主に、勝と秋乃の二人。お互いがどこまで想っているのかを中心に書きました。
それではACE32、どうぞ。
「そう言えば、勝先輩って、この学園に来る前、焔先輩とはもう会っていたんですよね?」
「?そうだけど?それがどうかしたの?」
車に乗った直後、ふっと、ひよりが勝にそんなことを質問した。
勝がひよりの質問にそう返すと、突然、勝の顔に近づいた。
「ズバリ、2人は付き合っているんですか?いや、そもそも2人はどこで出会ったんですか?初恋は?告白はどちらが先なんですか?」
「ちょっ、ひよりちゃん、落ち着いて!後、顔が近いから一旦離れて!」
突然、恋バナに発展し、興奮しだしたひよりに勝は必死に宥め、顔から離れるよう、頼み込む。
「……」
「はぁー、全く何をやっているんですか?それから明星さん。何故、今になって、そんなことを聞くのですか?」
そんな二人の会話を聞いて、秋乃は頬を赤くし、小さくうずくまり、その光景を助手席から見ていたエリカは溜め息を吐きながら、ひよりに質問する。
「だって、気になるじゃないですか!女性としては!何より、勝先輩は焔先輩のすすめで転入してきたんですよ!」
「それは……そうだけど……」
(……言って良いのだろうか?)
ひよりの圧に、勝は口ごもり、秋乃に視線を向ける。
「……わたくしが不良に絡まれた所を、勝様に助けていただいたんです」
突然、秋乃は小さく、口を開き、そう言って、言葉を続ける。
「わたくしは……それが初恋でした。けど、勝様はその時、前の彼女さんに失恋して、心を閉ざしていて、わたくしのこと、女性として意識してくれなかったのですの。ですが、少しずつ、関係を築く内に、わたくしのこと、女性として意識してくれて……アタックして、惚れさせましたの……」
「……っ!?」
照れ臭そうに、秋乃は顔を赤くなりながら、そう言うと、勝に視線を向ける。
視線が合った勝は直後、顔を赤くし、秋乃から目を逸らした。
「あー、これはかなり、ご関係がよろしいようで……」
「わかったなら、さっさと降りなさい。着きましたよ、明星さん」
いつも間にか、ひよりの自宅に着き、エリカが言うと、「はーい」と、ひよりはあっさり車から出た。
車から出たひよりは車の中にいる秋乃達に振り向く。
「送っていただき、ありがとうございます!先輩方、また明日お会いしましょう!」
「え、ええ。また明日、学校で会いましょう、ひよりちゃん」
「……また明日、ひよりちゃん」
「はい!」
ひよりの元気な返事を聞いた後、秋乃は運転手に「出発してくださいませ」と言うと、運転手は「はい」と返事を返し、車を発進させた。
「……大丈夫ですかね、勝先輩」
赤い高級車の後ろ姿を見て、ひよりは1人、勝を心配し、小さく、そう呟いた。
次に赤い高級車が止まったのは勝の家の前、ではなく、令和では見られない、江戸時代にあるような、とても古風なお屋敷──エリカが住む暁月家の道場の入り口前である。
「着きましたよ、勝様」
「着いたって、ここって……暁月さんの家だよね?」
「ええ。私の家ですが、何か?」
「……」
嫌な予感がする。
勝は自身の身の危険性を感じ、急いで、この場から離れようと足を動かすが、それよりも早く、エリカが勝の服の首部分を強く掴んだ。
「逃しませんよ、火野様……いえ、勝様」
「……お手柔らかにお願いします」
エリカから殺気のようなオーラを感じた勝はあっさり逃走を諦め、秋乃と一緒に3人で道場の中に入った。
ガラガラと、玄関が開く音が鳴り、エリカは扉を開ける。
扉を開けると、1人の老人、エリカの祖父、『暁月 キリオ』が前に立っていた。
「……ただいま戻りました。キリオお祖父様」
「うむ。よく帰った、エリカ。そちらは……秋乃様と火野君か……」
「はい。お邪魔します、エリカのお祖父様」
「お邪魔します……」
「……ふむ。奥の部屋が空いてるから、好きに使うといい」
「はい、ありがとうございます、お祖父様」
「気にするな。娘の使いのお嬢様と、そのお婿が来たのだ。3人で少しお話をする時間が必要だろう?それに……」
ふっと、キリオは勝に視線を向けた。
向けられた勝は脳裏になんだろう、と疑問を抱く。
「あの、なんでしょうか?」
「いや、何でもない。いや、あるな」
「どっちなんですか?」
