もう一人のイナズマガール   作:レーラ

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試験的投稿もいよいよ最後になります。一話でも言っていましたが、続くかどうか分かりません。

もし、続きを希望される方がいたら大至急続きを書きます。勿論シンフォギアと並行で。



爆炎のストライカー

「んぅ……」

 

 目が覚めれば、そこは見覚えのある天井と風でカーテンが靡いている。

 

「……保健室?私は確か……」

 

 円堂を守ろうとデスゾーンを蹴り返してみせた。そこからの記憶がない。あれからどうなった?いつまでここで寝ていた?試合はどうなった?多くの不安がよぎり、真相を確かめるべく起き上がろうとしたが怪我のせいで起き上がれない。額に腕に脚、至る所に包帯が巻かれている。

 

「円堂君……!」

 

 すると保健室の戸が勢い良く開き、一度に大勢のお尋ね者が入って来た。

 

「天ヶ原!」

「え、円堂君……?それに、皆?」

 

 入ってきたのは円堂を始めとした雷門イレブン、秋に春奈だった。ここにいるという事は、試合は終わったという事だ。

 

「……試合は?どうなったの?」

「勝ったんだよ!俺達!」

「勝った……?え、あの点差をどうやって……?」

 

 


 

 

 愛衣が運ばれた後も試合は続いた。だがその点差は20-0と、より状況が悪化していた。試合時間も残り少ない状況で戦局を覆す事などもはや万に一つもない。

 

 このまま敗北し、サッカー部は廃部になる。円堂以外の誰もがそう思われていた。

 

「お、おい!何だよあいつ?!」

 

 そこにもう一人、雷門の10番のユニフォームを身に纏った白髪の男子がグラウンドに入って来た。

 

「お前は……!」

 

 彼はかつて木戸川清修中でフットボールフロンティアで活躍した炎のストライカー《豪炎寺修也》だ。突如として彼はこの雷門中に転校し、その才能を目の当たりにした円堂が彼をスカウトしたのだが、彼は断固としてとしてサッカー部に入ろうとしなかった。

 

 だが彼は今、このグラウンドに現れた。それも雷門のユニフォームを纏って。彼が仲間になった事で、円堂達は再び立ち上がった。

 

 雷門のキックオフで試合再開したが、辺見のスライディングでボールを奪われてしまう。

 

「行け、デスゾーン」

 

 佐久間、寺門、洞面によるデスゾーンが放たれた。だが豪炎寺は迷いなく前線へ走り出した。

 

「豪炎寺、お前は俺が止めると信じて……!天ヶ原、お前が俺を守ったように、俺もこのゴールを……絶対に守ってみせる!!」

 

 必ず点を入れる、だから絶対に止めろ、お前を守って散った彼女に報いる為に。その意思に応えてみせると。

 全身に力が漲る。その力を全て右手に込め、その手を掲げると、巨大な右手が具現化した。そしてその手でデスゾーンを正面から止めた。

 

 この技は円堂守の祖父、円堂大介が編み出した伝説のキーパー技。円堂は大介の特訓ノートを見てその練習していたが、長い事それを果たせずにいた。そして今日、この瞬間、彼は遂に会得した。その名は《ゴッドハンド》

 

「円堂!」

「行くぞ!豪炎寺!」

 

 投げ渡したボールは敵陣にいる豪炎寺に届き、それを空高く打ち上げて、自身も高く飛んだ。

 そして豪炎寺はそのまま身体を左回転させ、その左足に炎が纏う。

 

《ファイアトルネード》!!」

 

 豪炎寺が放ったファイアトルネードは源田を抜き、ゴールへと入った。遂に帝国から1点をもぎ取った。

 反撃はここからだと勢いづいた矢先、帝国学園が試合放棄を宣言。帝国イレブンはバスに乗り込んで帰ってしまった。

 点数はともかく、これで事実上雷門の勝利となった。

 

 


 

 

「そんな事が……良かった」

「ああ!ありがとな天ヶ原!」

「……え?私は何もしてないよ……?それどころか私、何の役にも立てなかった……」

 

 自分も役に立ちたい、円堂とサッカーをしたいとグラウンドに立ったが、結局返り討ちに遭ってしまった。何も出来なかった自分に責任を感じていたが……

 

「そんな事ないさ!お前が来てくれて、俺スッゲー嬉しかった!」

「え……」

「お前が諦めないで帝国のシュートを蹴り返したから、俺も諦めなかった!だからゴッドハンドを使えたんだ!」

 

 ゴッドハンドが何なのか分からないが、役に立てたのが嬉しかった。

 

「……良かった」

「けど残念だよなぁ。豪炎寺もそうだけど、天ヶ原が入ってくれれば俺達勝てるのになぁ」

「そうッスねー。天ヶ原先輩、帝国のシュートを打ち返したんッスから入れば即戦力なのに……」

 

 半田と壁山が残念そうに言う。豪炎寺はユニフォームを返し、グラウンドを去った。愛衣はフットボールフロンティアに出れない為、選手として入部出来ない。

 

「あれ?知らないんですか?」

 

