魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第八十話『次なる舞台へ』

忍がミッドチルダに渡り、数ヵ月か経った頃のこと。

 

それが担任の口から告げられたのは朝のSHRであった。

 

「え~、突然ではあるが、ベニガミが転校することになった」

 

「「「「「えええええ!?」」」」」

 

クラスにも馴染んできた頃に転校とは忙しない事である。

 

そんな中…

 

「(聞いてねぇぞ…)」

 

当の本人である忍も何のことかわからないでいた。

 

「(また、あの大人共の仕業か?)」

 

忍の脳裏にはアザゼルとゼーラの姿が過ぎっていた。

というか、今回の件に関してはゼーラだけの気がしないでもないが…。

 

「急なことに先生も驚いているが、ベニガミはこの後学園長室に行ってくれ」

 

「わかりました」

 

出来るだけ平静を装いながら忍はそう答えていた。

 

………

……

 

・学園長室

 

コンコン…

 

「失礼します」

 

そう言って学園長室に入る忍を中で待っていたのは…

 

「来たか」

 

予想通りと言ったらいいのか、ゼーラであった。

学園長は席を外している。

 

「また、急な転校とか…今度は何処に飛ばそうってんだよ?」

 

学園長がいないのもあり、ゼーラに対してそのような口を利いてしまう。

 

「ストロラーベにある『フェイタル学園』だ」

 

そんな口調も気にせず、ゼーラはそう答えていた。

 

「ストロラーベ?」

 

「管理世界の一つだ。最近、そこで奇妙な事件が多発しているらしくてな。お前にはその調査を行ってもらうということだ」

 

「そのための転校だと?」

 

「そうだ」

 

真顔で肯定するゼーラにもう何も言い返すことが出来ないのか…。

 

「もうちょっとで地球に帰れるというのに…また面倒なことを…」

 

そんな愚痴を漏らす忍だった。

 

「そう悲観しなくても短期編入だ。三学期には地球に帰れるだろう。それまでに事件が解決すればの話だが…」

 

「お~い…」

 

つまり、積極的に事件に首を突っ込めと言ってるような物言いに忍は抗議の声を上げる。

 

「既に手続きは済ませてある。明後日には現地に入れるように準備しておけ」

 

「ホントに急だな…本人にすら連絡がないのはどうかと思ったぞ?」

 

ゼーラの用意周到さには今更文句を言っても仕方がないとしても、忍はそれくらいの愚痴を言ってもいい気がしていた。

 

「それに関しては悪いと思っている。が、それ以上に事態は緊迫しているかもしれんということだ」

 

「いったい、その世界で何が起きてんだよ?」

 

当然ながらそれほどの事態なのか、気になるところではあった。

 

「こちらで報告を受けた限りでは…不明、としか言いようがない。が、あるネットゲームが関わっている可能性があるらしい」

 

「ネットゲーム?」

 

「ストロラーベで流行っているというものだ。詳しい情報は向こうで集めろ」

 

「アンタも丸投げか?!」

 

ゼーラもアザゼルのようにほぼ丸投げ状態で忍を送り出そうとしていた。

 

「ともかく、現地での情報収集は基本だ。捜査には八神三佐やハラオウン執務官、神宮寺も協力するようになっている」

 

「話を逸らすな!」

 

「また、現地には有名な私立探偵とやらが住んでいるらしい。そいつと接触して事件の概要を探るのも視野に入れておけ」

 

忍の言葉を無視してゼーラは言葉を続ける。

 

「……………」

 

もはや反論することすら馬鹿らしくなり、忍は押し黙ってしまう。

 

「なお、ストロラーベでは魔法などの術式は物珍しくなるので、控えるようにしろ」

 

「要はあまり目立たないようにしろと…」

 

「そういうことだ」

 

「はぁ…了解しましたよ…」

 

これは何を言っても受け付けてもらえないと考え、忍は相槌(あいづち)を打つことにしていた。

 

「話は以上だ。良い報告を期待しているぞ」

 

「俺はアンタの正式な部下じゃないんだけどな…」

 

「何か言ったか?」

 

「いいえ、何も」

 

そのようなこともあり、忍はストロラーベへと赴くことになったのだった。

 

………

……

 

・翌々日

 

「ここがストロラーベか…」

 

