魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第三話『悪魔と狼と神器』

~アースラ・医療室~

 

「んぅ…あ、あれ…?」

 

忍が目を覚ますとそこには見知らぬ天井があった。

 

「ここは…何処…?」

 

上体だけを起こして周りを見ると、見たこともない壁や設備があって困惑する一方だった。

 

と、そこへ…

 

ウィン…

 

「あ、起きてたんだ」

 

忍を助けた金髪少女…フェイトが先程とは違う服装(執行官の制服)で現れた。

 

「え、えっと…あなたは…?」

 

忍はおっかなびっくりしつつも警戒しながらフェイトに尋ねる。

 

「私はフェイト・T・ハラオウン。あなたのお名前は?」

 

フェイトは忍の目線に合わせて自己紹介すると忍の名前を聞く。

 

「ぼ、僕は紅神 忍、です。えっと…こ、ここは…?」

 

「ここは…ちょっと言いにくいけれど、次元航行艦『アースラ』の医療室だよ」

 

「次元、航行艦…?」

 

初めて聞く単語に忍も首を傾げる。

 

「うん。多次元世界って言ってね。地球のある次元の他にも色々な次元があってそこに色んな世界が広がってるの。私が所属してる時空管理局はその監視、管理をしているの。中にはそういったことを嫌う世界もあるんだけど…そこは協力体制をまだ取れてない感じかな? いつかそういう世界とも交流が出来るといいんだけど…」

 

フェイトは管理局のことを簡単に説明していた。

 

「……………」

 

当の忍はいきなりのことに思考がちょっと追いつけていなかった。

 

「あ、ごめんね。小さい子にこんな難しい話をしてもまだわからないよね」

 

今更ながら小さな子に何を話しているんだろうとフェイトは反省していたが…

 

「わぅ…」

 

忍は"小さい子"という単語に泣きそうになっていた。

 

「え?! ど、どうしたの?」

 

フェイトは何かしたかと慌てる。

 

「僕、背は小さいけど、そこまで小さくないです…」

 

忍は小さな声でそう言っていた。

 

「え、だってまだ高学年くらいじゃ…?」

 

それを聞いた後…

 

「僕は…もう16歳ですけど…」

 

忍はハッキリとそう言った。

 

「え…?」

 

フェイトもまさか同い年くらいだとは思っていなかったのか、固まってしまう…。

 

「わぅ…」

 

「ご、ごめんね」

 

今にも泣きそうな忍に謝るフェイト。

 

「い、いいんです……よく言われますから…」

 

「そ、それは…」

 

そこからしばらく何とも言えない沈黙がその場を支配した。

 

「あ、そうだ。もう一つ大事な話があったんだ」

 

思い出したようにフェイトはもう一つの大事な話を思い出す。

 

「大事な話?」

 

「うん。忍君には…リンカーコア。簡単に言うと大気中に漂う魔力素っていう微細なエネルギーを蓄える魔法機関ってものがあることがわかりました」

 

「魔法機関…リンカーコア…?」

 

「そう。忍君は魔法が使えるの」

 

「魔法って…あの不思議な?」

 

「まぁ、一般的な解釈だとそうかな? さっき言ったリンカーコアで蓄えた魔力を使うことで発動するものを魔法っていうんだよ。けど、使うには訓練も欠かせないから…」

 

「そ、そうなんですか…」

 

そこまで聞くと、忍は不意に昨夜のことを思い出していた。

 

「(じゃあ、アレも魔法? でも、なんだか違うような…)」

 

銀狼と化して戦った記憶が今になって鮮明に思い出されてきたのだ。

 

「(それにしても…なんだか力に振り回されただけの気もする…)」

 

実際、忍は初めての変身とイッセーを助けられなかった怒りで戦っていた節があり、とても冷静だったとは言い難かった。

 

「あ!」

 

そこで大切なことも思い出した。

 

イッセーだ。

あのまま姿も見ずにカーネリアと呼ばれた堕天使を追い回した挙句、結局は逃げられたのだから…。

イッセーの遺体があのまま誰かに見つかったら大騒ぎになる。

 

「フェイトさん! ぼ、僕を地球に帰してください!」

 

「え? けど、忍君はまだ動ける体じゃ…」

 

