デュエル・マスターズACE   作:リュウ・セイ

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ACE92:後日談──それぞれの帰るべき場所。

 

 

 

 ──何故だ?

 

 

 意識を取り戻したショウ(ボク)は真っ先にそう思った。

 

 体はボロボロで、ホコリのような砂が少量ついていて、ボクはゆっくりと、口を開き、目の前にいる人物──火野勝(自分自身)に問いかけた。

 

 

「何故?トドメを刺さない?」

 

「……教えてほしいんだ」

 

「──は?」

 

「……キミが歩んだ道……キミの世界で、僕はどんな道を歩んだのか、教えてほしいんだ」

 

「……」

 

 

 そう言って、頭を下げる()

 それを見て、ボクは反吐(へど)が出るほど、不快(ふかい)さを感じた。

 

 

「……くだらない。そんなことを聞いて、何になる?“この世界”では全く関係ないだろ?」

 

「……それでも、聞かないわけにはいかないんだっ!」

 

「ッ……」

 

 

 その言葉に、ボクは眼を見開いた。

 

 そいつの体はボロボロで、服はシールドの破片によって切られ、それでも──()は真っ直ぐな(ひとみ)で、ボクを見ていた。

 

 それを見て、さっきまでの不快さはどこかにいった。

 

 

 ──ああ、そうか。

 

 

 ──ボクは彼を絶望させるために来たんじゃないんだ……。

 

 

 ──僕はその()を見るために、ここに来たのか……。

 

 

 ──どんなに絶望的な状況でも……最後まで希望を信じて、諦めない気持ちで戦う……その姿勢(しせい)を見たかったんだ……。

 

 

 そう思った時、ボクの体が段々と薄くなっていることに気づいた。

 

 それを見て、何かを察したのか、彼の隣にいた青年──暗闇(くらやみ)(まこと)が口を開いた。

 

 

「どうやら、時間みたいだな……」

 

「っ、そんな……!まだ僕、キミに聞きたいこと、見せてない景色がいっぱいあるんだ!だから、まだ──」

 

「──勘違いすんな。別にこれで終わるわけじゃない。ただ……帰るだけだ」

 

「帰る……?」

 

 

 それを聞いて、彼は一瞬、驚くも、すぐに満面の笑顔を見せる。

 

 

「……そうか、帰るのか。“キミがいるべき世界”に……」

 

「……気持ち(ワリ)いな、その笑顔()。けど……最後に、その笑顔が見れて、安心した……」

 

 

 そう言って、ボクの意識はだんだんと、朦朧(もうろう)とし、やがて、跡形(あとかた)もなく、消えた。

 

 

「──バイバイ、別の世界のボク……」

 

 

 

 

 

 ──数時間後。

 

 もう一人のショウ(ボク)に勝利した()は合宿場に戻ると、皆、僕の姿を見て、心配してくれた。

 

 

「先輩!?大丈夫ですか、その怪我!」

「すぐに救急車を呼びましょうか?」

「大丈夫だよ、ひよりちゃん、マリちゃん」

「でもアンタ、すごい怪我してるじゃない?一度、病院に行ったら?」

「会長達の言う通りです!一度、病院に行って、検査を受けてください!」

「だから大丈夫だよ!っていうか、僕は病院が嫌いなんだ!あの注射器とか、特に!」

 

『そういう問題じゃない(です)!!」

 

 

 珍しく、息があった。いや、呑気なことを言っている場合じゃない。

 

 

「だから言っただろう?一度、部屋に戻って、着替えてからにしろって……」

「そう思うなら、助けてくださいよ!!」

「自業自得だ。自分でなんとかしろ」

「そんなー!?」

 

『勝(先輩)(様)!!』

 

「っ、ああもう!こうなったら、デュエマで勝負だっ!」

 

『望むところ(よ)(です)!!』

 

 

「全く、騒がしいですね」

「あら?わたくしは楽しいですよ、この状況」

「……そうですか」

 

 

 その様子を少し離れたところで、エリカは呆れ、秋乃はこの状況を心から楽しんでおり、それを見たエリカは溜め息まじりにそう言った。

 

 

「──秋乃様!エリカ様!そこで見てないで、二人も勝様を止めるため、手伝ってください!」

 

「あらあら、呼ばれたみたいね……」

「仕方がありませんか……」

 

 

 マリの掛け声に二人は勝達のもとに向かい──そして、デッキを取り出した。

 

 

「それじゃあ……皆、いくよ──」

 

 

『──デュエマ・スタートッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンフンフーン♪ンーンーンー♪ンンン〜♪」

 

 

 ある家で、一人の女性は鼻歌をしながら、今日の晩御飯を作っていた。

 

 しかし、その女性は車椅子に乗っていた。

 

 幸い、この家は彼女が不自由なく、暮らせるように作られているため、彼女は不満もなく、幸せに暮らせていた。

 

 

 ──ガタガタッ!

 

 

「……ん?」

 

 

 突然、玄関の方で(あわ)ただしい音がし、女性は料理を作る手を止め、両手で力いっぱい、車椅子のタイヤを回し、玄関まで向かった。

 

 

「──ッ!?」

 

 

 玄関まで向かうと、そこには一人の青年がいた。

 

 その青年を見て、女性は驚いた。

 

 何故なら、その青年は、黒いズボンに黒いコート、そして、コートの中に、首まで長い(あか)い服を着ており、それらの服がボロボロで、(すな)まみれになっていたからだ。

 

 

「「……」」

 

 

 二人は暫く黙り込み、静かに見つめていた。

 

 

 そして──先に、青年が口を開いた。

 

 

「──ただいま、ユイちゃん。そして、ごめんね。約束、守れなくて……!」

 

 

 そこまで言うと、青年──否、ショウは彼女──ユイに抱きつき、激しく、涙を流した。

 

 突然、抱きつかれ、涙を流したショウに、ユイは一瞬、驚くも、すぐに状況を理解し、優しく抱きしめ、右手を彼の頭に、ゆっくりと、撫でた。

 

 

「……なんで謝るの?ちゃんと、約束を守ってくれたじゃない?」

 

「……へ?」

 

 

 そこまで言うと、ユイはショウの体を放し、彼の顔と、自身の顔を合わせた。

 

 

「怪我は……まあまあしてるけど、ちゃんと、ワタシのところに帰ってきてくれた。それだけで、ワタシはまだ希望を信じて、前を向いて、明日を迎えれるよ。だから……おかえり。帰ってきてくれて、ありがとう。ショウ」

 

「う……ゔ……ゔぁわあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッー!!」

 

 

 それを聞いて、ショウはまた激しく、泣いた。

 

 

 ──そして、彼はこの時、(ちか)った。

 

 

 ──もう二度と絶望をしないと。

 

 

 ──希望を信じて、諦めず、前を向くと。

 

 

 ──彼は、そう、誓ったのだ。

 

 

 




なんとか今日中に投稿できた……。
これにて、合宿編は終了です。
次回から夏休みスペシャル……の予定だけど、ちょっとわからないです。すいません。
かなり期間が空いているので、少し考える時間をください。

後、感想などありましたら、ドシドシ、ズバズバと言ってください。大変励みになります。(後、ほんの少し、モチベが上がります)

長くなりましたが、これにて、合宿編は終了です。
次回の話をお楽しみください。ではでは〜。
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