またまたまた他の作品に浮気してしまいました。
描きたくなってしまって……
この作品は試験的に5話投稿します。続きを希望される方がいたら続けようかと思います。
切っ掛けなんてものは、ほんの些細な事で、偶然だったのかもしれない。
私、
けど、それも楽しそうにしているわけでもなければ、ただ目的もなくただその風に身を任せる事だけしかしなかった。
その身に風を受けて気が済むと、私はブランコから降りた。この公園に用はなく、家に帰ろうとした時だった。
「……?」
すぐ足元にボールが転がり、爪先にチョンと当たった。それがサッカーボールである事は、幼い私でもすぐに理解出来た。けど何処の誰のものであるのか分からない。ボールを拾い上げ、それを回して見ていると、少年が大声で呼び掛ける。
「ごめ〜ん!そのボール返してくれ〜!」
声の方に反応して向くと、オレンジ色のバンダナを巻いた少年が私に呼び掛けていた。彼がボールの持ち主なのだろう。
(確か、蹴ってやるんだよね。こういうのって)
サッカー経験の無い者であっても恐らく殆どが知っているルールに則って、私もサッカーボールを蹴って返そうとボールを置く。一応スカートは膝より下まで届いているくらち長いので、万が一足を上げてもパンツが見える事はない。
そして、右を足を思い切り振りかぶって蹴り上げた。ボールには掠りもせず、代わりに沈黙の間に吹いた風がボールを少しだけ動かしてくれた。
「〜〜!」
同年代であろう男の子に、しかもこんな恥ずかしい失敗を見られて顔を赤くして半泣きしそうになった私。少年はというと……
「ドンマイドンマイ!最初はそんなもんだ!」
笑うどころか失敗を励ましてくれた。私はてっきり馬鹿にするだろうと思っていた分、少年の予想しなかった反応に驚いている。
少年が走って駆けつけると、ボールを拾い上げると今度は私にボールを手渡そうとする。
「なあ、一緒にサッカーやろうぜ!」
「……サッカー?」
「そうサッカー!知ってるだろ?」
それくらい知っていると頷く。
「なら、やろうぜ!」
一方的、そう思われても仕方ない誘い方だった。だけど、自身に向ける彼の眼差し。何故だか嫌いにはなれなかった。
その誘いを、彼から手渡されたボールを受け取った。
「俺、円堂守!君は?」
「……天ヶ原愛衣」
それから、公園で円堂君と会う度にサッカーのやり方を教えてくれた。ボールの蹴り方、ルール、どうすれば上手くボールが飛ぶのか。彼は熱心に教えてくれた。
私が一つのことが出来るようになると、円堂君は自分の事のように喜んでくれた。失敗したら励ましてくれた。
そうしていると、自然とこう思うようになった。
「楽しい……」
「ハハ!やっと笑ってくれたな!」
だって、サッカー楽しいんだもん。こんなにドキドキしたの、生まれて初めてだったから。
ボールを蹴る度に、ボールと私が一体となって動いているようなこの感じ。ボールを高く飛ばした時の空がとても青くて綺麗、なんて思えてしまった。
それから私はサッカーを続けた。稲妻町のシンボルとして名高い(?)鉄塔広場で円堂君と一緒にサッカーをやって、時々円堂君のお祖父さんが遺した特訓ノートのメニューをやってみた。ただ文字は汚すぎて私には読めなかったけど……。
内容は簡単。私がシュートを打って、円堂はそれを止めるだけ……なんだけど、円堂君は大型トラックのタイヤを背中に括り付けてキーパーの練習をしている。
「ふっ!」
けど円堂君が手加減するなということで、私は持てる力の全てを出してボレーシュートを打つ。そのボールを円堂君は真正面からキャッチした。
「良いシュートだったぞ!前より強くなったな!」
「円堂君のお陰。私は何もしてない……」
「いや!このシュートは、お前が頑張って身につけた努力の証だ!でなきゃ、こんな凄いシュートは打てない!受けた俺が保証する!」
「円堂君……」
私が凄いシュートを打つと褒めてくれる。調子が悪かった時は、励ましてくれる。だからサッカーが楽しかった。
「なあ。中学入ったらさ、一緒にサッカー部入ろうぜ!」
「サッカー部に?」
「ああ!そんでもって、フットボールフロンティアに出場して優勝するんだ!」
フットボールフロンティア。サッカーの日本一を決める中学生サッカーの祭典。円堂君は昔からそれに出場して優勝するのが夢なんだそうだ。
「優勝……」
「ああ!俺とお前が一緒に出来れば、夢じゃない!」
「私が円堂君と……!うん、やる……!」
私達は一緒にフットボールフロンティアに出場して優勝するという夢を掲げた。まだ私はサッカーを始めたばかりの初心者だけど、円堂君と一緒ならどんな相手だって、どんな壁だって超えていける。そんな気がした。
けど、いつしかその思いは裏切られた。切っ掛けは私が雷門中に入学した頃の事。円堂君も雷門中に入学して、一緒にサッカー部に入ろうと約束した。
