あまりにも投稿が空きすぎてしまって申し訳なさでいっぱいです。
今回、愛衣にはいっぱい赤面してもらいます。
そして新必殺技の命名です。
尾刈斗中との練習試合が終わったばかりの夕方。豪炎寺に呼び出され、河川敷のサッカーグラウンドに二人はいる。
男の子に呼び出され二人きりという状況。何で呼び出されたのかは分からず、つい最近までボッチだった愛衣はただ戸惑うが、
「ご、豪炎寺君……何をする気?」
「お前の必殺技について、知りたい事がある」
「知りたい事……?」
「俺は今からシュートを三本打つ。お前はペナルティエリアで俺のシュートを蹴り返すだけでいい」
「え……うん……」
蹴り返すのは得意だが、何故自分にそのような事をさせるのか、豪炎寺の意図は全く掴めなかった。
言われた通り、ペナルティエリア内に入った愛衣は準備完了と手を振る。
「行くぞ」
一本目、まずは普通にシュートを打つ。だが豪炎寺のキック力は抜群であり、並大抵のキーパーでは止める事は不可能だ。
「はあぁっ!」
だが愛衣は素早く反応して、得意のキック力で蹴り返してみせた。蹴ったボールは豪炎寺に真っ直ぐに返し、インサイドでトラップする。
「次は少しばかり本気を出すぞ」
「え……?」
突然そう言われて間もなく、一本目より力強いシュートが放たれた。いきなりだったが、これも難なく打ち返す事に成功する。
「やるな」
豪炎寺は愛衣を褒め称えながらインサイドトラップで止めた。
シュートを打つ度にパワーが増している。そう考えると次は十中八九、あの技を打ってくる。それが本当にならないよう願うが、豪炎寺がボールを高く上げた。予想していたとはいえ、つい怖じてしまう。
「《ファイアトルネード》!!」
だが逃げていては、一人でゴールを守っている円堂を守る事は出来ない。
「やあぁっ!」
左足で強く踏み込み、回転しながら右足に雷を纏い、襲いかかるファイアトルネードのボールを、ボレーシュートの要領で打ち返した。
ファイアトルネードの威力も重なり、ボールは反対側のゴールへ勢い良く突き刺さった。
「やはり、俺の読みは当たったな」
「読み……?」
着地した豪炎寺が意味深な事を呟き、どういう事か知りたい愛衣が問う。
「お前の必殺技は、《相手の必殺シュート》に反応する、特殊な必殺シュートだったんだ」
「相手の……必殺シュートに……?」
そう言われると、思いたる節があった。いくらシュートを決めても、全て威力の高い普通のシュートだったにも関わらず、帝国のデスゾーンと尾刈斗中のかみかくしに対しては凄まじい威力を誇る雷のシュートになった。
そしてたった今、ファイアトルネードに対しても同じ現象が起きた事で、豪炎寺の仮説は真実となった。
「もしかして、その為に……?」
「お前のキック力は、必ず雷門の要になる。あの必殺技を完全にマスターすれば、帝国とも戦えるストライカーになれる」
「帝国……」
帝国学園との練習試合ではただ一方的に倒され、何も出来なかった。円堂はそんな事ないと言ってくれたが、それでも悔しかった。
リベンジしたい。今度こそ円堂を守って、帝国からゴールをこじ開けたい。
「《リベンジサンダー》……」
「は……?」
「私の必殺技……今度は帝国に勝つ。だから……リベンジサンダー」
それが愛衣の必殺技。か弱き少女に秘めた強き思いが、常識を覆した異質にして規格外なシュートを作り出した。
「頼りにしてるぞ」
「……うん」
同じ雷門のストライカーとして、お互い強くなろうと2人は固く決意した。
「所で天ヶ原」
「……何?」
「もう一つ、必殺技を習得してみる気はないか?」
唐突な提案に首を傾げる愛衣であった。
