──時は数十分前に遡る。
「なんとか……勝った……」
デュエル・ゾーンで結衣に勝利し、先に脱出した勝だか、体はもうボロボロで、疲れは限界に達していた。
正直、この後の戦いが保つとは考えられない。
それでも、自分の使命を放置するわけにはいかない。
そう決意し、勝は足を動かした。
「──待ってよ、勝君」
「!?」
久しぶりに聞いた呼び方に、勝は驚き、足を止めて、振り返ると、突然、デッキが飛んできて、勝は咄嗟に、それを掴んだ。
飛んできた方に視線を向けると、仁王立ちの結衣がそこに立っていた。
「……何のつもり、結衣ちゃん?」
「別に。大した理由はないわ。ただ手ぶらでいくのはどうかと思っただけよ。それに……」
「それに、何?こっちは急いでいるんだ。言いたいことがあるなら、さっさと言ってくれる?」
「ム、そんなことを言われると、言いたくなくなる……」
「それだったら、僕は先に行く」
そう言って、結衣を無視して、勝は先に進もうと、足を動かした。
「何よ!人の気持ちを知らないで!」
「……」
大きな怒鳴り声を上げる結衣だが、勝は気にせず、ゆっくり、足を前へと進めた。
やがて、勝の姿は見えず、その場には結衣一人しか居なかった。
「本当に、勝手な人……そんなんだから、いざって時に、痛い目に遭うんだよ……」
「扉が開いてる?」
エリカが眠っている部屋の扉の前に着くと、その扉が開いていることに気づき、勝は痛めている体を無理矢理力を入れ、早足で、部屋の中に入った。
「っ!?」
見ると、エリカのベッドが血の色で塗られており、部屋の中が悪臭で充満していた。
急いで、エリカのベッドに近づき、エリカの様子を伺うと、エリカの両目、鼻、口から血が出ていていた。
「エリカ!?まさか……!?」
死んでいるのか、と、脳裏でそう思い、エリカの鼻に手を当てた。
「!?息がある!?」
(まだ息はある!救急車を呼べば、助かる!)
そう思った勝はスマホを取り出そうとすると、その腕を掴む手──エリカの手が掴まれた。
「勝……様……」
「ッ、エリカ!大丈夫!今、救急車を呼ぶから、少し待ってて!」
そう勝が叫ぶと、エリカは
「お嬢……様を……助けて……ください……」
「──え?」
一瞬、その言葉の意味に、勝は理解するのに遅れた。
──それからというもの、勝は急ぎ、屋上に向かった。
体は痛いが、そんなものは構っていられない。
あの後、エリカから可能な限り、秋乃の居場所を聞き出し、エリカを別の部屋に移した後、何故か気絶していたマリとキリオをエリカと同じ部屋に移し、救急車を呼んで、今、階段をもうダッシュして屋上に向かって、走っていた。
──あれから、どれくらいの時間が経ったのだろうか?
もしもの時のためとはいえ、エリカ達を安全な場所に避難させた時間が大きい。
禁断竜王がいるとはいえ、それでも、安心はできない。
時間的ロスが激しい。脳裏で、そう不安を感じる中、勝はボロボロな体を無理矢理動かし、前へ進んだ。
(頼む!僕が来るまで、無事でいてくれ!)
