後、今回は長めです。
店長に呼ばれて、キャルが離れた数分後、残された勝達は空いたデュエルスペースに座っていた。
「……」
キャル本人から知らされた出来事に、勝は顔を伏せていた。
「まさか、退学になっていたなんてね……」
「……そうだね。少しビックリだね」
「先輩……」
明らかに元気がない勝に、皆、心から心配していた。
「ま、仕方がねーじゃねぇの。本人もアレでスッキリしてるみたいだし、寧ろ喜ぶべきだろ?」
想があまりにもデリカシーの欠片のない発言に、想以外の全員が驚き、鋭い目で想に視線を向ける。
「ちょっと、先輩、いくらデリカシーがないからって、流石にそれはないと思います!」
「オイオイ、事実だろ?それに、テメエが転校した後なら、それこそ、仕方がねーだろ?それともナニか?転校したからって、助けてやれることがあったのか?」
「……ッ!?」
そこまで言われて、勝はようやく、彼が何を言いたいのか、理解し、少し目を瞑って、口を開いた。
「……確かに、早峰先輩の言う通りだ」
「勝!?アンタ……それ、本気で言ってるの?」
勝の意外な発言に、咲恋は驚き、勝に問いかけるも、勝は頷き、それを見て、咲恋はため息を吐いた。
「……ハァー、わかったわ。アンタがそれで良いなら、もう何も言わないわよ」
「私も勝様が良いなら、構いません。ひよりちゃんもそれで良いよね?」
「わ、私は……」
マリの問いかけに、ひよりは口ごもり、翔に目を向け、問いかける。
「メガネ君はどう思う?」
「俺は……早峰先輩の言っていることが正しい、と、思います……」
「オー、わかってるじゃねぇか!眼鏡!」
「……」
全員、薄情者だ、と、ひよりは口には出さないが、そう思った。
それと同時に、体の内側から、怒りが湧いた。
「……アアアァァッー!」
突然、ひよりは叫び声をあげ、椅子から立ち上がった。
「早峰先輩の薄情者!メガネ君の人でなし!会長のあんぽんたん!マリちゃんのオタンコナス!勝先輩のドラゴンバカー!略して、ドラバカー!」
最後に「うわーん!」と、泣きながら、店から出ていた。
突然の出来事に、勝達は暫く固まってしまった。
「な、なんだ?急に……」
「ひよりちゃん……」
「……追いかけなちゃ!」
突然、店から出ていってしまったひよりに、勝は心配になり、立ち上がるも、想はそれを停止する。
「ほっとけ。それよりも、こっちは大会に参加しねぇと、いけねーだろ?」
「っ、だけど、それでも追いかけなちゃ!謝らなちゃ!」
「だったら、テメエ1人で行け!オレはガキのおもりはゴメンだッ!」
「──何の騒ぎですの?」
突然、騒ぎ始めた勝達の声が聞こえたのか、秋乃とエリカの2人が勝達の前に現れ、騒ぎ始めた理由を問いかける。
「秋乃さん……実はひよりちゃんが店に出ちゃったの」
「ひよりちゃんが?」
「そう言えば、泣きながら、店に出て行くの見かけましたね」
「……状況はわかりませんが、勝様、ここはわたくしに任せてもらえませんか?」
「秋乃さん。でも……」
「でも、も、ありません。皆様は今日の大会を楽しみで、ここに来ているのでしょう?だったら、大会に受付をし、準備を整えないといけませんわ」
「けど……」
「勝、ここは秋乃さん達に任せましょう。私達は私達のすべきことをしましょう」
「……わかった。秋乃さん、エリカさん、ひよりちゃんをお願いします」
苦渋の決断をした勝は秋乃とエリカにひよりを任せ、勝達は大会にむけて、準備を始める。
ブラックキャットから少し離れた公園のベンチで、ひよりはそこで座っていた。
「私、何やってるんだろう。それに……今日は失敗ばかりだ……」
と、ひよりはそう小さく呟く。
思い返せば、今日の自分は地雷ばかり踏んでいる。
今日の大会を楽しみに、皆、新しいデッキを組んで、大会に備えていたのに。勝の前の学校のクラスメイトの事情を知って、その人物に会って、学園から追放されて……。
「もう、頭がぐちゃぐちゃだ……」
「──こんなところで、何をしてますの?」
「!?ほ、焔先輩!?それに暁月先輩!?どうしてここに?」
突然の来訪者、秋乃とエリカが現れたことに驚き、ひよりは2人が何故ここに来たのか、問いかける。
「皆、貴方を心配してますよ」
「……」
「貴方の帰りを待っていますよ……」
「……合わせる顔がありません。私、先輩達に酷いこと、言ってしまったし……きっと皆、怒っています……」
「そんなことはありませんわ」
「え?」
