ぼっちアートオンライン(凍結)   作:凪沙双海

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前に比べ、このエピソードからは年月がかかっていくせいかどうも長くなる。
エピソード間でポン。と時系列は飛ばせるのですが……

と、始まり始まり。


Episode2,part6

「つまり、パーティメンバーとはぐれて、俺が一人でモンスターに囲まれてたから声かけた、と」

 

 

「うん、そうなの。その、攻略組の人だったんだね」

 

 

「そうでもなきゃこんなところにいないだろ。お前は攻略組ではないのか?」

 

 

「うん、まだね……ギルドメンバーに一人、攻略組の人がいるけど。私達はいわゆる中位ギルドだから」

 

 

この雪ノ下に声が似てる女はパーティメンバーとはぐれて、咄嗟の善意で俺を助けようとしてくれたらしい。いや、まぁ心意気はいいとは思うが。

 

 

「ずいぶん無茶してるもんだな、レベリングかなりきついだろ? 俺が弱かったら二人して死んでたぞ?」

 

 

「それは……」

 

 

あー、雪ノ下の声でガチ落ち込みはやめてもらいたい。なんか嫌な感じになる。

 

 

「まぁいい。他のメンバーは大丈夫そうなのか?」

 

 

「今日は攻略組の人もついててくれてるから、安全なマージナリングでやるつもりだったの。はぐれちゃったけど」

 

 

「追跡スキルは?」

 

 

「……取ってない……」

 

 

「……はぁ」

 

 

なんともまぁ、間の抜けているというか。声が雪ノ下に似てるだけ、か。

いや、あいつがここにいても困る。由比ヶ浜がここにいても困る。いたら絶対前線になんか出させない。

 

 

「わかった。見殺しにするわけにもいかねぇしな。メンバーと合流できるか、入り口に戻るまでは同行してやる」

 

 

「ありがとう。私、サチっていうの。あなたは?」

 

 

「ハチマンだ」

 

 

サチと名乗った女は俺の名前を聞いて神妙な表情を浮かべた。

なんだよ、まさか名前知れ渡っちゃってるの? え、なにもしかして大量の良からぬ噂が――

 

 

「もしかして、キリトの友達?」

 

 

「あ?」

 

 

思いがけない名前に、俺は思わず固まった。キリトの友達……キリト……ってことは、

 

 

「もしかして、月夜のなんちゃらの奴か?」

 

 

「うん。月夜の黒猫団のサチっていうの。ってことはやっぱりキリトの友達の――」

 

 

「あいつとはフレンドだな、確かに。ってことは来てるのか、あいつ」

 

 

友達とはまだ認めてない。フレンドと訂正して、俺はキリトへメッセージを送った。

このお守り、思ったより早く終わりそうだ。

 

 

―――――

 

 

 

 

「ハチマン!」

 

 

「よう、キリト」

 

 

「助かった。悪い」

 

 

「監督するならしっかりしておけよ。こういうとき、責任を負うのはお前になるんだぞ。だから俺はそういう立ち位置は嫌いなんだ」

 

 

少ししてキリトが何人かの男を引き連れてやってきた。

少しきつめに言って、ちょっとだけ凹ませておく。

……なんでこんな偉そうなんだ俺。

 

 

「まぁ、気を付けてやれよ」

 

 

「……うん、気を付ける」

 

 

反省してるのか、いつもの男らしさはナリを潜めて素直に頷いていた。

……小町もこれくらい素直に話を聞いてくれればいいんだけどなぁ。

 

 

「これでこの話はおしまいな。じゃ、俺は行くぞ」

 

 

「あ、待ってくれよハチマン。その、ギルドメンバーの紹介くらいさせてくれよ」

 

 

ええー……

 

 

「あ、俺は月夜の黒猫団のリーダーのケイタだ。よろしくな。

で、そっちのメイスを持ってるのがテツオ。ソードを持ってるのがササマル、槍を持ってるのがダッカーだ」

 

 

「……キリトから聞いてるだろうが、ハチマンだ」

 

 

「影纏いのハチマン、だよな?」

 

 

「おいやめろキリト。それ恥ずかしい」

 

 

「なんでだよかっこいいじゃないか」

 

 

……あ、こいつの年齢はそういうのドストライクか……

 

 

「さっき見せてもらったけど、ハチマンって本当に早いんだよ? いつの間にかいなくなって攻撃してて」

 

 

「スピード重視だからな。そこのバカ力とは違う」

 

 

「んなっ、酷くないか!?」

 

 

「キリト、お前の背負ってる剣の重量って確かソードとほぼ同じだよな?」

 

 

ほら、後ろの二人もそれ聞いて引いてるぞ。

 

 

「ハチマンだって、いつも瞬間移動して後ろから斬りかかってるだろ。なんだよあれ、反則だろ」

 

 

「ばっかお前、俺は影が薄いんだよ。ステルスなの。わかる?」

 

 

……あれ、なんか俺も引かれてる?

 

 

「ところでサチはどっちがメイン武器なんだ?

剣と盾を振り回すのも構わないが、槍の方がまだ使えてるぞ?」

 

 

「あー、それなんだけど」

 

 

ケイタの説明では、キリト加入によりパーティ内での装備を見る限り、サチは盾を持って動いた方がいいのではないか、ということだった。

本人達が納得済みなら別にいいんだが。

 

 

「私……ちゃんと前でキリトの背中を守りたいから、盾、頑張る」

 

 

ヒューヒュー。なんて声が入って顔を赤くするキリトとサチ。ふむ、つまりあれか。

 

 

「リア充爆発しろ」

 

 

「ハ、ハチマン!」

 

 

キリトの奴、やっぱりぼっちじゃねぇじゃねえか。

……悔しくなんかないからな。

 

 

「……ん?」

 

 

不意に、ピコン。とメールが届く音がした。

アスナからだ。どうしたんだろうか、あの攻略の鬼が寄越すメールなんて、基本的にレベリングか、よくわからん連携の練習か、と攻略のことばかりだ。

またそれらの依頼かと思ったら、キリトにも来てるのか、あいつもウィンドウを開いていた。

 

 

「キリト、お前もアスナからか?」

 

 

「ああ」

 

 

俺ら二人に……ってことはまた違う用事か?

そう思ってメールを開いて俺は絶句した。

――それは、アインクラッド解放軍が見つけたボス部屋に自軍のみで参加して、壊滅したという内容だった。




はい、そんなわけで黒猫団登場。まだゲーム感覚があるように書いてますが、徐々に現実を知っていってもらいましょう。

八幡は結構辛辣で、海老名さん曰く「どうでもいいと思ってる奴には素直」なので、わりときついことを誰彼構わず言いそうです(笑)

次回、初のクォーターポイント攻略。この階層の攻略を以て、このエピソードは終わりになります。
ではでは、また次回に。

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