デュエル・マスターズACE   作:リュウ・セイ

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ひよりちゃんがメインの話。
後、今回は長めです。


ACE15:ひより、モヤモヤ。明けの星をその手に。

 

 

 

 店長に呼ばれて、キャルが離れた数分後、残された勝達は空いたデュエルスペースに座っていた。

 

「……」

 

 キャル本人から知らされた出来事に、勝は顔を伏せていた。

 

「まさか、退学になっていたなんてね……」

「……そうだね。少しビックリだね」

「先輩……」

 

 明らかに元気がない勝に、皆、心から心配していた。

 

「ま、仕方がねーじゃねぇの。本人もアレでスッキリしてるみたいだし、寧ろ喜ぶべきだろ?」

 

 想があまりにもデリカシーの欠片のない発言に、想以外の全員が驚き、鋭い目で想に視線を向ける。

 

「ちょっと、先輩、いくらデリカシーがないからって、流石にそれはないと思います!」

「オイオイ、事実だろ?それに、テメエが転校した後なら、それこそ、仕方がねーだろ?それともナニか?転校したからって、助けてやれることがあったのか?」

「……ッ!?」

 

 そこまで言われて、勝はようやく、彼が何を言いたいのか、理解し、少し目を瞑って、口を開いた。

 

「……確かに、早峰先輩の言う通りだ」

「勝!?アンタ……それ、本気で言ってるの?」

 

 勝の意外な発言に、咲恋は驚き、勝に問いかけるも、勝は頷き、それを見て、咲恋はため息を吐いた。

 

「……ハァー、わかったわ。アンタがそれで良いなら、もう何も言わないわよ」

「私も勝様が良いなら、構いません。ひよりちゃんもそれで良いよね?」

「わ、私は……」

 

 マリの問いかけに、ひよりは口ごもり、翔に目を向け、問いかける。

 

「メガネ君はどう思う?」

「俺は……早峰先輩の言っていることが正しい、と、思います……」

「オー、わかってるじゃねぇか!眼鏡!」

「……」

 

 全員、薄情者だ、と、ひよりは口には出さないが、そう思った。

 それと同時に、体の内側から、怒りが湧いた。

 

「……アアアァァッー!」

 

 突然、ひよりは叫び声をあげ、椅子から立ち上がった。

 

「早峰先輩の薄情者!メガネ君の人でなし!会長のあんぽんたん!マリちゃんのオタンコナス!勝先輩のドラゴンバカー!略して、ドラバカー!」

 

 最後に「うわーん!」と、泣きながら、店から出ていた。

 突然の出来事に、勝達は暫く固まってしまった。

 

「な、なんだ?急に……」

「ひよりちゃん……」

「……追いかけなちゃ!」

 

 突然、店から出ていってしまったひよりに、勝は心配になり、立ち上がるも、想はそれを停止する。

 

「ほっとけ。それよりも、こっちは大会に参加しねぇと、いけねーだろ?」

「っ、だけど、それでも追いかけなちゃ!謝らなちゃ!」

「だったら、テメエ1人で行け!オレはガキのおもりはゴメンだッ!」

 

「──何の騒ぎですの?」

 

 突然、騒ぎ始めた勝達の声が聞こえたのか、秋乃とエリカの2人が勝達の前に現れ、騒ぎ始めた理由を問いかける。

 

「秋乃さん……実はひよりちゃんが店に出ちゃったの」

「ひよりちゃんが?」

「そう言えば、泣きながら、店に出て行くの見かけましたね」

「……状況はわかりませんが、勝様、ここはわたくしに任せてもらえませんか?」

「秋乃さん。でも……」

「でも、も、ありません。皆様は今日の大会を楽しみで、ここに来ているのでしょう?だったら、大会に受付をし、準備を整えないといけませんわ」

「けど……」

「勝、ここは秋乃さん達に任せましょう。私達は私達のすべきことをしましょう」

「……わかった。秋乃さん、エリカさん、ひよりちゃんをお願いします」

 

 苦渋の決断をした勝は秋乃とエリカにひよりを任せ、勝達は大会にむけて、準備を始める。

 

 

 

 ブラックキャットから少し離れた公園のベンチで、ひよりはそこで座っていた。

 

「私、何やってるんだろう。それに……今日は失敗ばかりだ……」

 

 と、ひよりはそう小さく呟く。

 思い返せば、今日の自分は地雷ばかり踏んでいる。

 今日の大会を楽しみに、皆、新しいデッキを組んで、大会に備えていたのに。勝の前の学校のクラスメイトの事情を知って、その人物に会って、学園から追放されて……。

 

「もう、頭がぐちゃぐちゃだ……」

 

「──こんなところで、何をしてますの?」

 

「!?ほ、焔先輩!?それに暁月先輩!?どうしてここに?」

 

 突然の来訪者、秋乃とエリカが現れたことに驚き、ひよりは2人が何故ここに来たのか、問いかける。

 

「皆、貴方を心配してますよ」

「……」

「貴方の帰りを待っていますよ……」

「……合わせる顔がありません。私、先輩達に酷いこと、言ってしまったし……きっと皆、怒っています……」

「そんなことはありませんわ」

「え?」

 

 ひよりの言葉に秋乃はハッキリと否定した。

 

