もう一人のイナズマガール   作:レーラ

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反逆の雷

 尾刈斗中との練習試合は、ゴーストロックによって2-3で逆転を許した状態でハーフタイムを迎えた。だがこのまま後半を迎えても、またゴーストロックで動きを止められてしまう。次失点すれば逆転は絶望的となる。

 

 まだ諦めムードではないが、試合開始前と比べれば士気はガタ落ちなのは明らか。それ程までにゴーストロックは雷門を、まさに呪いの如く精神を揺さぶりかけている。

 

「大丈夫だって!ゴーストロックを破る方法は、絶対にあるはずだ!」

 

 そんな中、円堂は諦めちゃいない。彼はこの状況下で前を向いている。

 

「だが、どうやってあのゴーストロックを突破しようっていうんだ?」

 

 風丸は諦めてはいないが、この深刻な状況を重く受け止めた上で円堂に問う。ゴーストロックを破らない限り、自分達の勝利は無い事は皆分かっている。だがその破る方法が分からない。

 

「やっぱり呪いッスゥゥーー!!」

「落ち着け壁山!」

「呪いなんてありゃしねえよ!」

 

 完全に恐怖一色に染まりきった壁山を風丸と染岡が落ち着かせる。

 

「……ねえ」

 

 そこに愛衣がおずおずと挙手する。

 

「どうしたんだ?」

「ちょっと……気になる事があって……。あ、でも……全然、的外れかもしれないし……間違ってたら……」

「この際だ。憶測でも良いから話してみてくれ」

 

 確信が持てず、不安がる愛衣に豪炎寺が優しく頼む。

 

「うん……。あのゴーストロック……使うようになった時なんだけど……。あの時……尾刈斗中の監督が、変な呪文を唱えてた」

 

 愛衣にそう言われ、栗松と壁山は思い出した。突如、尾刈斗中サッカー部監督の地木流が豹変し、呪文を唱えていた。

 

「そうでやんす!」

「あの監督、何かブツブツ言っていたッス!」

「じゃあ、その呪文に秘密が?」

「……ごめん。分からない……。ただ……何となく気になって……」

 

 憶測の域にすら達していない愛衣の発言は、秋の質問に対して答えることが出来なかった。申し訳ないという思いを表すように猫耳のような癖っ毛が倒れる。

 

 そこに円堂の手が愛衣の肩を掴む。

 

「気にすんなよ!それに、まだ前半が終わったばかりだ!ゴーストロックを破る方法は、試合中に見つけ出せばいい!」

「円堂君……」

 

 何度も自分を救ってくれた円堂の頼もしさに、愛衣は安心感を感じていた。

 

「よーし皆!後半で盛り返していくぞ!」

 

 

 


 

 

 ハーフタイムが終わり、運命の後半戦へ。残り時間30分で全ての結果が決まる。勝てばフットボールフロンティア、負ければ廃部。敗色濃厚となっているこの現状を打破する方法は一つ、ゴーストロックを破るしかない。

 

 雷門のキックオフから開始。豪炎寺が前線へ……と、思いきや後ろにいる愛衣にバックパスをする。

 

「え……?!」

「豪炎寺?!」

「何でファイアトルネードを打ちに行かないんだよー?!」

 

 これには愛衣と染岡のみならず、円堂も問いただす。

 

(確かめなければ……今はまだその時じゃない)

 

 攻めに行かなければ点は取れない事は豪炎寺も重々承知している。だが闇雲に攻めた所で鉈の《ゆがむ空間》でキャッチされる。そうすれば尾刈斗中にボールが渡り、ゴーストロックを発動が繰り返されてしまう。

 一点も失えないこの状況下で、豪炎寺は打開策を見出す為にボールキープに出たのだが、その意図は誰にも伝えていない。当然、愛衣はどうすれば良いか分からず、困惑している。

 

「え、えっと……」

 

 だがそうこうしている内に月村がボールを奪いに来た。とりあえずフォワードとして点を取りに行かなければと切り替えて、正面から突破する。

 

