「ッ、秋乃さん、危ない!」
「え?きゃ!?」
突然、水色の細い線が勝と秋乃に襲い掛かり、勝は咄嗟に秋乃を突き離した。
突き離された秋乃は驚き、勝から離れるも、水色の細い線は勝を捕らえ、勝の体はそこで停止した。
「禁断竜王!秋乃さんを頼む!」
『了解、デス!』
そう返事を返すと、勝のデッキから禁断竜王は人型に実体化し、秋乃の側についた。
「秋乃さん!先に行って!君が、エリカを──」
「勝様!」
言い切るよりも早く、勝の体は粒子となって、姿を消した。
突然、勝が消えたことに、秋乃は呆然と立ち尽くしてしまった。
「焔秋乃!気持ちはわかりますが、主なら大丈夫です!今は、アナタの友人を助けに行きましょう!」
「っ、わかりました。必ず、エリカを助けますわ!禁断竜王、わたくしについてきてください!」
そう言って、秋乃は禁断竜王と一緒に、エリカの元に向かった。
突然、デュエル・ゾーンに引き込まれた勝は結衣と相対していた。
「呪文、《「
「私のターン。私は《天災 デドダム》を召喚するわ。山札の上から3枚見て、1枚をマナ、1枚を手札、残り1枚を墓地に置いて、ターンエンド」
「僕のターン!こっちは《ヒートブレス・チャージャー》を唱えるよ!山札の上を見て、《ザークピッチ》を手札に加える!ターンエンド!」
互いに手札とマナを増やし、切り札を出す準備を進めていく。
どちらも動きは順調に見えるが、3ターン目にクリーチャーを出せなかった勝がやや不利に見える。
以前、勝はブラックキャットの非公認大会で、結衣に負けている。
あの時とは違うデッキを使っているが、禁断竜王がいない今、勝は《ボルシャック・ライダー》を切り札にした赤単アーマードで、結衣と対決することになった。
正直なところ、まだ発展途上中のデッキを使うのは危険だが、手持ちのデッキが
対して、結衣のデッキはいつもの5色コントロールではなく、水、闇、自然の3色に絞った、
(まだデッキの全貌はわからないけど、カラーリング的に相性は最悪だ!)
先程の《デドダム》のようにアナカラーは手札、墓地、マナ、三つのゾーンに
代わりに、火文明のような高パワー、高火力のあるクリーチャーやスピードアタッカーを持ったクリーチャーが存在しないため、決め手には欠ける。
しかし、それはもう過去の話。以前、咲恋とデュエマをした際、咲恋が使っていた《ブランド-MAX》は
S-MAX進化は進化元を必要としない、進化クリーチャーだ。
そして、このS-MAX進化を持つ進化クリーチャーは各文明に1種類以上、配られている。
つまり、アナカラーの唯一の弱点が克服されているため、勝はアナカラーの戦略とS-MAX進化を持った進化クリーチャーを警戒しながら、戦略を組み立てなければならない。
(一先ず、ハンデス対策として、《ザークピッチ》は手札に加えたけど、相手は結衣ちゃんだ!油断したら、一瞬で負ける!)
「私のターン……ねぇ、勝くん」
「?何、結衣ちゃん?」
「あなたは何故、ジャシン帝の復活を止めるの?」
「……そんなの決まってるよ。ジャシン帝が復活したら、世界が終わる。それは瞳の力を持つ、僕達が止めなければならないことだ!君ならわかるだろ?」
「わからないわ」
「え?」
「あなたが……あなたたちがこの世界を守る意味が、私にはわからない!こんなクソみたいな世界を守って、何の意味があるの!」
「!?」
ほんの僅か、彼女の本音が見えた気がした。
それ故に、勝は拳を強く握り締め、自分に腹が立った。
何も知らず、自分の理想論を、彼女に押し付けたこと。彼女がこんなにも苦しんでいるのに、自分は何も知らなかったこと。
勝は自分自信に腹が立った。
しかし、それとこれとは話は別だ。そう自分に言い聞かせ、勝は結衣を強く見つめる。
「……それでも、守らなければいけない!使命を、果たさなければいけない!」
