curse・Shangri-la・nightmare・frontier・party 作:柳瀬塔矢
大将はサイガー100。その実力は俺は知らないが【リュカオーン】を倒す事に全力を尽くしているらしい。ならばその実力は確かに上位勢と言えるだろう。
「俺はかつての忘れ物を取りに来ただけだ。ぶっちゃけサンラク達があんたらに何をしたのかは聞いてないし知る必要もない。てか話聞くだけだと同盟の意味があるのかすらも不明瞭だしな。そしてあんたと0の二人はこの世界を存分に楽しんでいる。その力も、技術もすぐに身につくわけじゃあない。ならば俺はそれに全力を使って応じるだけだ」
「ふっ、私に情けは要らないぞ?先程の回復の手段も全部使って挑んでくれ。そうじゃなければ完全なる勝利とは言えないからな」
勇者、勇者か。なるほどね、確かに勇者なんだろうさ
「勇者か。確かにそれは勇者だ。だが、この世界、この星に限ってさえ言えば勇者なんて存在しない。なぜなら・・・それはこれからの戦いで見せてやるよ」
【廽呪】を使い羽に眼を開く。
【將來霧灯の外天呪、ファリア・ストロノゴフ】が今世界に再臨した
「さぁ、見せてくれ。未知を、破壊を、戦闘を、欲望を、呪いを、輝きを、終末を。その全てが我らの・・・我らの思いであり、願いである」
負ける気はない。勝つ気でいる。だが、相手もまた強者であるのは事実だった。だが、こういう時は思い出すのだ。かつての忘れ物を。
あの頃は呪限無に店を構えていた。他の呪限無から物を買って売ってしていた。ある日、俺の呪限無にとある骨董品が来た。
それは今ではアンティークと呼ばれる蓄音機だった。その音は運命を示しているが、その運命は変更することが出来ずその運命が発生しない状況に於いては必ず運命通りになるように新たに物を創造する恐ろしい呪いの骨董品だった
この蓄音機の持ち主はかつては大富豪だった。それこそ大地主と呼ばれるほどの人物だった。この富豪はこの蓄音機の呪いを利用して運命を知り、出来る限りの対策を行なった。勿論やりすぎた場合はより酷くなることもあった。しかしここ数年はそのような事もなく運命への対策が出来るとして地域の住民からも信頼されてきたのだ
事の発端は半年ほど前の事だ。いつものように対策をしていると彼の家が燃えていた。丁度家を出るタイミングを狙われたのだろう。全焼だった。妻と二人の子供も亡骸として発見された。犯人は隣の地域の市長の取り巻きだった。
彼ら曰く「これ以上蓄音機を使うならもっと被害は大きくなる」と脅してきた。そもそもあの蓄音機は全焼した家の中でも何故か煤に塗れただけだった。もしこれ以上に被害が大きくなろうものならそれは蓄音機の呪いと同じではないだろうか。それにこれまでの経験からもう蓄音機は無くても良い。むしろ、そろそろ蓄音機から離れなければならないとは考えていた。故に。家族を喪った哀しみと要らない被害が街に広がるのを防ぐ為に蓄音機を手放す為にここに持ち込んだのだ
ーーー決断するのはとても苦しかっただろう。これまで頼りにしていた物が使えなくなるのだ。それは誰にとっても辛く、苦しい物なのだ。
ーーーさらに深く潜る。まだ声が聞こえる。
前述した事だが、家族を喪ったのは彼にとって、あの地域の住民にとって。両方の視点から見てもかなり哀しい出来事だと言える。地域の住民からも慕われていた彼の妻も、可愛がられていた二人の子供も街には必要だったのだ。それは誰もが理解していたことだ。それを奪われたのだ。街は暗くなり、いまだに明るさを取り戻せないままでいる。
まぁ、蓄音機を手放そうとしたのはまた別に理由があるようなのだ。放火に遭っても地主としての仕事は続けた。しかし蓄音機を鳴らす事はなかった。これ以上被害を出さないためなのか、単純にもう聞きたくないのかは分からない。しかし急遽借りたアパートの押し入れの奥に閉まっていた。
その閉まっていた期間に彼は一つの事実に気がついた。それは彼自身がある程度予測できるようになっている事だ。それは呪いに耐えたからなのか、元来備わっていた超能力かは分からない。しかし予測ができるようになったのは事実なのだ。
その事実を念入りに検証して結論が出た。この蓄音機を手放す事を。
ーーー誇りに思っている事。それは最後の持ち主たる彼が使っていた間は呪いの道具ではなく、自分を真に正しく扱ってくれたことで数々の命を救う事ができた事だ。そもそもの作成理由が音楽家のライバルへの怨念からなのだが、いや。だからこそ、か。まぁだからこのような呪いの道具になってしまったのだ。それなら最後くらいは命を救えてとても誇らしく思っても問題はないだろう。
ーーーもう時期力を失うのが分かる。これからはただの蓄音機として世の中を回り始めると分かる。ならば音楽を心から愛している者の元に巡りたい。そう考える
ーーー力を失ったのが分かった。ひとまずは丁寧に修理したのち、店頭に置いておくこととする。静かな店内の中で奏でられる最上の音楽に心を癒されるその時を待とう。
奴らが侵攻してきたのはそれからすぐの事だった。あの後蓄音機はどこかに行ってしまったが、まだ残っていると確信している。俺はその蓄音機を探す為にここに舞い戻ってきたのだ。まぁ、かつての大地を踏みしめたいのも理由の一つではあるのだが。