魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第九十話『邪龍騎降臨』

アウロス学園防衛戦、開始から十数分。

北方面から紫炎のヴァルブルガ、南西方面から邪龍グレンデルとラードゥンが本格的な進軍を開始したのだ。

 

その報せを受け、北の救援に紅牙が向かい、南西の救援には隣接した地域にいて邪龍との戦闘経験のあるイッセーがそれぞれ駆けつけることとなった。

そのイッセーの空いた穴を埋めるべく忍が南地域に参戦する。

 

しかし、ここで更なる敵戦力が投入されようとしていた。

リゼヴィムが言っていたノヴァのところから派遣されるスペシャルゲストの一団である。

 

 

 

~変異フロンティア~

 

「皆さん、時は満ちました」

 

変異フロンティアの中でもドーム状になっている施設の中、その中央広場に集められた全身が隠れるようなローブを纏った集団にノヴァが語り掛ける。

 

「かの種族、"悪魔"は自らの領土である冥界の一角にある学び舎を設立させました。それはかの種族が得意とする戦い方を学ばせるための学び舎であり、いずれは前線基地となりうるであろう施設でもあります」

 

そう言ったノヴァの背にアウロス学園が映し出される。

 

「なんだよ、ありゃ?」

「学園?」

「つか、見ろよ。空が紫色とか…マジかよ?」

「異世界なんて初めて見るけど、こんな世界もあるんだな…」

「てか、あんなんで本当に前線基地になるのかよ?」

 

ザワザワとローブを纏った人物達が話し合う。

 

「ふふふ…皆さんの疑問も尤もですね。しかし、かの種族を舐めてはなりません。外見だけで騙すというのは悪魔の常套手段。問題は中身なのですよ」

 

ノヴァの言葉に合わせ、背の映像が移り変わる。

そこにはグレモリー眷属の戦闘映像がいくつもの画面となって映し出されていた。

 

「うっは、なんだあの爆乳」

「わっ、イケメンもいるじゃん!」

「つか、女子の美人率たっけぇ」

 

グレモリー眷属の外見に湧くローブの人物達を…

 

「ほらほら、皆さん。外見に惑わされてはなりませんよ。彼女達は悪魔なのですから、その攻撃方法をよく見てください」

 

ノヴァは窘めつつその攻撃方法を注視するように言う。

 

「おいおい…何も残らねぇとか…マジかよ!?」

「うっそ…速過ぎ!?」

「動きが止まってる奴もいるぞ!」

「これが現実の…魔力ってやつなのか?」

 

好奇の目から一転し、戦々恐々とした思いを抱いていく。

 

「(正確には生体魔力や神器の力なのですが…まぁ、彼らに言っても違いなんてわかりませんからね)」

 

それを見下しながら…

 

「恐れる必要はありません。あなた方には私からのプレゼントがあるのです。それをもってすればあの悪魔達に後れを取ることなどありませんよ」

 

ノヴァはつらつらと言葉を並べる。

 

「そう、あなた方は選ばれし者。他世界から侵略してくるだろう者達に対する抑止力となりうるのです。ゲームで磨いてきたその力を存分に振るってください」

 

まるでパンドラをやっていたことが現実でも役に立つみたいなことを言っていた。

 

「ははは! やってやろうぜ!」

「悪魔だろうが何だろうが俺達なら出来る!」

「そうよね!」

「どうせ、こんなの楽なゲームだしな!」

「あの前線基地ってのを制圧すりゃいいんだろ?」

「制圧戦なら得意だぜ!」

 

その様子を見ていたノヴァは…

 

「(ふふふ…本当に何も知らない無知な存在は簡単に騙されてくれる)」

 

内心でほくそ笑みながら転移用の魔法陣を起動させ始める。

 

「敵はあくまでも悪魔とそれに組する者達です。既に先行して我が同盟軍…黒きドラゴン達が奮闘してますのでそれに加勢してもらえれば問題ありませんよ」

 

