デュエル・マスターズACE   作:リュウ・セイ

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ACE102:ラストデュエル(前編)

 

 

 

 食事を終えた僕と秋乃さんはデッキを取り出して、お互いにデッキをシャッフルした。

 

 

「……」

「……」

 

 

 (しばら)く無言のまま、シャッフルをしていたけど、それは長くは続かず、僕は先に口を開いた。

 

 

「そう言えば、こうやって二人でデュエマをするの久しぶりだね」

「……そうですわね。思えば、お互い、色々あって、まともにデュエマをしていませんでしたわね」

「確か、最後にデュエマをしたのは……僕が学園に来る前の時だって?」

「そうですわね。よく覚えていますわね?」

「あの日は僕の人生にとって、転換期だからね。それに……秋乃さんと数少ない、思い出のデュエマだから覚えているに決まっているよ」

「……そうですか」

 

 

 そこまで話すと、秋乃さんはシャッフルする手を止めて、デッキを僕の前に置いた。

 それを見た僕は、自分もシャッフルする手を止めて、デッキを秋乃さんの前に置いた。

 

 

「……」

「……」

 

 

 そのまま流れるかのように、また無言のまま、お互いのデッキを交換してシャッフルと数回のカットをして、持ち主に返した。

 山札から5枚のシールド、5枚の手札を引き、ジャンケンをした。

 

 

「「ジャンケン、ポン」」

 

 

 僕はグーを出し、秋乃さんはパーを出した。よって、先攻は秋乃さんからだ。

 

 お互いに対戦の準備を終え、掛け声を言う。

 

 

「……それでは、いきますよ、勝様」

「うん、始めようか、秋乃さん。僕達の人生をかけたデュエマを──」

「ええ、はじめましょう。わたくし達のデュエマを──」

 

 

「「──デュエマ・スタート」」

 

 

 静かな掛け声と共に、僕達は人生をかけたデュエマを始めた。

 

 

 

 

 

 序盤、秋乃さんは《ゲラッチョの心絵(メモリー)》と《カーネンの心絵》を場に出し、盤面に光のタマシードを2枚並べながら、手札を増やしていた。

 

 対して、僕は《アシスター・コッピ》や《チャラ・ルピア》を引けず、《決闘者(デュエリスト)・チャージャー》を唱え、マナと手札を増やした。

 

 

(少し出遅れたけど、何とか、《決闘者・チャージャー》で後手の不利を巻き返せた。けど……)

 

 

 根本的な解決にはならない。と、頭では理解しつつ、秋乃さんの出方を(うかが)う。

 

 

「わたくしのターン。ドロー、マナチャージ……行きますよ、勝様」

「うん。いつでも良いよ、秋乃さん」

 

 

 ワンテンポ置いてから、秋乃さんは4枚のマナを全てタップさせた。

 

 

「《ゲラッチョの心絵》を《センメツ邪鬼(じゃき) <ソルフェニ.(オーガ)>》にスター進化した!」

 

 

 相手の場に同じコストのクリーチャーとタマシードをまとめて破壊する《 <ソルフェニ.鬼>》。だけど、僕の場にはクリーチャーも、タマシードもいない。

 

 

 狙いはおそらく──

 

 

「──《キャンベロ <レッゾ.Star(スター)>》からの侵略。そして、その《 <レッゾ.Star>》の能力で、こちらの展開を制限(ロック)、だね?」

「ご名答。そして、そのまま《 <ソルフェニ.鬼>》で攻撃──する時に、侵略、発動!《キャンベロ <レッゾ.Star>》にスター進化させ、勝様は次のターン、クリーチャーを1体しか場に出せません!さらに《 <ソルフェニ.鬼>》の攻撃時に手札を1枚捨てて、2枚ドロー!W(ダブル)・ブレイク!」

「っ、シールドチェック……トリガーはないよ」

「わたくしはこれでターンエンドですわ」

「……僕のターン」

 

 

 カードを引き、マナを増やして、僕は状況を分析する。

 

 予想通り、秋乃さんは《 <ソルフェニ.鬼>》を《 <レッゾ.Star>》に侵略進化させ、こちらの動きを制限してきた。

 正直、このターンは特にやることがない。けど、僕のシールドはまだ3枚ある。シールド・トリガーを引く可能性を考慮して、次のターンに繋げるしかない。

 

 

「《ボルシャック・バラフィオル》を召喚っ!ターンエンド!」

 

 

 タマシード状態の《ボルシャック・バラフィオル》を召喚して、僕はターンを終える。

 トリガーありきの前提(ぜんてい)条件(じょうけん)になるけど、これが最適(さいてき)だ、と、自分に言い聞かせる。

 

 

「わたくしのターン……断念ですが勝様、このターンで決めさせてもらいます」

「っ!?」

 

 

 突然のラストターン宣言。この流れで、それを言うということは秋乃さんの手札には切り札があるということだ。

 

 

「行きますよ、勝様!これがわたくしのラストターン……そして、わたくし達のラストデュエル!」

「……」

 

 

 僕は秋乃さんの言葉を受け止める。さっきは動揺して、受け止められなかったけど、今は秋乃さんの言葉を受け止め、その気持ちを理解する。

 

 

「正義を貫くは獅子(しし)の力!《カーネンの心絵》を《「正義星帝(スティルジャスティス・ティルジエンド)」 <ライオネル.Star(スター)>》に、スター進化っ!!」

