、なんて馬鹿力…!?」
秀一郎の人並み外れたパワーに夜琉は驚く。
「力の行使を躊躇うくらいなら戦場に出るな! 覚悟のない奴に"力"は不必要だからな!!」
それは響に対して言っていた。
「っ!?」
ズバリ言われて動揺する響。
「隙だらけなんだよ!!!」
そんな無防備な響に向かい…
「ブレイズ・ブロー!!」
炎の拳を叩き込もうとする。
「立花さん!」
それを守ろうと夜琉が前に出て秀一郎の拳を受けようと…
「猛牙墜衝撃!!」
烈神拳の大技を放つ。
「あっ…!」
それを見て響も何かしようとするが…
「そんな甘い覚悟で俺を止められると思うな!!」
ガシュッ!!
シュティーゲルのカートリッジが炸裂すると…
「バーニング・ブロウラー!!!」
ブレイズ・ブローの炎の勢いが増し、技の段階を一気に昇華させていく。
「っ?!」
技の威力が増したことによって夜琉の猛牙墜衝撃が押され、ついには…
ゴアアアッ!!!
背後にいた響もろとも夜琉を吹き飛ばす。
「うわあああっ!?」
「くっ…!?!」
響は盛大に背中から墜落し、夜琉は受け身を取って上手く着地するものの、予想以上の威力に膝を着く。
「ったく、情けねぇ。4人がかりで俺一人やれねぇのか?」
秀一郎はこの結果に呆れていた。
ジェスとラトは先制攻撃から反撃を受けて麻痺中、夜琉は多少善戦したかというところで、響に関してはまともに一撃も打ててない。
「拳闘士の坊主は…馬鹿正直過ぎる。もう1人の嬢ちゃんは…まぁ、向こうの小娘との連携が前提だから多少は仕方ねぇかとも思ったが、まだまだ荒い。烈神拳の嬢ちゃんは流石に狼の義妹だけの事はあるが、こっちも未成熟だ。そして、立花 響。テメェの覚悟はその程度なのか!?」
今の攻防を間近で見て秀一郎はそれぞれをそう評していた。
「くっ…!!」
「悔しかったら俺に一撃を加えてみせろ!!」
戦車の特性は秀一郎とはかなり相性が良いのか、攻撃も防御も以前よりも上昇していた。
「なら…行きます!」
ダンッ!!
両足に装備されたジャッキを作動させて一気に秀一郎との距離を詰める。
「そうでなきゃな!!」
嬉しそうにそれを迎え撃つ秀一郎。
「ダメだしされたまま終われるか!」
「フィーがいなくてもあたしだって日々進歩してるし!」
「義兄さんをあたしの引き合いに出さないでください!」
麻痺から復活したジェスとラトに、忍を引き合いに出されて怒った夜琉も交えて秀一郎へと向かっていく。
そうして何とも脳筋な模擬戦は続いていくのであった。
………色んな意味で大丈夫かな?
………
……
…
・剣士騎士組
滝が流れているのが見える河川地帯では…
「噂に名高い剣の騎士と手合せ出来る機会があるとは…隊長には感謝しなくてはな」
「特務隊の槍使い。部署は違えどその名は聞き及んでいます」
川の中央でエリザとシグナムがそれぞれの得物を手に対峙していた。
「「………………」」
互いに間合いを測りながら円を描くように歩く。
すると…
バッシャアァァン!!
わりと近場で水飛沫が舞う。
「「ッ!!」」
それを合図にしてエリザとシグナムが動く。
ガキィィンッ!!
槍の穂と剣の切っ先が交わり、甲高い音を響かせる。
「ふっ!」
交わった直後の反動を利用し、エリザは槍を半回転させて向きを反転させると、そのまま連続突きを繰り出す。
「っ!」
その連続突きをシグナムは剣型デバイス『レヴァンティン』とその鞘によって最小限の動きで捌いていく。
ガキンッ!!
