デュエル・マスターズACE   作:リュウ・セイ

46 / 104
ACE46:すれ違う、二人の想い。切り裂け、爆炎の竜!

 

 

 

「ッ、秋乃さん、危ない!」

「え?きゃ!?」

 

 突然、水色の細い線が勝と秋乃に襲い掛かり、勝は咄嗟に秋乃を突き離した。

 突き離された秋乃は驚き、勝から離れるも、水色の細い線は勝を捕らえ、勝の体はそこで停止した。

 

「禁断竜王!秋乃さんを頼む!」

『了解、デス!』

 

 そう返事を返すと、勝のデッキから禁断竜王は人型に実体化し、秋乃の側についた。

 

「秋乃さん!先に行って!君が、エリカを──」

「勝様!」

 

 言い切るよりも早く、勝の体は粒子となって、姿を消した。

 突然、勝が消えたことに、秋乃は呆然と立ち尽くしてしまった。

 

「焔秋乃!気持ちはわかりますが、主なら大丈夫です!今は、アナタの友人を助けに行きましょう!」

「っ、わかりました。必ず、エリカを助けますわ!禁断竜王、わたくしについてきてください!」

 

 そう言って、秋乃は禁断竜王と一緒に、エリカの元に向かった。

 

 

 

 突然、デュエル・ゾーンに引き込まれた勝は結衣と相対していた。

 

「呪文、《「暴竜爵様(ぼうりゅうしゃくさま)のお出でましだッチ!」》!山札の上から4枚見て、《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》を手札に加える!その後、好きな順序で、山札の上か下に置ける!2枚は上、1枚は下に置いて、ターンエンド!」

「私のターン。私は《天災 デドダム》を召喚するわ。山札の上から3枚見て、1枚をマナ、1枚を手札、残り1枚を墓地に置いて、ターンエンド」

「僕のターン!こっちは《ヒートブレス・チャージャー》を唱えるよ!山札の上を見て、《ザークピッチ》を手札に加える!ターンエンド!」

 

 互いに手札とマナを増やし、切り札を出す準備を進めていく。

 どちらも動きは順調に見えるが、3ターン目にクリーチャーを出せなかった勝がやや不利に見える。

 以前、勝はブラックキャットの非公認大会で、結衣に負けている。

 あの時とは違うデッキを使っているが、禁断竜王がいない今、勝は《ボルシャック・ライダー》を切り札にした赤単アーマードで、結衣と対決することになった。

 正直なところ、まだ発展途上中のデッキを使うのは危険だが、手持ちのデッキが青赤緑(シータ)ディスペクターと、これしかないため、仕方なく使っている。

 対して、結衣のデッキはいつもの5色コントロールではなく、水、闇、自然の3色に絞った、青黒緑(アナカラー)を使っている。

 

(まだデッキの全貌はわからないけど、カラーリング的に相性は最悪だ!)

 

 先程の《デドダム》のようにアナカラーは手札、墓地、マナ、三つのゾーンに(さわ)れて、クリーチャー除去も三通りあり、闇の手札破壊(ハンデス)があるため、相手への妨害がそこそこあり、デッキの回転を円滑に進めるカードで固められているため、相手よりも優位にアドバンテージを稼げれるのだ。

 代わりに、火文明のような高パワー、高火力のあるクリーチャーやスピードアタッカーを持ったクリーチャーが存在しないため、決め手には欠ける。

 しかし、それはもう過去の話。以前、咲恋とデュエマをした際、咲恋が使っていた《ブランド-MAX》はS(スター)-MAX(マックス)進化を持っている。

 S-MAX進化は進化元を必要としない、進化クリーチャーだ。

 そして、このS-MAX進化を持つ進化クリーチャーは各文明に1種類以上、配られている。

 つまり、アナカラーの唯一の弱点が克服されているため、勝はアナカラーの戦略とS-MAX進化を持った進化クリーチャーを警戒しながら、戦略を組み立てなければならない。

 

(一先ず、ハンデス対策として、《ザークピッチ》は手札に加えたけど、相手は結衣ちゃんだ!油断したら、一瞬で負ける!)