決して"邪龍"とは言わず、"味方の黒きドラゴン"と言っていた。

 

「ははは、ドラゴンが味方だなんて心強いったらありゃしねぇよ!」

 

ローブの1人がそんなことを叫んでいると、転移魔法陣が起動する。

 

「ふふふ…では、皆さん。良い戦果を期待していますよ」

 

ノヴァの見送りの言葉を聞きながらローブの人物達は次々と転移していく。

そして、全員の転移を確認した後…

 

「ふふふ…せいぜい、良いデータを提供してください。モルモットの皆さん…」

 

ノヴァは邪悪な笑みを浮かべながらそう言い残してその場から消えていた。

 

ノヴァが消えたことで転移魔法陣もまた消えそうになるが…

 

バッ!!

 

その一瞬の隙を突いて人影が転移魔法陣に飛び込み…

 

「待っててください…デヒューラさん…!」

 

ローブの人物達と同じく冥界へと転移していた。

 

そうして転移魔法陣は完全に消えてしまう。

 

………

……

 

・アウロス学園周辺地域

 

「この匂いは…!」

 

南へと参戦するべくアステリアで移動していた忍の鼻が何かを感知する。

 

「ソーナ会長、絶魔勢が来る…!」

 

何度も忍を転移させてきた魔法陣の匂いを覚えていたらしく、中央のソーナ会長に報告する。

 

『わかりました。各方面にも警戒を強めるように言います。紅神君はそのまま南へ向かってください』

 

「了解!」

 

そして、そのまま移動しようとした時だった。

 

キィンッ!

 

「っ!?」

 

目の前に転移魔法陣が展開されてしまい、その中から数人のローブの人物達が現れる。

 

「ちっ…! アステリアはこのまま南へ向かってエルメス達の援護をしろ!」

 

『ラジャ』

 

ブロロロロ…!!

 

アステリアから飛び降りながらアステリアに命令を下し、目の前に現れたローブの人物達の相手をすることにしたらしい。

アステリアは人型へと変形後、迂回しながら南へと向かう。

 

「なんだあのバイク!? 変形しやがったぞ!!」

「レアものなんじゃね!?」

 

アステリアの変形に興味を抱いたのか、ローブの人物達がそっちに注目する。

 

「(やけにノリが軽いな。それにこの匂いは…人間?)」

 

その様子を見て忍は少し目の前の集団が場違いな感じを覚える。

 

そんな中…

 

「お前は…!!?」

 

ローブの1人が忍を見て驚きの声を上げる。

 

「?」

 

身に覚えのない忍としてはローブから漂う怒りの混じった匂いに困惑する。

 

「どうした? 目の前の野郎になんか因縁でもあんのか?」

 

それに別のローブが話しかける。

 

「あるさ…! 俺に屈辱を与えた奴を忘れる訳がない! 何故ここにいるかはわからんが、ちょうどいい! あの時の雪辱を晴らさせてもらう!!」

 

「あの時の雪辱…?」

 

いまいち話がわからない忍はローブの動向を見る。

 

「俺だよ、"編入生"!!!」

 

バッ!!

 

ローブを脱ぎ去ると、そこにいたのは…

 

「なっ…お前は、ブライアン!?」

 

フェイタル学園の雪絵の表側のファンクラブ筆頭でいかにもスポーツマン的な体型をした男子、ブライアンである。

しかもご丁寧なことにパンドラ内で着用していたような鎧を身に纏い、その手には盾と剣が握られていた。

その手にした剣の鍔には蒼と黒の混ざった宝玉が備わっていた。

 

「どういうことだ。なんでお前が此処に…!」

 

「それはこっちの台詞だ、編入生! お前の方こそ何故この冥界にいる!」

 

「(冥界を知ってる!? ノヴァの入れ知恵か?)」

 

