「さて、秋乃さんの服も買ったし、これからどうしようか?秋乃さん?」
「そうですわねー……ん?」
服屋を後にした
ふっと、秋乃さんは何かに目をつけたのか、視線を一つの方角に集中した。
「?どうしたの?秋乃さん?」
「……あ、何でもないですわ!勝様!」
何でもない、などと言っているが、少し目が
もしかして、疲れてるのかな?
「本当?もしかして、少し疲れた?」
「つ、疲れてませんわ!全然!全く!本当に!大丈夫ですわ!」
慌てて秋乃さんは否定するが、それが逆に僕の心を余計に不安にさせる。
こういう時、どうすれば……あ!そうだ!
「秋乃さん、歩ける?」
「え?あ、歩けますけど……」
「ほんと?それなら、ついてきて!」
「しょ、勝様!?」
僕は秋乃さんの手を掴んで、ある店に向かった──
──商店街の中央に、一つの喫茶店がある。
その喫茶店の名は『喫茶・クロ咲店』。
お店の名前や内装は少し変わっているが、それ以外は一般的な喫茶店と何も変わらない。
僕は秋乃さんを連れて、その喫茶店に着き、その店の入り口の前に足を止めた。
「ここだよ!秋乃さん!」
「これは……喫茶店ですの?」
お店の看板を見て、秋乃さんは少し目を疑うも、僕はここに来た目的を説明する。
「ここなら、のんびりと体を休められるし、美味しいご飯も食べられる……それに、ちょうど小腹がついたから、ここで食べてから、デートの続きをしよ?」
「……なるほど。それでしたら、中に入りましょう」
「決まりだね」
一通りの説明をすると、秋乃さんは納得した。
秋乃さんの返答を聞いて、僕は扉を開けた。
自分から先に入らず、秋乃さんを先に中に入れ、すぐさま、自分も中に入り、ゆっくりと扉を閉めた。
「いらっしゃいませー。2名様ですか?」
「はい、そうですわ」
「それでしたら……あちらの窓際に案内しますね」
「ありがとうございます」
お店に入ると、元気いっぱいの店員のお姉さんが出迎えてくれた。
その後、流れるように、座席に案内され、僕と秋乃さんは向かい合って、椅子に座った。
「ご注文が決まりましたら、お声かけください。因みに、私のオススメは……デート中に幸せになる!ドリンクが付いた卵とハムのサンドイッチセットがオススメです!」
「そう言ってるけど、どうする?秋乃さん?」
「そうですわね……折角なので、それを頼みましょう」
「了解。お姉さん、そのサンドイッチセットを2つ、お願いします。後、ドリンクは……」
「紅茶を2つ、お願いしますわ。後、彼にガムシロップを1つと、わたくしに砂糖を2つ、お願いしますわ」
「わっかりました!それでは後ほど、ご注文の品をお持ちしますね♪」
そう言って、笑顔で、お店の奥に入る店員のお姉さん。
さて、待っている間、秋乃さんと何を話そうか、と、考えていたら、先に秋乃さんが口を開いた。
「──勝様。大事な話があります」
「ん?大事な話……?」
──それはあまりにも
「……それは、とても大事な話?」
「はい……わたくしと勝様……強いてはデュエマ部にとって、大事なお話です」
「……デュエマ部?それはどういうこと?秋乃さん?」
──“デュエマ部にとって、大事な話”。
その言葉に、僕は一瞬、どういうことだ?と、わからず、眉を上げて驚き、秋乃さんに問いかけた。
それを聞いて、秋乃は一呼吸置いて話し始めた。
「今年のデュエマ甲子園、わたくしは一緒に参加できません」
「……え?」
──どういうことだ?
「どういうことなの?秋乃さん?」
「どういうことも何も、そのままの意味ですわ。勝様」
「……」
──意味がわからない。
「意味がわからないよ、秋乃さん……」
「意味がわからないも何も、今年のデュエマ甲子園は参加できない、と、言っているのです」
「……」
──今、この瞬間。僕の脳裏にあるのは
そう思った時、ふっと、僕は気づいた。
何故、秋乃さんがデュエマ甲子園に参加できないのか?その理由が何なのか、僕はまだ聞いていないことに──
「どうして参加できないのか?理由を聞いても良い?」
「……」
その問いに、秋乃さんは黙り込んだ。
否。黙り込む、というより、何をどう話せば良いか、考えているんだと思う。
そう思った時、僕は一度、気持ちを落ち着かせ、冷静さを取り戻そうとした。
「お待たせしましたお客様。ご注文のドリンク付きの卵とハムのサンドイッチセットでございます」
「あ、ありがとうございま──兄さん!?」
突然、注文した品を届けてくれた店員のお姉さん……ではなく、店員のお兄さんが現れ、その人の顔を見て、思わず、僕は思わず、“兄さん”、と、口に出してしまった。
その言葉を聞いて、秋乃さんは兄さんの方に振り向いた。
「!?貴方は……!?」
すると、兄さんの顔を見るなり、秋乃さんは驚きの声を上げた。何で?