「急いでるんです! 友達を、助けないと…」

 

そう言って忍は真剣な眼差しでフェイトを見る。

 

「……わかった。もしも魔法関係で何かあったらここに連絡してね」

 

そう言うとフェイトは手帳に自分の連絡先を書くと、それを忍に渡した。

 

「あ、ありがとうございます」

 

そうして、忍は地球へと戻ることとなった。

 

この後、とても大変な事になるとも知らずに……。

 

………

……

 

~地球・駒王町(早朝5時頃)~

 

「あ、あれ?」

 

駒王町へと戻ってきた忍だが、一つの違和感に気づく。

 

「(なんだろう…いろんな匂いが…)」

 

嗅覚が少し鋭くなっていた。

 

「(それになんだろう…空気が重く感じるような…)」

 

そう考えていると…

 

「あ! 忍坊ちゃん!!」

 

強面の兄ちゃんが3人ほど忍の元へと走ってきたのだ。

 

「あ、み、皆さん。お、おはようございます」

 

忍はその3人の事をよく知っていた。

居候先でよく見る3人だからだ。

ちなみに名前は右から剛田(グラサン+黒スーツ)、津軽(金髪+白スーツ)、狩谷(スキンヘッド+グレーのスーツ)である。

 

「「「おはようごぜぇあす!!」」」

 

挨拶されたからか3人も気前よく挨拶を返したが…

 

「(やっぱり慣れないよぉ~…)」

 

強面だから怖さを感じて忍は怯えてしまう。

 

「って、挨拶してる場合じゃなかった!」

「そ、そうだった!」

「坊ちゃん! お嬢が!!」

 

それを聞いて…

 

「え?! ちぃ姉がどうかしたの!?」

 

忍の顔色もすぐさま変わった。

 

「へい! 坊ちゃんが帰ってこないと心配なされてて…」

「抜身の刀、引っ下げて右往左往!」

「そして、朝にも帰ってこないから一睡もせず…」

 

「えぇ!?」

 

3人の言葉に忍は動揺を隠せないでいた。

 

「そんなお嬢の姿を見て俺達も命の危機を感じまして…」

「組員騒動で昨日からずっと坊ちゃんを捜してたんですが…」

「一体どこにおったんですか?」

 

そう言って3人は忍に詰め寄った。

 

「え、えっと…それは…」

 

帰り際、フェイトに管理局や魔法の事は口外しないように言われていたので困っていた。

 

「いや、今は無事が確認できただけでも良いです!」

「そうだな! 坊ちゃんも男。隠し事の一つや二つあっても仕方ないですわ」

「今はとにかくお嬢の元へ!」

 

しかし、3人組はそう言うと忍を抱えて全速力で明幸の屋敷へと向かったのだった。

 

「わ、わぅ~…!?」

 

忍はただただ叫ぶだけだった。

 

………

……

 

~明幸組~

 

3人組の活躍(?)によって忍は明幸家へと戻ってきた。

そして、早々に智鶴の部屋の前へと連れてこられた。

 

「(わぅ…ちぃ姉になんて言おう…)」

 

忍は忍でかなり困っていた。

昨日のことを正直に話すべきなのかどうなのか…。

 

「お嬢! 坊ちゃんを見つけてきました!」

「だから開けてくだせぇ!」

「ほら、坊ちゃんからも何か一言」

 

部屋の前で3人組が叫ぶが反応はない。

 

「ち、ちぃ姉…お、遅くなって…ごめ…」

 

そして、忍が言葉を発した瞬間…

 

バッ!!

 

「しぃ君!!!」

 

智鶴が勢いよく忍へと抱きついた。

一体コンマ何秒の間に忍に抱き着いたのだろうか?

 

「わぅ…!?」

 

まさかの抱き着きに縁側から庭へと落ちてしまう。

 

「「「お嬢!? 坊ちゃん!?」」」

 

3人組は慌てて庭を覗き込むと…

 

「しぃ君!しぃ君!しぃ君!しぃ君!」

 

泣きながら忍に頬擦りをしていた。

 

「わぅ…く、苦しいよ、ちぃ姉ぇ…」

 

もう放すまいとしているような智鶴の締め付けに忍はホントに苦しそうだった。

 

「お嬢も元気になったし、坊ちゃんも見つかったしな」

「ふぅ…これで一件落着だな」

「よかったよかった」

 

その様子を見て笑う3人組であった…。

これでいいのか?

