「クソッ……!このオレが負けるとはッ……!」
「なんとか、勝てた……!」
激しいデュエマの中、見事、想に勝利した勝。
しかし、その反動で、両者、息が絶え絶えである。
「勝!」
「先輩!」
「っ……!」
勝のもとに駆けつける咲恋と翔。
二人は想に一度負けているため、勝が想に勝ったことに、とても嬉しそうである。
「やるじゃん、勝!」
「すごいです、先輩!まさか、早峰先輩に勝つなんて……!」
「たまたま運が良かっただけだよ」
喜ぶ二人。その表情に、勝も不意に微笑んでしまった。
「オイ、転校生……」
「!?」
三人で喜びに浸っている中、ふっと、想は勝に声をかけながら、勝に歩み寄っていた。
「なんですか?先輩?」
「……名前をまだ、聞いてなかったな」
「え?」
意外な発言に、勝は驚き、それに釣られて咲恋と翔も、驚く。
「良いから、さっさと名前を教えやがれ!」
「ちょっとー、なんで喧嘩腰なんですか!?」
今度は怒鳴り出す想。それに困惑し、勝は慌てて、想に名前を教える。
「……えっと、
「……そうか。火野か。オレは早峰想。次はオレが勝つ!それだけは忘れるんじゃねぇぞ!」
そう言って、想はフラフラな体を引きずって、その場を去った。
「また、デュエマがしたいな、早峰先輩と……」
「何言ってるのよ。この学園にいる限り、いつでもデュエマができるでしょ?」
「俺はもう関わりたくないですね……」
「まぁ、あの先輩が卒業するまでの話だけど……」
そう言って、咲恋は勝に励ましの言葉をかける。
「それよりも、勝。ここからが大変かもよ?」
「え?それはどういう────」
「おーい、転校生!」
先程、勝と想のデュエマを見ていた生徒達が一斉に勝の元に駆け出し、気づけば、皆、デッキを手に持っていた。
「今度は俺とデュエマやろうぜ!」
「いや、先にデュエマするのはおれだッ!」
「それよりも、君と秋乃さんの関係を知りたいな!」
「ちょっとー、男子ぃー!遠慮ってものはないわけー?まぁ、それはそれとして、次は私とデュエマしましょ!」
「わ、私も!」
「僕も!
そう、沢山の生徒が勝に詰め寄り、それを見た勝は先程、咲恋が言った言葉の意味を理解し、静かに咲恋の方に視線を向ける。
「私、助けるつもりはないからね」
「ですよねー。まぁ、仕方がない。ここは……戦略的、撤退だっ!逃げろー!」
そう言って、勝は全速力で校内を走り出した。
「あ、逃げた!」
「待てー、転校生!」
「是非、秋乃との関係を!」
「それはもういいわ!」
生徒達もまた、想に勝った勝にデュエマをするため、全速力で勝に追いかけるのだった。
「全く、これからが忙しくなるわね……」
「あの、助けなくて、大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。アイツ、見た目に反して、結構、体力はあるし、足もそこそこ早いんだから、心配しなくても大丈夫わよ」
そう言って、咲恋は生徒会室に戻る為、この場を後にした。
因みに、余談だが、授業が始まるチャイムが鳴るまで、生徒達と勝の鬼ごっこは続き、勝を追いかけた生徒達は教師達に説教されたのは言うまでもない。
場所は変わり、理事長室。
想に勝った勝を追いかける生徒達を陰ながら、微笑む二人の女子生徒がいた。
一人はこの学園の理事長にして、焔財閥の一人娘、『焔秋乃』。
もう一人は彼女のメイドであり、この学園の生徒である、『
「どうやら、こちらが動くまでもありませんみたいね。これで、想も少しは大人しくなるでしょう……」
「どうでしょうか?あの手の
「そう心配することはありませんよ、エリカ」
「しかし、お嬢様!」
「しかしもありませんわ!これは理事長として、決定事項ですわ!」
「っ、わかりました。お嬢様様がそう判断されるなら、私からは何も言いません……」
珍しく、声を荒げるエリカに秋乃はつい怒鳴ってしまい、渋々な表情でエリカは返事を返す。
それを見た秋乃はため息を漏らし、椅子に座った。
「……まぁ、念のため、予防線を貼りましょう。ちょうど、手の空いている人材が一人いますし、彼女に監視の命を与えましょう」
「あのお花畑の子をですか?確かに、彼女も、この学園に通っていますが、学年が二つも下ですよ?彼女に務まりますか?」
「務まるための対価はいくらでもあります。それを考えるのも、財閥の娘としての見せ所ですのよ?」
「成る程。それでしたら、私からも二言はありません。そうなると、次なる問題は……」
「……これですわね」
そう言って、机の上に置かれている『経費削減の為、ACE・デュエマ部を廃部にする』と、書かれた一枚の紙を眺めながら、秋乃は理事長として、次なる問題の解決策を考えるのであった。
プロローグ的なお話はこれにて、終了。
次回からは部活動です。部活動と言っても、入部前に、問題解決が先ですが…。