 

「私のターン……ねぇ、勝くん」

「?何、結衣ちゃん?」

「あなたは何故、ジャシン帝の復活を止めるの?」

「……そんなの決まってるよ。ジャシン帝が復活したら、世界が終わる。それは瞳の力を持つ、僕達が止めなければならないことだ!君ならわかるだろ?」

「わからないわ」

「え?」

「あなたが……あなたたちがこの世界を守る意味が、私にはわからない!こんなクソみたいな世界を守って、何の意味があるの!」

「!?」

 

 ほんの僅か、彼女の本音が見えた気がした。

 それ故に、勝は拳を強く握り締め、自分に腹が立った。

 何も知らず、自分の理想論を、彼女に押し付けたこと。彼女がこんなにも苦しんでいるのに、自分は何も知らなかったこと。

 勝は自分自信に腹が立った。

 

 しかし、それとこれとは話は別だ。そう自分に言い聞かせ、勝は結衣を強く見つめる。

 

「……それでも、守らなければいけない!使命を、果たさなければいけない!」

「そんなの、やりたいやつが勝手にやってよ!あなたがやる必要ないでしょ!」

「他人に押し付けてはいけないんだ!僕達は“選ばれた”!選ばれた以上、使命を放置してはいけないんだ!」

「わたしは“選ばれたくなかった”!あなたも“選ばれてほしくなかった”!だから──

 

 

 

 ──わたしが止める!あなたに嫌われても、わたしはあなたを止める!あなたの使命をへし折るっ!」

 

 そうして、5枚のマナをタップした彼女は手札から1枚のカードを掲げ、叫んだ。

 

「闇を纏え!水の龍素記号(りゅうそきごう)っ!《龍素記号wD(ダブリューディー )サイクルペディア》を召喚っ!」

「ッ、そいつは……!?」

 

 それは《ザーディクリカ》の片側、《龍素記号Sr(エスアール) スペルサイクリカ》が闇の種族、ダークロードの力を纏ったクリスタル・コマンド・ドラゴン、《龍素記号wD サイクルペディア》だった。

 コスト5、パワー5000、ジャストダイバーとブロッカーを持ち、本家と同じく、墓地から呪文を唱えられるが、範囲がコスト4以下と(せば)まった。

 かわりに、手札から唱えた呪文をもう一度唱えるようになった。

 そして、結衣の墓地には、前のターン、《デドダム》で墓地に置いたカードがある。

 

「《サイクルぺディア》の効果で、墓地から呪文、《勝熱と弾丸と自由の決断(パーフェクト・ジョーカーズ)》!呪文の効果で、《サイクルぺディア》と《デドダム》はこのターン、プレイヤーに攻撃できる!」

「ッ!?」

 

 勝は驚いてしまった。

 今の結衣には決して似合わないカードだと、勝はそう思い、驚いてしまった。

 何故なら、《勝熱と弾丸と自由の決断(パーフェクト・ジョーカーズ)》は弾丸という二文字と、勝熱を情熱に置き換えれば、情熱と自由の象徴である。

 故に、今の結衣は利己的(りこてき)な思考で、情に流されることはまず無い。

 しかし、かつて、結衣の想い人であった勝は違った。

 

「……唯ちゃん、そこまでして、君はジャシン帝の復活を成し遂げたいの?」

「当たり前よ!これがわたしの、自由の決断!こんなクソみたいな世界をぶっ壊す、わたしの覚悟よっ!」

 

 それは悲痛な叫び、(かな)しい決断だった。

 僅かに、胸の痛みを感じた。スパトー:ド:スパトゥーと戦った時に負った傷とは別に、心から感じた痛みだった。

 

(──ああ、そうか。結衣ちゃん、君は今、昔の僕と同じ気持ちなのか)

 

「《サイクルぺディア》で攻撃!する時に、革命チェンジっ!」

 

 結衣の指示に、駆け出したサイクルぺディアはカードに戻り、手札から新たなカードを、結衣は投げた。

 

「すべてを()てつけ!そして、目の前にいる大っ嫌いな彼を(こお)りつくせ!《完璧問題(ラストクエスチョン) オーパーツ》っ!」

 

 それはテック団の最終兵器にして、結衣の真の切り札、《完璧問題 オーパーツ》だった。

 ただし、アニメで見たオーパーツと違い、オーパーツの右手に英知と追撃の宝剣(エターナル・ソード)が握られていた。

 それと同時に、結衣の水色の瞳の左側が『氷』の文字が浮かび上がり、周囲に冷気が蔓延(まんえん)した。

 