 

………

……

 

なんやかんやあったものの、忍と智鶴は無事登校していた。

但し、忍は事情を話せずじまいであり、心配掛けた罰として智鶴と一緒の時は可能な限り抱き着くor手を繋ぐことを要求されてしまっていた。

 

「~♪」

 

智鶴は上機嫌だが…

 

「わぅ…(は、恥ずかしいよぉ~)」

 

忍は忍でかなり恥ずかしそうであった。

 

そして、学年が違うために一度は別れて忍は自分の教室に足を運ぶのであった。

 

「はぁ…(イッセー君の机に花瓶があったらどうしよう…)」

 

それが一番の心配ごとだった…。

しかし、それは杞憂に終わる。

 

「だからさ。夕麻ちゃんだって」

 

「だから誰だよ?」

 

「お前の妄想の中の彼女じゃないのか?」

 

教室に入ると、イッセー達変態三人組が何やら話していたからだ。

 

「イッセー君!?」

 

その元気な姿に思わず忍も大声で叫んでしまった。

 

「お、忍だ」

 

「どうした、そんな大声出して?」

 

「え、いや、そ、その…」

 

松田と元浜の問いに忍もどう説明したらいいのか迷っていた。

 

「忍、ちょっと来てくれ!」

 

「え? イッセー君!?」

 

イッセーは忍の姿を確認すると、忍を連れて教室から出た。

 

「どうしたんだ、あいつら?」

 

「さぁ?」

 

置いてけぼりをくらったマツダと元浜は首を傾げるだけであった。

 

 

 

忍を連れてイッセーは体育館裏までやってきた。

 

「忍! お前なら覚えてるだろ? 夕麻ちゃんのこと」

 

そして、イッセーは開口一番でそう聞いてきた。

 

「え? それって…昨日の…?」

 

忍には昨日のレイナーレと呼ばれた少女が思い浮かんだ。

 

「そう! それだよ! やっぱ、アレは夢じゃ…」

 

「ちょ、ちょっと待って! でも、イッセー君…あの時、刺されて…血が…」

 

「そ、それは……そういうお前こそあの姿はなんだったんだよ?」

 

「えっと…それは…その…」

 

互いに質問し合い、互いに痛いとこを突かれる形で言葉が続かなくなってしまった。

 

「「……………」」

 

これまた痛い沈黙が襲う。

 

「(あれ? でも…なんだか、昨日のイッセー君と匂いが違う…?)」

 

鋭くなった嗅覚でイッセーの異変に気付くが…それが具体的に何なのかまではわからなかった。

 

「じゃあ、俺は本当に夕麻ちゃんに…」

 

「(あのカーネリアって人なら何か知ってるのかも…)」

 

イッセーは未だ信じられないような表情をし、忍は忍で考え事をしていた。

 

リーンゴーン、リーンゴーン

 

そうしている内に予鈴が響き渡る。

 

「とにかく…授業に行くか」

 

「う、うん…」

 

2人は教室に戻るのだった。

 

………

……

 

~放課後~

 

その日の放課後のこと。

 

イッセーは忍と共に昨日の公園にやってきていた。

……当然、と言っていいのか智鶴も一緒である。

 

「忍、なんで明幸先輩が一緒なんだよ?」

 

「ご、ごめん…昨日のこともあるから絶対に離れたくないって…」

 

イッセーは忍に苦言を呈すが…

 

「兵藤君。何か問題でも?」

 

智鶴のニコニコ顔の後ろにある怖さに…

 

「いえ、ありません!」

 

即答していた。

 

「ところで…どうしてこの公園に来たんですか?」

 

「そ、それは…ちょっと言いにくくて…」

 

まさか、ここでイッセーが刺されたなどと言えるわけもなく、さらに言えば忍が変身したとも言えないので困ってしまっていた。

 

「しぃ君が…私に隠し事…?」

 

その言葉に智鶴はショックを受けていた。

 

「い、いや、あの…そういうことじゃなくて…」

 

あわあわと忍が困っている。

その横でイッセーは苦笑していた。

 

すると…

 

ブォン…!