「天ヶ原!」

 

 染岡がパスを要求するが、屍と不乱の二人にマークされ、とてもパスなど出せない。こうなれば自分が行くしかない。

 

 素早いドリブルで瞬く間に霊幻、柳田、三途を抜き、後はキーパーの鉈だけだ。

 

「打つな天ヶ原!」

 

 そこに豪炎寺がシュートを打つのをやめるよう言ってきた。

 

「どうして……?!」

「奴らは何処かおかしい!確かめたい事がある!」

「で、でも……」

 

 だが止まっている間に、不乱が愛衣に迫る。思わず豪炎寺にバックパスを繋げる。結果的にそれが功を奏したと言えるかは微妙だが、豪炎寺が少林寺に繋いで、まだボールは雷門がキープしている。

 

「豪炎寺君……確かめたい事って……」

「確証は持てないが……やれるだけの事はやる」

 

 何をしようとしているのか、何を考えているのか、愛衣にはサッパリだった。

 

 だが攻めなければ点を取れないのは事実。少林寺からパスを受けた半田が染岡にパスをすると、一年生達が半田に詰め寄った。

 

「何で豪炎寺さんにパスしないんですか?!」

「アイツに回したって、シュートしないんじゃ意味がないだろ?!」

「豪炎寺さんじゃなきゃ点は取れないでやんすよ?!」

 

 次第にゴールを決めるべきと猛る染岡と、冷静な豪炎寺、どちらにボールを回すかでチームメイト同士でいがみ合っていた。

 

 仲間割れをしているチームメイト達に円堂と風丸は呆れ、愛衣は不安になってしまった。

 

 そして、点を取ろうと焦る染岡もまた冷静な判断が出来なくなっていた。

 

「待て染岡!闇雲にシュートを打っても止められるだけだ!」

「うるせえ!見てろ!次は点を決めてやる!」

「染岡!」

 

 豪炎寺の制止を振り切った染岡がドラゴンクラッシュを打った。だが鉈のゆがむ空間によって、ボールは鉈の両手に納まった。

 

「マズい……!」

 

 センターバックの影野と壁山を除いた雷門のフィールドプレーヤーは皆、尾刈斗陣営に入っている。守りがガラ空きでゴーストロックを発動されたら瞬く間に失点してしまう。愛衣は全速力で守備に下がる為に走り出す。

 

「そろそろ……ジ・エンドにしてやるかぁ!テメェら!ゴーストロックだぁ!」

「みんな戻れ!」

「トドメだ!《ゴーストロック》!」

 

 風丸の指示でディフェンスに戻るが、時既に遅し。地木流の指図で再び幽谷がゴーストロックを発動した。

 

 ゴーストロックによって雷門イレブンが動けない中、ドリブルでゴールまで迫ってくる幽谷。

 

「このままじゃ……っ……?」

 

 その時、愛衣と円堂は地木流が唱えている光景を目にする。そして、その呪文の詠唱を復唱する。

 

「「マーレマーレマレトマレ……まーれまーれまれとまれ……まーれまーれまれ止まれ(・・・)……」」

 

 呪文の中に紛れ込んでいた言葉。やはり呪文がゴーストロックの鍵だと二人は気が付いた。

 

《ファントムシュート》!」

 

 だが幽谷のファントムシュートがゴールに迫る。

 

 

 

 ゴロゴロゴロゴロドッカアアアァァァーーーン!!

