デュエル・マスターズACE   作:リュウ・セイ

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ACE98:お嬢様とメイド──秋乃の夢とエリカの決意。

 

 

 

 やってしまった……。

 

 

 部屋に戻った秋乃(わたくし)は真っ先にそう思いました。

 同時に、勝様は何故、結衣(彼女)をそこまで信じるのか、理解できなかった。

 

 

 ──そんな時だ。

 

 

 プルルッ!プルルッ!と、財閥用の携帯電話が鳴り始め、いつも間にか、家に帰ってきたエリカがその電話に対応した。

 

 

「もしもし。秋乃お嬢様に仕える、エリカです……え?」

 

 

 突然、エリカはその電話に出ると、相手の名前を聞いて驚いたのか、「はい、わかりました。急ぎお嬢様に変わります」と言って、エリカは電話を持って、わたくしに近づきました。

 

 

「すみません、お嬢様。()()()から電話です……」

「ッ……!?」

 

 

 その言葉に、わたくしは驚き、一瞬固まるも、エリカから「出られますか?」と聞かれ、すぐに気を取り戻し、エリカから電話を貰い、電話先にいるお父様に声をかけました。

 

 

「もしもし、秋乃です……あの、お父様、本日は一体、どんなご要点でしょうか……?」

 

『こんな時間にすまない、秋乃。君には急ぎ、海外に行ってもらいたい』

 

「……え?」

 

 

 その言葉にわたくしは驚き、一瞬、電話を落としそうななるも、床に落ちる直前に電話を広い、お父様に、その理由を問いかけた。

 

 

「あの、お父様?それは一体、どう言うことですの……?」

 

 

『ああ。実は──』

 

 

「ッ……!?」

 

 

 次の瞬間──お父様から海外に行く理由を聞いた瞬間──私は二つ返事で、「わかりました」と言って、電話を切り、エリカに「何かあったのですか?」と、聞かれ、わたくしはエリカになんて説明すれば良いか、数秒考えました。が、海外に行くことだけを知らせて、後は黙っておこうと思い、エリカに視点を向けました。

 

 

「……エリカ。落ち着いて聞いてください。お父様から急ぎ海外に行くように、と、言われました」

「……それは財閥の仕事で、ですか?」

「ええ。しかも、今回は長い期間、海外に在籍することになりますわ……」

「そうですか。それはどのくらいの期間ですか?」

「……わかりません」

「え……?」

 

 

 その言葉に、エリカはどういうことですか?と、口には出さないが、そういう顔をしており、わたくしは答えられる範囲で理由を説明します。

 

 

「理由はわかりませんが、相手先から長期の間、海外に居てもらうことになります、と、お父様から言われましたわ」

「……お嬢様はそれでよろしいのですか?」

「……」

 

 

 その言葉に、わたくしは首を横に振りました。

 

 

「それでしたら、断ればいいじゃないですか?何故断らないのですか?」

「……エリカ。わたくしには夢があります。焔財閥を世界に広めるという夢が……」

「それが今だと言うのですか?本当に……今がその時だと、そう言いたいのですか?」

「ええ……」

「……ふざけないでください!!」

「!?エリカ……?」

 

 

 突然、エリカは叫び声を上げ、どこからか、デッキを取り出した。

 

 

「お嬢様……いいえ、焔秋乃!!アナタにデュエマを申し込みます!!私が勝ったら、海外には行かず、日本に残ってもらいます!!」

 

「……本気ですの?」

 

「本気です!!アナタが海外に行く理由が……何かはわかりません。ですが、その覚悟は認めます!!アナタが覚悟があるように、私にも、アナタを止める覚悟があります!!これはただ、それだけの話です……」

 

「エリカ……」

 

 

 一瞬、わたくしから目を逸らすエリカの目が曇るも、すぐにわたくしに視点を戻し、それを見たわたくしはエリカの覚悟を認め、デッキを取り出しました。

 

 

「……良いでしょう。エリカ……貴方の挑戦、わたくしは受けます!!」

 

「では……参ります!!」

 

「「デュエマ・スタートッ!!」」

 

 

 ──こうして、わたくしとエリカのデュエマが始まりました。

 

 

 

 

 

 ──秋乃(わたくし)とエリカのデュエマ。

 

 

 先行はエリカで、エリカは2ターン目に、闇のタマシード、《ジェニーの黒像(シャドウ)》を場に出し、わたくしの手札を1枚減らしました。

 