ブライアンから出た単語に驚きながらも警戒を怠らない。

特にブライアンが手にしてる剣から発せられる異様な匂いを気にしながら…。

 

「(この異様な匂い…あの宝玉からか?)」

 

「答えろ、編入生!」

 

痺れを切らしたのか、ブライアンが怒声を上げる。

 

「お前こそ、なんだってそんな危険なものを持ってる? 今からでも間に合うからそれを捨てるんだ!」

 

「はぁ? お前は何を言ってるんだ?」

 

「いいから捨てろ!」

 

忍が強めに言うものの、ブライアンはそれを聞かなかった。

 

「それは聞けない相談だ。これはノヴァさんから頂いた大切な悪魔を倒すための道具。そう簡単に捨てられるか」

 

「悪魔を倒す、だと…?」

 

「そうだ。この先にある悪魔の前線基地になるだろう施設を破壊して悪魔を倒す。そうすることでストロラーベへの侵攻を阻止するんだよ!」

 

ブライアンの言葉を聞き…

 

「なっ!?(そういう筋書きか! アウロス学園をそういう設定にしてこいつらにそういう風に吹き込んだのか!)」

 

忍はノヴァが具体的に何を企んでるかまではわからないものの、行方不明者達を使って何かしらさせようというのは理解した。

 

「あそこはただの学園だ! お前らは罪もない悪魔の子供達にまで手を掛ける気か!?」

 

忍が必死の説得を試みるが…

 

「モブがいちいちうるせぇんだよ!」

「こんなゲーム、滅多に出来ねぇからな!」

「どうせ、その子供ってのも設定かなんかで実際はデータみたいなもんだろ?」

 

他のローブ達はそう話していた。

 

「バカ野郎! これは現実だ! 現実で人の生き死にが決まるんだぞ!」

 

出来るだけこの集団を傷つけることなくストロラーベに帰そうと考えた忍は説得を続ける。

 

「悪魔に人と同じ理があるかっての!」

「あんな得体の知れない力を出してる時点で人と同じな訳ねぇだろ!」

 

事前にノヴァに見せられた悪魔の戦い方を思い出したのか、ローブ達はヒートアップする。

 

「違う! お前達は騙されてるんだ!」

 

ノヴァが何を言ったかまではわからないので言葉が詰まりそうになる。

 

「もういい。編入生、これ以上邪魔立てするならお前も敵と見なすぞ!」

 

ブライアンが剣の切っ先を忍に向けて宣言する。

 

「っ…!」

 

忍は考える。

下手に魔法などを使えば、その矛先をこちらに向けてくる可能性もある。

そうなれば戦闘は不可避となってしまう。

しかし、このまま黙って放っておくわけにもいかない。

 

どうしたらいいのか、考えていると…

 

『グオオオッ!!』

 

「っ!?」

 

量産型邪龍の1体がこちらに向かってきたのだ。

 

「ちっ…!」

 

ここを通す訳にはいかない忍はすぐさま行動に移す。

それが目の前の連中に見られたとしても、だ。

 

「ブリザード・ファング!」

 

忍の十八番である凍結魔法を繰り出して量産型邪龍の動きを一時的に封じると…

 

「猛牙墜衝撃ッ!」

 

神速で一気に距離を詰めて魔・気・霊・妖の力を収束した一撃を食らわせていた。

 

『ガァアッ!!??』

 

その一撃に量産型邪龍は吹き飛ぶ。

 

「なっ!?」

「おいおい、ドラゴンを殴り飛ばしやがったぞ!?」

「今のも魔法か何かか!?」

「てことは…こいつも…!!」

 

ブライアンを始めとしたローブ達も忍の行動に驚き、ある結論に達する。

 

「編入生…貴様も悪魔の一味だったのか!!」

 

「……………」

 

言葉を尽くしたところで今の彼らには通じないと判断した忍は押し黙る。

 

「無言の肯定か。ならば容赦はせん!!」

 