 

 

 

 円堂が強く両手を叩いて、大声で叫んだ。すると、足元を拘束していたゴーストロックが砕け散った。だがファントムシュートはもう目と鼻の先。今からゴッドハンドを出しても間に合わない。

 

「だったら……!《熱血パンチ》!」

 

 ボールに飛び込んで、炎のように熱いパンチングでファントムシュートを弾いた。

 

「何っ?!」

 

 ゴーストロックが破られた事に幽谷は狼狽し、監督の地木流は驚愕した。だが弾いたボールは月村に渡った。追撃に備える為に急いで立ち上がる円堂。

 

「くらえ!《かみかくし》!」

「止め……っ?!」

 

 月村が打ったシュートが忽然と消えた。ボールはどこへ?辺りをフィールドを見渡すと、突如巨大な鳥居が現れ、その中央から強烈なシュートが放たれた。

 

 不意を突かれた円堂も、これには反応が遅れた。

 

「何っ?!」

 

 それでも諦めず、再び熱血パンチの体勢に入った直後だった。

 

「何っ……?!」

「天ヶ原?!」

 

 

 ドカアアアァァン!!

 

 

 何とフォワードにいたはずの愛衣がゴールまで下がり、かみかくしを蹴り返そうとしていたのだ。デスゾーンより威力は劣るだろうが、それでも必殺シュートをただのキックで打ち返すなど無茶が過ぎる。

 

 だが時には、その無茶を押し通さなければならない事もある。

 

(負けたくない……!この試合に勝って……円堂君と一緒に、フットボールフロンティアに行きたい……!)

 

 一緒に描いた夢を叶えたい。その思いでいっぱいだった。

 

「はあああぁぁーーー!!」

 

 その思いが具現化したのか呪いのシュートが、イナズマのエネルギーを纏って打ち返した。

 

「な、何ぃっ?!」

 

 しかもあの時とは違って、ボールがどれだけの距離を駆けようと、パワーは衰える様子はない。

 

「ぐっ……!」

 

 鉈は咄嗟にゆがむ空間を発動。鉈の両手に禍々しい空間が顕現する。

 

「な、何だ……?!」

 

 だが空間がボールに触れた直後、ゆがむ空間は破壊され、ボールは鉈もろともゴールネットに突き刺した。

 

『ゴオオォーール!何と何とぉ!月村のかみかくしを打ち返し、天ヶ原の超ロングシュートが、ゆがむ空間を破ったあぁぁ!!』

 

 

 雷門3-3尾刈斗

 

 

 一体何が起きたのか、理解が追いついていない愛衣は目をパチパチさせるが、脱力したようにその場にへたりこんでしまう。

 

「やったな!天ヶ原!ここからあんなシュートを打てるなんて!」

「う、うん……」

「ちょっと待て!それよりもどうして動けたんだよ?!」

 

 愛衣がシュートを決め、自分の事のように一番に喜んでいる円堂に風丸が待ったをかける。

 

「分かったんだよ!ゴーストロックの秘密が!」

「秘密?」

「俺達はアイツらのゴロゴロ変わるフォーメーションに、グルグルになった俺達の頭に、あの監督が『止まれ』っていう暗示をかけたんだ。つまり、俺達は目と耳をゴワンゴワンにされたんだよ!」

 

 あまりにも滅茶苦茶な説明で、風丸達は理解出来ていない。むしろ謎の言語が何かと錯覚してしまう。

 

「それは……つまり?」

「……催眠術」

 

 円堂が言いたかった事を、愛衣が簡潔に纏めた。 

 

「止まれっていう暗示……それに気づかせないように、私達を怒らせてた……。

「それで円堂は、ゴロゴロドッカーンって言ったのか!」

「それじゃあ呪いじゃなかったんスね!」

 

 呪いと聞いていの一番に怯えていた壁山に、愛衣は無言で頷く。ゴーストロックの正体が分かればもう怖いものなんてない。しかも愛衣の新必殺技で、ゆがむ空間も破った。

 

 だが問題はまだ一つ残っている。何故ドラゴンクラッシュではゆがむ空間を突破出来ないのか?何故愛衣の必殺技で破れたのか?

 かみかくしのパワーが上乗せされたという点もあるだろうが、染岡のドラゴンクラッシュはかみかくしの威力を大きく超えている。

 

「……まさか。いや、だとしたら……」

 

 豪炎寺が一つの可能性に辿り着いた。

 

 




愛衣放った必殺シュートは何なのか?

次回に続く
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