「いやー、負けた負けた。完膚なきまでに敗北したって感じだわ」
「……」
ハッハッハー、と、高笑いながら、黒江はそう言った。
それを見た勝はさっきまでの態度と違うことに、困惑していた。
「……えっと、それで花宮さんの目的って何?」
「黒江で良いよ!何、ほんの少し挨拶と謝罪をしに来たんだよ……」
そう言って、黒江は勝に近づき、自身の腕を勝の肩と首に巻くように置いた。
「ちょっ、黒江さん、近い!後、顔が胸に当たりそうなんですが!?」
「わざと当ててんだよ!そう照れることはないし、減るものじゃないだろ?」
「あるよ!色々と!」
急に距離を縮めてくる黒江の態度に、勝は悪戦苦闘し、どうにかして、離れないか、考えていた。
「──何をやっているんですか?お二人とも?」
「「!?」」
その時、二人の後ろから、殺気に近い気配を感じ、二人は恐る恐る振り返ると、そこには
「秋乃お嬢様がいるのに、浮気とは良い度胸ですね、火野様?」
「違う!そうじゃない!黒江さんが急に詰めてきて──」
「言い訳は無用!この竹刀で、貴方達の頭を叩きます!」
「まさかのウチも巻き添え!?」
「当たり前です!」
それを聞いて、勝と黒江はエリカから離れ、逃げた。
それを見たエリカは二人を追いかけ、10分もしないうちに、二人を捕まえ、星座して、30分ほど、説教をした。
「それで、貴女の目的は何ですか?」
説教を終えた後、エリカは再度、黒江に目的を問いかけた。
「だから、ウチは挨拶と謝罪をしに来たって言ってるだろ?まぁ、挨拶は完全に、ウチの個人的な用件で、謝罪は……この間の結衣の件な……」
「!?」
結衣の名前を聞いた途端、勝は驚き、表情を歪めた。
「……店の名前は聞いてないけど、この間、結衣が非公認大会で、そっちに迷惑をかけたみたいだからさ。代理でウチが謝りに来たわけ」
「その割にはかなり暴れたみたいですね」
「それについては、素直に教えてくれなかった、そっちが悪い……」
「……」
「?どうした?勝?」
「ッ!?黒江さん!?」
結衣の名前を聞いてから、勝は固まってしまっており、それを見た黒江は勝の顔に近づき、問いかけた。
突然、顔を近づかれた勝は驚いてしまった。
(何、顔を赤くしているんですが!それにそんなに顔を近づけるとは、後でもう一度、お説教ですね!)
それを見たエリカは不快に感じ、脳裏で、そう思った。
「さっきからぼーっとして、どしたん?」
「……別にどうもしません。ただ、黒江さん。貴女の用件は済みましたよね?」
「ん?ああ、そうだな……」
「それなら速やかに帰るよう、お願いします」
「は?」
突然、帰れと申し出る勝の言葉に、黒江は驚き、それを見たエリカは意外な発言をする勝に驚き、一瞬、固まってしまったが、すぐに彼の精神状態を察し、立ち上がった。
「そうですね。貴女の用件が済みましたし、こちらからも、速やかにお引き取り願います」
「アンタも何を言って……ッ!?」
言い返そうとした途端、先程よりも、エリカから強い殺気──右目が紫色に変化したことに気づき、黒江は黙り込んだ。
「……なるほどな。それなら勝、最後に一つ、聞いておきたいことがある?」
「大事なこと?」
「ああ、アンタにとっても、ウチにとっても、大事なことだ」
「……わかった」
一瞬、間を置きながら、勝は黒江に返答した。
「──アンタはまだ、結衣のことが好きか?」
「……」
その質問に勝は黙り込み、目を瞑り、考え始めた。
(僕がまだ結衣ちゃんのことが好きか、か……正直なところ、わからない。ただ……)
ふっと、ブラックキャットで出会った結衣の様子を思い出し、そこで一つ、気になったことがあり、目を開けて、黒江に問いかける。
「正直に言うと、わからない。結衣が何を考えて、どういう理由で、あんなことをしたのか、わからない。けど……」
「けど、何だ?」
「……言いたい事があるなら、正直に話してほしい。それが今、僕が一番気になることで、黒江さんの質問に答えられる精一杯の解答です」
「……火野様」
「……そうかよ」
勝の想いを聞いて、黒江は満足した笑みで立ち上がった。
「良い返事を聞けたわ。これでウチは帰る。あまり帰りが遅いと、結衣に怒られるしな」
「待って!」
そう言って、黒江はその場から立ち去ろうと、足を運ぶが勝が待ったをかける。
