ユウマが戦っている間にも事態は大きく動いていた。
邪龍グレンデルとラードゥンと戦うために南から南西地域へと救援に向かったイッセー。
そこでは匙を始めとした小猫、朝陽、シアの4人がグレンデルと対峙していた。
そして、イッセーの前には木のドラゴン『
グレンデルがアウロス学園を狙って火球を放とうとした際の隙を突かれ、ラードゥンがイッセーを結界内に閉じ込め、そのパワーと己の障壁、どちらが上かという勝負を持ち掛ける。
獲物を横取りされた形のグレンデルだが、目標をヴリトラこと匙に変更して"遊ぶ"ことを決める。
ラードゥンの障壁の硬さにイッセーは真紅の鎧へとなって障壁を突破することを考えるが、想像以上にラードゥンの障壁は硬く、クリムゾンブラスターでも決定打にはならなかった。
一方、グレンデルと相対する南西チーム。
グレンデルの火球は匙の黒炎で何とか相殺したものの、量産型邪龍の邪魔もあり、匙と小猫達は分断されてしまう。
そんな中で匙はたった一人でもグレンデルと相対する。
しかし、それはあまりにも無謀だった。
何度叩き潰されようと匙はグレンデルを押さえようと奮闘するが、グレンデルはそれを歯牙にもかけなかった。
徐々にグレンデルが学園の方へと向かっていく。
そこへ避難民の確認を行っていた父兄の方々だった。
果敢にもグレンデルの前に立つが、グレンデルの攻撃力に父兄の方々も吹き飛ばされ怪我を負っていく。
そんな中、量産型邪龍の群れを吹き飛ばす一人の男が現れたことによって戦況が変わる。
その男の名は、『サイラオーグ・バアル』。
真紅の鎧を纏ったイッセーと打撃合戦を繰り広げた男だ。
サイラオーグの言葉によれば、アグレアスでの戦いは悪魔側の優勢だったようで、サイラオーグ一人だけでもと応援に送り出されたそうだ。
そして、それを機に二匹の邪龍に通信が入り、ラードゥンがその場から離脱。
おそらくはアグレアスへと向かったのだろう。
しかし、グレンデルはその場に残ってイッセーとサイラオーグのタッグと戦うことを選択していた。
真紅の鎧を纏ったイッセーと、金色の獅子の鎧を纏ったサイラオーグ。
真紅と金色の協奏曲によってグレンデルは圧倒されていた。
しかし、ここで問題が起きる。
北地域で紅牙と戦闘を繰り広げていたはずの紫炎のヴァルブルガが突如として来襲。
その聖なる炎によってサイラオーグを強襲したのだ。
その攻撃によってサイラオーグは一時的に戦闘不能まで追い込まれる。
そこへヴァルブルガを追い掛けてきた紅牙とギャスパー。
ヴァルブルガは紅牙が別の事へと意識を向けた一瞬の隙を突き、各地の戦況を乱し始めたという。
そのまま、ヴァルブルガと紅牙・ギャスパーはまた別の方面へと向かってしまう。
ここぞとばかりに倒れたサイラオーグを踏み潰すグレンデル。
それに激昂したイッセーの攻撃を回避し、グレンデルは一時的に後退する。
そんな中、致命傷を受けたはずの獅子王が立ち上がる。
その身に滅びの魔力を宿さぬとも、目の前の邪龍に滅びを贈るために…。
だが、ここでグレンデルに再度通信が入り、撤退命令が下された。
聖杯を盾にされている以上、グレンデルに拒否の文字はない。
龍の門が開かれ、そこへと足を進めるグレンデル。
しかし、それは獅子王によって阻まれる。
渾身の力によって投げ出されたグレンデルにクリムゾンブラスターが直撃し、落下するグレンデルにサイラオーグの鉄拳が突き刺さり、遂にグレンデルを打ち倒すことに成功する。
そこへ白音モードとなった小猫がイッセーの鎧の宝玉を触媒にグレンデルの魂を封印することに成功する。
こうして邪龍グレンデルを完全に倒すことが出来たD×Dだった。
その後、ソーナ会長から全体指示が伝達される。
アウロス学園の周辺に集合せよ、と…。
それは即ち、地下シェルターで作成が行われていた魔法使い達による新型の転移魔法陣の完成が間近に迫った証拠である。
………
……
…
学園周囲に集結しつつあるD×Dのメンバー。
しかし、転移の準備が着々と進んで魔法陣が発動する直前に、それは起きてしまった。
転移魔法陣の光がアグレアスへと向け、放たれたのだ。