「そんなの、やりたいやつが勝手にやってよ!あなたがやる必要ないでしょ!」
「他人に押し付けてはいけないんだ!僕達は“選ばれた”!選ばれた以上、使命を放置してはいけないんだ!」
「わたしは“選ばれたくなかった”!あなたも“選ばれてほしくなかった”!だから──
──わたしが止める!あなたに嫌われても、わたしはあなたを止める!あなたの使命をへし折るっ!」
そうして、5枚のマナをタップした彼女は手札から1枚のカードを掲げ、叫んだ。
「闇を纏え!水の
「ッ、そいつは……!?」
それは《ザーディクリカ》の片側、《龍素記号
コスト5、パワー5000、ジャストダイバーとブロッカーを持ち、本家と同じく、墓地から呪文を唱えられるが、範囲がコスト4以下と
かわりに、手札から唱えた呪文をもう一度唱えるようになった。
そして、結衣の墓地には、前のターン、《デドダム》で墓地に置いたカードがある。
「《サイクルぺディア》の効果で、墓地から呪文、《
「ッ!?」
勝は驚いてしまった。
今の結衣には決して似合わないカードだと、勝はそう思い、驚いてしまった。
何故なら、《
故に、今の結衣は
しかし、かつて、結衣の想い人であった勝は違った。
「……唯ちゃん、そこまでして、君はジャシン帝の復活を成し遂げたいの?」
「当たり前よ!これがわたしの、自由の決断!こんなクソみたいな世界をぶっ壊す、わたしの覚悟よっ!」
それは悲痛な叫び、
僅かに、胸の痛みを感じた。スパトー:ド:スパトゥーと戦った時に負った傷とは別に、心から感じた痛みだった。
(──ああ、そうか。結衣ちゃん、君は今、昔の僕と同じ気持ちなのか)
「《サイクルぺディア》で攻撃!する時に、革命チェンジっ!」
結衣の指示に、駆け出したサイクルぺディアはカードに戻り、手札から新たなカードを、結衣は投げた。
「すべてを
それはテック団の最終兵器にして、結衣の真の切り札、《完璧問題 オーパーツ》だった。
ただし、アニメで見たオーパーツと違い、オーパーツの右手に
それと同時に、結衣の水色の瞳の左側が『氷』の文字が浮かび上がり、周囲に冷気が
「寒ッ!寒いけど、気合で我慢だッ!」
「《オーパーツ》の効果!わたしは山札の上からカードを2枚引いて、あなたは手札からカードを2枚選んで、山札の下に置いて!」
寒さを感じながらも、勝は手札からカードを2枚、山札の下に置いた。
元々、火や炎を扱う勝にとって、寒さに耐性があるが、結衣の放つ冷気は普通に感じてしまうのだ。
「W・ブレイクっ!」
振り下ろされる
「ッ、トリガーは……ない」
シールド・トリガーがないことを知らせると、結衣は迷わず、《デドダム》に手を置く。
「《デドダム》で攻撃!する時に、侵略、発動っ!」
「侵略!?まさか……!?」
デドダムの足元から突然、不気味な手が現れ、デドダムを地面の中に引き
「……デンジャラス、ゾンビ!《デドダム》を《
地面の底から現れたのは侵略者の上位種にして、
「T・ブレイクっ!」
「ッ、が……!」
現れたデッドゾーンは右腕のタイヤで、叩くも、またしても、三つの壁が現れ、攻撃を防ぎ、砕かれた。
しかし、デッドゾーンが砕いた壁の一部が勝に当たり、デュエマの台から突き離した。
「……イテテ、完全に、油断したな」
「!?勝、あなた、頭から血が……!?」
「?」
言われて、手に頭を当てると、滑りとした生暖かさを感じた。
血だ。先程の壁の一部が頭に傷をつけたみたいだ。
それを見て、勝は服の袖で手を拭き、頭から出た血を、腕で払い、シールドの中を確認した。
「……トリガーはない」
「っ、ターンエンドよ!」
「僕のターン……っ!?」
カードを引いた瞬間、勝はふらついた。
どうやら、頭から出た血が
(大丈夫。手札に必要なパーツは揃ってる!後はメクレイドで見たカード次第だ……!)