「連絡先、交換しない?」
「お断りだ」
「何で!?」
勝の問いかけに即答で返した黒江の言葉に、勝は驚く。
「何でって、当たり前だ。フツー、初対面のヤツに連絡先を聞くとか、頭沸いてんのか?」
「そっちだって、勝手にこっちの住所、特定したよね?」
「──ッ!?テメエ、ひ弱な見た目に反して、頭が相当切れるみたいだな?」
「頭が良くなきゃ、デュエマで勝てる試合も、勝てないよ」
「……ま、それもそうか。アンタの頭の良さに、ウチは負けたのかな」
そう言って、観念したのか、黒江はスマホを取り出し、それを見た勝はスマホを取り出した。
「言っとくけど、結衣に関しての連絡は禁止だからね?」
「わかってるよ。あくまで、トモダチとして、連絡するよ」
「……」
(ほんと、頭の切れがよろしいこと……)
そう脳裏で思いながらも、黒江は勝と連絡先を交換した。
「んじゃ、ウチはこれで失礼するよ」
「うん、またデュエマしようね」
「……ん」
小さい声で返事を返した後、今度こそ、黒江はこの場から立ち去った。
「そう言えば、暁月さん、さっき、右目、紫色になっていたよね?」
「申し訳ありません。緊急事態でしたので……」
「いや、別に良いんだけど、あまり使わないようにね」
「はい……」
──場所は変わり、
焔財閥の屋敷から出た後、黒江は結衣に用事を済ませたことを報告しに、学園に帰っていた。
「ただいまー、結衣ー」
「お帰り、黒江。用事は片付いた?」
「ああ、無事にな」
そう返事を返すと、見慣れない少女──キャルを見かけ、結衣が言っていた心当たりの人物か、結衣に問いかける。
「その子が例の子?」
「うん、そうよ!今日から私達と一緒のチームになる、キャル!」
「……よろしく」
「なんかよそよそしいな……」
「仕方ないでしょ。慣れないんだから……」
どこか、よそよそしさを感じた黒江は思ったことを口に出してしまい、それを聞いたキャルは長い黒髪を右手の人差し指で、くるくる回しながら、そう言った。
どこか機嫌が悪い様子だが、黒江は気にせず、結衣に話しかける。
「ま、いっか。とりま、これでデュエマ甲子園に参加できるな。後は……チーム名か。どうする?」
「それなら、もう決めてあるわ!」
そう高らかに言う結衣の言葉にキャルは深い溜め息を吐いた。
「チーム名は、『
「!?」
その名前を聞いて、黒江は驚き、名前の意味を口に出す。
「血塗れの影って、物騒だな」
「私も最初聞いた時は血の気が引いたわ。それに……背筋が震えたわ」
そう言って、実際に背中を震えさせ、キャルはチーム名に嫌悪感を感じていた。
「なんで?良い名前じゃない?」
「……ま、良いんじゃない。チームのリーダーは結衣なわけだし。知らないけど」
「私も別に悪いとは思わないわ。それに……」
突如、キャルの左目が紫色に変化した。
「今の私たちにピッタリだし……」
そう言うと、結衣と黒江も、それぞれ、水色と緑色の瞳に変化した。
「ま、それもそうか……」
「フフ、二人が気に入ってくれて、私、嬉しいわ」
満面の笑顔で結衣が言うと、二人も静かに笑みを溢した。
「あー、今からが楽しみだなぁ。デュエマ甲子園……それに──
──待っててお兄ちゃん。結衣ももうすぐ、そっちに行くから」
そう言って、体育館ステージに置かれていた結衣と、結衣の兄らしき少年の写真が映っていた。
──その日の夜、焔財閥の屋敷で寝ていたエリカはベッドから起き上がった。
「……ッ!?」
突然、右目に痛みを感じたエリカは、右手で目を当てた。
その時、嫌悪感を感じる、生暖かい液体のような感触に気づき、恐る恐る、手から離した。
その手から真っ赤な紅色の液体、血が手に付いていた。
「これは、一体……?」
不思議に思ったが、隣の部屋で寝ている秋乃に不安させない一心で、急ぎ、洗面所に向かった
しかし、この時、エリカのデッキケースから《アビスベル=ジャシン帝》のカードが光っていたことを、エリカは気づくべきだった。
後にこれが大変な事態になる前兆だと。
急に、ホラーになりましたね(苦笑)
まぁ、次回から予定通り、デュエマ甲子園を描きます。
ただ、大会正式をどうするかは次の話を考えながら描きます。
非公認大会の二の舞にはなりたくないので……。