そこへヴァルブルガが現れ、事の経緯を嬉々として語り出す。
簡単に言えば、魔法使いの中に裏切り者がおり、そいつがギリギリのタイミングで転移魔法陣に細工を施して対象を住民からアグレアスへと変更させたのだ。
それは見事に成功し、アグレアスは結界の中からその姿を消したのだった。
何故、アグレアスを狙ったのか、ヴァルブルガが喜々として語ろうとした時だった。
結界を破壊して一筋の流星がアウロス学園の校庭に突き刺さる。
その流星とは…『
その持ち主が結界を破壊したということになる。
しかし、その持ち主は…。
だが、そんなことを考える間もなくD×Dの前にヴァルブルガと残りの量産型邪龍や禁手龍騎士が現れる。
そして、ヴァルブルガは学園へと攻撃を開始する。
それを阻止しようとするが、悪魔では紫炎は致命傷になりうる。
紅神・神宮寺眷属がヴァルブルガを止めようとするが、量産型邪龍や禁手龍騎士のせいで時間が掛かる。
その間にもヴァルブルガの攻勢は止まらない。
と、そこに匙が黒炎を身に纏い、決死の覚悟で紫炎を相殺しようとする。
しかし、それはあまりにも無謀であった。
相殺しきれずに匙の体は紫炎に焼かれ始める。
そこで匙は己の中にあった想いを吐露する。
イッセーへの憧れを…。
しかし、匙はイッセーではない。
イッセーはイッセーなりに頑張った結果が今の姿ならば、匙は匙なりに己の道を、『先生』になるという夢を追いかけることを宣言していた。
そこへとある理由にてある神器(滅神具といった方がいいか)の深奥に潜っていたヴリトラが帰還した。
そして、匙の成長を待ちわびたとばかりに禁手へと至る。
『
暗黒の鎧からいくつもの黒い触手が伸び、黒炎を滾らせる。
匙とヴリトラの黒炎と、ヴァルブルガの紫炎による対決が空で繰り広げられる。
そんな空中激戦をしている一方で…
帰還したファーブニルを召喚するアーシア。
だが、これはこれで酷かった。
何を思ったのか、某クッキング番組の如きセットを用意し、自身もまたクッキング帽を被っていたのだ。
そして、アーシアから対価のパンツを貰うと、それを調理し始めたのだ。
完成したファーブニル式「ディアボラ風アーシアたんのおパンティー揚げ」なるものをファーブニルは咀嚼して食べてから一言。
『………ありのままのキミでいてほしい』
その一言に量産型邪龍の何匹かは号泣してしまった。
こんなことで量産型邪龍が攻撃を止めるのもおかしな話だが…。
当のアーシアはと言えば、流石に倒れ込んでしまっていた。
まぁ、当然と言えば当然と言えるが…。
その間にイッセーもまたドライグから歴代白龍皇の説得の経緯を聞いていた。
それは…一言で言えば、ファーブニルのパンツ講座で説き伏せてしまったようで…。
ヴァーリの心情が心配なくらいだろうか…。
その時だった。
レプリカ赤龍帝の鎧を纏ったユーグリットがロスヴァイセを
そこへ地下で裏切り者の相手をしていたゲンドゥルさんが現れてロスヴァイセを助けようとする。
しかし、疲弊しきった体では無理があったのだが、ユーグリットが転移しそうになったところを転移封じで逃げれなくする。
転移を封じられたユーグリットはそのまま龍翼を広げて逃亡。
それをイッセーとリアスが追いかける。
イッセーとユーグリット。
本物と偽物の赤龍帝対決が始まる。
以前の対決ではワイバーンもあってイッセーが勝利を収めたが、今回はそれを踏まえてユーグリットも最初から油断なく攻撃を繰り出していた。
しかし、歴代白龍皇の説得に成功し、ワイバーンも赤龍帝の力に変化させられるようになっていたイッセーがユーグリット相手に優勢に立つ。
そして、禁じられた攻撃法『ロンギヌス・スマッシャー』によって勝利をもぎ取っていた。
それを食らい、ユーグリットはロンギヌス・スマッシャーで紅く染まった空を見て呟いていた。
「………姉上。そんなに『赤』が好きですか? 私も…『赤』になったのですよ?」
そうして、ユーグリットは捕まえられた。
………
……
…
戦後処理となったアウロス。
町は邪龍の爪痕が色濃く残っていた。
