魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第八十八話『再会の後は修羅場…なのか?』

来たる地球で言うところの土曜日。

 

オカ研を始めとした紅神眷属+α(紅崎姉妹)、神宮寺眷属が冥界のある地方に招かれていた。

そこは以前、グレモリー眷属とバアル眷属が試合をした空中都市アグレアスから目と鼻の先にある町『アウロス』。

冥界でも農産業を随一とするアガレス領を体現する町の一つである。

 

その南端に位置する場所にソーナ会長が目標としていた『誰でも通えるレーティングゲームの学校』、その第一号が試験的に建設されていたのだ。

その名も『アウロス学園』。

本館や体育館、運動場などは彼女達の母校である駒王学園に倣った配置の学園となっている。

 

そして、オカ研メンバーや紅神、神宮寺の両眷属は土日を利用して体験入学の手伝いをしにやって来たわけだ。

都合により、ストロラーベにいる忍や紅牙達は少し遅れてやってくることになっている。

 

 

 

結局、忍達がアウロスに来たのはお昼頃だったろうか…。

 

「ここが冥界だ」

 

旅行トランクを両手に忍が雪音や雪絵に冥界を説明する。

右側が自分ので、左側が雪絵のものである。

 

「ほわぁ~、空が紫色だね~」

 

「……………」

 

興味津々な雪音と、驚いたように空を見上げる雪絵だった。

 

「あ~、気が重い…」

 

自分と雪音の荷物を持つ狼牙は溜息を吐くばかりであった。

 

「あいつら、ちゃんとやってるだろうか…?」

 

紅牙は紅牙で早紀達のことが心配であるらしい。

……主に問題を起こしていないか、ということでだが…。

 

しばらく南端を目指して歩いていると…

 

「見えてきた。アレが目的地の学校だ」

 

アウロス学園が見えてきた。

 

「学校、ね。しかし、なんだってこんなとこに学校なんて建てたんだか…」

 

「政治的なことも絡んでるんだろ。学校を作りたいって人は現レヴィアタンの妹さんだし…」

 

「はぁ…そんなのとも知り合いなのか?」

 

「知り合いというか、俺の通ってる駒王学園の生徒会長なんだよ」

 

「あれま…そうなのか」

 

「D×Dにも参加してる戦術家だよ」

 

「へぇ~」

 

忍と狼牙がそのような話をしていると…

 

「しぃ~くぅ~~ん!」

 

前方より駆け寄ってくる人影が…。

 

「と、智鶴が来たか」

 

それに気付き、忍も少し身構える。

 

「(何故、身構える?)」

 

狼牙がそんな疑問を抱いたが、その答えはすぐにわかった。

 

「しぃ君っ!」

 

だきっ!

 

「っと…」

 

忍は勢いよく抱き着いてきた智鶴をしっかりと受け止めていた。

 

「しぃ君、しぃ君、しぃ君、しぃ君!」

 

人目も憚らず、智鶴は忍に抱き着いてスリスリと頬擦りまでし出す。

心なしか、2人の周りはピンク色の空間に見えなくもないし、智鶴からはハートマークがたくさん出てる様にも見えるが…気にしたら負けだろう。

 

「なんか…昔よりも酷くなってねぇか?」

 

「本当に智鶴ちゃんは忍君のことが大好きなんだね~」

 

「綺麗な人…」

 

その様子を後ろから見ていた狼牙は昔のことを思い出し、雪音は微笑ましく見ていて、雪絵に関しては智鶴を見てますます複雑な表情になっていく。

 

「毎度のことながら騒がしい連中だ…」

 

「あ、あはは…(ちょっと羨ましいかも…)」

 

この光景に慣れてしまったのか、紅牙もフェイトも呆れるやら苦笑するやらであった。

 

「えっと…智鶴? いくらお昼とは言え、全く子供達がいないという訳でもないんだから、そろそろ…」

 

「でもでも、もう五日間も会ってなかったんだよ? しぃ君分を補充しないと…」

 

未だ離れる気配のない智鶴の言葉に…

 

「たった五日間でそれかよ!?」

 

狼牙もたまらず声を上げて驚く。

 

「あら…? この声って…」

 

