「……ここね」
バウワウジャの背中に乗って、キャルはエリカが眠っている部屋の扉の前に立ち止まり、バウワウジャの背中から降りた。
「……開けるわよ」
「ウゥ──ゥ──ン──ッ!」
「何よ、急に怖い顔をして……私なら大丈夫よ、安心して。それにいざって時に、アンタが守ってくれるんでしょ?その時は頼りにしてるわ」
「ウ──ゥ──ン。ク──ゥ──ン。……」
キャルが扉を開けようとすると、バウワウジャは皺を寄せて、機嫌を悪くし、それを見たキャルはバウワウジャに説得し、安心させようと顎と頭の上を撫でて、落ち着かせた。
「それじゃ、今度こそ、開けるわよ」
「……バウッ!」
ガチャッ、と、ハンドルを軽く回し、扉を開けた。
「ッ!?」
扉を開けると、エリカが寝ているベッドが血の色で染まっていた。
どうやら、バウワウジャが機嫌を悪くしていたのは血の臭いが原因のようだ。
そう思った矢先、キャルの左目が痛みを感じた。
さっきまでの強い痛みはなく、どちらかと言うと、共鳴しているかのように痛みを感じ、キャルは迷わず、ベッドに向かい、中を覗いた。
「ッ!?」
キャルは言葉を詰まらせた。
驚きのあまり、言葉を詰まらせてしまったのだ。
見ると、エリカの右目が血の色で紅く染まっており、右目だけでなく、左目、鼻、口から血が出欠していた。
その光景に、キャルは一歩下がり、吐き気を感じ、近くにあったゴミ箱に手を出し、口から異物を吐いた。
「はぁ……ぁ……何なのよ、全く……ッ!?」
ある程度、異物を吐いた後、また左目から痛みを感じた。
それは、まるで、何かに訴えるのかような痛みで、その内容は、ベッドに寝ているエリカの目を奪え、と言わんばかりに、具体的な内容で訴えてきた。
「わかっ、てる……わよ……」
痛みに耐えながらも、キャルは自身に訴えてくる何かに返事を返し、ベッドで横になっているエリカの体の上に乗った。
(……ほんと、こうしてみると、グロテスクね)
脳裏でそう思いながらも、顔が血塗れのエリカの右目を無理矢理開かせた。
すると、エリカの右目の紫色の瞳とキャルの左目の紫色の瞳が光り、共鳴した。
「く……!?」
「っ……!?」
共鳴と同時に、二人はまた痛みを感じた。
「「う……うぅ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
そして、二人は苦しみ、大きな叫び声を上げた。
「はぁ……はぁ……な、何だったの……今の……」
やがて、苦しみから解放されたキャルは真っ先に悪態をつき、息を切らした呼吸を整え、エリカを覗いた。
「……」
死んでいるのか、と、脳裏に
どうやら死んでおらず、それを知ったキャルは安堵した。
そう思った時、右目に違和感を覚え、近くにあった手鏡を取り、自分の顔を覗いた。
「っ!?」
すると、キャルの右目が紫色に変わっていた。
「……そうか。私、成し遂げたのね」
「──エリカぁぁぁぁぁっ!」
突然、扉の向こうからエリカの名を呼ぶ叫び声が響き、勢いよく、扉が開かれ、二人の来訪者──秋乃と禁断竜王が現れた。
「っ、貴女、この部屋で一体何をしていたの?」
「……別に。ただちょっと、そこで寝ている子に用があっただけよ。もう用は済んだけど……」
現れた秋乃は真っ先に、キャルに問いかけると、キャルは吐き捨てるかのように、そう言った。
それを聞いて、秋乃は怒りを露わにした。
「……許しません!貴女は絶対に、わたくしが許しません!」
「……許せないなら、どうするの?人を傷つけたこともないお姫様が、どうやって、私を許しを
「止めます!貴女をこれ以上、好き勝手させないために、貴女の身を拘束して止めます!」
「は、やれるものなら、やってみなさいっ!バウワウジャ!」
「バウ!」
「させません!」
近くで待機していたバウワウジャが秋乃に襲い掛かるも、禁断竜王がそれを阻止する。
「主の想い人を傷つける者は、この禁断竜王が爪一つ、触れさせません!」
「あっそ。その間に、私は逃げさせてもらうわよ!」
「逃しませんわ!」
そう言って、秋乃は駆け出すも、キャルはジャンプして躱した。
「悪いけど、アンタじゃ、私を
「だとしても、諦めるわけにはいきませんわ!」
「強情なヤツ……いいわ。それなら……」
突然、キャルはデュエマのデッキを取り出し、それと同時に、バウワウジャはカードの姿に戻り、キャルのデッキの中に入っていった。
「何のつもりですの?」
「私とデュエマをしましょう?」
「え?」
意外な提案に秋乃は驚く。
そんな秋乃を放置して、キャルはデュエマをする理由を提示した。
「貴女が勝ったら、私は大人しく捕まってあげる。けど、私が勝ったら、大人しく、その道を通してもらうわ」
「……わかりました」
「危険です、焔秋乃!」
秋乃はあっさりキャルの提案を受けるも、禁断竜王はそれを阻止する。
「危険なのは重々承知していますわ!それに……わたくしが負けると本気で思っているの?」
「実力の話ではありません!今の彼女は、ジャシン帝にもっとも近い力を持っています!故に、安易にデュエマを受けてはなりません!」
「だとしても、ですわ!」
「!?」
秋乃の叫びに、禁断竜王は後ずさる。
「だとしても……わたくしはこのデュエマを受けないわけにはいきませんわ!」
「……」
必死な想いで叫ぶ秋乃に、禁断竜王は黙り込み、少し間を置いてから、溜め息を吐いた。
「……わかりました。けど、危険と感じましたら、強制的にデュエマを中断させていただきます」
「ありがとうございます、禁断竜王」
禁断竜王から了承を受けた秋乃はキャルに向き直った。
「……話、終わった?」
「ええ、終わりました。それから、逃げずに待っていただき、ありがとうございます」
「……全く、口の減らない女ね」
「そうですわね」
そう返事を返すと、秋乃はデッキを取り出した。
「それじゃ、いくわよ!」
「ええ、いつでも……!」
「「──デュエマ・スタートッ!!」