剣と鞘を交差させて槍の一撃を受け止めると…
「紫電…」
ボァ!!
剣に炎が灯る。
「っ!」
それを見てすぐさま槍を受け止められた方とは反対側へと回転させると…
ギンッ!!
剣と鞘の交差を崩していた。
「一閃ッ!!」
だが、それでもシグナムの一撃は止まらない。
「ヴェルランサー、モード・リリース!」
すると、何を思ったのか、槍を待機状態の小さい状態にすると…
「バリアジャケット、魔力変換!」
ベレー帽を魔力へと再変換し、待機状態のヴェルランサーに纏わせると…
「ストライク・スピアー!」
正確な投擲でシグナムの紫電一閃を迎撃していた。
「っ!?」
まさか、こういう手で防ぐとは思わずにシグナムは少しだけ硬直する。
その隙に弾かれたヴェルランサーを後方に飛び退きながら回収し、再度元の槍へと戻すエリザ。
「(流石にやる…!)」
「(槍捌きもさることながら体術にも隙が無い…!)」
互いに互いを内心で称賛しながらも即座に次の行動に移る両騎士。
ちなみに…
「うへぇ…教官とタメ張れるとか、どんだけよ?」
水飛沫の原因である水浸しのラルフはシグナムとエリザの戦いを見てそんな感想を抱いていた。
「戦闘中によそ見とは…随分と余裕ですね?」
そう言ってラルフに近付くのは…翼であった。
「いやいや、戦闘中に歌うこともそうだけどよ。なんでそんな剣がでっかくなったり、いっぱい出てくるわけよ? 聞いたところによればデバイスや魔法でもないっていうのに…」
そう言いながらラルフは剣を杖代わりにして立ち上がる。
どうやらラルフが翼に押されているようだった。
「シンフォギアは機密の塊ですからそう多くは語れません」
「(こういう真面目なの苦手だわ~)」
真面目な対応を取る翼にラルフは内心苦手意識を募らせる。
「(これが異世界の騎士…想像していたよりも彼は不真面目そうだけど、それだけでは侮れない)」
最初こそ対人戦闘に抵抗を持っていた翼だったが、ラルフを相手取ってから少しずつ順応しているようだ。
「(さてはて、どうすっかな。魔法じゃないから俺の魔法もあんま意味ねぇし…)」
かく言うラルフもやられっぱなしは性分ではないらしく、何か対策を取ろうと考えていた。
「(ま、いっちょ賭けるかね)」
そう思いながら炎と破壊のエレメントカートリッジをヴェルブレードに装填する。
「(何か仕掛ける気?)」
それを見て翼も警戒する。
「カートリッジ、ダブルロード!」
ガシュッ!!
破壊の属性を付加した炎がヴェルブレードの刀身を覆う。
「
そのままラルフは翼に向かって剣を振るう。
「っ!!」
《風輪火斬》
アームドギアを双剣にするとその柄を繋ぎ、炎を纏わせながら回転させてラルフの斬撃を受け止め、カウンターを仕掛けようとするが…
バキンッ!!