そして翌日の朝、愛衣はいつもと変わらない通学路を歩いて登校していた。学校にたどり着き、校門を抜けて向かった先は教室ではなく、サッカー部室。
部室内に貼られているフットボールフロンティアのポスターを見て、感慨深いものを感じていた。
愛衣が小学生だった頃、サッカーを本格的に始めようと、円堂と一緒にあるサッカークラブに入ろうとしていた。円堂に鍛えられた事もあり、フォワードとしての才能が開花し始めていたのだが……
「見ろよ!女子がサッカーをしてるぞ!」
「女じゃぶっ飛ばされんだよ!」
「女はお人形遊びでもやってろよ!」
女子だからという理由で愛衣は弾かれてしまった。円堂は愛衣の味方でいてくれたが、結果は変わることなく入団をやめた。それ以来、愛衣は円堂ととしかサッカーをやらなくなっていた。
そして、雷門中サッカー部に入部しようとしたら選手として使えないと門前払い。遂に円堂とサッカーが出来なくなった事に絶望して、サッカーをやめてしまった。
だが、フットボールフロンティアの規約の改定でまたサッカーが出来るようになった。
円堂とまたサッカーが出来る。そう考えただけで、愛衣はドキドキしている。
「天ヶ原!お前も来てたのか!」
「え、円堂君……!」
部室の扉を開けっ放しにしていた為、円堂が入ってきた事に気づかず、まさかの不意打ちにビクッと跳ね上がる。
「お、おはよう……」
「ああ!おはよう!もうすぐフットボールフロンティアだな!」
「うん……そ、そうだね……」
「目指すは俺達の夢、フットボールフロンティア優勝だぁー!」
一緒に立てた夢を覚えてくれるのは嬉しいが、こうも大声で出されると恥ずかしさが勝る。愛衣の顔は茹で蛸のように真っ赤だった。
「そ、そろそろ……教室いこ……?」
「え?あ、ああ!そうだな!じゃあまた放課後な!」
風の如く現れ、稲妻のように行ってしまった円堂。その忙しなさに愛衣は少し困り果てたのであった。
そして放課後。サッカー部一同が部室に集まっていた。
「いよいよ待ちに待ったフットボールフロンティアだぁー!」
おぉー!!
念願のフットボールフロンティア出場出来る。彼らの盛り上がりのボルテージは最高潮に達している。
「で、相手は何処の中学なんだ?」
「相手は!!」
うん!
「知らない!!」
得意げに答えては最早清々しい。尋ねた風丸もこれには呆れる。
「野生中ですよ」
普段からあまり部室に顔を出さない冬海が、珍しく部に尋ねて来た。とはいえ、曲がりなりにもサッカー部顧問なので生徒を引率する義務がある。
「野生中と言えば、昨年のフットボールフロンティア地区予選決勝で帝国学園と戦ってます」
つまり昨年の地区予選準優勝チームである。春奈から齎された情報に円堂は怯む所かワクワクしている。
「初戦大差で敗退なんて、勘弁してくださいよ」
冬海は始めから期待していないのか、覇気のない声で通達する。部室を出る直前に思い出した事があり、踵を返す。
「それから……今日からこのサッカー部に入部希望者が……」
「チーッス!俺、土門飛鳥!一応ディフェンダー希望ね!よろしく!」
軽快に挨拶する灰色髪の男子、《土門飛鳥》が部室に入って来た。身長だけなら染岡より高いだろう。
「全く、君も物好きですねぇ。こんな弱小に入りたいなんて」
そう言うと冬海はさっさと部室から出ていった。監督である顧問がさっさといなくなる事が信じられないのか、行ってしまった冬海に指を指す。
「土門君!」
「あれ、秋じゃない!お前ら雷門中だったの?!」
どうやら秋と土門は知り合いだったようで、再会に喜ぶ。そしてキャプテンてして、円堂が土門の手を取る。
「歓迎するよ!一緒に頂点を目指そうぜ!」