中学サッカーの楽しみと期待を胸に、早速サッカー部に入ろうと入部届を出したんけど……
「残念だが、君を選手として入部する事は出来ない」
顧問の冬海先生の気怠そうな一言を受けて、期待を裏切られた私はショックを受けた。
冬海先生によると、フットボールフロンティアに出場出来るのはサッカー部に所属する男子だけという規定がある。つまり、女子の私は参加する事が出来ない。
「……男尊女卑」
「待ってください!天ヶ原はスゴイ奴なんです!きっと、フットボールフロンティアにだって……」
「特例はありません。しかし、マネージャーとしてなら入部も認められますが……」
「……さようなら」
「ええぇっ?!」
冬海先生の提案を最後まで聞かずに私は職員室から出た。マネージャーじゃなくて選手として入部したい私には何の興味もないから。
「待てよ天ヶ原!」
職員室を飛び出した円堂君が呼び止めた。
「俺、天ヶ原と一緒にサッカーやりたい!一緒に大会に出られなくても、一緒に練習に付き合ってくれたらさ、俺もっと強くなれる!お前がいてくれたら、こんなに心強い事はない!」
「……いい」
円堂君はそれでも熱心に私を誘ってくれた。けど。それじゃ違う。私は円堂君と一緒にサッカーやって、フットボールフロンティアを優勝したかった。私は円堂とサッカーが出来ると思って期待していたのに、選手として入る事が出来ないんじゃサッカー部にいたって意味がない。
こんな呆気なく幕切れを迎えた私は円堂君のもとを去った。結局私は、無口で虚ろ、無気力な私に逆戻り。次第にサッカーへの情熱も過ぎ去ってしまった。
つまらない。そんな虚無感に押し潰されて諦めてしまった愛衣は、ベッドで大の字になって天井を見上げる。その瞳を一言で述べるなら、虚ろという言葉が相応しい。
雷門中に入学してからもう一年が経過してしまった今日、どこの部にも入らずに虚無の時間を過ごしている。学校生活が窮屈なわけではないが、楽しいと思えることが無い。
勉強はある程度やって入るが、良くも悪くも平均くらい取れればそれでいいと、本気でやらずに手を抜いている。
今時の女子の流行や話題には全く興味を示さず、好きなれテレビ番組もなければ、自分を充実してくれる趣味すらない。何より、友達と呼べる存在がいない。
そしてサッカーもやらなくなってしまった事で、唯一のサッカー仲間だった円堂とも疎遠になってしまい、見事に友達0人というザ・ボッチになってしまった。
しかし愛衣はそんな事を気にする素振りは1ミリたりともなく、朝起きて、学校へ行って授業を受けて、家に帰ってのサイクルを過ごしている。
趣味も無い、青春も無い、娯楽も無ければ楽しみすら無い。愛衣は一言で言うなれば、穴が開いた空っぽの箱。どんなに楽しそうな事が起こっても、その穴を埋め合わせるものが無ければ永遠に満たされない。
そんな中、雷門中サッカー部が練習試合を申し込まれたというニュースが飛び込んできた。
その前に、雷門中サッカー部の現状を語る必要がある。ハッキリ言って、悲惨の一言に尽きる。
部室はボロボロ、メンバーもたった七人で練習すらせずに遊んでいる。そもそも七人では試合すら出来ない故に部員達のモチベーションも最低と言ってもいい。グラウンドも他の部によって使われ、借りる事すら出来ない。たった一人、円堂だけは真摯に取り組んでいるが、サッカーは一人でどうにかなるもなではない。
その所為もあり、サッカー部はこの練習試合に負ければ廃部と決まったのだ。そもそも人数不足で不戦敗という未来もありえなくないが。
とはいえ、そんな弱小サッカー部に練習試合を申し込む学校があること事態が驚きであり、学校中を騒がせている。その対戦相手というのが……
「てーこく学園……?」
愛衣がポツリと出した帝国学園。帝国学園サッカー部は40年間無敗の歴史を誇るサッカー名門校として名を馳せている。そんな彼らが、最底辺と言っても過言ではない雷門中に練習試合を申し込んだのだ。
普通にやりあえば勝てるわけがない。だから皆は廃部になると疑わなかった。
愛衣はそんな事はない、と思う事もなければ廃部になるとも思っていない。
彼女の中では答えは一つ、『どうでもいい』だ。
たとえ廃部になろうが、サッカー部ではない自分には関係ない。だからその話に気にも留めておく事すらしなかった。
窓際にある自身の席で、愛衣は机に肘をつきながら校庭のグラウンドを見下ろしていた。
その中には、サッカーのゴールキーパーのユニフォームを身に纏い、看板を片手に駆け巡る者がいた。
「円堂君……」
皆が負けを確信している中、円堂だけは勝つ事を諦めていなかった。
プロフィール
天ヶ原愛衣
雷門中に通う女子中学2年生。
控えめな性格で積極的に前に出ようとしないが、好きな事に関してはとことんやる。
円堂と練習したお陰でキック力、スピードに関してはトップクラスになった。