デュエル・ゾーンで、なんとかスパトー:ド:スパトゥーを倒した勝は秋乃の元に戻っていた。
「お待たせ、秋乃さん……」
「勝様?あの、先程のタコの怪物は?」
「デュエマに勝って、カードになったよ」
そう言って、カードになったスパトー:ド:スパトゥーを秋乃に見せた。
それを見て、秋乃は
「安心しているところ、悪いんだけど。秋乃さん、エリカのデッキを探そう」
「……わかりましたわ。と、言いたいのですが、実は勝様がいないうちに、エリカのデッキを取り出しておきましたわ」
「そうなんだ。ありがとう、秋乃さん」
そうお礼を言うと、秋乃は照れ臭そうにしながらも、エリカのデッキを取り出し、勝に見せた。
「デッキの中を少し確認するね」
「……はい」
エリカのデッキを勝に渡し、中を覗くと、デッキの数枚が足りないことに勝は気づいた。
また、《ジャシン帝》と《ジャブラッド》のカードが1枚もなかった。
「……これはまずいかもしれない」
「と、言いますと?」
「……あまり言いたくないけど、良いかな?」
「構いませんわ。覚悟は……できていますわ!」
覚悟を決めた秋乃の瞳を見て、勝は現状の危険性と、今後の可能性を説明した。
「まず一つ、エリカのデッキの枚数が少ないこと。二つ、《ジャシン帝》と《ジャブラッド》のカードがないこと。三つ、これらから察するに、さっきのスパトー:ド:スパトゥーみたいに実体化しているクリーチャーが多いこと。四つ……これが一番重要で、最も危険性の高いことなんだけど……良いかな?」
「先程も言いましたが、覚悟はできていますわ。どんとこい、ですわ!」
「……わかった。四つ、カードの減りとエリカの出血から察するに、実体化しているクリーチャー達は、エリカの生命力を吸っているんだ」
「エリカの、生命力?一体何故?」
「クリーチャーの実体化に必要なのは、マナとなる養分が必要なんだけど、こっちの世界には、その養分が存在しない。かわりに、僕達、人間のもつ生命力は、それなりにマナがあるんだ。個人差はあるけど」
「っ、それってつまり……!?」
そう、実体化に必要なマナがなければ、クリーチャーは実体化できず、そのマナのかわりに、エリカの生命力を使って、実体化しようとしたところ、実体化するクリーチャーの数が多く、先にエリカの生命力が持たず、目から大量の出血が出たのは、それが原因だろう、と、勝はそう推測する。
(おまけに、“目に力を持つ人間”は狙われやすいんだけど……そこは黙っておこう……)
「そんな……そんなことのために、エリカがあんな目にあうなんて、許せませんわ!」
「……」
珍しく、怒りに任せた秋乃の表情を見て、勝は静かに、彼女の肩に手を置いた。
「大丈夫。僕が必ず、エリカを助けるよ。だから、安心して、秋乃さん……」
「……勝様」
「──悪いけど、貴方達にはそこで引っ込んでてもらうわ」
「「!?」」
突如、女性の声が響き、それと同時に扉が閉まり、その扉が氷に包まれ、固まってしまった。
「な、なんですの!?」
「この氷は、まさか……!?」
動揺する二人。急いで氷を溶かそうと、手に炎を出そうとする勝だが、いつも間にか、両手、両足が氷に包まれており、手元にあったはずのエリカのデッキも無くなっていた。
「っ!?手が凍ってる!?それに、エリカのデッキがない!?」
「デッキは私が預かったわ。それに、さっきも言ったけど、貴方達にはそこで大人しくしてもらうわ」
「その声は、結衣ちゃん!?どうしてこんなことをするんだ?」
突然、扉の向こうから聞き慣れた女性の声、赤羽結衣の声が響き、突然、結衣が来たことに、勝は驚きつつ、彼女に問いかけた。
「……私の目的はジャシン帝の復活。それを邪魔する者は誰であろうと容赦はしない!勝、例え、貴方でもね」
「……!?」