忍はゼーラの要望通りに現地入りしていた。

 

格好はミッドチルダにやってきた時と同じく駒王学園やフィクシス魔法学園の制服ではなく、赤を基調にしたブレザーに黒のスラックスという出で立ちで、傍らには大型のスーツケース二つを後部タイヤの左右に挟み込むように縛り付けたアステリアがある。

 

「(地球にどことなく似てるが、地球よりも近未来っぽい雰囲気なんだな…)」

 

そんなことを思いながら町の空気を確認する。

 

「(それにしても…)」

 

次元航行便の発着場は首都にしかなく、便の数もそれほど多くはないため、使う人は例外なく珍しがられる。

忍もその例に漏れず、さらに学生服且つバイクの隣に立っているためにかなり目立っていた。

 

「(目立つなと言われても、これは仕方ないと思うんだが…)」

 

ともかく、これ以上目立つ前にその場から移動することにした。

 

「(確か、フェイトや紅牙もこっちに来る予定なんだよな)」

 

そんなことを考えて移動している途中…。

 

「(ゲーセンか?)」

 

近場にあったのだろう、それなりに大きなゲームセンターが目に飛び込んできた。

 

「(あまり地球と変わりないな…)」

 

そんな印象を抱いていると、あるポスターに目が行く。

 

「ぱ、PANZER(パンツァー) DRIVE(ドライブ)』?」

 

そのポスターには宣伝文句なのだろう、でかでかと『君の意識を電脳世界にDrive-in!』と書かれていた。

 

「電脳世界…?」

 

ストロラーベに来たばかりということもあり、どういう意味なのか全く分かっていない様子だった。

 

「(全く訳が分からん…)」

 

頭に?を浮かべながらも気になったので、忍は調べることにした。

ゲームセンターの駐車場にアステリアを停め、結界霊術でスーツケースを保護した後にゲーセン内へと入っていく。

 

「(中は意外と普通なんだな…)」

 

何処の世界でもゲーセンとは似たような造りなのか、と思いながら少し散策してみる。

 

「(クレジットは既にこの世界のモノに変換してるし、少しだけなら遊んでもいいか…)」

 

そんな軽い気持ちで適当なゲームを探す。

 

「(しかし、どれもハイテクっぽいよな。やっぱ、地球のやつとは質が違うのかね?)」

 

忍が見たのは、キャラが美麗な立体映像となって戦っている格ゲー、知らない楽曲によるリズムゲームとダンスゲームが組み合わさったようなモノ、クレーンゲームらしきモノ等など…初見では操作性が問われそうなモノが多い気がしないでもなかった。

 

「(無難なモノにするか…)」

 

そう思ってガンシューティングゲームがあるゲーセンの一角に入る。

 

「へぇ…」

 

目の前に広がる光景を見て思わず声を漏らす忍。

そこには立体映像の敵を銃で倒していくタイプやターゲットマーカーを撃っていくタイプ、対戦形式のタイプなどそれなりに充実してるように見えた。

 

「じゃあ、人気のありそうなやつでもやりますか」

 

そう呟きながら『最新作』という看板があるガンシューティングゲームへと向かう。

 

「(えっと…やり方は地球のと似た感じか。違いがあるとすれば、四方に画面があって立体映像の敵が迫ってくること、敵の攻撃を回避することが出来るくらいだな)」

 

モデルガンを持ちながらゲームの概要を探るように確かめる。

その様子は上京したての田舎者みたいな目で見られているが、忍は一向に気にしていない。

 

「(スコアは……って、凄いな。ほぼ2人で競ってる感じだぞ…)」

 

最新作と言ってるわりに『Y.A』と『ミーシャ』という名前が交互に上位を独占していた。

現在の一位は『Y.A』だったが…。

 

「(ゲーム内容は…どれだけの敵を撃ち倒せるかというシンプルなものか。でも説明文やスコアからして特に上限は設定されてないっぽいんだよな…)」

 

ゲームの説明文を読み、スコアが最近も更新されているのを見て分析した結果、忍はそう判断する。

 

「(敵を撃破する度にポイントが加算されていく感じか。それとゲームオーバー条件は…敵の攻撃を三回受けた場合に終了するか…)」

 

