デュエル・マスターズACE   作:リュウ・セイ

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ACE94:夏祭り──そして、彼らはまた出会う。

 

 

 

「マリちゃん、デッキを持ってきてたの……?」

「え?ええ、そうですね。一応というか、なんというか……」

 

 

 ひよりちゃんの問いかけに、マリちゃんは歯切れが悪く、そう言った。

 

 

「それにしても……」

「人が多いですわね……」

「だね……」

 

 

 祭りの中に入ると、僕達は真っ先にそう思った。

 

 周囲は活気(かっき)に満ちており、たくさんの屋台とゲームがあり、その中で楽しむ人々がいた。

 

 

「予想はしてたけど、ここまで人が多いのは予想外だ……」

「無理もありません。祭りのイベントの一つとはいえ、今日はデュエマの大会がありますし、それを目当てで来ている人も多いと思います」

「なるほど。道理(どうり)で、大きいリュックを背負った人をたまに見かけるわけですわ……」

 

 

 いくらデッキの入れ替えがアリだと言って、大きいリュックを背負って、祭りの中をウロウロされるのは周りの人に迷惑だ。

 

 

 ……まぁ、僕らもあまり、人のことは言えないけど。

 

 

「なんか……迷子になりそうです」

「そういう時は誰かと手を繋いで、動いた方が良いよ」

「と、言いつつ、サラッとわたくしの手を掴むのはどうかと思いますよ?勝様?」

「……嫌だった?」

「……いえ、嫌ではありません」

「「……」」

 

 

 自分達は何を見てられているのだろうか?と、ひよりとマリは口には出さないが、内心、そう思った。

 

 

「おーい!勝!」

 

「……?」

 

 

 突然、誰かに名前で呼ばれた。とても聞き慣れた声だ。

 僕は声の方に振り返えると、そこにはツンツン頭の少年──親友の拓真が居た。

 

 

「勝もこの祭りのイベントに参加してきたのか?」

「も、ってことは拓真も?」

「……まぁ、息抜きがてら、な。と言っても、3回目で身内に当たったから、今から屋台を回りに行くつもりだ」

「そうなんだ……因みに相手は?」

「……」

 

 

 僕がそう質問すると、突然、拓真は黙り込んだ。

 

 

 何だ?急に黙り込んでどうしたんだ?

 

 

「……いやー、相手がよ、結衣なんだ」

 

「──え?」

 

 

 結衣ちゃんが、この祭りに来ている……?

 

 

 

 

 

「《ザーディクリカ》でダイレクトアタック……」

 

「ッ、何もない。俺の負けだ……」

 

 

「決まったぁぁぁぁぁッ!結衣選手、これで5連勝だぁぁッ!」

 

 

 実況が赤羽結衣(彼女)の勝利を知らせると、彼女のデュエマを最後まで観戦していた観客達が叫び声を上げた。

 

 

「凄えな!あの子!」

「とても、女の子とは思えない実力だわ!」

「結衣ちゃーん!こっちにウィンクしてー!」

 

 

 その中には感動する者、女子とは思えない実力を見せられた者、彼女のプレイングに魅了された者、などなど、色んな人が彼女の勝利を喜び、讃えた。

 

 

 ──しかし、彼女を良く知る者は、彼女がこの程度で喜ぶ訳でもなく、笑う訳でもなく、ましてや、彼女の心に眠る飢えを満たされる訳ではない。

 

 

「今度はオレが相手だ!」

 

「……」

 

 

 ──ああ、またつまらない相手だ。と、彼女は思った。

 

 

 目の前にいる挑戦者に、結衣は深い溜め息を吐いた。

 

 

「……どうぞ。つまらないデュエマなら……許さないから」

 

「ッ!?そう言っていられるのも、今のうちだ!吠え面を吐かせてやる!」

 

「はいはい。吠えるだけなら、犬でも猫でも猿でも誰でもできるわ……」

 

「んだと……!」

 

 

 対戦相手を煽る結衣。

 対戦相手の男性は彼女の煽りに嵌められ、そのまま勢いよく、「デュエマ・スタートッ!!」と、言って、彼女と対戦を始めた。

 

 

 そんな二人を──否、結衣を遠くから眺める二人の少女、花宮黒江と猫崎瑠璃。

 

 そして、黒江は結衣が少し荒れていることに気づく。

 

 

「結衣のやつ、荒れてんなぁ……まぁ、仕方がないか……」

「最初に身内とやってからだよね?何があったの?」

「さーな……ん?」

 

 

 ふっと、視線を右に向けると、そこには結衣が最初に対戦した少年、拓真と、見知った顔が数人──勝達の姿があった。

 

 

「何で(アイツ)がここにいるんだ……?」

 

 

 それを見た黒江は勝達がここにいることに疑問を抱き、様子見がてら、勝達に近づき、それを見た瑠璃、もとい、キャルは黒江の後を追いかけた。

 

 

 

 

 

「本当に結衣ちゃんがいる……」

 

 