 対して、わたくしは火のタマシード、《NEX(ネックス)手甲(しゅこう)》を出して、エリカの《ジェニーの黒像》を破壊しました。

 

 

 互いにタマシードを並べ、進化クリーチャーに繋げるデッキ。

 ただ違うのは──扱う色。わたくしのデッキは()()()。エリカのデッキは()()()

 守りに特化した光に対して、闇は破壊に特化している。

 故に、わたくしのデッキとの相性は……あまり良くない。

 

 

 ですが──

 

 

「──それでも、負けるわけにはいかないのですわ!」

 

 

「それはこちらも同じこと!私のターン!3マナで《デュザメの黒像(シャドウ)》!このタマシードが出た時、山札の上から4枚を墓地へ!その後、墓地から進化クリーチャーを2枚まで手札に戻します!《キャンベロ <レッゾ.Star(スター)>》と《センメツ邪鬼(じゃき) <ソルフェニ.(オーガ)>》を手札に戻します!ターンエンド!」

 

 

「っ……わたくしのターン!ドロー!」

 

 

 手札に加わった《キャンベロ <レッゾ.Star>》と《センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>》の2枚を警戒しつつ、わたくしはカードを引き、マナを貯め、2枚のマナをタップしました。

 

 

「呪文、《超英雄(ちょうえいゆう)タイム》!相手のコスト3以下のカードを1枚選び、破壊しますわ!わたくしが破壊するのは……《デュザメの黒像》!」

 

「ッ、《超英雄タイム》!?お嬢様、何故そのカードを……!?」

 

「フッフーン♪何故でしょう?」

 

 

 本来、タマシードを主体としたデッキは、進化クリーチャー以外のカードは入らない。

 だが、秋乃のデッキには、ツインパクトカードを入れている。

 

 

 理由は一つ。

 以前、キャルとの対戦で、秋乃は自分の力不足を痛感し、自身のデッキを見直したのだ。

 その後、合宿で、秋乃はふっと、タマシードや進化クリーチャー以外のカードを使ってみよう、と、思い、ツインパクトカードなど、色んなカードを採用したのだ。

 ただ、あまり多く採用すると、デッキが回らないので、今は《超英雄タイム》を含む数枚のカードしか採用していないのだ。

 

 

 それを知らないエリカは突然、わたくしがツインパクトカードを使ったことに驚き、わたくしに問いかけるも、エリカの反応を見て、わたくしは冗談半分に話を逸らしました。

 

 

「わたくしはこれでターンエンドですわ!」

 

「……私のターン、ドロー……先程の《超英雄タイム》には驚かされましたが、生憎(あいにく)、それぐらいの妨害は計算の内です。お嬢様……」

 

「……」

 

 

 エリカは4枚のマナをすべてタップし、1枚のカードを場に出しました。

 

 

「タマシード、《シラズ死鬼(しき)(ふう)》!このタマシードが出た時、私の墓地から、コストの合計が4以下になるように、好きな数のクリーチャーを復活できる!」

 

「!?今、エリカの墓地は確か……!」

 

 

 前のターン。《デュザメの黒像》で落ちた4枚のカード。

 そして、《キャンベロ <レッゾ.Star>》と《センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>》の2枚は手札にある。

 

 

 それ以外のカードといえば──

 

 

「──私が復活させるのは《マガン金剛(こんごう)N(エヌ)ワル.(オーガ)>》!!《シラズ死鬼の封》の上に、スター進化!!」

 

 

 ──《サイバー・N・ワールド》が鬼化した姿、《マガン金剛 <Nワル.鬼>》。

 

 確か、あのクリーチャーは、出た時に、自分の山札の上から2枚を墓地に置き、その中にあるタマシード1枚につき、相手の手札を1枚選んで捨てる、効果だったはず。

 

 

 今、わたくしの手札は2枚。

 もしも、《<Nワル.鬼>》で落ちたカードが2枚とも、タマシードだったら……最悪、詰む。

 

 

「タマシードから進化した《<Nワル.鬼>》の効果!山札の上から2枚を墓地へ!その後、墓地に置かれたタマシードの枚数分、お嬢様の手札を墓地へ置きます!」

 

 

 山札の上から墓地へ置かれたのは──闇のタマシードの《ヴィオラの黒像(シャドウ)》と、進化クリーチャーの《禁断(きんだん)英雄(ヒーロー) モモキングダムX(エックス)》。

