異世界、日本から言われる異世界と呼ばれる世界、そんな世界には例のごとく転生者が多い、その文明レベルは現実の日本を超えた卓越した技術を持つ他、1部の種族の者は神に愛されていた。
神に愛された者は、いわゆる特殊能力を持っている、だが愛されていなくとも魔法という手段を用いて能力者と渡り合うことが出来る、近未来的でファンタジーなこの世界に、とある穏やかな村があった。
名前も無く、人々がただ穏やかに近代的な文明に触れず、魔法や、能力を用いて暮らしている。そんな村に、とある少年がいた。
「サムーッ!遊ぼ〜ッ!」
人の名前を呼ぶ少女が1人、水車を引いた家の前で少女が力いっぱいに天を貫く程の声で叫んだ。少女の名前はゲイル、能力も持たず、魔法も少しくらいしか出来ない、白く短い髪を持つ少女、その性格も男勝りと言えた明るい性格で人を惹かせていた。
「も〜なんだよ、俺もうちょいゴロゴロしてたいってのに」
「家にいてゴロゴロしてても本も無ければ趣味もないでしょ、私が誘ってやってんだからつべこべ言わず遊ぶのよ」
2人の年齢は今年12歳になる、いわゆる少年少女、この世界において僻地には教育が行き届いていなかった。
家の中から出てきたのは12歳と考えると少し大きめの身長の少年だった、ゲイルの言葉からも分かる通り、名はサムと言う、茶色の髪にツーブロックを入れたような、柔らかい目をした少年であった。
実を言えば、このゲイルとサム以外同年代の子供はいない。
だからこそ互いに遊び相手は1人だけ、サムはゲイルに対して好意を抱いていた。
「サム、ちょっと村の外の草原まで行こうよ! あそこなら風が吹いて気持ちいいんだよね、最近は太陽が月に嫉妬して、頑張っちゃってるから、尚更あそこは今過ごしやすいかな〜」
たまにゲイルは、その年齢に見合っているようで見合ってない広い表現をする、それを聞いてサムもなんだか変な汗をかいていたようだ。
「俺もあそこは好きだし、行くか」
家を出てから、駆けていく少年少女、16分くらい駆け、森を抜け、涼しく心地の良い軽い風が吹く平原に出た。
風が歓喜していた、風が歓迎していた、少年少女の身を包み草を千切飛ばしていた。
「はぁ〜っ涼しい〜!」
平原の芝生に寝転がり、ゲイルは天を仰いだ、どうしようもないくらいに吸われるような空の青、心地良いくらいに濁りがなくて、水色が少し混じるような美しい色をしていて、眩しかった。
なんだか複雑な感情をサムは抱きながら、ゲイルの横に寝転がる、ふわっとゲイルの花のような香りがサムの鼻をくすぐる。
日差しに段々と眠気を覚えながら、少年少女は目を閉じた、心地よい暑さと風が少年少女のゆりかごになっていた。
日が落ち、空が暗くなる夕暮れ時、少年は目を覚ました。少し涼しさを覚え、嫉妬した太陽が落ち着いているそんな時間だ。
「あ〜寝てた……ゲイル起きろッそろそろ帰るぞ」
「ん〜……いた〜いっ」
起きたサムは、隣に眠っていたゲイルのほっぺを軽くつまみ引っ張った。
「あっほんとだ帰るよ! 」
途端にゲイルは立ち上がりサムの手を掴んだ。
――帰ろ!
ゲイルは、その花のように明るい笑顔を咲かせた。サムにとってはそれが太陽に思えて、ただ何も考えずゲイルに手を引かれていた。
また森を抜け村の前へと、その眼前に広がったのは息を飲むほど美しい燃える炎の光景であった。
その燃えた炎の美しさと音に2人は既に虜にされていた。
「あっ……」
ゲイルが感嘆の言葉を発した。
「あっ……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ……」
ゲイルの目には水の雫が浮かんだ、それすらも乾かせる炎の勢いは留まることを知らなかった。
「……」
サムは目の前で起きている状況に理解が追いついた。目は見開き、口に手を当て、言葉を失っていた。
――村が燃えている
「ね、ねぇサム見てよ、き、綺麗だね……」
ゲイルは自己防衛に走っていた、それを自身の住む村だと認識しようとしないで、震えを起こしながら、苦笑いをして、燃える村を指さしていた。
――嫌だ、分かりたくない、そんな感情が私の中で確実に渦巻いていた、目の前の光景に息を飲んで、その炎の美しさのみを感じていたかった、だけれど時間だけがそれを分からせてくる。
少し見渡せば、黒く焦げた天に何かを伸ばしたものと、1部がこげて目から光を失ったものがあった、火は次第に収まっていた。
サムとゲイルは途端に後ろに引っ張られた、大人の力で地面にねじ伏せられ、腕に注射針を刺され、血を抜かれていく。
「2人とも能力は無し、メスガキは魔力があり少し程ならば魔法が使えるようだがそれぐらいは矯正するとしよう。メスガキはお前らが連れてけ、こっちの生意気なガキの方は俺達がやる」
声の数的には6〜7人ほどの男の声がしていた、どれも大柄で変な服装でいた。その顔も分からず分かることは身長と声のみ。
ゲイルが遠ざかっていく、叫び声が遠のいていくのが分かる。
――あぁ、離れないでくれ。
サムは男の腕を噛んだ、ゲイルの方へとまっしぐらに走った。それを阻むように男に蹴り飛ばされ、その場に転がっていった。地面に転がり悶える、遠くに去っていくゲイルの姿が見えていく。
声を絞り出して、少女の名前を呼んでみようとするが出ない、絶望とはこの事だった。
「あぁ、こいつはもういい、どうせのたれ死ぬ、ほっとけ」
男達は去っていった。サムは薄れ行く意識の中、地面を指でえぐるようにし、目を瞑った。