 

 

 秋乃さんの切り札、《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》がバトルゾーンに現れた。

 

 やばい。もしも、あのカードが手札にあったら、トリガーを引いても逆転できるか、怪しくなってくる。

 

 

「《<ライオネル.Star>》の効果で、山札から1枚引き、手札から光のタマシードを1枚、場に出しますわ!わたくしは《スロットンの心絵》を場に出しますわ!」

 

 

「……まずいな」

「?何がまずいの?店長?」

「あのカードは光の進化クリーチャーを場に出す効果をもつカードだ。デュエマのルール上、進化クリーチャーは場に出たターン、プレイヤーやクリーチャーに攻撃できる」

「え?それって……」

T(トリプル)・ブレイカーを持った進化クリーチャーが出れば、お嬢様の勝ち。けれど……」

G(ガード)・ストライクやシールドトリガーが出れば、勝様にも望みがあります!」

 

 

 いつも間にか、観戦していた兄さんと店員のお姉さんの隣にマリちゃんとエリカの2人が入り、兄さん達、デュエマプレイヤーによるデュエマのルールと状況を説明した。

 

 

「その希望も断ち切ります!《スロットンの心絵》の効果で、手札から、コスト7以下の光の進化クリーチャー、《アルカディアス・モモキング》を、《スロットンの心絵》の上ににスター進化っ!」

 

 

 追い討ちをかけるかのように、秋乃さんは《スロットンの心絵》の上に《アルカディアス・モモキング》にスター進化させる。

 

 まずいな。《アルカディアス・モモキング》がいる間、僕は光以外の呪文が使えず、最初に出るクリーチャーはタップされた状態で出ることになる。

 

 

「これだけではありませんよ、勝様。《<ライオネル.Star>》の効果で、手札からコスト6以下の進化クリーチャーを場に出せますわ」

「っ、まさか!?」

 

 

 この状況で、追加で進化クリーチャーが出るとしたら、S(スター)-MAX(マックス)進化を持った進化クリーチャーだ。

 問題は何が出るか、だ。一番厄介(やっかい)なのは《MAX(マックス)・ザ・ジョニー》だけど、《モモキング-MAX》でも厄介だ。

 

 

 だけど、僕の予想は大きく外れていた。いや、S-MAX進化という点は合っている。

 

 

 外れていたのは出てくる進化クリーチャーだ。

 

 

「鬼よ、わたくしに力をかしなさい!鬼S-MAX進化で、《EVE(イブ)-(オーガ)MAX(マックス)》を召喚っ!」

 

「な……!?」

 

 

 秋乃さんが出してきたのは火の鬼のクリーチャー、《EVE-鬼MAX》。

 あのカードもS-MAX進化クリーチャー。だが、他のS-MAX進化と違い、鬼S-MAX進化を持った進化クリーチャー。

 

 通常、S-MAX進化を持った進化クリーチャーはプレイヤーが敗北する際、自身を破壊するか、手札から同名カードを捨てることで、敗北を回避できる。

 

 だけど、鬼S-MAX進化は違う。鬼S-MAX進化を持った進化クリーチャーはプレイヤーが敗北する際、バトルゾーンに表向きで存在するカードを3枚破壊することで、敗北を回避できる。

 この効果は進化クリーチャーの進化元も破壊の対象になる。

 

 つまり、秋乃さんは2回のダイレクトアタックを阻止できる。

 

 

「オーバーキル……なんてレベルじゃないね」

「勝様相手には、これぐらいの保険をかけないと勝てない……と、エリカに教わりましたわ」

「……なるほどね」

 

 

 さて、どうしたものか。正直、かなり詰んでるけど、まだ逆転のチャンスはある。

 

 

「……何も聞かないのですね?」

「……」

 

 

 突然、秋乃さんは口を開いた。それは自分がここまでする理由を聞いてほしい、と、精一杯の気持ちの言葉だ。

 

 

「……聞きたいことがないわけじゃないよ」

「それなら……」

「だけど、それは、このデュエマを終えてからでも遅くはない」

「……っ!?」

 

 

 僕の言葉に、秋乃さんは歪んだ表情を浮かべた。

 

 

 ──あ、これ、キレてる顔だ。

 

 

 今まで、彼女が怒る表情を何度か見たけど、今回のはそれ以上の顔だ。何となくだけど。

 

 

「この状況で、アナタはそれを言うのですか!?」

「この状況だからこそ、僕はこう言う。デュエマはまだ終わっていない」

「終わっています!仮にこのターン、耐え切れたとしても、わたくしのシールドは5枚全てあります!さらに《EVE-鬼MAX》の効果によって、わたくしは2度のダイレクトアタックを防ぐことができます!つまり──勝様、アナタは詰んでいるのです」

 

 

 荒々しくも、静かに、秋乃さんはそう言った。

 

 確かに、この状況は半分詰んでいる。

 

 

 そう、半分は、だ。

 

 

「言いたいことは、このデュエマを終えてからでいい。だから秋乃さん、続けようか……最後まで、僕達のラストデュエルを」

「っ、そうですわね……これがラストデュエル。そして、これがラストアタック!《アルカディアス・モモキング》で、シールドをT・ブレイクっ!!」

 

 

 さぁ、これが最後の賭けだ。

 

 

 

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