 

 よって、わたくしの手札が捨てられるのは──1枚。

 

 

「《<Nワル.鬼>》の効果で、タマシードが1枚なので、お嬢様の手札を1枚捨てさせます!ターンエンド!」

 

「……わたくしのターン」

 

 

 (かろ)うじて、次のターンに繋がりましたが、今の手札では逆転できませんね。

 

 

 さて、どうしたものか……。

 

 

 ──まぁ、やれることは一つですが。

 

 

「タマシード、《カーネンの心絵(メモリー)》!先に《NEXの手甲》の効果で、1枚捨てて、1枚ドロー!この時、わたくしの手札が0枚なので、そのまま1枚ドロー!その後、《カーネンの心絵》の効果で、山札の上から3枚を見て……進化クリーチャーの《「正義星帝(スティルジャスティス・ティルジエンド)」 <ライオネル.Star(スター)>》と、タマシードの《ドラン・ゴルギーニ》の2枚を手札に!《ルピア炎鬼(えんき)》を山札の1番下に置いて、ターンエンド!」

 

 

「私のターン!1マナでタマシード!《ストリエ雷鬼(らいき)(まき)》!その効果で、山札から1枚引いて、手札を1枚、山札の1番下に置きます!その後、《ストリエ雷鬼の巻》を進化元に、《センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>》に、スター進化!《<ソルフェニ.鬼>》の効果!タマシードから進化した時、お嬢様の場から、コストが小さいクリーチャーとタマシードをすべて破壊します!厄介な《NEXの手甲》には退場してもらいます……!」

 

 

「っ、そんな……!?」

 

 

 なんて、焦りながらも、ここまでよく頑張ってくれました。ありがとうございます、《NEXの手甲》……。

 

 

「まだです!《<ソルフェニ.鬼>》で攻撃──する時に、《キャンベロ <レッゾ.Star>》に侵略・スター進化!」

 

「……!?」

 

 

 このタイミングで、《<レッゾ.Star>》ですの!?

 

 

「《<レッゾ.Star>》の効果で、お嬢様は次のターン、クリーチャー1体しか場に出せません!さらに《<ソルフェニ.鬼>》の効果で、手札を1枚捨てて、山札から2枚引きます!この時、私の手札は0枚なので、そのまま2枚引きます!そして……W(ダブル)・ブレイクッ!」

 

 

「っ、トリガーは……ありませんわ」

 

「それなら《<Nワル.鬼>》で攻撃!W・ブレイク!」

 

「……こちらもありません」

 

「……ターンエンドです」

 

 

 一度、深呼吸をした後、エリカはターンエンドを宣言し、わたくしはカードを引き、今ある手札を見て、思考(しこう)(めぐ)らせました。

 

 

(《<レッド.Star>》の効果で、わたくしは《<ライオネル.Star>》から進化クリーチャーを展開できない……それなら!)

 

 

 手札にある《ドラン・ゴルギーニ》を手に取り、わたくしは、それに想いを乗せる。

 

 

「……勝様のオススメの1枚、使わせてもらいます!走り抜け!スーパーカードラゴン!《ドラン・ゴルギーニ》!」

 

「!?このタイミングで《ドラン・ゴルギーニ》!?ですが、そのカードでは時間稼ぎがやっとのはず……」

 

「──断念ですが、その考えは的外(まとはず)れよ、エリカ」

 

「何ですって?」

 

 

 エリカの考えを否定し、わたくしは、その理由を簡単に説明しました。

 

 

「これは勝利への一歩。故に、この《ドラン・ゴルギーニ》は単なる時間稼ぎではありません!」

 

 

「……そうですか。それでしたら、それを証明してください。秋乃お嬢様。いえ……焔秋乃」

 

 

「……ええ、証明してみせましょう!これがわたくしの勝利への一歩!まずは《ドラン・ゴルギーニ》の効果で、エリカの《<Nワル.鬼>》と《<レッゾ.Star>》をタップして、次のターン、アンタップさせませんわ!」

 

 

「ッ、やってくれますね……!」

 

「フッフーン♪ターンエンド!」

 

 

 してやった、と、わたくしは喜び、逆にしてやられたエリカは悔しがりながら、カードを引きました。

 

 

 ──そして、ドローしたカードを見て、エリカは何かを確信した。

 

 