学園もまたユーグリットの最後の一撃で半壊してしまっていた。
また、結界内の一時間は外では一分しか経過しておらず、結界外では三分しか経ってなかったそうだ。
今は結界があの聖槍によって破壊されたので、同じ時間を進んでいるが…。
ヴァルブルガはアジ・ダハーカや残りの量産型邪龍と共に転移魔法陣で退散していた。
そして…
「絶魔勢が、人工神器を…?」
現場に駆け付けたアザゼルに忍が報告を行っていた。
「えぇ、そのせいでストロラーベという次元世界の人間が人工神器の禁手によって龍騎士と化しました」
「人工神器の禁手だと…? あれは一種の暴走状態なんだぞ。それを龍騎士なんて不確定なもんに変身させることに特化させたっていうのか?」
アザゼルが何やら思案していると…
「問題は意識を刈り取っても元に戻らなかったことです。この状態が続けば、あいつらは…?」
忍がそう付け加える。
「元に戻らないだと? 何かしらのデータ取りか? それとも最初から捨て駒同然に扱ってたのか…少なくともそれで元に戻らないなら由々しき問題だな。暴走状態がこれ以上続けば命にだって関わるだろうしな」
「そう、ですか…」
「せめて何かしらのサンプルでもありゃ調べようもあるんだが…」
「そう簡単には見つからないですよね…」
アザゼルと忍が頭を悩ませていると…
「お~い、忍。やっと"こいつ"を見つけたぜ」
狼牙が、ユウマを連れてやってきた。
その手には何やら鎖をぶら下げて…。
「親父! それにユウマも!」
「親父?」
忍の言葉にアザゼルは首を傾げる。
「ぁ、アザゼル先生は初めてか。俺の親父の狼牙です。ストロラーベで再会したので、家族と一緒にこちらに来てもらってました。眷属を紹介するために…」
「そうか。良かったな」
「えぇ……妹が出来てたのには驚きましたがね…」
そんな会話をしている間に…
「しっかし、これはどうすっかねぇ?」
狼牙が鎖の先を見てぼやく。
『ガアアアア!!!』
見れば、漆黒の龍騎士が鎖でグルグル巻きにされていた。
「なんで、龍騎士がいるんだ?」
「詳しいことはこいつから聞け。どうも俺にはサッパリな話なんでな」
そう言って狼牙は龍騎士を踏みつけながら暴れないように霊力の鎖でさらに縛り上げる。
「ユウマ、これは一体どういことだ?」
「えっと…その…」
事の経緯をユウマなりに説明する。
「つまり、なんだ? そのユニゾンデバイスの力でスイミランさんを助け出したと?」
「…はい」
「で、その反動かどうかは知らないが、龍騎士って皮が剥がれたのが、こいつだと?」
「そう、なっちゃいます」
「それでこいつを拘束したはいいが、移動手段がないところに親父が捜しに来たので助けてもらったと…」
「……はい」
ユウマの説明を聞き、それを確認する忍達。
「まぁ、今回は無事で良かったが…頼むから心配させないでくれよ。もしものことがあったら親御さん達にどう説明したらいいのか…」
「ご、ごめんなさい…」
狼牙の言葉にユウマも謝るしかなかった。
「で、どうします? これ…」
『グルルルル…!!』
狼牙に縛り上げられた龍騎士を指して忍が困ったような声を出す。
「始末するのが手っ取り早いんだがな…流石にこう人目が多いとな…」
狼牙もいちいち移動させるのが面倒なのかそう言うと…
「いや、こいつは良いサンプルだ」
アザゼルが龍騎士を見て呟く。
「サンプル?」
その言葉にユウマが首を傾げると…
「こいつを調べ上げればもしかしたら龍騎士化した人間を元に戻せるかもしれねぇ」
「本当ですか!?」
「あぁ、可能性は高いだろう。早速、調べてみる」
「お願いします!」
こうして龍騎士はアザゼルが預かる事となった。
アウロス学園の校庭に設置された臨時テント。
アザゼルと別れた後、忍がユウマや狼牙と共にそこに向かっていると…
「「「「えええええええええええええ!!?」」」」
何やら絶叫が聞こえてきた。
「はぅわっ!?」
「なんだ?」
「何かあったか?」
絶叫に驚くユウマをよそに忍と狼牙は平然と歩を進める。
「(え~…驚いたの、僕だけ…?)」
その事実に急に恥ずかしくなるユウマだった。