少しだけひらけているとは言え、激しい行動は取れず、出来ても体を逸らしたりしゃがんだりといった最小限の動きだけだろう。

その上で四方に目を向けながら敵を撃ち倒すのだからそこそこ高い難易度と言ってもいいだろう。

 

「(さて、じゃあ…やってみますか…)」

 

クレジットを支払い、ゲームが開始される。

 

「(それにしても…やっぱり軽いな…)」

 

ゲーム用のモデルガンの軽さに忍は少し違和感を覚えるが…

 

「(まぁ、やれないこともないか…)」

 

違和感を気にしつつも目の前に現れた敵(ゾンビとエイリアンを足して二で割ったみたいな感じ)に向かって容赦なく弾丸を撃ち込む。

 

「(だいたい3発で倒せる感じか)」

 

3発撃ち込んだ結果を見てそう判断した忍は…

 

「………………」

 

しばし、無言で四方に気を張ってゲームに集中していた。

ちなみにモデルガンの装弾数は12発で、マガジンを途中まで取り出し、再装填することでリロードが出来るようになっている。

 

「(単純計算で一度のリロードで倒せるのは4体。一度に出現する数も次第に多くなっていく。回避とリロードの速度が鍵か?)」

 

冷静に分析しながら敵の攻撃を回避してリロードを行う。

 

「(出現パターンに規則性は無し。ランダムに次々と出てくるか…)」

 

そんなことを考えていると…

 

「ちっ…」

 

背後からきた敵の攻撃を受け、忍は舌打ちする。

 

「(あと二回の被弾でゲームオーバーか)」

 

忍の闘争心に火が付く。

 

「(たかがゲームとは言え、被弾したのは面白くないな…!)」

 

立体映像故に気配や匂いを感知出来ないが、それでも視界を最大限に活かしてのゲーム攻略を始める。

 

 

 

数分後。

 

「こんなもんか…」

 

画面にゲームオーバーと表示されたが、忍自身は妙に納得した様子であった。

 

「(縦横無尽に動ければもう少しスコアを伸ばせたが、流石にそれは無理な話か…)」

 

さらにゲームオーバーの表示が消えると、スコア更新という表示が出てくる。

 

「(ま、これは適当に…)」

 

スコアは一位を僅差で取った感じで、『S.B』というイニシャルを撃ち抜いていた。

 

「(さてと…って)」

 

その場を後にしようとした時だった。

 

「(滅茶苦茶ギャラリーが集まってる…!?)」

 

周りの視線や匂いを気にしてなかった故、ギャラリーが集まっていたのに気付かなかったようだ。

 

「(やべぇ…また、目立ってしまった…)」

 

一先ず、その場から離れるようにモデルガンを置くと、そそくさと歩き出してしまう。

 

「(まさか、アレだけのことで注目を浴びてしまうとは…軽く見た限り、似たような制服を着てる奴もいたし…これはまた厄介なことになるかもしれん…)」

 

ゼーラから出来るだけ目立つなとは言われているものの、忍は外見で言えばイケメンに分類される容姿に成長してしまったし、瞳も今では珍しいオッドアイ、背もそこそこ高く、多くの戦闘を経験したことによって筋肉もそれなりに付いてる。

その上、一度経験したことは覚えてるし、成績は上位に食い込む勢い、それらの身体的特徴や能力を鼻に掛けたりせず、今では正義感もそこそこ強く、男女の対応には分け隔てない。

 

こうして改めて見ると、かなりの好青年に見えるが、本人にその自覚はない。

 

「(ともかく、PANZER DRIVEとやらの情報を集めないと…)」

 

ガンシューティングで忘れていたが、忍がこのゲーセンに寄った一番の理由はPANZER DRIVEのことを調べることであった。

 

「(というか、何処にあるんだ?)」

 

ゲーセンの案内板を探していると…

 

「なぁなぁ、いいだろ?」

 

「こ、困ります…」

 

「ちょっとだけでいいからさ、俺達と遊ぼうよ。な?」

 

何処の世界でも同じような光景を目撃するものである。

いかにもチャラそうな男2人が困っている様子の少女をナンパしているのだ。

 

「(ああいう輩の"遊ぶ"ってのは大抵の場合、"遊ぶ"だけじゃ済まないからな…)」

 

その様子を偶然にも目撃してしまった忍は、ナンパされてる少女の所へと歩いていくと…

 

「すまない。待たせたかな?」

 