そう思った矢先、開けかけの扉が見え、勝はその扉に突進し、屋上に着いた。
「な……!?」
屋上に着くと、勝は目を疑った。
何故なら、キャルの後ろにジャシン帝とジャブラッド、そして、バウワウジャが実体化しており、キャルの両目は紫色に変化し、秋乃とデュエマをしていた。
「──これで終わりよッ!《バウワウジャ》で、ダイレクトアタックッ!」
「ワオォォォォォォォォォォンッ!」
「ッ、キャアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッー!」
バウワウジャの咆哮に、秋乃は叫び声を上げながら、吹き飛び、扉の横の壁に激突した。
激突した壁に凹みができ、また数秒もしないうちに、秋乃の体は前かがみに倒れた。
「ッ、秋乃さん!」
だが、その前に勝が秋乃の体を支え、ゆっくり体を下ろし、壁を背もたれにし、ゆっくり座らせた。
「……勝、様……?」
「大丈夫?秋乃さん?」
「……」
勝の問いかけに、秋乃は無言で頷き、それを見た勝は安堵した。
「秋乃さん。どうして、こんな無茶な真似をしたの?」
「……ごめんなさい、勝様。わたくし……どうしても、許せなかったの……エリカが、傷つけられたことが……だから……」
「……もう良いよ、秋乃さん。後は僕に任せて……」
「……はい」
そう返事を返した後、秋乃は意識を手放し、気を失った。
秋乃の小さな声を聞いて、勝は立ち上がり、いつも間にか、秋乃と行動を共にしていた禁断竜王が近づいており、彼女に「秋乃さんをお願い」、と、一言言って、キャルに向かい、目を鋭くし、彼女を睨んだ。
その時、勝の瞳は赤い、紅色の炎に変わり、右目に『火』、左目に『炎』の文字を浮かび上がらせた。
「……何よ、そんなに怖い顔をして」
「……僕は君を許さない。秋乃さんを傷つけた、君を……絶対に、許さないッ!」
そう言って、勝はデッキを取り出し、掲げ、叫んだ。
「デュエル・ゾーンッ!強制展開ッ!」
「なんで君達はこうも、僕の大事な人を傷つけるんだッ!」
「そう思うんなら、首輪でもつけておきなさいよッ!」
「ッ、ふざけるなぁッ!」
感情に任せた勝はそう叫び、クック・轟・ブルッチのコスト軽減で、ボルシャック・ライダーを1マナで召喚し、キャルのシールドを攻撃しなから、アーマード・メクレイド5で、ボルシャック・アークゼオスを2体、場に出した。
そこからさらに、ボルシャック・フォース・ドラゴンとボルシャック・バラフィオルが現れ、キャルのシールドを2枚、ブレイクした。
「シールド・トリガー!《
しかし、シールドの中にシールド・トリガーが2枚あった。
また、キャルの場にはタマシード状態の《ジャブラッド》と《バウワウジャ》がいるため、本来、シールド・トリガーを持たない、《邪侵入》のシビルカウント2が達成され、シールド・トリガーとして、宣言された。
「《邪侵入》の効果で、山札から4枚を墓地に置いて、墓地から、《アビスベル=ジャシン帝》を復活させる!そして、《トーチ=トートロット》のシビルカウント3で、アンタはパワーが一番小さいクリーチャーと一番高いクリーチャーを選んで、破壊しなさい!」
「ッ、《轟・ブルッチ》と《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を破壊する!」
アビスロイヤルの切り札、《ジャシン帝》が墓地から復活し、ドラゴンをスピードアタッカーにする《轟・ブルッチ》と《ボルシャック・フォース・ドラゴン》が破壊され、勝は焦り出す。
挙げ句、ブロッカーが2体いる。
これ以上、攻撃しても意味がない。いつもの勝なら、そう考えるが、今の勝は感情に任せているため、そこまで頭が回らない。
「《ボルシャック・バラフィオル》で、攻撃!ボルシャックの攻撃時に、山札の上を巡って、《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》を場に出す!」
「その攻撃は通すわ!けど、ただではすまさない!S・パックで、《
突然、神の神託がおり、ボルシャック・バラフィオルの頭上に雷が落下し、そのまま、ボルシャック・バラフィオルは石化した。
「《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》で、シールドを攻撃!」
「《ジャシン帝》でブロック!」
ボルシャック・ヒート・ドラゴンが突撃すると、ジャシン帝がそれを阻止し、手元にある杖のような、槍のような武器で、ボルシャック・ヒート・ドラゴンを切り裂き、破壊した。
「クソ!ターンエンド!」
悪態をつきながら、勝はターンエンドを宣言し、キャルは無言でカードを引いた。
「……アビスラッシュ!墓地からアビス・クリーチャーを、大量に復活させて、シールドをブレイクアンドブレイクッ!」
刹那。キャルの場に、大量のアビス・クリーチャーが現れ、勝のシールドを一気にブレイクした。
「ッ、そんな!?トリガーが、1枚もない……!?」
(負けられない!こんなところで、僕は負けられないのに……!)
「──《バウワウジャ》で、ダイレクトアタックッ!」
またしても、大事な場面で負けてしまう主人公、勝君。
一体誰が、キャルを止めるんだ?