「声からしてイッセー君とレイヴェルさん…あとは珍しい木場君と小猫ちゃんかな?」
そんな分析をしながら絶叫のあったテントに向かうと、そこにはグレモリー眷属がいた。
「どうしたのさ?」
「おぉ! し、忍! き、聞いてくれよ! ゼノヴィアのやつが…!!」
「彼女がどうかしたの?」
「生徒会長の選挙に立候補するってよ!!」
「………………………は?」
イッセーの言葉を聞き、忍も鳩が豆鉄砲を食らったような表情になってゼノヴィアを見る。
見れば、ゼノヴィアは天に指を突き指して堂々としている。
「え、生徒会長って…え、ええええ!?」
その事実に忍もかなり動揺していた。
「忍さん?」
「その娘っ子が生徒会長になるのがそんなに不思議なのか?」
事情を知らないユウマと狼牙が呑気にそんなことを言っている。
「いや、まぁ…失礼なのは重々承知なんだが…かなりイメージに合わなくて……でも、そうか…ゼノヴィアさんが生徒会長に立候補か…うむむ…」
何度も脳筋な部分を見せつけられてきたせいか、忍も困惑の色が濃い。
「???」
そもそもこのメンバーをよく知らないユウマからしたら首を傾げるしかなかった。
「てか、忍…」
「なんだよ?」
「その女の子誰?」
忍が見知らぬ人を連れてる=女の子…という図式がイッセーには少なからずあるのかもしれない。
「うぐっ…お、女の子…」
知らない人にまた女の子と言われたユウマはその場に女の子座りしてしまう。
「あ~…こいつ、れっきとした男だからな?」
「え゛!? じゃあ、まさか…ギャー助と同じか!?」
つまり、女装趣味の持ち主かと言われております。
「ギャー助?」
また知らぬ単語が出てきてユウマはまたも首を傾げる。
「いや、そんな趣味は無いはずだぞ」
至極真っ当に答える忍も趣味までは詮索してなかったと思い立ったので、ちょっと語尾が怪しい。
「あの、忍さん? さっきから何の話を…?」
それでも気になるユウマはその真意を聞こうと声を出す。
「ん? あぁ、簡単に言うとだ。お前に女装癖の疑いが掛かった」
「えぇ!? 僕、そんな趣味ないです!!」
まさかの疑いにユウマはハッキリを言い切った。
「だ、そうだ」
「そ、そっか。なんか悪かったな」
「い、いえ…」
何とも言えない微妙な空気が流れる。
「…………っ?!////」
その微妙な空気のせいか、ユウマは視線を彷徨わせた挙句、ある一点を見てから即座に目を背ける。
「ユウマ?」
「い、いえ…なんでもないです! あ、ぼ、僕、デヒューラさんとあの子の様子を見に行かないと…!////」
そう言うと、そそくさとユウマはデヒューラと女の子を預けたテントへと走っていく。
「どうしたんだ、あいつ…?」
「ふむ…」
ユウマの見ただろう視線の先を見てみると…
「あらあら、どうしたのかしらね?」
朱乃がいた。
「…………………」
そこから忍はイッセーを見て…
「な、なんだよ?」
「いや、意外とユウマとイッセー君って、波長が合いそうかな~って思ってみたりしただけだ」
そんなことを言い出す。
「は?」
言われた本人は訳が分からないとばかりに疑問符を浮かべる。
グレモリー眷属のいるテントでいくつかの情報交換をした後、忍はユウマの後を追っていた。
「ここか」
そのテントの中の様子を窺うと…
「だから、少しデータを取るだけだっての」
「それでもです!」
何やら言い争うような声が聞こえてきた。
「何の騒ぎだ?」
不思議に思って中へと進むと…
「あ、忍さん」
「よぉ、邪魔してるぜ?」
簡易ベッドで寝ているデヒューラと女の子の前に立つユウマと、困り顔のアザゼルだった。
「アザゼル先生。龍騎士の調査は?」
「あのサンプルならさっさと俺の研究室に送った。で、俺はアレから脱した人間も調べようと思った訳だ」
この構図とアザゼルの言から…
「なるほど。でも、ユウマがそれを許さないって感じか?」
忍はそう推測していた。
「そういうこった」
「デヒューラさんとこの子を調べるだなんて…これ以上、関わっちゃダメだと思うんです」
「ずっとこの調子でな」
肩を竦めるアザゼルはやれやれといった感じだった。