ひよりの言葉に秋乃はハッキリと否定した。
「皆、心配してますし、わたくし達も心配でここに来てます。それに勝様……勝も、貴方を心から心配して、真っ先に立ち上がって、謝ろうとしていましたよ」
「謝る?先輩が、私を……?」
ひよりの問いかけに、秋乃は無言で頷いた。
「そんな、先輩が謝る必要ないのに……寧ろ、私が謝らなちゃいけないのに……なんで……」
「それだけ、貴方のことを、心から許している証拠です。わたくしの時はかなり時間がかかりましたもの……」
「そうだったんですか?」
意外な真実に、ひよりは驚く。
あまり2人がいるところを見かけないが、勝の様子から、すぐに打ち解けたのとばかり、思っていた。
「ええ、あの時の勝はとても酷かった。けど、あの時……過去があるから、今の勝がいるわけです」
「過去があるから、今の先輩がいる……」
それを聞いて、ひよりはこれまでのこと、勝と一緒にいた時を思い出した。
はじめて学園に来た時、想とのデュエマに勝利し、全校生徒にデュエマを挑まれて、注目を浴び、自分もその1人で、彼とデュエマをし、彼のカッコよさに惹かれた。
咲恋とのデュエマはとても手に汗握る試合で、自分もあんなカッコいいデュエマがしたいと思った。
出会ってまだ1ヶ月。ほんの僅かな時間しか経っていないが、ひよりにとって、
そして、勝もまた、
そこまで考えた後に、ひよりは勢いよく、立ち上がった。
「焔先輩、私、戻ります。皆の……勝先輩のところに……」
「ええ、そうしなさいッ!明星ひより!貴方の明けの星を、その手で掴みなさいッ!」
「はい!」
そう返事を返すと、ひよりは勝達のもと──ブラックキャットに戻っていった。
「ひよりちゃん、戻ってこないね」
「……うん、そうだね」
もうすぐ大会が始まる中、ひよりが未だに、ブラックキャットに戻っていないことに心配する勝と咲恋。
想は「待っても無駄だ」と突っぱねることばかりで、そんな想にマリは怒りを露わにして、抗議している。
「……」
対して、翔はひよりを心配する勝と咲恋の背中を見て、2人にかける言葉が見つからず、2人の背中を眺めていた。
「──もうすぐ大会が始まりまーす!大会に参加される人は集まってくださーい!」
「……勝、いくわよ」
「うん」
キャルの掛け声が店内に響き、勝達はキャルの近くに集まった。
幸い、ひよりの分は勝が『ヒヨリ』と書いておいたが、本人が来なければ、不参加になる。
「今日の大会参加者は16名です。今から呼ばれる人は返事を返さなければ、不参加になりまーす!それではまず、1番、サーガさん!」
「はーい」
と、順番にキャルは大会参加者の名前を呼んでいく。
勝達は11番から名前を書いているので、その番号が来たら、返事を返さなければならない。
延々と淡々と。次々に参加者の名前を言う。
そして、遂に、勝達の番号が来た。
「11番、カツさん!」
「はい!」
カツ=勝。
「12番、コイさん!」
「はい!」
コイ=咲恋。
「13番、ソニックさん!」
「オウよ」
ソニック=想。
「14番、メイドガールさん!」
「はーい」
メイドガール=マリ
「15番、ガチャダマンさん!」
「は、はい!」
ガチャダマン=翔。
「16番、ヒヨリさん!」
沈黙。その番号が呼ばれた時、沈黙が走った。
「16番、ヒヨリさーん!いませんかー!」
再度、ヒヨリの名前を呼ぶキャル。
一向に返事がないので、キャルは勝に声をかける。
「勝、ひよりちゃんは?」
「すみません、まだ来てません」
「……そう。それなら仕方がないけど、ヒヨリ選手は不さ──」
「──お待たせしましたッ!」
突如、店内の入り口から声が響いた。
大会参加者、店員の皆はそちらに視点を向けると、ゼェー、ハー、ゼェー、ハー、と息を切らしたひよりが立っていた。
「ひよりちゃん!?大丈夫?」
「だ、大丈夫……です……み、水を、お願いします……」
息を切らしたひよりを咲恋が背中をさすり、誰か水を持ってきてもらうと、声をかけた、その時。
「はい、ひよりちゃん……」
「……ッ!?勝、先輩……」
水を差し出す勝。それを見て、ひよりは水をとって、勢いよく飲む。
「プー、ハー!生き返ります!」
「ひよりちゃん、今日の試合、楽しもうか!」
「──ッ、はいっ!」
ひよりの元気な返事が店内に響き、32名の参加者が全員揃った。
最後、無理矢理締めましたが、予定通り、次回からデュエルシーンを書いていきます。
さーて、大会優勝者は誰の手になるかなー(笑)