一旦、忍への頬擦りを止めた智鶴は後ろに控えていた狼牙達を見つけた。

 

「おじさまに、おばさま?!」

 

智鶴も小さかったが、忍よりは記憶がしっかりしていたのか狼牙と雪音の姿を見て驚く。

…………一向に忍を放す気配はないが…。

 

「お久し振りです、お嬢。随分と忍が世話になってたようで…」

 

狼牙はその場で正座すると深々と頭を下げていた。

 

「智鶴ちゃん、やっほ~♪」

 

対する雪音は嬉しそうに笑っている。

 

「し、しぃ君…?」

 

「あぁ…次元の向こう側でやっと見つけたんだ…それと、もう1人…」

 

そう言って雪絵の方を見ると…

 

「は、初めまして…ゆ、雪白 雪絵と申します。その…お兄ちゃんの、妹、です…」

 

もじもじとしながら雪絵は智鶴に挨拶すると、恥ずかしいのか雪音の背中に隠れてしまう。

 

「え…?」

 

それを聞いて智鶴もさらに驚いて忍の顔を見る。

 

「実の妹が出来てたんだよ。驚きだろ?」

 

忍も忍で苦笑しながらそう言っていた。

 

その後、忍や紅牙も講師の手伝いや冥王の王としての意見など、様々な質問に答えていくことになっていた。

ちなみに客人である狼牙と雪音、雪絵は別室で待機していた。

 

…のだが、暇だった狼牙が本来の姿である狼の姿で散歩してたのが見つかって子供達に群がられたり、職員やスタッフに迷い込んだ犬かと思われて摘み出されそうになったのを忍が止めに入ったりと忙しなかったとかどうとか…。

 

………

……

 

その夜。

 

学園敷地内にある学生寮となる予定の建物。

比率的に集まりやすい女子寮の食堂に招集させられた紅神眷属+紅崎姉妹は呼び出した本人である忍を待っていた。

 

「何の用かしら?」

 

「さぁ? 詳しくは後で話すとか聞いてるけど?」

 

暗七と朝陽がそんな会話をする中…

 

「てか、なんだってあたしと姉様まで…」

 

「…………」

 

集められた紅崎姉妹はちょっと不満そうだった。

 

「うふふ…みんなきっと驚くだろうな~」

 

「そ、そうですね」

 

事情を既に知っている智鶴とフェイトはそんなことを呟いている。

 

「なんか知ってんなら教えてくれてもいいだろうがよ」

 

「そうだそうだ~」

 

その2人の様子にクリスとラトが代表で抗議する。

 

「そういえば…冥界にもワンちゃんっているものなんですね」

 

「はぁ?」

 

ティラミスの発言に珍しくカーネリアが変な声を上げる。

 

「あ、私も見ました。結構大きな犬でしたね。どこからか、迷い込んできたんでしょうか?」

 

ラピスも目撃していたらしくそんな疑問を抱いていた。

 

「そういえば、義兄さんがあのワンコに対してやけに気を使ってたような…というか、怒ってたような…」

 

その様子を移動中に目撃したのか、夜琉も思い出したように呟く。

 

そんな会話が続いていると…

 

「はぁ…遅れてすまん…」

 

なんだか嫌に疲れた様子の忍が食堂に入ってきた。

その傍らには…

 

「あ、昼間のワンコ!」

 

大型犬?がついてきていた。

 

「大型犬じゃない、狼だ…」

 

即座に訂正する忍を見て…

 

『忍。お前、いつも訂正してんのか?』

 

大型犬…じゃなく狼がそう聞いていた。

 

「「「「喋った!?」」」」

 

狼が喋ることは忍で慣れてるはずだが、見知らぬ狼が喋るとなると話は別らしい。

ちなみに狼が学園内にうろついてるのは一応、総責任者であるソーナ会長に話を通して許可を得ているので問題はない。

 

「テメェはいいのか? 間違った認識をされたままで…!」

 

『こう長く言われ続けて生活してっとな。もう諦めたよ』

 

「誇りはないのか、誇りは…」

 

『お前もその内そうなる』

 

「そんな訳あるか」

 

忍と狼の漫才にも似た光景を前に…

 

「茶番を見せるためだけに呼び出したのなら部屋に戻りますが…?」

 

少しイラついた様子の雲雀がそう告げる。

 

「あ~、すみません。待ってください。ちゃんと説明しますから…」

 

雲雀の一言に忍が平謝りをしてから…

 

「ほら、さっさと変化しろ」

 

『ったく、たりぃな…』

 

カッ!