「皆、心配してますし、わたくし達も心配でここに来てます。それに勝様……勝も、貴方を心から心配して、真っ先に立ち上がって、謝ろうとしていましたよ」

「謝る?先輩が、私を……?」

 

 ひよりの問いかけに、秋乃は無言で頷いた。

 

「そんな、先輩が謝る必要ないのに……寧ろ、私が謝らなちゃいけないのに……なんで……」

「それだけ、貴方のことを、心から許している証拠です。わたくしの時はかなり時間がかかりましたもの……」

「そうだったんですか?」

 

 意外な真実に、ひよりは驚く。

 あまり2人がいるところを見かけないが、勝の様子から、すぐに打ち解けたのとばかり、思っていた。

 

「ええ、あの時の勝はとても酷かった。けど、あの時……過去があるから、今の勝がいるわけです」

「過去があるから、今の先輩がいる……」

 

 それを聞いて、ひよりはこれまでのこと、勝と一緒にいた時を思い出した。

 はじめて学園に来た時、想とのデュエマに勝利し、全校生徒にデュエマを挑まれて、注目を浴び、自分もその1人で、彼とデュエマをし、彼のカッコよさに惹かれた。

 咲恋とのデュエマはとても手に汗握る試合で、自分もあんなカッコいいデュエマがしたいと思った。

 出会ってまだ1ヶ月。ほんの僅かな時間しか経っていないが、ひよりにとって、(先輩)はかけがえのない人になっていた。

 そして、勝もまた、ひより()がかけがえのない人物になっているのだと、そう思った。

 そこまで考えた後に、ひよりは勢いよく、立ち上がった。

 

「焔先輩、私、戻ります。皆の……勝先輩のところに……」

「ええ、そうしなさいッ!明星ひより!貴方の明けの星を、その手で掴みなさいッ!」

「はい!」

 

 そう返事を返すと、ひよりは勝達のもと──ブラックキャットに戻っていった。

 

 

 

「ひよりちゃん、戻ってこないね」

「……うん、そうだね」

 

 もうすぐ大会が始まる中、ひよりが未だに、ブラックキャットに戻っていないことに心配する勝と咲恋。

 想は「待っても無駄だ」と突っぱねることばかりで、そんな想にマリは怒りを露わにして、抗議している。

 

「……」

 

 対して、翔はひよりを心配する勝と咲恋の背中を見て、2人にかける言葉が見つからず、2人の背中を眺めていた。

 

「──もうすぐ大会が始まりまーす!大会に参加される人は集まってくださーい!」

 

「……勝、いくわよ」

「うん」

 

 キャルの掛け声が店内に響き、勝達はキャルの近くに集まった。

 

 幸い、ひよりの分は勝が『ヒヨリ』と書いておいたが、本人が来なければ、不参加になる。

 

「今日の大会参加者は16名です。今から呼ばれる人は返事を返さなければ、不参加になりまーす!それではまず、1番、サーガさん!」

「はーい」

 

 と、順番にキャルは大会参加者の名前を呼んでいく。

 勝達は11番から名前を書いているので、その番号が来たら、返事を返さなければならない。

 

 延々と淡々と。次々に参加者の名前を言う。

 

 そして、遂に、勝達の番号が来た。

 

「11番、カツさん!」

「はい!」

 

 カツ=勝。

 

「12番、コイさん!」

「はい!」

 

 コイ=咲恋。

 

「13番、ソニックさん!」

「オウよ」

 

 ソニック=想。

 

「14番、メイドガールさん!」

「はーい」

 

 メイドガール=マリ

 

「15番、ガチャダマンさん!」

「は、はい!」

 

 ガチャダマン=翔。

 

 

 

「16番、ヒヨリさん!」

 

 

 

 沈黙。その番号が呼ばれた時、沈黙が走った。

 

「16番、ヒヨリさーん!いませんかー!」

 

 再度、ヒヨリの名前を呼ぶキャル。

 一向に返事がないので、キャルは勝に声をかける。

 

「勝、ひよりちゃんは?」

「すみません、まだ来てません」

「……そう。それなら仕方がないけど、ヒヨリ選手は不さ──」

 

 

 

「──お待たせしましたッ!」

 

 

 

 突如、店内の入り口から声が響いた。

 大会参加者、店員の皆はそちらに視点を向けると、ゼェー、ハー、ゼェー、ハー、と息を切らしたひよりが立っていた。

 

「ひよりちゃん!?大丈夫?」

「だ、大丈夫……です……み、水を、お願いします……」

 

 息を切らしたひよりを咲恋が背中をさすり、誰か水を持ってきてもらうと、声をかけた、その時。

 

「はい、ひよりちゃん……」

「……ッ!?勝、先輩……」

 

 水を差し出す勝。それを見て、ひよりは水をとって、勢いよく飲む。

 

「プー、ハー!生き返ります!」

「ひよりちゃん、今日の試合、楽しもうか!」

「──ッ、はいっ!」

 

 ひよりの元気な返事が店内に響き、32名の参加者が全員揃った。

 

 

 




最後、無理矢理締めましたが、予定通り、次回からデュエルシーンを書いていきます。
さーて、大会優勝者は誰の手になるかなー(笑)
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