「……ねぇ、そろそろ諦めない?こんなことしても、辛いだけだよ?」
「確かに辛いし、痛いし、逃げたいよ。けど……目の前で、助けを求めている人を放ってはおけない」
「他人でしょ!そんなことして、何の意味があるの!」
「他人じゃないッ!」
「!?」
珍しく、勝は怒鳴り声を上げた。
どうやら、他人という言葉に頭に来たのだろう。
もう、我慢ができない。感情を抑えられない。そう思考が
「彼女は……秋乃さんは他人じゃない!僕が辛い時、秋乃さんは支えてくれた!秋乃さんのお陰で、僕はまた、前を向いていられる!進んでいける!だから今度は、僕が秋乃さんを支える!」
「っ、勝……あなた、そこまでして……」
「守りたいさ!守りたいから、ジャシン帝の復活を止めて、エリカを助ける!結衣ちゃん……いや、結衣!君が秋乃さんを傷つけるなら、僕が許さないッ!絶対に許さないッ!」
心の内を叫んだ勝は4枚のマナをタップし、1枚のカードを手に掲げた。
「《クック・轟・ブルッチ》を召喚!次に使うアーマードのコストを6軽減!」
クック・轟・ブルッチの鳴き声に共鳴するかのように、勝の手札から1枚のカードが燃え上がり、勝はすかさず、そのカードを引き抜いた。
「炎を纏えしは、覇道の竜!そして……僕の道を指し示せ!1マナで、《覇炎竜 ボルシャック・ライダー》を召喚ッ!」
勝の目の前に、炎の嵐が現れ、そこからボルシャック・ライダーが姿を現した。
それと同時に、勝の右目が『火』、左目が『炎』の文字が浮かび上がり、デュエル・ゾーンの空間が炎に
「ボルシャック・ライダー?それがあなたの新しい切り札なの?」
「ああ!そうさ!そして、コイツで君を倒して、ジャシン帝の復活を止める!《ボルシャック・ライダー》でシールドを攻撃!各ブレイクの前に、アーマード・メクレイド5を2回発動ッ!」
新たに炎の嵐が二つ現れ、そこから、ボルシャック・アークゼオスが2体現れた。
「《ボルシャック・アークゼオス》のアーマード・メクレイド5を発動ッ!それが2回だ!」
2体のボルシャック・アークゼオスの手から小さな炎が現れ、そこから、ボルシャック・爆・ルピアが2体現れた。
「ファイアー・バードが出たから、2体の《ボルシャック・アークゼオス》の効果で、《デッドゾーン》と《オーパーツ》とバトルッ!」
パワーが14000まで上がった、2体のボルシャック・アークゼオスはそれぞれ、デッドゾーンとオーパーツとバトルし、破壊した。
「そして、《ボルシャック・ライダー》で、シールドをW・ブレイクッ!」
結衣の前に、巨大な薄い壁が二つ現れ、ボルシャック・ライダーは気にせず、二つの長剣で、その壁を切り裂いた。
しかし、切り裂かれた壁の中から雷のマークが一つ、現れ、結衣は咄嗟に、シールドの中を確認し、宣言した。
「シールド・トリガー!呪文、《
不気味な悪魔の手が無数に現れ、勝のクリーチャーを苦しめた。
パワーが3000しかない、クック・轟・ブルッチと2体のボルシャック・爆・ルピアはパワーが0になり、破壊された。
しかし、ボルシャック・爆・ルピアの炎の魂は消えず、勝の山札に吸収された。
「破壊された《ボルシャック・爆・ルピア》のアーマード・メクレイド8を発動ッ!1回目……《ボルシャック・NEX》!2回目は……コイツだ!」
「っ、そのカードは!?」
見せつけられたカードに結衣は驚く。
何故なら、そのカードは、かつて、勝が切り札として使っていたカードだったからだ。
「鎧を纏いしは、爆炎の竜!切り裂け、《
炎の大剣を二つ持ち、侍のような鎧を纏った、フレイム・コマンドとサムライの種族を二つ持ったアーマード・ドラゴン、《爆竜デュアルベルフォース》が炎の嵐の中から現れ、ボルシャック・ライダーの隣に並んだ。
「《デュアルベルフォース》!?なんでそんな古いカードが、そのデッキに入ってるの!?」
「カードのイラストがカッコいいからだよッ!それ以外に理由なんてないよッ!」
「意味わかんないっ!」
純粋な男としての感性を結衣に伝えるも、
「《ボルシャック・NEX》の効果で、山札から《アニー・ルピア》を場に出す!《アニー・ルピア》のシビルカウント3で、《アニー・ルピア》以外のクリーチャーはすべて、スピードアタッカーになる!そして、自分の場に《NEX》か、《XX》があれば、《デュアルベルフォース》はT・ブレイカーを得る!」
共鳴するかのように、ボルシャック・NEXとデュアルベルフォースは咆哮し、炎の大剣が細長い剣へと変わった。
「《デュアルベルフォース》で、T・ブレイクッ!」
二つの細長い剣が、結衣のシールドを切り裂いた。
「っ、トリガーは……」
──なかった。
脳裏でそう思った結衣は、視線を下に落とした。
それを見た勝は《ボルシャック・アークゼオス》に手を置いた。
「──《ボルシャック・アークゼオス》で、ダイレクトアタックッ!」