忍が悪魔の一味と判断したブライアンが先陣を切り…

 

「そういうことなら加勢するぜ!」

「イケメンだけど、悪魔の一味なら倒さないとね!」

「ここでこのモブを倒して一気に城攻めといこうぜ!!」

 

ローブ達もそれぞれのローブを脱ぎ去って戦闘態勢に移行する。

その誰もが共通して青と黒の混ざった宝玉を備えた武具やアクセサリーを持っていた。

 

「くっ…!」

 

忍もダブルフューラーを抜いて応戦しようとする。

 

「フリージングバレット!」

 

とりあえず、無力化することを第一に考えた忍は氷属性の弾丸を撃って牽制する。

 

しかし…

 

「こんなもの、どうということはない!!」

 

ギギィンッ!!

 

「なにっ!?」

 

氷属性の弾丸はブライアンの構えた盾によって弾かれていた。

その結果とある事実に忍も驚く。

 

「(今、微かにだが龍気の匂いが…)」

 

弾丸が弾かれた瞬間、盾から微かに龍気を感じたらしい。

 

「(いや、そんなはずは…普通の人間に龍気を扱えるはずがない…)」

 

自身やイッセー、他のドラゴン達ならまだしも龍気は五気の中でも龍種しか持たない力…それを普通の人間が扱えるはずがないと忍も考えていた。

 

「はっはぁ! くたばれよ、化け物が!」

「当たりなさいよ!」

「ちょこまかとよく動くな!」

 

しかし、現にブライアン達は微かに龍気を放つ攻撃を繰り出してきている。

 

「(どういうことだ? これにもノヴァが関わってるのか!?)」

 

もし、そうであれば彼らの持つ武器を早々に手放せさせないとならないと考えた忍は…

 

「少し手痛い目に遭うかもしれんが、我慢してくれよ!」

 

そう先に言っていた。

 

「はぁ? 貴様、何を言って…」

 

ブンッ!!

 

ブライアン達が反応するよりも速い速度で駆け抜ける。

 

「っ!?」

「嘘!? いなくなった!?」

「いや、あのイケメンみたく速過ぎるんだ!?」

 

そうブライアン達が認識するのも束の間…

 

ババババッ!!

 

蒼と黒の混ざった宝玉の備わった装備だけを的確に落としていく。

 

「くっ!?」

「きゃあっ!?」

「ぐぁっ!?」

 

その僅かな痛みと衝撃に悲鳴が上がる。

 

「これで終わりだ。投降して大人しくストロラーベに帰るんだ」

 

最初にいた位置に戻りながら忍は警告を発していた。

 

「編入生…貴様ッ!!」

 

怒りに燃えるブライアンが痛めた手で剣を再び握ろうとする。

 

「やめろ。これ以上、俺はお前達を傷つけたくない」

 

それにこの場で時間を費やしている暇もなかった。

今も必死に戦っている仲間達のためにも、目の前の人間達を無事にストロラーベに送り帰すことも…。

 

「ふざけるな…!!」

 

ブライアンから怒りの感情と共に憎しみの感情が溢れてきた。

 

「貴様は…貴様だけは許してたまるか…! あの場には雪絵さんもいたそうだな…俺の無様な姿を見せびらかすために呼んだそうじゃないか!?」

 

「! それは違う!」

 

恐らくはノヴァが吹き込んだことだと悟った忍は即座に否定する。

 

「何が違うものか! 結局は俺の惨めな姿を曝してしまったことに変わりはない! そのせいで俺は…!!」

 

「雪絵がそんな些細なことで人を見る眼が変わると思ってるのか!?」

 

「些細なことだと!? 俺にとっては重大なことだ! ただでさえ彼女は俺達の存在を少なからず困った様子にしていたのに…!」

 

「(その自覚はあったのか…)」

 

「なのに、貴様が現れてからの彼女はどこか雰囲気が変わった…!」

 