「寒ッ!寒いけど、気合で我慢だッ!」

「《オーパーツ》の効果!わたしは山札の上からカードを2枚引いて、あなたは手札からカードを2枚選んで、山札の下に置いて!」

 

 寒さを感じながらも、勝は手札からカードを2枚、山札の下に置いた。

 元々、火や炎を扱う勝にとって、寒さに耐性があるが、結衣の放つ冷気は普通に感じてしまうのだ。

 

「W・ブレイクっ!」

 

 振り下ろされる長剣(ちょうけん)。しかし、薄い、巨大な壁が二つ現れ、勝を守り、勝はシールドの中を覗いた。

 

「ッ、トリガーは……ない」

 

 シールド・トリガーがないことを知らせると、結衣は迷わず、《デドダム》に手を置く。

 

「《デドダム》で攻撃!する時に、侵略、発動っ!」

「侵略!?まさか……!?」

 

 デドダムの足元から突然、不気味な手が現れ、デドダムを地面の中に引き()り込んだ。

 

「……デンジャラス、ゾンビ!《デドダム》を《S(エス)(きゅう)不死(ゾンビ) デッドゾーン》に侵略進化!」

 

 地面の底から現れたのは侵略者の上位種にして、不死(ゾンビ)の力を持ったS級侵略者、《S級不死 デッドゾーン》だった。

 

「T・ブレイクっ!」

「ッ、が……!」

 

 現れたデッドゾーンは右腕のタイヤで、叩くも、またしても、三つの壁が現れ、攻撃を防ぎ、砕かれた。

 しかし、デッドゾーンが砕いた壁の一部が勝に当たり、デュエマの台から突き離した。

 

「……イテテ、完全に、油断したな」

「!?勝、あなた、頭から血が……!?」

「?」

 

 言われて、手に頭を当てると、滑りとした生暖かさを感じた。

 血だ。先程の壁の一部が頭に傷をつけたみたいだ。

 それを見て、勝は服の袖で手を拭き、頭から出た血を、腕で払い、シールドの中を確認した。

 

「……トリガーはない」

「っ、ターンエンドよ!」

「僕のターン……っ!?」

 

 カードを引いた瞬間、勝はふらついた。

 どうやら、頭から出た血が身体(しんたい)に悪影響を与えているのだろう、と、そう思った勝は手札を見る。

 

(大丈夫。手札に必要なパーツは揃ってる!後はメクレイドで見たカード次第だ……!)

 

「……ねぇ、そろそろ諦めない?こんなことしても、辛いだけだよ?」

「確かに辛いし、痛いし、逃げたいよ。けど……目の前で、助けを求めている人を放ってはおけない」

「他人でしょ!そんなことして、何の意味があるの!」

「他人じゃないッ!」

「!?」

 

 珍しく、勝は怒鳴り声を上げた。

 どうやら、他人という言葉に頭に来たのだろう。

 もう、我慢ができない。感情を抑えられない。そう思考が()ぎり、勝は心の内を叫んだ。

 

「彼女は……秋乃さんは他人じゃない!僕が辛い時、秋乃さんは支えてくれた!秋乃さんのお陰で、僕はまた、前を向いていられる!進んでいける!だから今度は、僕が秋乃さんを支える!」

「っ、勝……あなた、そこまでして……」

「守りたいさ!守りたいから、ジャシン帝の復活を止めて、エリカを助ける!結衣ちゃん……いや、結衣!君が秋乃さんを傷つけるなら、僕が許さないッ!絶対に許さないッ!」

 

 心の内を叫んだ勝は4枚のマナをタップし、1枚のカードを手に掲げた。

 

「《クック・轟・ブルッチ》を召喚!次に使うアーマードのコストを6軽減!」

 

 クック・轟・ブルッチの鳴き声に共鳴するかのように、勝の手札から1枚のカードが燃え上がり、勝はすかさず、そのカードを引き抜いた。

 

「炎を纏えしは、覇道の竜!そして……僕の道を指し示せ!1マナで、《覇炎竜 ボルシャック・ライダー》を召喚ッ!」

 