「っ!?」
双剣は容易く砕けてしまい、翼は後退を余儀なくされてしまう。
「アームドギアが…砕けた!?」
その事実に翼は目を見開き…
「へぇ、破壊属性ってのは結構使い勝手がよさそうだな」
ラルフの方は破壊属性の新たな活用法を見つけて満足そうだった。
「じゃ、仕切り直しと行こうぜ!」
「くっ…!」
戦略法を見つけて強気に出るラルフと、破壊の攻撃を警戒する翼。
一方で…
「きゃっ!?」
河原で尻もちをつく萌莉。
「お前、やる気あんのかよ!」
ヴィータが萌莉の稽古に付き合っていた。
「す、すみ…ま、せん…」
ヴィータに怒鳴られ、シュンとなる萌莉。
「珍しく木刀を持ったと思ったら…まぁ…」
その稽古には呆れ顔の朝陽も立ち会っていた。
同じ忍の
「(筋は確かに良い。けど、萌莉からは攻勢が感じられない…)」
"剣術"ということで言えば、萌莉はかなり高い潜在能力を秘めている。
しかし、相手を傷つけることへの恐怖心から一向に攻勢に出られないでいた。
「(なんでか知らねぇけど、なんでこんなへなちょこにあたしの攻撃が当たらねぇんだ?)」
叢雲流の理力の型を知らないヴィータからしたらこんなドジっぷりを見せる萌莉に攻撃が当たらないのが不思議でならないようだ。
『きゅ…』
そんな萌莉を心配するようにファーストが遠目から見守っていた。
「(何か…きっかけがあれば、化ける気がするんだけど…)」
萌莉の稽古はかなり難航していた。
ちなみに木場は魔帝剣グラムを制御する方法をゼノヴィアのエクス・デュランダルを参考に模索していた。
………
……
…
・魔力魔法組
人数的に一番規模の大きい組でもあるため、その中でも幾分か細分化されていた。
生体魔力を扱うリアス、朱乃、ロスヴァイセ。
大気魔力を扱うフェイト、シルフィー、ラピス、ティラミス、なのは、はやて、リインフォースⅡ、シルヴィア。
治療を専門にするアーシア、シャマル、シェーラ。
という具合になっている。
その中でも多い大気魔力組は…
「えっと…じゃあ、まずはこのターゲットスフィアを撃ってみてくれないかな?」
「……はい」
「はい」
「わかりました」
なのはの指導の下、シルフィー、ラピス、ティラミスの3人が射撃魔法の練習をしていた。
「高町教官の指導か…」
「そっか。シルヴィアちゃんはなのはちゃんの教え子なんやっけ?」
「はい。高町教官は私の憧れです」
はやての言葉にシルヴィアはそう答えていた。
「それにしても…」
傍らで練習の様子を見ていたフェイトに視線を向けるはやて。
「な、なに…?」
親友の何とも言えぬ視線にたじろぐフェイト。
「いや、なんだかフェイトちゃんが一足先に大人になったんやなぁ~って思うて…」
「は、はやて!? べ、別に忍君とはその…なんというか…///」
忍との関係を言われたと思い、急にもじもじし始めるフェイトの反応に…
「………あかん。可愛すぎるで、フェイトちゃん」
そんな親友の姿にほのぼのしながらはやては抱き着きたい衝動をグッと堪える。
「そ、それはそうと!///」
「(あ、話題を逸らした…)」
「前にはやては神宮寺さんと一緒にストロラーベって次元世界に行ったんでしょ?」
「そうやね。地球よりも電脳文化が栄えた感じの世界やったね」
前に特務隊の任務を手伝った時に訪れた次元世界のことを思い出しながらはやては語る。
「うん。ちょっと気になる噂があって…ストロラーベで不可解な事件が起きてるとか…」
「不可解な事件?」
「詳細はまだわからないけど…もしかしたら捜査することになるかもしれないから…」
フェイトは近い内に現場となるストロラーベに行く可能性を示唆していた。
「ストロラーベと言うたら…"あの放送"には驚いたなぁ」
「はやて達はストロラーベで見たんだ?」
例のノヴァの全次元に対する電波ジャックのことである。
「そやで。そん時に紅牙君が変身したのもよく覚えてるわ」
「大丈夫だったの?」
「うん。ヴィータが封鎖領域を展開してくれたから変な噂にはなってへんと思うよ。それにみんな放送の方に目が向いてたから…」
「そうなんだ…」