「気持ちはわかるが…ユウマ。お前ももう既に巻き込まれてる身なんだ。それにここまで関わった以上、簡単には抜け出せないんだぞ?」
「それは…!」
「事情はどうあれ、今のとこ唯一の禁手龍騎士から脱した例だ。その身体データを取るだけだっての。それにユニゾンデバイスだっけか? そっちは専門外だから何も出来ないし、出来たとしても何もしねぇよ」
「うぅ…!」
忍とアザゼルの言葉にユウマはただ唸るだけだった。
「こう見えてアザゼル先生は信頼出来る。だからユウマ、ここは任せてくれないか?」
「身体データっても異常がないかどうか見る程度だからな」
「でも…!」
「精神制御の後遺症も調べないとだろ?」
「それは、確かにそうですけど…」
ユウマが渋っていると…
「私なら別にいいわよ」
簡易ベッドで寝ていたデヒューラが上体を起こしながらそう言う。
「デヒューラさん!?」
デヒューラが起きたことに驚いたようだ。
「もう、起きて大丈夫なんですか?」
「さっきからうるさくて寝れなかったのよ」
「ぁぅ…ごめんなさい…」
そのやり取りを見て…
「(彼女、こんな感じだったか?)」
忍はフェイタル学園での印象とだいぶ違う事に違和感を覚える。
「体を調べるくらい別にいいわよ。実際、自分でも生きてるのが不思議なんだし…」
「つまり、絶魔勢にとってお前さん達は"使い捨ての駒"って訳か」
そんなアザゼルの言葉に…
「っ!」
「そうね。そうだったんでしょうね…」
ユウマが少しカチンときたのに対してデヒューラはクールな反応だった。
「デヒューラさん…」
「そんな心配しなくても平気よ、"ユウ"。もう、どうでもいいことだし…」
心配そうなユウマとそれを軽く受け流すデヒューラだった。
「じゃあ、本人のOKも貰えたんでさっさと採取しちまうか」
そう言うとアザゼルは簡易ベッドに座っているデヒューラの頭上に記録用の魔法陣を展開していた。
「あ、そこの小さな嬢ちゃんは退けとけよ? 一緒にデータが取れちまうからな」
「は、はい」
寝ている女の子を優しく手の上に乗せるとユウマはデヒューラから少し距離を取る。
「んじゃ、失礼して…」
記録用魔法陣をデヒューラの頭上から下へと通過させると、その魔法陣が小さくなってアザゼルの手元に移動する。
「これで完了だ。この魔法陣に記録させた身体データと、あの龍騎士を解析することで何とか龍騎士になった連中を元に戻してやるよ。元々、人工神器は俺達の研究物だしな」
アザゼルの言葉に…
「………………」
デヒューラは特に何も言わないでいた。
「邪魔したな」
「じゃあ、俺もこれで…」
デヒューラの身体データを取り終えたアザゼルと、元々様子を見に来ただけの忍はそのテントを後にする。
それから少しして…
「あの、デヒューラさん」
「なによ?」
「さっきの、"ユウ"っていうのは…?」
「私なりのアンタの呼び方よ。いつまでもちゃん付けは嫌なんでしょ?」
「そうですけど…」
「私、もうひと眠りするわ…」
「あ、はい。じゃあ、僕はここにいますので…」
「………ボソッ(ありがと)」
「え?」
「何でもないわよ」
そうしてデヒューラは簡易ベッドに横になる。
「(本当に、良かった…デヒューラさんが無事で…)」
デヒューラの横になるベッドの側にイスを置いてそこに座る。
と、そこへ…
「邪魔だったか?」
紅牙がやってくる。
「あなたは…確か、神宮寺さん」
「紅牙でいい」
そう言うと紅牙は近くのイスを引っ張り出して座る。
「お前に話があってきた」
「お話、ですか?」
紅牙の言葉にキョトンとするユウマ。
「単刀直入に言う。お前、俺の眷属にならないか?」
そう言って取り出したのは、僧侶の駒だった。
「眷、属…?」
疑問符を浮かべるユウマ。
まさかの眷属勧誘。
この話を聞き、ユウマがどのように判断するのか…。
悪魔の裏切り者の示唆、クリフォトや絶魔勢の動き…。
まだまだ予断は許されないだろう。
そして、来たる師走の終わりの時期。
激動の二学期の終わりを告げる。
しかし、激動の時代はその歩をまだ緩めてはくれない。
新たな星座もまた…やってくるだろう。