 

そう言うと狼の体から霊力が溢れてきて、その姿を人型へと変える。

ちなみにどういう仕組みかは知らないが、ちゃんと服は着てるので大丈夫である。

 

「これでいいんだろ? これで…」

 

そこには人型となった男性こと狼牙がその姿を見せていた。

 

「お~い、お前らもさっさと入ってこい」

 

その狼牙が廊下にいるであろう人物達を呼びつける。

 

「ほ~ら、雪絵ちゃん。大丈夫だから」

 

「う、うぅ~…」

 

廊下から雪音に背を押される形で雪絵も入ってくる。

 

「「「「「「「誰…?」」」」」」」

 

大半が声に出して狼牙達の登場に疑問を抱く。

 

そして…

 

「あ~、紹介する。長らく探してた俺の両親と、両親との再会後に存在がわかった実の妹だ」

 

簡単に狼牙達を眷属と紅崎姉妹に紹介する。

 

「「「「「「………え?」」」」」」

 

その簡潔な紹介に眷属の大半が口を半開きにしてしまう。

 

「倅が世話になってる。父親の狼牙だ」

 

「私が忍君と雪絵ちゃんのお母さんの雪音です♪」

 

「ゆ、雪絵です…」

 

智鶴と再会した時のように正座して頭を下げる狼牙、母親には見えないが朗らかで嬉しそうにする雪音、大勢の前からか緊張してる雪絵の順に名前を名乗る。

 

「え、お母さん? 兄弟姉妹じゃなくて?」

 

雪音が母親ということに驚いたラトがそんなことを尋ねる。

 

「あら、嬉しい♪ そう見える? 見える?」

 

「お、お母さんってば…」

 

そんな雪音の言動に恥ずかしそうにする雪絵の様子を見て…

 

「「「「「「(親子っていうよりも姉妹のような…)」」」」」」

 

何人かの眷属はそう思ったそうな…。

 

「雪音伯母さんのことは母さんから聞いてたけど…実際に見ると、余計に若く見えるわね…」

 

雪音の言動を見て吹雪がそう漏らす。

 

「あなたが吹雪ちゃん? 氷姫ちゃんは元気にしてる?」

 

「え、えぇ、まぁ…」

 

勢いよく詰め寄ってきた雪音に驚き、生返事する吹雪だった。

 

「雪音、ねぇ…」

 

意味深気に呟きながらカーネリアはクリスを見る。

 

「なんだよ?」

 

「別に…ただ、呼び間違われなければいいかなって思っただけよ」

 

「うるせぇよ!」

 

『"雪音" クリス』と『雪白 "雪音"』…名字と名前の違いだが、ちょっと紛らわしいかもしれない。

 

「えっと…それじゃあ、親父達に眷属を紹介してくぞ。と言っても智鶴とフェイトは知ってるか?」

 

「悪魔の眷属制度か。確か、その冥族版だって話だが…」

 

「あぁ。その認識でいい。じゃあ、まずは…」

 

そう言って忍が狼牙達に眷属を紹介しようとすると…

 

「改めまして、しぃ君の女王になっています。明幸 智鶴です。おじさま、おばさま、それに雪絵ちゃん、よろしくお願いします」

 

智鶴が改めてといった感じで3人に挨拶していた。

それに倣ってか…

 

「坊やの戦車、堕天使カーネリアよ」

 

「同じく戦車、異世界フィライト、イーサ王国第一王女、エルメス・ファル・イーサと申します」

 

「騎士、時空管理局特務隊所属の騎士でもある流星 朝陽二等空尉よ」

 

「えっと、その…な、騎士の…む、叢雲 め、萌莉、です…」

 

「僧侶を務めさせていただいてます、神宮寺 フレイシアス。気軽にシアとお呼びください」

 

