「あんまりですーー!!!!!」
無事上陸組に選出された美鈴は極楽浄土の地へと向かうための船の上で項垂れていた
「やかましいぞ」
「ううっ、みなさんとてもカッコいい二つ名を持っておられるのに
……私は……食い逃げって………」
「事実であろう」
「……………」
無銭飲食をしたことは事実であり、別にそのことを無実だの冤罪だのと言い訳をするつもりは一切なく自分の確認ミスだと受け止め犯してしまった罪は償うつもりではあるのだ
だが、しかし、選出組をそれなりの重罪による別名で呼ばれていく中で………私だけ…………
「あなたもひどいと思いませんか………………大巨人さん」
「………グゴッーーzzz」
美鈴がそう問いかける先には備前の大巨人、陸郎太が船の甲板で大の字で寝転がり居眠りをしていた
当然寝ている陸郎太に問いかけようとも答えが返ってくるはずもなくイビキだけが返ってくる
誰かに同意を求めたい美鈴は揺さぶり起こそうとするが一切起きる気配がない
陸郎太は無理だと悟り衛善を見るとものすごい目つきで睨め付けられてしまう
あ、ダメだ。「囚人と無駄話をする気はない」って訴えられます
う、寂しい。泣けてきました
「…………………そういえば他の山田浅ェ門さんは囚人一人なのに衛善さんは私と陸郎太さんの二人なのですね」
「………本来、囚人は10人を選出するはずだったが貴様らがしぶとく生き残るので仕方なく11人になったのだ。
他の者に押し付けるわけにはいかないからな。私が適任であろう」
「へー。…………あ、他の浅ェ門さんってどんな方がおられるのですか?少し見ただけですが強いお方が多かったですね、
衛善さんの隣におられたあの女性も………」
「………佐切のことか?」
「ほほう、佐切さんというのですか」
「…………………貴様から見てあいつはどう思う?」
「へ?え、えーと、…………彼女もなかなかお強い方だと思いますよ。
かなり鍛えていらっしゃる。身体能力だけを見ればかなりのものですね。
ただ、なんというか、気の迷いでしょうか?
ゆらゆらと気が定まらず揺らいでる感じがしますね。あれでは実力の半分も出せないでしょう」
「…………そうか」
それだけ言うと衛善は再び美鈴に背を向け海を眺め始める。
もうこれ以上は話す気はないと言うことだろう
流石にこれ以上込み入った話はできないと察すると美鈴はこれから始まる未知の探索に気持ちを落ち着かせ、そして
寝た
「………………(なんだこれは)」
これから向かうは帰還者0名、行けば帰れないといわれる魔境だと言うのに
「すぴーーーzzzz」
「ぐごーーー」
選出を間違えたかと二人を選んだことを後悔し始める衛善であった
「!!!」
柱を背に腰掛け快眠していた美鈴であったが何があったのか突如起き上がりそして甲板を駆け出し船の行き先を覗き込とそこには青い地平線の上にポツリと島があることが確認できた
「叩き起こそうと思ったが起きたか」
甲板をかける美鈴を見かけた衛善は後ろから追いつき声をかける
「…………衛善さん、あれが…………」
「ああ、あれが極楽浄土だ」
「…………………」
自分の知らない未知との遭遇。それは興奮があり高揚感に溢れとても楽しいものになる。そんな楽観的に美鈴はこの探索をそう考えていた
しかし、これは
「…………なんですかあれは」
美鈴の顔はどんどんの青ざめていき立っていられず膝をついてしまう
「おい!どうした!?」
「…………衛善さんは、………あれは……極楽なんかじゃありませんよ…………あれは………」
気は人間に限らず島や自然にも存在する。
動物や森林が生み出され、育ち、朽ち、そしてまた生み出し繁栄していく。その循環に気のエネルギーが生み出されそして豊かになっていくのが美鈴がお師さまから教えられた自然の気というものだ
しかし、あれは、どす黒く、異質に見えた
循環どころか気が歪み正常な動きを一切していない
人間で言う血流が止まるようなものだ。そうなるとどうなるか。当然細胞は停止しそして死ぬ。
自然も同じこと。全て朽ち果て何も生み出すことのない荒地になるものだ
しかし、目の前の島はどうだろう
森林は生い茂り花が咲き誇り生命力に満ち溢れている
無茶苦茶だ、
意味がわからない
あまりの気味が悪さに美鈴は
「……………ウェぇっ」
吐いた
「…………うっぷ。………あぁ………」
「………騒いで、嘆いて、寝て、吐いて…………騒がしい奴だな」
小舟へと乗り換え島へと上陸した美鈴は未だな慣れない島の気に完全やられグロッキー状態になっていた
「……………衛善さんにもわけてあげたいですよ、この気持ち……」
「生憎、貴様が何を感じたかは知らんが私には何も感じないな」
「うぅぅ、すみませんがもう無理です。
ちょっと木陰で休んできます」
「………ちっ、まったく。私が船を係留してくる間だけだぞ」
「は〜い」
フラフラと砂浜を歩き木陰に寄り添い座り込む静の気を使い自分の気を落ち着かせる
少しは慣れてきたものの体調が万全になるにはもう少しばかりかかりそうですね。
いやしかし、上陸してみるとますますこの島の異常性がわかりますね
そもそもなんですかこの植物。サバイバル経験で植物には詳しいはずですが初めて見るものばかりですよ
何はともあれ警戒しなくては。
…………よし、少し回復してきましそろそろ衛善さんに合流しましょうか。あまりゆっくりしていると小言を言われそうですし
美鈴はゆっくりと立ち上がると衛善が停めてくると言った船の場所に歩き始める。すると奇妙な光景を目にする
おや、陸郎太さん、起きたのですね。衛善さんと向き合って何をしているのでしょうか?