自然な風を装って少女に語り掛ける。

 

「ふぇ…?」

 

少女は忍の登場に間の抜けた声を漏らしてしまう。

ちなみに少女の容姿は腰まで伸ばしたストレートの白銀色の髪と紫色の瞳を持ち、幼さの残る綺麗な顔立ちに発育の良いスタイルをしており、頭には黒いカチューシャを着けている。

また、服装は赤を基調にしたブレザーに縁に白いラインの入った黒いミニスカートという出で立ちだった。

 

「あぁ? なんだ、テメェは?」

 

忍の登場にチャラ男Aが不機嫌な声を上げる。

 

「なにって、彼女の連れさ。少しの間、席を外しただけで絡まれるとは思わなくてね」

 

即席の嘘をよくもまぁペラペラと語れるな…。

 

「ちっ…連れがいたのかよ!」

 

「あ~あ、なんか白けたぜ…」

 

そう言ってチャラ男AとBはその場から立ち去ろうとする。

 

「…………」

 

チャラ男の姿が完全になくなるのを待ってから…

 

「ごめんね。驚かせちゃって…」

 

忍は少女に謝っていた。

 

「ぁ、いえ…こちらもおかげで助かりました。ありがとうございます」

 

少女の方も忍にお礼を言っていた。

 

「気にしないで。ああいうのは同じ男として見るに堪えないからね。それじゃあ、俺はこれで…気をつけるんだよ」

 

そう言い残して忍はその場から立ち去ってしまう。

 

「あ…」

 

何か言いたそうな少女を残して…。

 

 

 

しばらくして案内板を見つけた忍は二階から上に『PANZER DRIVE』に関する施設がある事を知る。

 

「(まさか、個室を完備しているとは…ますますわからないぞ、PANZER DRIVE)」

 

そこでふと先程のことを思い出す。

 

「(あの娘の匂い…初めて会ったはずなのにどこか懐かしい匂いがしたな。それに…この世界じゃかなり珍しいだろう"四つの力(魔・気・霊・妖)"の匂いもしたが…あの様子じゃ使った経験が無いんだろうな…)」

 

少女から漂ってきた不思議な匂いに忍は少しだけ懐かしさを感じていた。

 

「(とりあえず、今日はPANZER DRIVEに関するパンフレットでも持ち帰って、ネットとかで詳細を調べるとするか…)」

 

そう決めた忍は、ゲーセンの受付でPANZER DRIVEのパンフレットを貰うと、ゲーセンから出た。

 

「(PANZER DRIVE。通称『パンドラ』。第三のネット『パンドラネットワーク』という電脳世界で行われている意識と感覚をネット内に移すことで日常では味わえない剣と銃と魔法などを体感することが出来る登録制のネットゲーム、か)」

 

アステリアに寄り掛かりながらパンフレットの中身をサラッと黙読する。

 

「(もしかして、今回の事件とやらに関係してるネットゲームって…これなのか?)」

 

ゼーラから聞いた話を思い出しながらそんなことを頭の中で考える。

 

「とりあえず、今回の拠点に向かうか」

 

アステリアに跨るとネクサスのナビに従って指定されたマンションへと走る。

 

………

……

 

その翌日。

 

「今日から短い間ですが、こちらに編入させてもらいます。紅神 忍です。よろしく」

 

忍は予定通り、フェイタル学園に短期編入という形で潜入していた。

 

「イケメンは死ね!」

「きゃああ♪ 格好いい!」

「あ、昨日ゲーセンにいた…!」

 

クラスからの反応は概ねフィクシス魔法学園と同じようなものだった。

 

「はいはい、あまり騒ぐな。次の時間は幸いにも俺の授業だから特別に編入生への質問を許可してやるから…」

 

担任がそう言ってクラスに対して制止を掛ける。

 

「(また質問攻めかな…)」

 

そんなことを思いながら忍は空いている席に移動し、隣の生徒に挨拶する。

 

「短い間だけど、よろしく」

 

「あ、はい。よろしくお願いします。紅神さん」

 

隣の席の生徒は…ミディアムくらいの長さの金色に近い茶髪で全体的な線は細く華奢な印象の体型の少年だった。

前髪が目元を隠すくらい長いので顔立ちや瞳はわかりづらいが、制服は男子のものなので少年と判断した。

 