それは確かにそうかもしれないが、この状況で語るようなことではない気がする。

 

「だからこそ、貴様は許せないんだ…! 彼女から笑顔を向けられ、俺の惨めな姿を見せた貴様だけは…!!」

 

剣を拾ったブライアンは剣を掲げ…

 

「だから俺はノヴァさんからこの力を手にした。そして、この力を最大限に使う言葉も…!!」

 

「言葉、だと…?」

 

怪訝にする忍を他所に…

 

「見るがいい、編入生。これが俺の力だ!! 『禁手化(バランス・ブレイク)』ッ!!!」

 

ブライアンはそう唱えていた。

 

「なにっ!? 禁手化だと!?」

 

その言葉の意味から忍はそれが神器の可能性を見い出したが、アザゼルという専門家がいない状況では判断に困っていた。

 

ゴオオオオオオッ!!!

 

ブライアンの足元から青と黒の炎が弐重螺旋のように舞い上がり、その姿を包み込んでいく。

 

「くっ…!?」

 

思わず、その炎から距離を取る忍は…

 

「こちら紅神。ソーナ会長、厄介なことが起きてる…!」

 

急いでこのことをソーナ会長を通じて各方面の味方に伝えていた。

 

『禁手化!? 間違いないのですか?』

 

「専門家でないんで確証はないですが…この感じはあながち間違いじゃなさそうです」

 

『まさか…神器までも絶魔勢が手にしていたとは…』

 

通信魔法陣越しだが、ソーナ会長も苦虫を潰した表情になっているのが何となくわかる。

 

「力を解放される前にこの人間達は出来るだけ傷付けずに捕獲してほしいが…」

 

『難しい注文でしょうね…』

 

「ですよね…」

 

そう言いながら忍は目の前で今にも弾けそうな炎の塊に注視する。

 

「とりあえず、また後で連絡します」

 

『油断しないように気をつけてください』

 

「了解です」

 

禁手化した相手の対処はイッセーや木場との模擬戦で散々経験してるが、未知の相手となるとどんなことになるか想像もつかないので慎重になる。

 

そして…

 

ゴバァァ!!

 

炎が弾け、中からブライアンが…

 

『グオオオオオオオッ!!!!』

 

異形の姿と化して現れていた。

 

しかし、その見た目は忍には見覚えがあった。

 

「龍騎士、だと…!?」

 

そう。

それは頭部がドラゴンと化し、背中から龍翼、臀部から龍の尾が生え、四肢も龍のような鋭い爪が備わり、その身は鎧のような甲殻で覆われた人型ドラゴン…龍騎士であった。

 

「(バカな!? 龍騎士は異界の、それも絶滅した種だぞ!? ノヴァがクローニングしてるのは知ってたが…神器に組み込めるものなのか!?)」

 

その事実に忍は目の前で起きた出来事を正確に捉えられないでいた。

 

『力ガ…力ガ漲ル…!!』

 

龍騎士と化したブライアンから龍気が溢れ出している。

 

「な、なんかすげぇぞ…」

「これが…悪魔に対抗する力…」

「あの言葉に、こんな力が…」

 

それに当てられたのか、ブライアンと一緒に来た連中もそれぞれ忍に落とされた装備品を拾い上げる。

まるでブライアンの姿に魅入ってしまい、自分達もそれを行おうとしてるような…。

 

「っ!? やめろ! それがどういうことになるかわかっているのか!? 元の人間に戻る保証があるのかよ!?」

 

その行動に気付いた忍は他の連中に忠告を促す。

 

「ノヴァさんは言った。恐れるなと…」

「私達は選ばれたんだって…」

「だから、恐れる必要はない…!」

 

まるで催眠術にでも掛ったかのように一同は装備品を空に掲げ…

 

「「「禁手化ッ!!!」」」

 

一斉にその言葉を発していた。

 

ゴオオオオオオッ!!