 

周囲の風景が一変して別空間のようになる。

 

「これはこれは…珍しい客人だ。悪魔一匹に…人ならざる者が一匹、そして人間が一匹とは…」

 

そこにロングコートを着込み、帽子を深く被った男が現れた。

 

「悪魔? 何のことだよ!」

 

イッセーは何のことかよくわからず、男に叫び…

 

「(人ならざる…僕の事…)」

 

忍は自分のことだと悟り…

 

「あなた、堅気の人間…いえ、"人ですら"ありませんね?」

 

智鶴は忍の前に立つと男を睨みつける。

 

「そういう人間からも悪魔の匂いが…いや、正確には悪魔の側にいる人間か」

 

「(ちぃ姉が…悪魔? それってどういう…)」

 

その言葉を聞いて忍は智鶴の背を見詰める。

 

「まぁ、どちらにせよ。悪魔がのこのこと我らの領分に入ったのだ。狩らせてもらおう」

 

そう言うと男は青い光の槍を出現させた。

 

「(あれは…!)」

 

昨日、カーネリアとの戦闘で何度も見た(色は違うが)光の槍と同じものだった。

 

「な、なんだってんだよ!」

 

「死ね!」

 

男がイッセーを襲おうとした瞬間…

 

「銀狼、解禁!」

 

忍は髪が白銀、瞳が真紅に変わり、頭と臀部から髪と同色の毛並みをした狼の耳と尻尾が生えた姿…銀狼となる。

 

「(昨日よりも意識はしっかり保ててる。これなら…!)」

 

カーネリア戦では激情のまま戦っていたが、二回目ともなると多少は慣れるらしい。

 

ギンッ!

 

「忍!?」

 

「しぃ君!?」

 

一瞬の内に忍が前に出て男の光の槍を魔力で形成した光の槍で防いでいた。

 

「貴様! 一体何者だ!?」

 

「そ、それは…ぼ、僕も知りたいです…」

 

忍と男が鍔迫り合いのような形で槍を交えていると…

 

「そこまでよ!」

 

突然、誰かがそう言ってきた。

 

「「っ!?」」

 

忍と男は驚き、男の方は後ろへと飛び退いた。

 

「この街は私の縄張りなの。あまり変ね事はしないでほしいわね」

 

そこにいたのは…

 

「リアスちゃん!」

 

「御機嫌よう、智鶴」

 

駒王学園三大お姉さまの一角、リアス・グレモリーだった。

 

「紅い髪…そうか、貴様はグレモリー家の…」

 

「初めまして、堕天使さん。私の名前はリアス・グレモリー。さっきも言ったけれど、この街は私の縄張りなのよ。だから、あまり悪さをしてもらっては困るのよ」

 

忍とイッセーは突然のことに困惑の表情を浮かべていたが、智鶴だけは困ったような表情を浮かべていた。

 

「そこの悪魔小僧も貴様の下僕か?」

 

男は槍の切っ先をイッセーに向けて問う。

 

「えぇ、私の可愛い下僕よ」

 

それに即答するリアス。

 

「ならば放し飼いにしないことだ。私のような堕天使がいつ狩るとも限らんしな」

 

「それにしては邪魔されたようだけどね」

 

「忌々しいことだがな…」

 

そう言うと男は槍の切っ先を忍に向け…

 

「我が名はドーナシーク。貴様の名は?」

 

忍の名を聞く。

 

「紅神…忍…です」

 

律儀にも丁寧な口調で名乗り返す忍だった。

 

「紅神 忍…。その名、覚えておくぞ」

 

それを最後に男…ドーナシークは姿を消してしまった。

 

「さてと…色々話さないといけないわね」

 

リアスはそう言うが…

 

「しぃ君、可愛い~」

 

「わ、わぅ…」

 

忍は銀狼のまま智鶴に捕まっていた。

 

「智鶴。ちゃんとその子に話しなさいよ」

 

呆れたような口調でリアスは智鶴に言う。

 

「…わかってる。しぃ君も話してね?」

 

真剣な口調でそう返すと、忍にもちゃんと話してほしいと伝える。

 

「う、うん…(それでもフェイトさんの…管理局の事は伏せておこう…)」

 