「あぁ、えっと…」

 

「僕はユウマって言います。天崎(あまがさき) ユウマ」

 

「ユウマか。俺の事も忍でいいぞ?」

 

「じゃあ、忍さんで…」

 

「(さん付けもしなくていいんだがな…)」

 

ユウマと名乗った少年の真面目さに苦笑しながら忍は質問攻めに対する気構えをしていた。

 

 

 

そして…

 

「何処から来たの?」

「なんでこっちに来たの?」

「パンドラ、やってる?」

「彼女とかいるの?」

 

何というか…デジャヴである。

 

「ミッドチルダの方から来た」

「ちょっとした家の用事でね」

「いや、こっちには来たばかりだからやってない…というよりもわからないのが正直なところかな」

「彼女ならいるよ。将来を誓い合っててね」

 

忍は苦笑しつつも一つ一つの質問に返していく。

彼女がいると言った時の女子の反応は"ええ~"と残念そうでフィクシス魔法学園でも見た光景だった。

 

「パンドラ、知らないなら私達が教えてあげるから!」

 

しかし、女子とは強かなものでパンドラを口実に忍に接近しようとしていた。

 

「ていうか、ミッドチルダから来たってことは、魔法とか使えるの?」

 

その他、魔法にも関心を持っているようだった。

 

「いや、俺は魔力が乏しくてね。人様に見せれるような魔法とかは…ちょっと持ってなくてね」

 

「な~んだ、残念…」

 

「悪いね」

 

とは言え、どちらかと言えば戦闘では頻繁に使ってるのだが…平和な日常に水を差す訳にもいかないので黙っておく必要があった。

 

「しかし、パンドラか。ちょっと興味はあるんだよな…」

 

実際のところ、事件に関係している可能性が高いため、情報は多いに越したことはないという判断だろう。

 

「(だが、事件の詳細もわからない以上、下手に潜り込んでもな…)」

 

そう、肝心の事件に関する情報は皆無だったりする。

 

「(私立探偵だったか…そこに行ってみるしかなさそうだな…)」

 

そう思い…

 

「そういえば、こっちに来る時に聞いたんだが、ここには有名な私立探偵がいるとか…」

 

忍は思い切って周りにいる女子達に尋ねていた。

 

「探偵って…あぁ、あの"雪白"探偵さん」

 

「(雪白?)」

 

思わぬ名字に忍は内心首を傾げる。

 

「なに、忍君って探偵にも興味あるの?」

 

「あ、あぁ…パンドラの次くらいにはね」

 

そう誤魔化すと…

 

「だったら"ユウマちゃん"に聞いてみなよ」

 

「ユウマ、ちゃん…?」

 

「忍君の隣の席に座ってる子だよ」

 

「ユウマに?」

 

「うん。確か、雪白探偵って娘さんがいてね。その娘とユウマちゃん、幼馴染みのはずだよ」

 

思わぬ情報を入手したところで…

 

「そうなのか。ところで、なんでちゃん付け?」

 

さっきから気になってた疑問を口にする。

 

「えっとね」

 

そう言っておもむろに1人の女子がユウマの背後に回ると…

 

「こういうことだから♪」

 

いきなりユウマの前髪をオールバック状に掻き揚げてみせた。

 

「ひゃっ!?」

 

まるで女の子の悲鳴みたいな声を上げるユウマ。

と、前髪で隠れてた顔が見えた。

ユウマの顔立ちはまるで女の子みたいに可愛らしく、瞳はブラウンだったりする。

 

「ぁ、ぁぅ…///」

 

当の本人は恥ずかしそうに机に突っ伏す。

 

「もう、相変わらずユウマちゃんは可愛いなぁ~」

 

「………なるほど」

 

少しだけ反応が遅れたが、忍は納得したようだった。

 

「じゃあ、悪いがユウマ。その私立探偵の所に案内してくれるか? ついでにパンドラのことも教えてくれると助かる」

 

「ぼ、僕でよければ…いいよ…////」

 

忍はちゃっかりユウマにパンドラを教えてもらうようにも頼んでいた。

 

 

こうして忍は当初の予定通り(かは不明だが…)、事件の概要を知るために私立探偵の元へと赴くことになった。

しかし、この時…あんなことになるとは誰も思わなかったし、知る由もなかった。

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