 会場に着くと、目の前にいる少女、赤羽結衣がそこに立っていた。

 しかも、ここに来る直前、すでに5連勝をしている。

 

 

「まさか、勝達もこの祭りに来ているとはな……」

 

「ッ、黒江!?それに……キャル!?」

 

 

 後ろから声が聞こえ、振り返ると、黒江とキャルの二人がいた。

 

 

「けど、悪いなー、勝。このイベントの商品は結衣が持っていくぜ?」

「……二人も来ていたんだね」

「それりゃ、結衣がいる所に、私らがいない訳ないじゃん?」

「……それもそうか」

 

 

 軽く会話をした後、僕は会場で戦っている結衣ちゃんの姿に、視点を向けた。

 

 

「──ダイレクトアタック……」

 

「ッ……参りました」

 

「決まったぁぁぁぁぁッ!結衣選手、これで6連勝だッ!7連勝まで後一歩だぁぁ!」

 

 

 その後すぐに実況から声が上がり、それを聞いた僕は小さい鞄の中からデュエマのデッキケースを取り出した。

 

 

「……勝様」

 

「ッ、秋乃さん……」

 

 

 会場に足を運ぶ直前、秋乃さんは僕を心配してか、右手で僕の服の(そで)を掴んだ。

 

 

 ……いや、これは僕を心配して、というより、秋乃さんはこれ以上、僕に傷ついてほしくなくて、僕の歩みを止めているんだ。

 

 

 そう思った僕は結衣ちゃんから視線を外し、秋乃さんに視線を向けた。

 

 

「秋乃さん……」

「勝様……わたくし……勝様にこれ以上、傷ついてほしくありません!」

 

 

 やっぱりか、と、そう思った僕は、今の自分の気持ちを秋乃さんにぶつけた。

 

 

「……ありがとう、秋乃さん。だけど、これは僕の……僕達の問題だ。だから、止めないでほしい」

「ッ……!」

 

 

 それを聞いて、秋乃さんは掴んでいた僕の服の袖を放し、僕はそのまま前へと、歩んでいった。

 

 

 

 

 

「久しぶりだね、結衣ちゃん……」

「!?勝!?なんで……?」

 

 

 何食わぬ顔で、僕は結衣ちゃんの前に立ち、デッキケースをデュエマ台に置いた。

 

 

「悪いけど、ここで止めさせてもらうよ、結衣ちゃん」

「……なるほど、そういうことね」

 

 

 何かを察したのか、結衣ちゃんはデュエマ台に置いてるデッキを一度、デッキケースに(おさ)め、鞄の中から、それとは別のデッキケースを取り出し、先程のデッキケースを鞄の中に引っ込めた。

 

 

「貴方には、このデッキで相手をしてあげる。このイベントで、まだ一度も使っていないデッキよ。今の貴方に勝てるかしら?」

「……やってみないとわからないだろ?」

 

 

 そう軽く会話をした後、僕達は対戦の準備を始めた。

 

 その時、何を心配してか、禁断竜王が僕に念話(ねんばなし)で、声をかけた。

 

 

(主、大丈夫ですか?)

(大丈夫だよ、禁断竜王。君も心配性だな、全く……)

(ハァー、違います。ワタシが心配しているのは、今の主のデッキで、彼女に通用するかどうか、です)

(……大丈夫だよ)

 

 

 何が言いたいのか、大凡(おおよそ)、検討がついた僕は禁断竜王に、たった一言だけ、そう言った。

 

 

(今のこのデッキでどこまで戦えるか、試したいんだ。だから……)

(わかりました。ワタシはもう何も言いません。主のやりたいようにやってください)

(ありがとう、禁断竜王……)

(そのかわり……必ず勝ってくださいね!)

(……わかったよ)

 

 

 (なか)ば呆れ気味に、または、何かを諦めたかのように禁断竜王は必ず勝てと、それだけ言って、僕は小さく笑って、そう返事を返し、視線を結衣ちゃんに向けた。

 

 いつも間にか、結衣ちゃんは対戦の準備を終えており、それを見た僕は急ぎ、対戦の準備を終えた。

 

 

「……お二人とも、準備はよろしいですか?」

「はい!」

「いつでも……」

 

 

 対戦の準備を終えた僕達を見て、ジャッジの人が僕達に確認をとり、僕と結衣ちゃんは、それぞれ返事を返した。

 

 それを見た実況者さんは軽くマイクを叩いて、音が鳴ることを確認した後、マイクを持って、立ち上がった。

 

 

「それじゃあ、皆さん!一緒にデュエマ・スタート!と、言いましょう!対戦のお二人も、観客の皆さんに聞こえるように、大きな声でお願いします!」

 

「ええ、面倒……」

「まあまあ、そう言わない」

「わかったわよ……」

 

 

 実況者さんの提案に、結衣ちゃんは渋々同意し、僕は深呼吸をした。

 

 

「それじゃあ、皆さん!いきますよ!デュエマぁぁ……──」

 

 

『──スタートッ!!』

 

 

 その言葉を合図に、僕と結衣ちゃんは対戦を始めた。

 

 

 

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