「け、けど相手は野生中だろ?大丈夫か?」
「どうしてだ?」
土門の苦言に円堂が問う。
「前の中学で戦った事があるからな。瞬発力抜群、そこの君が11人いると思っていた方が良いかもな」
土門が言う君とは愛衣の事だ。確かにとその場にいた雷門イレブンの面々が愛衣を注目して頷く。
「え……な、何……?」
大勢に注目され、戸惑い、顔を赤くしながらダンゴムシのように縮こまってしまう愛衣。
「えっと……何か悪いことしたか?……まあいいや。とにかく、野生中はフィジカルじゃ敵無し。特に、高さ勝負には滅法強い」
「それなら大丈夫さ!俺達にはファイアトルネード、ドラゴンクラッシュ、ドラゴントルネードに……えっと、天ヶ原。お前の必殺技の名前ってあるか?」
愛衣の必殺技には名前を付けてあるが、他に知っているのは豪炎寺しかいない。円堂は愛衣に聞く。
「あ、ごめん……。言ってなかったよね……。えっと……『リベンジサンダー』」
「そう!リベンジサンダーがある!」
「……どうだろうなぁ」
雷門が誇る必殺シュートを並べて出しても、土門は懐疑的な表情のままだった。
「アイツらのジャンプ力はとんでもないぞ?ドラゴントルネードだって、上から抑え込まれちゃうかも」
「……そうなるだろうな」
これまで沈黙を貫いていた豪炎寺が土門の発言に同意した。
「俺も奴らとは戦った事がある。空中だけなら帝国をも上回る」
豪炎寺が言うのだ。信憑性は極めて高い。あの帝国学園のジャンプ力を凌ぐという事実によって不安になる者が出て来る。特に壁山はその反応が著明である。そこに、円堂が大きな声を出した。
「新・必殺技だああぁー!!」
円堂が言うには野生中のジャンプ力をさらに超える必殺技を編み出すとの事だった。
早速はしご車を借り、円堂はそのハシゴのてっぺんからボールを落とす。他のメンバーはそのボールをジャンプしながら蹴るという練習をしている。
「行くぞ!天ヶ原!」
「……うん!」
高所から投げて来たボールを、愛衣はオーバーヘッドキックで蹴る……
スカッ
「あ、あれ……?」
オーバーヘッドキックなんてやった事がない愛衣が、いきなり出来るわけもなく、ボールに掠りもしないでそのままボールとともに落下した。
「おい、大丈夫か?!」
「……平気」
背中から落ちた愛衣を、風丸が心配して駆け寄るが、ちゃんと受身は取った為、大した怪我には繋がらず、すぐに立ち上がれた。
「もう1回……!」
「よーし!行くぞー!それっ……あっ!」
「あっ……」
「おい!何処投げてんだよ?!ふざけんな!ボール拾いか俺は!」
円堂が投げたボールはあらぬ方向へ行ってしまい、呆ける愛衣の代わりに染岡が文句を言いながらもちゃんと回収してくれた。
「ようお前さん達!精が出るな!」
「古株さん!」
配管工のような作業着を着た用務員の古株がサッカー部の練習を見に訪ねて来た。
「尾刈斗中の試合見ていたが、凄かったなぁ。まるで伝説のイナズマイレブンの再来だったぞい!」
「伝説の……」
「イナズマイレブン?」
愛衣と円堂がオウム返しに訊くと意外そうに言う。
「お嬢ちゃんはともかく、円堂大介の孫のお前さんは知らんのか?」
一旦練習は中断、古株からイナズマイレブンの事について話を聞く事になった。
部活が終わった帰り道。日が沈みかけ、オレンジ色の空が下校中の愛衣と、ウキウキで盛り上がっている円堂を照らしている。
「やっぱりスゲー人だったんだじいちゃん!伝説のイナズマイレブンの監督だったなんて!」
「そ、そうだね……あはは……」
盛り上がる円堂とは対照的に、愛衣は苦笑いを浮かべている。古株の話を聞いてからずっとこうなのだ。
話は少し遡る。