忍も忍で自分の身に何が起きたかは説明する気らしい。

 

「一体何がどうなってんだよ…」

 

もはやイッセーは頭の中がこんがらがっていた。

 

………

……

 

~明幸家・客間~

 

あれから場所を明幸家に移し、話を行うことになっていた。

 

「あ、明幸先輩の家が…ご、極道って噂…本当だったんだな…」

 

イッセーは初めて見る極道に戦々恐々としていた。

 

「えぇ、それが何か?」

 

しかし、当の智鶴は全く気にしていなかった。

 

「てか、忍…お前、ここに居候してんだっけ?」

 

「う、うん…だからもう慣れた…のかな? ちょっとまだ恐いけど…」

 

「それ、慣れたっていうのか?」

 

イッセーとしては友達がいるってだけで何とか平静を装っているが、内心では心臓バクバクである。

 

「智鶴、人払いは大丈夫?」

 

「大丈夫。聞き耳立てるような人がいたら…」

 

そんなリアスと智鶴の会話に…

 

「(こ、怖ぇぇ!!)」

 

「(人の匂いは…ないから平気、かな。けど、硝煙の匂いがして気持ち悪いかも…)」

 

イッセーは怖がり、忍は慣れていたのか周囲の気配を匂いで探って確認していた。

 

「さて、何から話しましょうか?」

 

リアスは出されたお茶を一口飲んでから話題を切り出す。

 

「あの…悪魔って一体どういう…」

 

イッセーが今最も聞きたいことを口にする。

 

「文字通り…いえ、言葉通りの意味よ。悪魔は大昔から存在しているし、その存在は色んな神話や伝承でも登場しているでしょ?」

 

「(けど、それってファンタジーの中の話じゃ…)」

 

「信じられない? でも悪魔は存在している。こんな風にね」

 

バサッ!

 

そう言うと、リアスは背中から黒い蝙蝠のような翼を出して見せた。

 

「えぇ!?」

 

「あなたにも出せるはずよ。まぁ、まだ悪魔になったばかりだからコツがわからないかもしれないけど」

 

驚くイッセーを尻目にリアスは悪魔の翼を引っ込めた。

 

「さっきの男は堕天使。元は神に仕える天使だったけど欲に駆られて堕ちた天使ね。悪魔と堕天使…それに神に仕える天使…それが大昔から三つ巴の争いをしているの」

 

リアスがそう話を続けると…

 

「具体的には悪魔は人間と契約して対価を支払い、天使は人間の信仰を集め、堕天使は人間を操って悪魔を討滅するように仕向けるんですって」

 

智鶴が補足するように付け加えた。

 

「なんでちぃ姉がそんなことを知ってるの?」

 

当然の疑問を智鶴にぶつけた。

 

「だって…家もそれなりに古いでしょ? それでご先祖様の誰かが悪魔と契約したらしいの。その縁で互いの領分を侵さない代わりにこっちも表沙汰に出来ないような案件を悪魔が処理してくれたり、それ相応の対価をこっちが払うようにしているの。あ、もちろんリアスちゃんの領土であるのには変わりないし、私たちはその島を貸してもらってるような感じなの」

 

意外な関係性だった。

 

「利害の一致よね」

 

リアスの言葉に智鶴もうんうんと頷いていた。

 

「し、知らなかった…」

 

「ごめんね、しぃ君。でもこれは組の中でも代々の組長とその身内にしか知らせちゃダメなことなの。私もこのことを知ったのはリアスちゃんと最初に出会った頃だから…」

 

「そ、そうだったんだ…」

 

知らなかった事実を知り、忍も困惑してきた。

 

「あ…じゃあ、昨日イッセー君が刺されたことは?」

 

「忍!?」

 

忍の疑問にリアスが答える。

 

「アレはね。この子の中に神器(セイクリッド・ギア)があったから、それを狙われたんでしょうね」

 

「神器?」

 

「歴史上の偉人達が持っていたとされる規格外の力。特定の人間にしか宿らない力なの。大半の神器は人間社会の中でしか効力を発揮しない物が多いけど…中には私達悪魔や堕天使みたいな人間以外の存在に対して大きな力を発揮するものがあるの」

 