あの放送がストロラーベでどのくらいの影響を出しているのか…そこが不安要素でもある。
「この場にいる以上、他種族の存在を認識しているつもりですが…」
そこにシルヴィアが口を挟む。
「外見的には人と変わりないとしか思えません…」
そう言ってその視線をリアスや朱乃、アーシアなどに向ける。
「そやね。これだけ人が集まっていて何が違うんやろか?」
「それは……わからないね」
使っている魔力が生体か大気かの違い、外見的に人と似ていようと何かしら違いがある。
しかし、それを明確にする手段は案外難しいのかもしれない。
と、そこに…
「俺達人外の者は古くから人の社会に溶け込む術を知っているからな」
紅牙がやってきた。
その身にはサジタリアスが纏われていた。
「あれ? 紅牙君」
「エクセンシェダーデバイスを持ってる人で集まってたんじゃ…」
はやてとフェイトの言葉を聞き…
「俺だって空気ぐらい読む。それに鎧型とドライバー型では勝手が違うしな」
苦笑混じりにそう答えていた。
「それはあいつらもわかっているから、明幸は叢雲の様子を見に行っている。紅神も二天龍の相手をしてる初代の下に向かった」
智鶴は萌莉が心配で、忍は初代に己の力のことを聞きに行ったようだ。
「それにしても…それがロストロギア指定のデバイスかぁ」
物珍しそうにペタペタと触るはやて。
「ここにはないが、双子座も冥界と天界が共同管理していると聞く。アレ以来、奴も静かだと聞くしな…」
グレイスは地球のどこかで冥界と天界が共同で監視しているらしい。
どこかは不明だが…。
「えっと…現在確認されているのが…忍君の水瓶座、智鶴さんの蠍座、神宮寺さんの射手座…」
「それとノヴァの山羊座、現世の神の双子座。黄道十二星座の内、五つだな」
「となると、まだ発見されてないのは…牡羊座、牡牛座、蟹座、獅子座、乙女座、天秤座、魚座の七つかぁ」
エクセンシェダーデバイスの打ち分けを話していた。
「改めて聞くと、多いですね…」
「まぁ、星座がモチーフならもっとあると思うけどなぁ…」
星座全体で数えるならばそれはそうだろうが、エクセンシェダーデバイスは黄道に属する十二の星座がモチーフになっている。
「それでもコアドライブの恩恵は凄まじい。それが敵にも渡っている以上、楽観は出来ん。はたして、どれだけこちら側に引き込めるか…」
射手座を手にしたことでわかったコアドライブの恩恵に紅牙はそう漏らしていた。
「一種の旗取り合戦やね」
「エクセンシェダーデバイスの捜索は特務隊でも行ってますが、今のところ目ぼしい情報はありませんね。それぞれのデバイスが必要とする選定条件も曖昧ですし」
「その辺はどうなんだ、サジタリアス」
紅牙が情報を求めてサジタリアスに尋ねる。
『ん~、残念ながら他の奴等の選定条件に関してはデータにないんだよね』
「そうですか…」
それを聞き、シルヴィアも表情を暗くする。
『俺達って基本的に単独で選定者を決めるからねぇ。その辺のデータ交流はないんだよね』
「…地道に探す他ないか」
結論としてはそうなってしまう。
「さて…お喋りはそこそこに俺も砲撃の訓練でもするか」
「砲撃の訓練?」
「こいつの固有魔法『サジットブラスター』は砲撃魔法の一種でな。十全に使いこなすには俺自身も砲撃魔法を色々と修得しとく必要があるらしい」
「へぇ~、そうなんや」
「あぁ…本当に厄介なものだ」
そう言って紅牙は空へと上がってしまう。
「…………」
それを見送った後…
「はやて?」
「うん?」
「神宮寺さんと何かあった?」
「いや、何もないけど?」
「そう?」
「うん」
そのような会話が親友間で行われていた。
………
……
…
こうしてそれぞれの修行は開始された。
しかし、全ての修行が順調と言われればそれは否だろう。
順調な者もいれば、からっきしという者もいるのは仕方ないのかもしれない。
そんな中、フェイトの示唆した通りのことが起きる。
第84管理世界『ストロラーベ』で、不可解な事件が発生してその捜査に向かうことになる。
そこでの出会いがまた波乱を呼ぶとも知らずに…。