陸郎太が起き上がり衛善と向き合っていたのだ。陸郎太はここにくるまでずっと寝ていたのでここでの経緯でも話しているのだろうかと不思議思っていると突如陸郎太の気が膨れ上がった
え!?なんですかあの莫大な気は!?
いや、そんなこと考えている場合じゃない
衛善さん刀で受けようとしてますがあれは無謀です!
美鈴から衛善までは約50メートル
美鈴は足に気を集中させ瞬時に駆け出すが完全に回復しきっていないせいか気の周りが悪くスピードが掛かる
陸郎太は拳を振り抜き衛善はそれに合わせて刀を振り抜くが刀が拳に触れた瞬間、陸郎太を斬るどころか刀が粉々に折れそしてその勢いのまま衛善に襲いかかる
「ああああああやらせるかぁぁぁ!!!!」
衛善に到達するその時、横から美鈴が脚を振り上げ拳を弾こうと試みる
「(ま、間に合った!!
いや!?重っ!?)」
なんとか間に合った美鈴であったが陸郎太の拳は重く弾くことができない
「っっっっうらぁっ!!」
もう一段階振り上げなんとか陸郎太の拳の軌道を変え衛善の顔を掠め後ろの大木に逸らすことができた
すぐさま距離を取ろうと脚を振り下ろし後退しようとするが脚を地につけた瞬間痛みが走る
ぐ、まさか横から蹴り上げただけで拳の衝撃がこちらにまで……
思いがけない痛みに体勢を崩すとそこに再び拳を振り上げた陸郎太の拳が振り下ろされる
「しまっ………」
先ほどの威力をみると受ければ死は必す。
覚悟を決め腕で受け止めようとするといきなり首根っこを掴まれ後ろに引きづり出される
「油断するな愚か者が」
そこには衛善が立っており美鈴を後退されてくれたのだ
「………お礼くらい言ってもいいのですよ?」
「ふん、あんなものどうと言うことはなかったわ」
「えー、ウッソだー。あれ直撃コースでしたよ」
軽く軽口を叩きながらなんとか体勢を立て直す
脚の状態を確認に陸郎太に向き合い構える
………しかし、改めて対面するとなんですかあの気の量は。
常に溢れんばかりの気が膨れ上がっているじゃないですか
「………衛善さん、率直にお願いします。
何があったのですか?」
「……簡単なことだ。陸郎太が起きて空腹で癇癪を起こして暴れ回っているだけだ」
「……いや、空腹で癇癪って、………子供じゃないですか」
「その通りだ。奴は8歳児だからな」
「そうですか。それは仕方ないですね
……………………え、8歳児!!?」
陸郎太の身長は3メートルを超え筋骨隆々な大男である
「いや、………え、嘘ですよね?」
「くるぞ!!」
戸惑いを隠せないと美鈴に陸郎太の拳が迫り来る
先ほどの威力を考えるとまず受け流すことは不可能であろう。
だが拳のスピードはそれほどでもない
美鈴は陸郎太の拳を見切り寸前で避けていく
………確かに子供かもしれません。当たればやばいですが動きが直上的です
美鈴は前に踏み出し陸郎太の懐に踏み入り拳を構える
崩拳!!!!
「!!!」
陸郎太は腹部に美鈴の直突きを受けるも怯むどころか押し潰そうと拳を振り下ろすが美鈴は左手で拳を受け軌道を逸らし後退する
「いたたたっ」
なんとか受け流したものの威力を殺しきれず左腕に鋭い痛みが走る
「……ふぅ、困りましたね。私の崩拳は岩石を砕くのですが、陸郎太くんはそれ以上ですか」
「手詰まりか?」
「………衛善さんは何かないのですか?」
すると衛善は美鈴の前に陸郎太に折られた刀を突き出してくる
「我ら試一刀流は刀を有した技がほとんどだ。
他にもあるが所詮は護身術程度だ」
「………え、えーと、つまり」
「有効打はない」
「……………〜〜〜〜っ」
つまり自分は戦力外だと言っているようなものになる
現状を分析し合理的でハッキリとした答えではあるのだがもうちょっと努力してくださいよと言いかけたがなんとか堪え我慢することにした
「………で貴様はどうなのだ?」
「………………」
崩拳より破壊力のある技はある
だが、陸郎太の攻撃を回避しつつ懐に入り技を繰り出すとなると相当至難の技ではある
そして、それが有効打であるかもわからない
左腕もまだ回復しきっていない状態でもう一度受け流すのは不可能
かなりの博打になる。そうなると
「………………あります。しかし、…………」
「………なんだ?早くいえ」
「………これには少しばかり時間がかかります
その間陸郎太くんの攻撃をどうするか………」
「……どのくらいだ」
「………大体5分……ええと……たしか今の言い方だと……一寸でしたか?」
「ではそれで行くか」
「……いやですからその間どうするかを……」
「私がその時間を稼ごう」
「………え、ちょっ……」
美鈴が何かを言う前に衛善は陸郎太に歩み寄る。陸郎太は衛善を潰そうと掴みかろうとする攻撃を衛善は避ける気配が一向にない
あれでは押しつぶされてしまう
「え、衛善さん!!」
そして、地面に押し付けられ地面に衝撃が走り砂埃が視界を覆う
砂埃が晴れ地面に押し付けられていたのは
陸郎太だった
「………え?」
衛善は掴み掛かろうとする陸郎太の指に手を添え後ろに振り向きそのまま後ろに投げたのだ
言うなれば空手の一本背負投に似ていた。自分の三倍近くある巨大を投げたのだ
「……………どこが護身術ですか……」
「人体を知り尽くした浅ェ門の技を甘く見ないでいただこうか」