真剣な眼差しで話すリアス。

 

「そんな力が、俺に…?」

 

「そう。そして、その力を危険視されたが故に天野 夕麻にあなたは狙われ…一度殺されたの」

 

「じゃあ、やっぱり昨日のは…」

 

忍は昨日のイッセーの姿を思い出していた。

 

「えぇ…」

 

リアスは頷いてみせた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 俺が殺されたって、こうして生きてますし!」

 

「そ、そうですよ。誰かがイッセー君を病院に運んだとか…」

 

イッセーの言葉に忍も可能性を話したが…

 

「それはあり得ないわ。あの傷は完全な致命傷だったもの」

 

リアスはそれを真っ向から否定した。

 

「あの時、あなたは私を呼んだの。そして、悪魔へと転生したの」

 

「俺が…?」

 

「そうよ。この魔法陣でね」

 

そう言って見せたのは一枚のチラシ。

そこには魔法陣が描かれていた。

 

「これって…確か」

 

イッセーはデート前にチラシを貰ったようなことを思い出した。

 

「あなたの強い願いが私を召還したのでしょうね。普段なら別の眷属の子達の誰かが呼ばれるんだけど…」

 

「悪魔って他にもいるんすか?!」

 

「えぇ、私の所属してるオカルト研究部。表向きは普通の部活動にしてるけど、裏では私達悪魔の集まりなの。部員はみんな私の眷属達。あなたも入部することになるからね」

 

さらっとオカルト研究部へと入部させられることを決定されてしまうイッセー。

 

「あとは…そうね。イッセー、左腕に意識を集中させてみなさい」

 

「え?」

 

「いいから言う通りにして」

 

それからイッセーは左腕に意識やら強いイメージを集中させてみると…

 

ジャキンッ!

 

左腕に手の甲に宝玉の付いた左前腕部を覆う赤い篭手が出現した。

 

「なんじゃこりゃ!?!?」

 

「それがあなたの神器。一度発動させればあなたの意志でいつでも出せるわ。あ、それと危ないと感じたら神器は出さずに逃げなさい。あなたはまだ悪魔になりたてなんですからね」

 

「………」

 

これでイッセーは否が応でも信じざるを得なくなっていた。

 

「それじゃあ、次はあなたね」

 

そして、次は忍がターゲットになる。

 

「ぼ、僕ですか?!」

 

「しぃ君。さっき話すって約束したでしょ?」

 

「わぅ……わ、わかりましたぁ…」

 

智鶴との約束は破れない忍だった。

 

「まずはあの姿…アレは一体何なのかしら?」

 

「なんか犬っぽい耳と尻尾だったよな…」

 

「あの姿のしぃ君も可愛かったなぁ」

 

三者三様の言葉に忍も困る。

 

「い、犬じゃなくて狼だよ。ちゃんと銀狼解禁って言ったし…」

 

ポンッ!

 

「あ、あれ?」

 

銀狼解禁と口にしただけで再び銀狼の姿になってしまう。

 

「忍だと狼と言うよりもワンコだろ」

 

「そうね。可愛らしいとは思うけど」

 

イッセーの言葉にリアスも頷く。

 

「リアスちゃん。しぃ君はあげないからね?」

 

「わかっているわよ」

 

そして、智鶴の言葉に苦笑しながらリアスは答えた。

 

「わぅ…」

 

そんな一幕もあったが、忍は管理局や魔法に関することを伏せつつ自身の事を話した。

そこには満月の夜に狼に追いかけられる夢や狼が言っていた狼の末裔という内容も含まれていた。

 

「ふむ…興味深い話ではあるわね」

 

「そういえば、昔はよく満月の夜に添い寝してあげたっけ。最近は来なくなったけど…」

 

リアスは興味深げに、智鶴は思い出してから寂しそうにそれぞれ呟いていた。

 

「羨ましいのやら大変そうなんやら…お前も大変だな」

 

「イッセー君もね…」

 

男2人は互いに苦労が絶え無さそうなそんな雰囲気を醸し出していた。

色々なことがあり過ぎて頭がパンク寸前なんだろうか?

 

こうしてイッセーの悪魔生活が始まり、忍の日常も変わり始めていった。

 

この先、彼らに待つ未来とは…?

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