「……申し訳ありませんが、お嬢様。このターンで決めさせてもらいます!」

 

 

 ドローし、マナチャージした後、エリカはわたくしに謝罪し、その後、勝利宣言をした。

 その後、1枚のマナを使い、2枚目の《ストリエ雷鬼の巻》を出し、その効果で、手札を入れ替えました。

 

 

 ──そして、5枚のマナをすべて、タップした。

 

 

「すべてを喰らい、喰らいつき……そして、お嬢様の信念を喰らい尽くせ!龍に似て非なる鬼の龍!《ストリエ雷鬼の巻》を、《邪王来混沌三眼鬼(カオス・ヴィ・ナ・シューラ)》に、スター進化ッ!!」

 

 

 すると、エリカの後ろに紫の影が現れ、それが形となって、姿を現した。

 

 

 それは龍に似て非なる鬼の龍、《邪王来混沌三眼鬼》。

 

 

 ──それは、エリカの真のACE(切り札)でした。

 

 

 

「か、《邪王来混沌三眼鬼》……!?」

 

 

 突然、邪王来混沌三眼鬼が実体化することに、わたくしは驚き、その様子を見て、邪王来混沌三眼鬼は不気味に笑った。

 

 

『ククク、嬉しいぞ、エリカ……!また、我を使ってくれて……!しかも、今回の獲物は貴様の主か……フッフフ、中々面白いな……!』

 

「……お嬢様をこの先に進めないためです!そのためなら……私は鬼になります!」

 

『クックク、そうか……ならば、思う存分、我を使い、我を利用するがイイ……!』

 

 

「言われるまでもない!《邪王来混沌三眼鬼》で攻撃!この時、《邪王来混沌三眼鬼》の効果!クリーチャーが攻撃する時、それがこのターン、最初の攻撃なら、私の山札の1番下から2枚見て、その中からコスト5以下の進化クリーチャーとタマシードをそれぞれ、1枚ずつ、場に出します!」

 

 

「!?確か、山札の1番下は……!」

 

 

 前のターンと、今のターン。《ストリエ雷鬼の巻》の効果で、山札の下の2枚は固定されている。

 

 

 つまり──このターンで、エリカは決めるつもりだ。

 

 

「来なさい!《ルピア炎鬼(えんき)(ふう)!その上に、《<ソルフェニ.鬼>》にスター進化!《<ソルフェニ.鬼>》の効果で、お嬢様の《カーネンの心絵》を破壊!」

 

 

「っ、そんな!?進化元のタマシードが……!?」

 

 

『余所見をするな、子娘……!』

 

 

 そう言うと、邪王来混沌三眼鬼の咆哮で、わたくしは吹っ飛ばされました──

 

 

 

 

 

 ──ああ。

 

 

 また、わたくしは負けるのですか……。

 

 

 何もできず、信念を貫けず、理想は叶わず、何もかもが無駄に終わる……。

 

 

 無駄に……。

 

 

 ──そう思った時。

 

 わたくしの脳裏に、勝様(カレ)が写った。

 

 カレはずっと一人で戦って、苦しんで、何度か、挫折しそうになったけど、その度に、諦めず、前に進んだ。

 

 

 それに気づいた時。わたくしは真っ先にこう思った──

 

 

 

 ──嫌だ。

 

 

 

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!

 

 

 

 カレが傷つくのも。カレが先に進むのも。

 何もかもが嫌だった。

 

 

 ──だから、負けたくない。

 

 

 わたくしはもう、誰にも負けたくない!

 

 

 猫崎瑠璃(彼女)にも!赤羽結衣(あの子)にも!

 

 

 

 ──そして、今、わたくしの相手をしているエリカにも!

 

 

 だから……!

 

 

「だから……!」

 

 

 こんなところで……!

 

 

「こんなところで……!」

 

 

 終わるわけにはいかないっ!