「?何だ?俺の顔に何か付いているのか?」
「あ、貴方!わたくしのことを忘れたというのですの!?」
「ん?……あー、あの時の女二人組の一人か?」
「なッ!?」
え?何?二人とも、顔見知りなの?それよりも、あの時って、何?どういうこと?
「へ、変な覚え方をしないでもらいますわね!」
「変なのは貴様の方だろ?女の次は男か?しかも、相手は……俺の大事な弟か……?」
「ふぇ?勝様のお兄さん……?」
「……」
「……」
「……」
──え?何コレ?どういう状況?
──お互いの出会いや関係など、そういった状況説明に1時間……いや、数分ほど、時間がかかった。
どうやら、僕が夏合宿で行っている間、秋乃さんは兄さん……もとい、黒崎レオンと出会っていたみたいだ。
その時、何故か、兄さんがエリカとデュエマすることになって、結果は兄さんの勝利。その後は、何か、助言を言って、二人と別れた。
一方、兄さんは“ある人物”を探していたらしく、その時、偶然見かけた秋乃さんとエリカの二人を見かけ、二人の行動が怪しいと思い、それが理由でエリカとデュエマをすることになったらしい。が、結果はご覧の通り。
今も、その人物を探しているが、まだ見つかっていない。
次に、僕と兄さん。僕達の関係は至ってシンプルで、僕と兄さんは血の繋がりのある兄弟だ。
ただ、親が離婚して、僕は母さんに、兄さんは父さんに、それぞれ引き取られた。
兄さんの苗字が違うのは父さんの姓で名乗っているからだ。
それからは色々あって、僕が中学生になるまで、僕達は互いに、血の繋がりの兄弟だと気づかず、出会い、そこで、また色々あって、再会した。
「その色々が気になりますが……」
「長くなるから、そっちはまた今度、説明するよ」
「……わかりましたわ」
実際のところ、ちょっと話がややこしいから、その辺はまた、説明するとして、僕は兄さんに視点を向ける。
「それで兄さん、どうして、顔を出したの?わざわざ兄さんが対応する必要がないよね?」
「む、それは違うぞ、弟よ。兄さんはただ、お前達が揉めている気がしてな。それで仲裁してやろうと、顔を出したのだぞ」
「……その必要はないよ」
「何故だ?」
「……これは僕と秋乃さんの問題だ。他の人には関係ない話だ」
「……またお前は同じ
「……」
そう言えば、僕が結衣ちゃんと別れた時も、こんな感じだった気がする。
そう思った時、兄さんは僕に一つの提案をした。
「……全く、こういう時こと、
そう言って、兄さんが取り出したのは、1枚のデュエマのカード。
それを見た僕は、ああ、確かに。と、口には出さないが、なんとなく、納得した。
「……そうだね。こういう時こと、デュエマの出番だね。秋乃さん」
「ええ、わかっていますわ。勝様」
「「──デュエマをしましょう(しよう)」」
お互いに意見が合い、僕達はデュエマのデッキを取り出した。
「どうやら、お互いに気持ちは同じだな。なら……この料理は後で良いな?」
「……」
「……」
そう言って、兄さんは数分前に持ってきた料理を引っ込めようとしていた。
言い忘れていたが、お互いの状況説明のため、僕と秋乃さんはまだ、この料理を食べていない。
それと同時に、ちょうど腹が減ってきている。
故に──腹ペコである。
「……先に、この店の料理を食べようか?」
「……そうですわね。腹が減っては戦はできぬ、ですわね?」
「……え?この流れで、お前ら、飯を優先をするのか?」
「「だって、お腹が空いてるんだもん!!」」
「息ぴったりだな!?」
そんなわけで、デュエマの前に、僕と秋乃さんは注文した料理を先に食べることにした。