黒江が秋乃さんを連れて、会計を済ませている間、
「──ねぇ、君。少し時間良いかしら?」
「……えっと、僕、ですか?」
突然、がたいのいい男の人が僕に近づいてきた。
僕は一瞬、自分なのか、わからず、少し間を置いて、男に質問する。
「そうよ、貴方よ。他に誰がいるのかしら?」
「……えっと、すみません。それでお話というのは何でしょうか?」
「何、そんなに大した時間は取らないわ。彼女とのデートを邪魔するワケにもいかないし……」
「はぁ、そうですか……」
何の話をされるのか、僕はわからず、とりあえず、男の話を聞くことにした。
(それにしても、この人、喋り方に癖があるな……)
ふっと、僕は男の喋り方に、そう思った。
──次の瞬間。男の質問に、僕は面食らった。
「──貴方、黒江の元カレ?」
「……え?」
突然、男の質問に、僕は目を点にして、困惑した。
それを見た男は「あら?違ったかしら?」と言って、僕は「違います」と、はっきりと答えた。
「そうなの?てっきり私、貴方と黒江が仲良いから、そういう関係なのかと──」
「違いますよ。花宮さんとは最近、仲良くなった友人です」
「──あら、そうなの?」
「はい。たまたま同じ趣味で仲良くなって……たまにお話する程度です……」
「その割には、随分と仲が良いようね?」
そう言って、男は顔を近づけ、僕に問い詰める。
いや、問い詰められても、違うものは違うので、これ以上、聞かれても、正直、困る。というか、なんで、この人は、僕が黒江の元カレなんて、思ったんだろう?
「──何やってんですか?店長?」
ふっと、後ろから声が響き、僕と男はそっちに視点を向けた。
そこには会計を終わらせた店員服を着た黒江と、お店の紙袋を持って、買った服に着替えていた秋乃さんの姿があった。
「あら、黒江?随分と仕事が早かったわね?」
「日頃から、店長の教えが良いので、早く終わりました」
「あら、褒めても何も出ないわよ?」
などと、黒江と、この店の店長らしき男は軽口を言い合う。その姿はまるで弟子と師匠のような
「……それよりも店長、一つ、良いか?」
「あら、何かしら?黒江?」
「ウチをからかうのは別に良いけど、
「……」
黒江の意外な言葉に、男は驚いた顔……にはなってない。が、何やら、意外そうな顔で、僕と黒江の顔を、交互に見る。
「あらあら、貴方達、本当に、“ただの"お友達なの?」
「だから、そう言ってますよ……」
「そうなの?黒江?」
「……そうっすよ。なので、店長が思うような関係じゃないっすよ?」
「そうなの?それなら……少し断念だわー」
断念って、どういう神経をしているのか?と、僕はこの男に対して、嫌悪感を
そう思っていると、男は突然、僕に視点を向けた。
「ゴメンナサイ。私ったら、つい勘違いしちゃったわ。お詫びに、何か一つ、サービスしちゃうわ」
「……え?」
男は突然、謝罪し、同時に、何か、サービスをすると言い出した。
それを聞いた僕は慌てて、「い、いえ、誰だって勘違いはしますよ!」と、言って、その場を
(何だ、ちゃんとすれば、この人、良い
脳裏で、そう思っていると、男はまた、意外そうな顔をした。
ただ、さっきと違うのが、少し
「あら、許してくれちゃうの?だとしたら、ステキ♪私、貴方のこと、惚れちゃうわ♪」
「「「……え?」」」
うん、
「な、何フザケタことを言ってんだ!?アンタは!?」
「そ、そうですわ!勝様はわたくしの彼氏ですの!誰にも渡しませんわ!」
「ちょっと、秋乃さん!?」
突然、慌てふためく、黒江と秋乃さん。
秋乃さんに関しては僕の腕を掴む始末。いや、腕に当たっているんですが、気づいてます?秋乃さん?……何とは言いませんが、何とは。
「あー、もう!店長!そんなんだから、人に好かれないんでしょうが!」
「何よ!不良の貴方だけには言われたくないわよ!」
「不良で悪かったな!後、だけは余計だ!地味に傷つく……!」
などと、喧嘩腰に話す黒江と男。
それを見た僕は秋乃さんに、「今のうちに、こっそり、お店を出よう」と、小声て提案し、秋乃さんは「わかりましたわ」と言って、僕達はこっそり、お店を出た。
いつも間にか、
ん?店長はどうしたかって?ウチと口喧嘩した後、奥で服の採寸をしてる。あの人、見た目の割に、結構手際が良いんだよな。そこだけは見習わないとな……。
あー、ウチがなんでバイトをしてるかと言うと、デュエマ甲子園の参加費や交通費、後、デッキを強化するために、カードを買う資産が必要だからだ。
それで、夏休みに入る前に、この店でバイトを始めたんだ。
瑠璃も前まではバイトをしていたらしいが、ジャシン帝と契約してからか、今はバイトをしていないんだよな。何でだ?
結衣のヤツは今、何をしているかわからねぇ。が、何やら、マジックに新しい可能性を感じて、それの研究をしてる。
……そんな訳で、ウチらはそれぞれ、やれること、できることをやっている。
まぁ、そんなことよりも。
「勝のヤツ、ちゃんと最後までデートできるか?いや、それよりも──」
──あの女、何を考えてやがる?
何かを企んでるみたいだが、勝のヤツ、気づいてるか?
「……まー、ウチが気にしても仕方がないし、そのうち、勝も気づくだろ」
そう、口にしたウチは仕事に集中した。