 

 

「終わるわけには……いかないのですわ!」

 

 

 そう思った時、わたくしの手に光が宿った──

 

 

 

 

 

「──お嬢様!!」

 

『待て』

 

 

 邪王来混沌三眼鬼の咆哮で吹っ飛ばされた秋乃は地面に倒れていた。

 

 それを見たエリカはやりすぎた、と、後悔し、秋乃に近寄ろうとしたが、邪王来混沌三眼鬼がエリカに待ったをかけ、制しする。

 

 

『デュエマはまだ終わっていない。故にその場から離れるな』

 

「何をふざけたことを……!勝敗は決した!故にこれ以上、デュエマを続ける意味など──」

 

 

 そう言いかけた時、微かな音がエリカの耳に響いた。

 

 その方角に視点を向けると──秋乃が立ち上がっていた。

 

 

「お嬢様!?」

 

『チッ。まだ立ち上がる力があったか……』

 

 

 秋乃が無事なことに、エリカは涙を流しながら喜ぶも、邪王来混沌三眼鬼は舌打ちした後、つまらなそうに、そう吐き捨てた。

 

 

「……」

 

 

 ──だが、秋乃は違った。

 

 

 秋乃は立ち上がった。その後、静かに、前に出た。

 

 

 そして、最後のシールドの中を確認した。

 

 

 その中には──シールド・トリガーがあった。

 

 

「……シールド・トリガー、《スロットンの心絵(メモリー)》!」

 

「!?お嬢様!?まだデュエマを続けるのですか……!?」

 

「……《スロットンの心絵》の効果で、手札からコスト7以下の光の進化クリーチャーを1体、場に出します!」

 

 

 そう言うと、秋乃は手札から1枚のカードを抜き取る。

 

 

「わたくしの正義を貫き、勝利を導け!《スロットンの心絵》を、《「正義星帝(スティルジャスティス・ティルジエンド)」 <ライオネル.Star(スター)>》に、スター進化っ!!」

 

 

 秋乃がそう叫ぶと、秋乃の後ろに《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》が実体化した。

 

 それを見たエリカと邪王来混沌三眼鬼は驚き、そんな二人を気にも()めず、秋乃は《<ライオネル.Star>》の効果を解決する。

 

 

「《<ライオネル.Star>》の効果で、カードを1枚ドロー!その後、光のタマシードを1枚、場に出しますわ!《ゲラッチョの心絵(メモリー)》を場に出しますわ!場に出た《ゲラッチョの心絵》の効果で、わたくしはカードを1枚ドロー……エリカ、アンタップしているクリーチャーを1体選んで、タップしてください」

 

 

「ッ、《<ソルフェニ.鬼>》をタップします……!」

 

 

 まだ攻撃していない《<ソルフェニ.鬼>》がタップされたことで、エリカは秋乃にダイレクトアタックまで決めることが出来なくなった。

 

 

「……《<ライオネル.Star>》の効果。各ターンに1度、自分のタマシードが出た時、手札からコスト6以下の進化クリーチャーを1体、場に出す。《ゲラッチョの心絵》を、《アルカディアス・モモキング》にスター進化!」

 

 

「……ターンエンド」

 

 

 秋乃の《<ライオネル.Star>》の効果が解決した後、エリカはターンエンドを宣言。

 

 それを聞いた秋乃は無言でカードを引き、マナチャージせず、3枚のマナを倒した。

 

 

「タマシード、《カーネンの心絵》。その効果で、2枚目の《ドラン・ゴルギーニ》と、《アルカディアス・モモキング》を、それぞれ手札に加え、《<ライオネル.Star>》の効果で、《カーネンの心絵》を《アルカディアス・モモキング》にスター進化!」

 

 

 淡々(たんたん)と、光のクリーチャーと光のタマシードを並べ、《ドラン・ゴルギーニ》を、タマシードからクリーチャー化し、このターンで決められる打点を揃える。

 

 そこまでした後、秋乃は手を止め、先程、エリカの問いに答える。

 

 

「……まだデュエマを続けるのか、そう言いましたね?エリカ?」

 

「……はい。そこまでして、続ける理由を教えてください、お嬢様」

 

「……その答えは一つ。勝ちたいからです」

 

「……!?」

 

 

 右手の人差し指を上に上げながら、秋乃はただ一言、そう言った。

 

 

 その言葉にはどこか重みを感じた。少なくとも、その場にいたエリカはそう感じた。

 

 

 たった、それだけのために。秋乃はデュエマを続けるのだ。

 

 

 それを聞いたエリカは一瞬、驚くも、どこか嬉しそうで、満足そうな笑みを(こぼ)し、「そうですか……」と、一言、言った。

 

 

「……覚悟はよろしいですか?エリカ?」

 

「はい、お嬢様……」

 