「えっと、私も僧侶になってます、時空管理局執務官フェイト・T・ハラオウンです」

 

「兵士をやってるイチイバルのシンフォギア装者、雪音 クリスだ」

 

「同じく兵士、暗七よ」

 

「兵士で、ミッドチルダにあるフィクシス魔法学園でシノブのクラスメイトでもあるラト・スフィーリアだよ」

 

「……兵士…シルフィー・スフィーリア…」

 

「同じ兵士のシルフィーさんやラトさんと同じフィクシス魔法学園出身のラピス・シルフォニアです」

 

「えっと…兵士で、時空管理局の特務隊に所属することになりましたティラミス・イリス三等陸士です」

 

「兵士役、冥族の血を引く堕天使と雪女のハーフ、雪白 吹雪」

 

「最後の兵士、義兄さんの義理の妹になってます、紅 夜琉です」

 

眷属1人1人がそれぞれ名乗っていく。

 

「確か、眷属制度はチェスの駒割りを基本にしてたな。今のでちょうど15人か。なら、そっちの嬢ちゃん達は?」

 

狼牙の疑問に答える様に…

 

「冥族代表の命により、紅神 忍を監視してます。紅崎 雲雀」

 

「その補佐をしてる妹の紅崎 緋鞠よ」

 

雲雀と緋鞠も簡単な自己紹介をする。

 

「監視?」

 

"監視"という言葉に疑問を持った狼牙に…

 

「冥族との和平の際に起きたちょっとした出来事が原因でな…雲雀さんは俺を監視してるんだと…」

 

「もっとも、現在は留学という名目で私も責務を果たせてませんが…」

 

忍は簡単に説明し、雲雀も忌々しげに言葉を漏らす。

 

「ついでに言うなら、緋鞠とは多分昔一度だけ会ってるんだと思う…」

 

「は?」

 

忍の言葉に緋鞠は間の抜けた声を漏らすが…

 

「冗談。アンタなんかと会った事なんてないわよ?」

 

その直後、緋鞠はすぐさま否定する。

 

「だから多分だと言っただろ? ほら、地球で迷子になってたのを俺が助けてやったんだと思うが…」

 

「……………え…?」

 

その言葉を聞いて緋鞠の動きが止まる。

 

「う、嘘…え、じゃあ、あの時のって……」

 

緋鞠がブツブツと独り言を呟いていると…

 

「俺も牙狼との死闘の後、牙狼が見たらしい俺の記憶を思い出してみたんだが…その容姿に合致する人間は緋鞠くらいだったから…どうかと思ってたんだが、違ってたか?」

 

忍も忍で記憶が曖昧だったので、確認のために尋ねていた。

 

「(た、確かに今思うと…あの男の子って、こいつに面影があるような……で、でも…そういうことなら、あたしって…こいつのことが…)////」

 

その問いに答えず、頭で色々と考えていた緋鞠の顔がだんだんと赤くなっていく。

 

「? 緋鞠?」

 

その様子を見て忍が緋鞠の肩を揺らすと…

 

「ひゃ、ひゃい…!////」

 

驚いて声が上ずる。

 

「どうかしたのか?」

 

「な、なんでもないわよ!////」

 

「?」

 

緋鞠の様子がおかしいことはわかったが、何故急におかしくなったのかイマイチわからない忍だった。

 

この緋鞠の様子を見た紅神眷属は…

 

「それって…」

 

「もしかして…」

 

「だよね~」

 

「そんな…緋鞠ちゃんまで…」

 

「ふふふ、面白くなってきたわねぇ」

 

以前、兵藤家で行われたパジャマパーティーで暴露された緋鞠の恋バナを思い出し、確信を得ていた。

 

「……………」

 

それとは別に雲雀の表情も心なしか、あまり優れていないようにも見えた。

 

「…むぅ…」

 

それと同じく雪絵も心なしか頬を膨らませているような…

 

その様子を見て…

 

「……………知らん内に罪作りな男に育ったもんだな」

 

「でもでも、これで雪絵ちゃんも安心して忍君に預けられるよ♪」

 

外野(狼牙と雪音)もそう言っていた。

 

だが、この発言を耳ざとく聞いていた者もいた。

 