古株によると、イナズマイレブンとは40年前の雷門中サッカー部メンバーの事であり、フットボールフロンティア優勝目前まで登り詰めた、まさに伝説のサッカーチームだという。
「凄かったなぁ。アイツらなら、世界を相手に戦えたはずだ」
「スッゲー!超スッゲー!超絶対カッコイイ!!」
わんぱくサッカー小僧の円堂が盛り上がらないわけがなく、勢いよく立ち上がってはしゃいでいる。ここで愛衣が挙手をする。
「それで……円堂君とどう関わるの……?」
「そりゃあな。お前さんが、その伝説の血を受け継いでいるからだ!」
「俺が?」
「ああ!そりゃあ……その伝説のチームの監督こそが、お前さんのお祖父さん、《円堂大介》だからだ!」
古株にそう告げられてから、円堂はずっとこの調子だ。それに他の部員達も触発されたようで、練習はさらに熱が入ってしまっていた。
その結果、愛衣はヘトヘトだった。あれだけ体力をつけたはずだが、足元がおぼつかないような気がしている。
だが円堂はあれだけハードな練習したにも関わらず、五体満足にはしゃいでいる。一体どこにそんな体力があるのか、考えても無駄であるがつい思考したくなる。
円堂大介。円堂守の祖父であり、彼がサッカーを始める切っ掛けとなったノートの持ち主。だが円堂が生まれる前に他界してしまっている。
愛衣が知る限りの大介の情報はこれだけだ。というのもこの情報は円堂によるものであり、当の本人もイナズマイレブンの伝説を知るまではそれくらいしか知らなかったらしい。
だが祖父のサッカー伝説を知った彼のサッカーへの情熱はさらに激しく燃え上がっている。
「よっしゃー!俺も伝説のイナズマイレブンになってやる!なあ、天ヶ原!」
「へっ……?」
半ばボーッとしている中で突然、自分に振られてビックリした愛衣。
「俺達の手で伝説を作るんだよ!イナズマイレブンになるには、フットボールフロンティアに優勝しかない!だから天ヶ原!
「う、うん……へっ?!」
瞬く間に祖父の伝説を夢見て、憧れを抱いた円堂。その伝説のチームになるべく、最も長く共にサッカーをやっている愛衣を誘ったはずだった……。
「どうしたんだ?」
愛衣の様子がおかしい円堂が尋ねるが、何一つ反応が帰ってこない。いや、むしろ返せないと言うのが正しい。
『俺と一緒に』その単語は思春期の少女のメンタルを狂わせるには十分すぎる威力があった。ましてや愛衣のような奥手な少女にはクリティカルレベルで効いてしまう。
今の愛衣は赤面しながら口をパクパクさせている。こういう時、恥ずかしさで完全にパニックになってしまっている。円堂はそれに気付いていないのか首を傾げている。
「なあ天ヶ原?」
「は、はひぃっ!」
「イナズマイレブンにならないのか?」
「な、なるなる!なる!なるから!」
ここまで来ると、もうヤケクソになっている。
「その意気だ天ヶ原!よーし!まずは野生中だ!」
来る決戦を前に胸が高鳴る円堂だが、その情熱に巻き込まれた愛衣の心はもう瀕死寸前である。そんな状態が続きすぎて、今夜はあまり眠れなかったのだとか。
《リベンジサンダー》
愛衣の必殺シュート。山属性 L 消費TP70
右足に雷を纏い、相手の必殺シュートをボレーシュートで蹴り返すロングシュート技。
ロングシュートの宿命か、キーパーに辿り着く時にはそれなりに弱くなるが、二つの必殺技の相乗効果で威力が凄まじい事になる。
例、ファイアトルネードを打ち返した場合……
ファイアトルネード+リベンジサンダーの半分の威力
となって、相手キーパーに襲い掛かる為、自分のチームが相手のゴールを狙ったシュートのはずが、逆に威力上乗せで自分達のゴールに襲い掛かる事になる。