「勝利という名の
「む、武者・ドラゴン!?」
ボルシャックと対をなすボルメテウスの名を持ったドラゴン。
その中でも特別、異質なドラゴンがおり、それが《ボルメテウス・武者・ドラゴン》である。
しかし、今、目の前にいる《ボルメテウス・武者・ドラゴン》は勝が知っている《ボルメテウス・武者・ドラゴン》の姿ではなかった。
別世界の勝が力を求め、その際に新たな姿として生まれたのが《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》である。
つまり、これは《ボルメテウス・武者・ドラゴン》の未来の姿である。
「《「武偉」》が出た時の効果で、自分のシールドをブレイクできる!そうしたら、相手のパワー6000以下のクリーチャーを1体破壊できる!君の《アシスター・コッピ》を破壊!」
「っ、《アシスター・コッピ》が……!?」
「まだだよ?《「武偉」》のもう一つの効果を発動!侍流ジェネレート!《竜牙 リュウジン・ドスファング》を場に出すよ!」
「っ!?そんな……!?」
あの《武者・ドラゴン》、侍流ジェネレートを持っているの!?
もう一人の勝が出した《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》の効果に、侍流ジェネレートを持っていることに勝は驚く。
「驚くのはまだ早いよ?《ドスファング》が出た時、またはこのカードにクロスしているクリーチャーが攻撃する時、サムライ・メクレイド5を発動でき!」
「な、メクレイドも!?」
自分が使っている戦略が目の前にいるもう1人の自分が持っていることに勝は驚く。
「山札から出てくるのは……お?良い引き。出すのはコレ!《聖獣ピュアイカズキ》だよ!」
「!?」
ぴゅ、《ピュアイカズキ》!?よりによって、そのカードなの!?
ショウが出した《ピュアイカズキ》に、勝は絶望する。
理由はあの《ピュアイカズキ》には、出た時に、山札の上から5枚見て、その中にクロスギアかあれば、1枚選び、ノーコストで場に出せるのだ。
もしも、ここで2枚目の《ドスファング》が出されたら……考えただけで、恐怖しかない。
「さぁ、《ピュアイカズキ》の効果で山札の上を捲るよー!」
頼む!2枚目の《ドスファング》よ、来ないでくれ!
そう脳裏で祈るのも、その祈りはあっさり裏切られた。
「お?今日はついてるね。という訳で、2枚目の《ドスファング》を場に出すよ!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッー!」
「ハハハ!楽しくなってきた!」
「こっちは全然楽しくないよ!?」
僕がそう突っ込むと、先程、笑って楽しんでいたもう1人のボクは顔を歪ませて、僕を睨んだ。
「何を言ってるの?デュエマは楽しむものでしょ?」
「え?」
真剣な表情で、カレはそう言い、僕はその場で固まった。
何故なら、その言葉には圧のようなものが込められていた。
「好きなことは楽しんでやるものでしょ?それなのに、君は何だ?さっきから全然、楽しくなさそうじゃない?何で?」
「な、何でって……」
それは恐らく、大事な人を守れなかったことへの罪悪感と、大事な場面で負けたことへの敗北感。
──所謂、挫折だ。
「……僕は負けたくないんだ!大事な人が傷つくのが嫌なんだ!だから……だから、僕は……!」
「楽しむことを捨てたの?」
「!?ああ、そうだ!僕はいつか大人になる!大人になったら、好きなことができなくなる!楽しむ暇もなくなる!だったら、こんなの最初から……ないほうが良い!それが最善なんだ!」
「主……」
「……」
それは勝の本音だ。今まで溜まりに溜まった感情が爆発し、目の前にいる自分に吐き出していた。
それを見守り、心配する禁断竜王と、何かを察したのか、真は静かに拳を強く握った。
「そんなの……つまらないよ。生きていて、楽しいの?」
「楽しくない!だけど、生きるためには、守るためには、何かを切り捨てなければならないんだッ!」
「……それが、君の本音なの?」
「ああ、そうだ!これが僕の本音だ!キミにはわからないだろうね?僕の苦しみが……!」
気がつけば、僕は泣きながら叫んでいた。
何故、涙が出ているのか、わからない。わからないけど、このデュエマだけは譲れない。負けたくない。
「──ああ、わからないよ」
「え?」
不意に、カレは切り捨てるかのように、そう言った。
「わからない……だって?」
「……うん。正確には、わかりたくない、かな?だけど、これだけは言える。今の君は間違ってる」
「!?」
その時、僕の中で何かが崩れた。
「2枚目の《ドスファング》のサムライ・メクレイド5を発動!来い!《爆炎ホワイトグレンオー》!」
あれは確か、サムライ・クリーチャーにすべてスピードアタッカーを与えるクリーチャー、だったか?
「……自分のサムライ・クリーチャーなら、《ドスファング》はただでクロスできる。《ホワイトグレンオー》に《ドスファング》2枚をダブルクロス!そのまま《ホワイトグレンオー》で攻撃!この時、《ドスファング》2枚のサムライ・メクレイド5をそれぞれ発動!」
刹那。2枚目の《ホワイトグレンオー》が現れた。
その後に、もう一体のサムライ・クリーチャーが現れた。
それは──
「──二天一流、お借りします!《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弍天」》ッ!」