「雪絵ちゃんを預けられる…って、どういうことですか?」

 

意外にも2人の近くにいたティラミスであった。

 

「それはね…」

 

「ちょ、待っ!?!」

 

雪音がティラミスに何か吹き込もうとしてるのを察知した忍が止めようとするが…

 

「忍君に雪絵ちゃんをお嫁さんとしてもらってもらうと思って♪」

 

屈託のない笑みで雪音が答えていた。

 

「…………はい?」

 

一瞬、何を言ったのか理解できずにティラミスが聞き返すと…

 

「だから、雪絵ちゃんを忍君のお嫁さんに…」

 

雪音が再度言ったところで…

 

「「「「「「はぁ!!!?」」」」」」

 

それを耳にしていた気が強めの良識ある眷属達が口を揃えて驚き、各々の武器を構えて忍に突き付ける。

主に朝陽はセイバー、ラトは拳、ラピスが氷の刃、暗七は異形の右手、クリスはガトリング砲、(これは初耳の)フェイトはバルディッシュを…。

 

「ま、待て! 落ち着いて話そう、な?!」

 

四方八方から武器を突き付けられた忍は身の危険を感じて必死の説得を試みる。

 

「あぁ、なるほど。雪女の里の風習か」

 

唯一理解してくれたのは吹雪だけだが…。

 

「……なに、それ?」

 

シルフィーが尋ねると…

 

「里の風習でね。極寒の世界で生きられる男なんてそうそういないから、血を残すために男は一夫多妻が認められてるのよ。ただ、雪女の里で男が生まれたのは忍が初めての事例だったから…それを踏まえて雪音伯母さんの言動を考えると、"親戚や実の兄妹でも血を残せるなら添い遂げてもいい"ってことになるんだと思う。一応、私と忍も従姉妹関係なのに許嫁なんだし…」

 

吹雪の解説を聞き…

 

「きゅ~…」

 

バタンッ!

 

萌莉が気絶する。

 

『きゅ、きゅぅ~~!?』

 

「萌莉さん!?」

 

それをすぐさまファーストとティラミスが介抱する。

 

「おじさまも同じ考えなんですか?」

 

笑顔なんだが、目が笑っておらず背に蠍の残像が見えるほどの怒気を纏った智鶴が狼牙に詰め寄る。

 

「え? いや、まぁ…霊狼って種も兄さんがいなくなって俺ら家族だけだし…血を濃く残せるなら問題ねぇかな~って思いまして………だ、第一、こっちの世界(ストロラーベ)では忍と雪絵が実の兄妹ってことは秘匿してますんで…その…大丈夫かな~って」

 

詰め寄る智鶴にビビりながらも狼牙はそう答える。

 

「オメェの親類はどういう価値観してんだ!?」

 

「見損なったよ、忍君!」

 

「どうしよう、こんなのの騎士だなんて…」

 

「シノブ! どういうことなのさ!?」

 

「なんて鬼畜…いえ、畜生なんですか!」

 

「随分と良いご身分ね…?」

 

武器を突き付けたメンバーから批判を受ける忍は…

 

「お、俺だって反対したんだぞ!?」

 

そう言うが…

 

「ぐす…やっぱり、お兄ちゃんは私のこと、嫌いなんですか?」

 

それをどう捉えたのか、雪絵が泣き始める。

 

「あ、いや、別に嫌いって訳じゃなくてな? 前にも言ったが、世間様的にというやつで…」

 

忍が雪絵を宥めようとするも…

 

「女の子を泣かすな~!」

 

バキッ!!

 

「ぐはっ!?」

 

もはや誰の味方かもわからないラトが忍を殴り飛ばす。

 

「……………」

 

そんな一幕を見て…

 

「(あたし、なんでこんな奴に惹かれてんだろ?)」

 

緋鞠は嬉しさ半分、後悔半分といった微妙な表情をしていたとか…。

 

「(なんでしょう…妙に胸の内がモヤモヤしますね…)」

 

その変化は雲雀にも起きていた。

 

 

 

こうして騒がしくも楽しい(か?)時間は過ぎていき、体験入学も次の日を迎える。

 

しかし、この時は誰も予想していなかった。

あんな事態が起こるとは…。

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