 そこに何故か不思議がる春奈。だがそのセリフの意味が理解出来ないその他全員は首を傾げる。

 

「フットボールフロンティアの規定が改定されて、今年から女子も参加出来るようになったんですよ!」

 

 何と衝撃的な報告で皆が驚愕した。とはいえ、生徒には大会規定など目を通す機会など余程の事がなければ無い。そもそも大会規定の種類が多く、覚えている中学生などまずいやしない。

 春奈はその情報をケータイで提示する。大会ホームページに載っており、これがガセネタではない事が証明された。

 

「って事は、天ヶ原もサッカー部に入れるのか!」

「そういう事です!」

 

 サッカー部に入れる。それを聞いた愛衣は目を見開いた。

 

「天ヶ原、どうだ?サッカー部に入らないか?」

 

 改めて、円堂からサッカー部にスカウトされた。あの時は諦めて断った。だが今は規定という枷もない。

 

「うん……!私もサッカー部、入る……!」

 

 愛衣は迷いなく答えた。その答えを聞いた円堂は大いに喜んだ。

 

「やったああぁぁーーーー!!」

 

 円堂だけではない。他の面々も愛衣の入部に歓喜した。

 

「煩いわよ!静かにしなさい!」

 

 当然、それだけの人数で騒げば保健室の先生に怒られるのは当然である。一先ず愛衣は入部届を書いて、それを秋に渡した。

 

 


 

 

 日が傾き放課後。愛衣は帰る前にグラウンドに訪れていた。そこに置いてある得点表には雷門1-帝国20 と記されている。

 

「本当に、帝国から一点を……」

 

 その瞬間を見てみたかったと、内心ガッカリしていたが今はこの勝利は嬉しい。

 

「おい」

 

 後ろから声を掛けられ、振り向くとそこにいたのは豪炎寺だった。

 

「えっと……あなたは……」

「豪炎寺。豪炎寺修也」

「あ……うん。円堂君から聞いた……。私、天ヶ原愛衣……」

 

 転校して来たばかりの豪炎寺とは面識などなく、何を話せば良いか戸惑う。

 

「怪我はもう良いのか?」

「う、うん……。酷いものじゃなかったから……」

「そうか……それを聞いて安心した」

「……安心した?」

 

 クールな見た目とは裏腹に、他人を思いやる優しい心根の持ち主だろうかと豪炎寺を見る。

 

「えっと……ご、豪炎寺君……」

「サッカー部に入れるんだってな、お前」

「……うん」

「頑張れよ」

「う、うん……」

 

 バッグを片手で背負い、そのまま校門へと向かおうとした豪炎寺に愛衣は問いかける。

 

「どうして……」

「?」

「どうして、サッカー部に入らなかったの?」

 

 帝国学園からゴールを奪うストライカーであれば、間違いなくフットボールフロンティア全国制覇も夢ではない。そんな彼が何故サッカー部に入らないのか、不思議に思うのは当然だろう。

 だが豪炎寺が愛衣を睨むように振り返った。反応から聞いてはいけなかったのではないかと慌てて取り消す。

 

「ごめん……言いたくないよね」

「いや、気に病む必要はない」

 

 そう言うと豪炎寺は帰ってしまった。一人、グラウンドに残った愛衣もそのまま家路につこうと校門から学校へ出た。

 

「私も……点を取りたい……」

 

 帰り道、デスゾーンを打ち返したあのシュートを思い出した。あの時は咄嗟の事でよく覚えていなかったが、帝国学園のキーパー源田に必殺技を使わせる程の威力だった。完成すれば、強力な必殺シュートになるに違いない。

 

 だがそれを必殺技として形にする為にはどうすればいいのか、考えを巡らせるが答えは出なかった。

 

「やっぱり、特訓だよね……」

「おーい!天ヶ原ー!」

「円堂君……って、まだ練習してたの……?!」

 

 キーパーユニフォームを着ている円堂が走って来た。帝国とやりあった直後だというのにまだ練習していたようで、それでいて元気に走っている。

 

「ああ!ゴッドハンドをマスターする為には、特訓あるのみだ!それと、あのシュート凄かったな!」

「シュート?あの、豪炎寺君っていう人の……」

「いや、豪炎寺も凄かったけど……俺が言っているのはお前のシュートだよ!」

「わ、私の?」

 

 無我夢中でデスゾーンを蹴り返した雷のシュートを褒められるとは思わなかったのか照れている。

 

「あ、あれは……本当に無我夢中で……その……」

「だったら!その技を完成させようぜ!そしたらスッゲーシュート技になるぞ!」

「ありがとう……」

 

 円堂に褒められたのはいつ以来だろうか。愛衣は嬉しくなった。こうして円堂と話していると、本当にサッカー部に入ったんだなと改めて実感する。

 サッカー部に入れないと断られてから一年、三年前にサッカーという拠り所をくれた円堂と出会い、一緒に高め合い、やっと同じチームで戦える。

 

 そう考えただけでも、愛衣はあの時のように心がドキドキしていた。

 

「頑張るよ……私」

 

 夕日に向かってポツリと出したその言葉は誰にも聞こえない。ただその口振りには嬉しさで満ち溢れていた。 

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