 勝の目の前に、炎の嵐が現れ、そこからボルシャック・ライダーが姿を現した。

 それと同時に、勝の右目が『火』、左目が『炎』の文字が浮かび上がり、デュエル・ゾーンの空間が炎に(おお)われた。

 

「ボルシャック・ライダー?それがあなたの新しい切り札なの?」

「ああ!そうさ!そして、コイツで君を倒して、ジャシン帝の復活を止める!《ボルシャック・ライダー》でシールドを攻撃!各ブレイクの前に、アーマード・メクレイド5を2回発動ッ!」

 

 新たに炎の嵐が二つ現れ、そこから、ボルシャック・アークゼオスが2体現れた。

 

「《ボルシャック・アークゼオス》のアーマード・メクレイド5を発動ッ!それが2回だ!」

 

 2体のボルシャック・アークゼオスの手から小さな炎が現れ、そこから、ボルシャック・爆・ルピアが2体現れた。

 

「ファイアー・バードが出たから、2体の《ボルシャック・アークゼオス》の効果で、《デッドゾーン》と《オーパーツ》とバトルッ!」

 

 パワーが14000まで上がった、2体のボルシャック・アークゼオスはそれぞれ、デッドゾーンとオーパーツとバトルし、破壊した。

 

「そして、《ボルシャック・ライダー》で、シールドをW・ブレイクッ!」

 

 結衣の前に、巨大な薄い壁が二つ現れ、ボルシャック・ライダーは気にせず、二つの長剣で、その壁を切り裂いた。

 しかし、切り裂かれた壁の中から雷のマークが一つ、現れ、結衣は咄嗟に、シールドの中を確認し、宣言した。

 

「シールド・トリガー!呪文、《九番目の旧王(ザインティ・ザイン)》!相手のクリーチャー、すべてのパワーを−3000!」

 

 不気味な悪魔の手が無数に現れ、勝のクリーチャーを苦しめた。

 パワーが3000しかない、クック・轟・ブルッチと2体のボルシャック・爆・ルピアはパワーが0になり、破壊された。

 しかし、ボルシャック・爆・ルピアの炎の魂は消えず、勝の山札に吸収された。

 

「破壊された《ボルシャック・爆・ルピア》のアーマード・メクレイド8を発動ッ!1回目……《ボルシャック・NEX》!2回目は……コイツだ!」

「っ、そのカードは!?」

 

 見せつけられたカードに結衣は驚く。

 何故なら、そのカードは、かつて、勝が切り札として使っていたカードだったからだ。

 

「鎧を纏いしは、爆炎の竜!切り裂け、《爆竜(ばくりゅう)デュアルベルフォース》ッ!」

 

 炎の大剣を二つ持ち、侍のような鎧を纏った、フレイム・コマンドとサムライの種族を二つ持ったアーマード・ドラゴン、《爆竜デュアルベルフォース》が炎の嵐の中から現れ、ボルシャック・ライダーの隣に並んだ。

 

「《デュアルベルフォース》!?なんでそんな古いカードが、そのデッキに入ってるの!?」

「カードのイラストがカッコいいからだよッ!それ以外に理由なんてないよッ!」

「意味わかんないっ!」

 

 純粋な男としての感性を結衣に伝えるも、男心(おとこごころ)がわからない結衣にとって、勝の感性が理解できなかった。

 

「《ボルシャック・NEX》の効果で、山札から《アニー・ルピア》を場に出す!《アニー・ルピア》のシビルカウント3で、《アニー・ルピア》以外のクリーチャーはすべて、スピードアタッカーになる!そして、自分の場に《NEX》か、《XX》があれば、《デュアルベルフォース》はT・ブレイカーを得る!」

 

 共鳴するかのように、ボルシャック・NEXとデュアルベルフォースは咆哮し、炎の大剣が細長い剣へと変わった。

 

「《デュアルベルフォース》で、T・ブレイクッ!」

 

 二つの細長い剣が、結衣のシールドを切り裂いた。

 

「っ、トリガーは……」

 

 ──なかった。

 

 脳裏でそう思った結衣は、視線を下に落とした。

 それを見た勝は《ボルシャック・アークゼオス》に手を置いた。

 

「──《ボルシャック・アークゼオス》で、ダイレクトアタックッ!」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。