「ハハ、年をとると、どうにも物忘れが激しくてなぁ……部屋にオヤツを置いてあるから、好きに食べなさい」
「ありがとうございます、エリカのお祖父様」
秋乃が返事を返すと、キリオは自分の部屋に帰っていった。
それを見た勝達は奥の部屋に入り、大きな四角形型の机の上に、のり
「オヤツって、のり煎餅ですか……まぁ、良いですけど……」
「お茶は……ないみたいですね、エリカ」
「ええ、わかっています。少々お待ちください」
そう言って、エリカはどこかに行ってしまい、二人きりになった勝と秋乃は向かい合って、机の前に正座して座る。
「……」
「……」
沈黙する二人。
そんな中、勝はひよりが言った言葉を思い出し、ほんの少し、頬を赤くする。
(マズいな……ひよりちゃんが変なことを聞いてきたから、変に意識してしまうな……折角、意識しないようにしてきたのに……!まぁ、考えても仕方がない。のり煎餅でも食べて、気持ちを落ち着かせよう……)
そう思い、勝はのり煎餅に手を伸ばし、同じタイミングで、秋乃ものり煎餅を取ろうと手を伸ばし、二人が取ろうとしたのり煎餅の上に二人の手が触れた。
「「ッ!?」」
瞬間、二人はすぐさま、のり煎餅から手を離し、離した手を胸に置いた。
「「……」」
(ヤバいヤバい!変な意識をするな!変な意識をするな!平常心平常心!)
気持ちを落ち着かせるどころが、寧ろ、気持ちが昂ってしまい、自分の体温がさらに上がっていることを感じ、勝は秋乃から視線を離す。
(マズいですわ!マズいですわ!勝様の手に……いえ、指に触れてしまいましたわ!まだ手を繋いでないのに!どうしましょうどうしましょう!?)
一方の秋乃は動揺し、勝の指に触れたことに混乱していた。
(これはもう、いっていいのだろうか?いや、良くないだろ!普通に考えて、馬鹿か!?そもそも、いっていいって何がだ!?)
(エリカには悪いですが、このまま勝様と良い関係を築きあげるために、更に一歩、踏み出すべきですわ!ハ!?わたくしは今、なんて破廉恥なことを考えていたんですの!?バカですの!?)
「お二人とも、紅茶を持ってきました」
「「えっ?」」
互いが互いに、不純な思考を持つ中、左手に紅茶の入ったティーポットと右手に二つのコップを持ってきたエリカが二人の間に入ってきた。
「それで、お二人とも、何をやっているんですか?」
「「いいえ(いえ)、何もないです」」
何やら、エリカから負のオーラのようなものが纏っており、二人は辿々しく、揃って、そう言った。
それを聞いて、エリカは少し間を置いて、「そうですか」と、言って、ティーポットと二つのコップを机の上に置き、一つのコップに、紅茶を注いだ。
「……お嬢様、紅茶をどうぞ」
「あ、ありがとうございますわ、エリカ……」
秋乃に紅茶の入ったコップを渡し、もう一つのコップに紅茶を注ごうと、手を動かすが、突然、手を止めた。
「……」
「エリカ?」
「暁月さん?」
「……火野様」
「は、はい!」
「貴方には、紅茶を飲む前に、やることがあります」
「やること?」
突然、エリカはそんなことを言い出し、勝は彼女に問いかけると、ティーポットを置いて、デュエマのデッキを取り出した。
「火野様。貴方はここ最近、学園で負けていることが多いですね。確か、
「……何が言いたいの?」
「決まっています!」
そう強く言うと、エリカは勝に指を指した。
「貴方の根性を叩き直してあげます!一度の敗北で、心が折れるようでは、秋乃様の側に居させるわけにはいきません!ましてや、この私に負けるようでは、
「ちょっと、エリカ!?何を言って──」
「良いよ。そのデュエマ、受けるよ」
「勝様!?」
まさかの返事に秋乃は驚き、エリカは小さく微笑んだ。
「それでこそ、火野様、です。ですが、先程も言いましたが、この私に負けるようでは、
「言われるまでもないよ。それから、元カノって言うの、やめてくれない?微妙に腹が立つ」
「……わかりました。貴方が勝ったら、考えてあげましょう。良いですよね?秋乃様?」
「もう勝手にやってください……」
「それじゃあ、いくよ!」
「「デュエマ・スタートッ!!」」
こうして、勝とエリカの二人によるデュエマが始まった。
次回、勝対エリカ。
勝利の女神はどちらに微笑むのか?
そして、エリカが使うデッキは一体何なのか?
次回にお楽しみにください。