 

それと同時に装備品にある宝玉から龍気が溢れて一同を呑み込む。

 

「くっ…!?」

 

さらに3人分の龍気の余波を受け、忍も後退する。

 

『凄ェ、凄ェゾ!!』

『アハハハハ…!!』

『確カニ、力ガ漲ル…!!』

 

それぞれが龍騎士へと変貌したのを見届けてしまった忍は…

 

「バカ野郎共が…!!」

 

そう漏らしていた。

 

「(ともかく今はこいつらを正気に戻す方法を考えないと…。これが通常の禁手なら何か解除する手段があるはず…だが、ノヴァの野郎が関わってる以上、そんな簡単な方法じゃないかもしれん…なら、俺が取るべき手段は…)」

 

過程はともかく、結果として成ってしまったことを考えても仕方ないと考えた忍は即座に意識を切り替え、相手を無力化させることを優先することにしていた。

 

「多少手荒になるが、許せよ…!!」

 

そう前置きを言い、忍はダブルフューラーを待機状態に戻すと、格闘スタイルに移行する。

 

『何ヲ言ッテイル? コノ力ヲ手ニシタ俺達ヲ相手ニ貴様ニ何ガ出来ルトイウノダ?』

 

既に勝ちを確信しているのか、ブライアンは忍の言葉を一蹴していた。

 

「悪いが、龍気を扱えるのはお前達だけじゃないんでな…」

 

そう言ってスッと目を閉じる忍だった。

 

『? 何ヲ言ッテ……ッ!?』

 

ブライアンが訝しげにしていると、忍からブライアン達から発する力と"同種"のモノが滲み出てくるのが感覚的にわかった。

 

『バ、馬鹿ナ!?』

『ナ、ナンデ!? アノイケメンモ私達ト同ジノガ出セルノ!?』

『オ、俺ガ知ルカ!?』

 

自分達だけの力だと思っていたモノを忍から感じ、動揺を隠せない龍騎士達。

 

「行くぞ…!」

 

バッ!!

 

神速で一気にブライアンの目の前まで移動してきた忍は…

 

『ナッ!?』

 

「"眠れ"…!」

 

右手に霊力を込め、ブライアンの額に人差し指と中指を押し当てて力強い言葉を発していた。

 

『ガッ…アァ…?』

 

その瞬間、ブライアンの意識は朦朧としていき…

 

『編入、生…貴様、ナ、ニ…ヲ………』

 

バタンッと背中から倒れ、そのまま意識を暗闇の中へと沈めていった。

 

「『言霊(ことだま)』ってやつだ」

 

それだけ呟くと、眠ったブライアンの様子を観察する。

 

「(意識を失っても禁手が解けない。やはり、何か細工が施されていそうだな…)」

 

そう考えた忍はすぐさまブライアンを結界へと閉じ込めた。

 

『ナ、何ガ…?』

『ワ、訳ガワカンナイワヨ!』

『コ、コトダマ…?』

 

事態を未だ吞み込めていない残りの龍騎士達に対し、忍は…

 

「(やはり、混乱してるか。なら、その間に…)」

 

ブンッ!!

バッ!!×3

 

「お前達も"眠れ"」

 

神速で間合いに入るや否や再び言霊を使って龍騎士達を眠らせていた。

 

「とりあえず、これで一段落…とはいかないわな」

 

ノヴァが送り込んできた以上、これだけとは考えられなかった忍はすぐさまソーナ会長を通じて各方面に警戒を促していた。

結界に閉じ込めた龍騎士化したブライアン達をソーナ会長の元へと転送し、忍も戦線に復帰する。

 

 

 

しかしながら、それは完全に後手に回っており、かなりの数の人間が禁手化して龍騎士となっていた。

邪龍軍勢に加えて、ノヴァの送り込んだ龍騎士軍団がその猛威を振るっていたのだ。

 

そんな中、白き冥王は大切な者を救うべくその身を戦いの中へと投じようとしていた。

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