結衣の目的に、勝は驚き、黙り込む。
どうやら、相当、ショックのようだ。無理もない。かつての想い人が、そんな目的を持っていたとは考えられず、精神が
「わかったなら、ジャシン帝が復活するまで、そこで大人しくしてなさい」
「待ちなさい!エリカは?エリカはどうなるのですか!?答えなさい!」
「エリカ?ああ、ベッドで横になって、目から血が出てるあの子ね。悪いけど、彼女はジャシン帝復活のために、その糧になるの。断念だけど、諦めなさい」
「「!?」」
人の心がないのか、それとも、人としての思考が欠落しているのか、結衣は冷たく、そう告げ、足を動かした。
やがて、結衣の足音が聞こえなくなり、部屋に飛び込められた勝と秋乃は絶望のあまり、その場で固まってしまった。
「……るな」
「?勝様?」
「ふざけるな!」
「!?」
そう強く叫ぶと、勝の右側の瞳に『火』、左側の瞳に『炎』、二つの文字が浮かび上がり、それと同時に、凍っているはずの手足が徐々に溶かされ、ある程度、動けるようになった足を、前に出し、炎を纏った右手で、氷で包まれた扉を勢いよく、ぶん殴り、扉を壊して、道を開けた。
「……」
その光景に、秋乃は驚き、言葉を失った。
「いくよ、秋乃さん!エリカさんを助けに!」
「っ、はい!」
勝の掛け声で、秋乃は我に返り、二人はエリカの元に向かった。
「全く、手間をかけさせるわね……」
気絶しているマリとキリオを見て、結衣は吐き捨てるかのように、そう言った。
エリカの部屋に勝と秋乃を閉じ込めた後、結衣はエリカのもとに向かうため、移動していた。
その途中、実体化したアビスロイヤルの《テブル=ザザーム》と、ノワールアビスの《ノラディ:ド:スルーザ》に襲われていた二人を助け、助けた後、二人を気絶させていた。
(これ以上、怖い想いをさせないためとはいえ、少しやりすぎたかな?)
脳裏でそう思った、その直後、スマホの着信音が鳴った。
スマホを取り出し、画面を開くと、黒江からだ。
どうやら、彼女も着いたのだろう、と、軽い気持ちで、電話に出た。
「もしもし、黒──」
『大変だ!結衣!キャルのやつ、焔財閥の屋敷の中に入っていた!』
「!?」
着くのが早すぎる。真っ先にそう思った結衣は、急ぎ、黒江の電話を切り、デッキを取り出した。
──その時だ。
「ワオォォォォォォォォォォン!」
犬、否、狼の叫び声が結衣の頭上に響き、天井が崩れ、崩壊した。
そこから、ケルベロスの影、否、影から完全に実体化した《
「キャル……」
「……邪魔しないで、結衣」
一瞬、結衣を見つめたキャルは、一言、そう言った。
「邪魔はしないわ。けど……」
「けど、何?」
「……貴方を邪魔する者が来るみたいだから、私がそいつらを阻止するわ」
「……いいの?」
「良いよ。貴方には早く強くなってほしいし、何より、“アレ”は貴方の手にあった方が、こっちにも都合の良いの」
「……わかった」
いまいち納得できないが、一旦、結衣の言葉を呑み込んだキャルはバウワウジャに乗ったまま、エリカの元に向かった。
「……さてと、私も準備しないと」
そう言って、結衣はスマホを取り出し、メールで、黒江に『私が来るまで、その場で待機』という一文を打ち、送信した。
送信後、こちらに向かう足音が二つ、響いた。
一つは勝の足音。もう一つはわからないが、恐らく、この屋敷の関係者だろうと、結衣はそう思い、スマホをズボンのポケットに入れ、デッキを前に掲げた。
「──ターゲット、ロックオンッ!」
結衣はそう宣言し、結衣のデッキから水色の細長い線が伸び、誰かを
恐らく、勝だろう、と、そう思い、結衣は宣言した。
「デュエル・ゾーン、強制展開!」
次回、勝対結衣、二度目の対戦。
はたして、勝は結衣に勝ち、ジャシン帝の復活を止めて、エリカを救えるのか?