少しだけ、ですが……。
「大丈夫ですか?早峰先輩?」
「そう心配するならよぉ、あのオンナをどうにかならねぇのか?」
「貴方が悪いんです!貴方が私に挑発するのが悪いんです!」
「まぁまぁ、マリちゃん、その辺にしてあげてー」
フンッ、と、かなり不機嫌なマリ。
対して、マリにドロップキックを喰らった想はかなり背中を痛がり、勝に自身の背中をさすってもらっていた。
因みに、マリにドロップキックを喰らった想が目が覚めたのは、1時間後である。
ふっと、彼が去り際に言っていたことを、勝は思い出し、想に問いかけた。
「そう言えば、早峰先輩。先程言っていた美味しい話って、何ですか?」
「あ?あぁ、それか……」
「どうせ、ロクでもない話でしょ」
「何でテメェは一々、オレに突っかかってくるんだよ?ケンカ売ってんのか?だとしたら、こっちはいつでも買ってやるぞ?あぁ?」
「もう、2人とも、仲良くしてください!」
「「コイツ(この人)と仲良くできるか(できません)っ!!」」
そう、息を合わせて叫ぶ2人。
あまりの息のあった叫び声に、ひよりは「ヒィっ!?ごめんなさい!」と、謝ってしまう始末。
──ブチッ。
そんな、小さな音が鳴った。
それが聞こえたマリは「あ……」っと、恐る恐る、音が鳴った方に振り向く。
「どうした?」
それを見た想はマリに問いかける。問いかけられたマリは震えながらも、ゆっくり指を上げて、勝の方にさす。
──否、勝をさしている。
何も知らない想はそのまま勝の方に体を向けると、そこには──
「──2人とも、少しお話ししようか?」
──静かに激情している勝の姿だった。
この後、2人は勝に30分ほど、説教されるのは言うまでもない。
「──それで美味しい話って何なんですか?」
「あぁ、実はここから少し離れた場所にカードショップがあってよ、そこのデュエマの大会……非公認の大会だが、そこに優勝すれば、その店に売ってるカードを半額にしてくれるんだと。特価品も含めてな……」
「そんな店があるんですか!?」
説教を終えて、ようやく本題に入り、想が言っていた美味しい話を聞いて、ひよりは驚いていた。
勝も顔には出さないが、内心、驚いていた。
因みに、マリは勝に説教されて、精神的ショックを受け、机の下で、体育座りになり、何か呪文のようなものをブツブツと唱えていたが、勝達はあえて気にしないようにしていた。
「……そのカードショップの名前、わかりますか?」
「あー、確か名前は『ブラックキャット』?だったかな?」
「そこは曖昧なんですね」
いつの間にか、いつもの調子に戻っていたマリ。
そんなマリにひよりは「お帰り〜、マリちゃん」と、活気のある言葉をかけ、マリは「ただいまー、ひよりちゃん」と、返事を返す。
「それで、勝様、どういたしますか?」
「当然、行くに決まってるよ」
「新しいボルシャックを組みたいですものね!」
マリの問いかけに、さも当たり前のように、勝は返事をする。
それを聞いたひよりは高らかにそう言った。
「それもあるけど、どちらかというと、名前が気になるかな?」
「?名前、ですか?」
「オイ、まさかテメェまで、オレを疑うのか?」
「別に疑ってませんよ。ただ……中学の時にいたチームの名前が入ってるから、少し気になっただけです……」
「勝様……」
勝はカードショップの名前を聞くと、どこか上の空を眺め、それを見たマリは勝を心配した。
「それでしたら、今からこのメンバーで行きましょう!」
「今から!?」
それを見たひよりは3人に提案すると、想が真っ先に驚いていた。
「ひよりちゃん、今からはやめといたほうが良いですよ……」
「?何でですか?」
「ひよりちゃん、時計を見て……」
「?時計、ですか?」
勝が言うと、ひよりはお店にある時計を見た。
見ると、もう夕方の4時半である。
「あ……」
「もうすぐ門限の時間だからね」
「うちの学校、校則が厳しいから、今日はもう解散にしましょう、ひよりちゃん」
「はい、そうですね。断念ですが……」
「んじゃ、明日の昼の1時に、その店の前に集合だな」
「何で貴方が締めてるんですか?」
「うっせぇー」
想が最後に返事をすると、勝達は皆、店に出て、解散し、それぞれの家に帰っていった。
「──もしもし。お久しぶりです、勝です。そちらは……元気ですね。実は少しお願いがあって、連絡しました。ブラックキャットというお店を調べてほしいんです。カードショップなんですが……はい、僕も明日、友達と一緒に行くので、暇があれば、調べようと思います。はい、ありがとうございます」
ピッ、と、電話を切ると、勝は椅子に背をもたれ、机の上に並べてるデュエマのカードを眺める。
「明日のデッキを組んでいるんですか?」
「マリちゃん……ありがとう」
浮かない顔をしている勝を気にしてか、マリは勝に水が入ったコップを渡し、勝はそれを半分ぐらい飲んで、空いてるスペースに、机の上に置いた。
「それもあるけど、どっちかって言うと、明日行くお店の名前が気になってね。それについて、中学の時の知り合いに頼んでいたんだ……」
「そうですか……あの、勝様」
「ん?」
「あまり夜更かしはしないでくださいね。体に障りますよ」
「人をお年寄りみたいに言ってくれるね。まぁ、その気遣いはありがたいけどね」
そう言って、勝はデュエマのカードを片付け、残った水を飲み干し、コップをマリに渡して、自身ののベッドに入り、横になった。
「おやすみ、マリちゃん」
「おやすみなさい、勝様」
何やら、不吉な予感……。