「では……《ドラン・ゴルギーニ》で攻撃!この時、《ドラン・ゴルギーニ》の効果で、2枚目の《ドラン・ゴルギーニ》を出します!この時、わたくしのクリーチャーがエリカのクリーチャーより多ければ、このターン、わたくしのクリーチャーは破壊されない!」

 

 

 これにより、《邪王来混沌三眼鬼》の効果と、シールド・トリガーから出る強力なタマシードを封じた。

 

 さらに、新たに出た《ドラン・ゴルギーニ》の効果で、エリカの《邪王来混沌三眼鬼》と《<ソルフェニ.鬼>》はアンタップしない。

 

 

「《邪王来混沌三眼鬼》の効果で山札の下から2枚見て……《ロマネス仙鬼(せんき)(ふう)》と《<ソルフェニ.鬼>》を出します!」

 

「ですが!《ドラン・ゴルギーニ》の効果で、わたくしのクリーチャーは破壊されない!そのままシールドをW・ブレイクっ!!」

 

「ッ……トリガーはありません!」

 

「それなら、《アルカディアス・モモキング》でT(トリプル)・ブレイクっ!!」

 

「ッ……トリガーは──」

 

 

 ──あった。シールドの中から《ロマネス仙鬼の封》と《ヴィオラの黒像》の2枚。

 

 

 だが、《ドラン・ゴルギーニ》の効果で、秋乃のクリーチャーは破壊できない。

 

 

 よって、このデュエマの勝敗は──秋乃である。

 

 

「──《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》で、ダイレクトアタックっ!!」

 

 

 

 

 

「負けてしまいました……」

 

「……」

 

 

 わたくしに負けたエリカはその場で膝をつき、そう呟きました。

 

 それを見たわたくしはいつ間にか姿を消した邪王来混沌三眼鬼を気にして、エリカに近づき、手を差し出しました。

 

 

「「……」」

 

 

 数秒という間の一瞬。お互いに目を合わせながら、黙り込むわたくしとエリカ。

 

 しかし、そんな間も無く、わたくしは真っ先に口を開きました。

 

 

「エリカ。貴女に一つ、お願いがあります」

 

「……?」

 

「これからも、わたくしについてきてください。わたくしの夢に……わたくしの歩むべき道に……これからも、ずっとついてきてください。お願いします」

 

「……!?」

 

 

 わたくしが頭を下げると、エリカは驚きました。

 

 

 ……まぁ、頭を下げているので、顔は見えませんが、恐らく、驚いているでしょう。

 

 

「……わかりました。一先ず、顔を上げてください。お嬢様」

 

 

 そう言われ、わたくしが顔を上げると、わたくしの顔を見て、エリカは溜め息を吐きました。何故?

 

 

「全く、お嬢様は一度言い出すと話を聞いてくれませんからね……」

 

「エリカ……それなら……」

 

「ええ。秋乃お嬢様のご命令のまま。私は貴女についていきます」

 

「ありがとう!エリカ!」

 

 

 その言葉にわたくしは嬉しく、エリカに飛びつき、抱きつきました。所謂(いわゆる)、ハグというやつです。

 

 

「ちょ、お嬢様!?やめてください!恥ずかしいです!」

 

「そういうところが可愛いわよ、エリカ!流石、わたくしの自慢のエリカ!」

 

「だ、だから、やめてください!すごく恥ずかしいです!後、褒められても何も出ませんよ!それよりも……!」

 

 

 そう言いながら、エリカは両手でわたくしを離し、距離を取ります。

 

 

 むぅ、もう少し抱きつきたかったです……エリカのケチ。

 

 

「そんな顔をしてもダメです。それよりもお嬢様。彼にはどう説明しますか?」

 

「?勝様のこと?」

 

「はい。流石に何も言わないのはマズイと思います」

 

「……」

 

 

 エリカにそう言われて、確かに、と思った。

 

 正直、これと言って、案がない。ましてや、別れ際に、あんな態度をとってしまったのだ。

 

 ぶっちゃってると、顔を合わせにくい。正直、このまま黙っていこうと考えてしまうぐらいに。

 

 

 けど……。

 

 

「どうすれば……」

 

 

 正直、どう接すれば良いか、わからない。本当に……。

 

 

 そう思った時。エリカから提案を出された。

 

 

「それでしたら、私に考えがあります」

 

「?考え……?」

 

 

 エリカの考えに、わたくしは耳を傾けます。

 

 

 その内容を聞いて、わたくしは耳を赤くしました──

 

 

 

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