神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話 作:プラハ
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そこには一人の『大人』が立っている。どこまでもこちらを心配するその視線に揺らぎそうになる。だけどそれはできない。俺はニヤリと笑みを浮かべる。
「俺様の本当の名前は『ミサンスロピスト』、崇高を追い求める組織『ゲマトリア』の構成員。そして……」
そこで一度言葉を止める。何となく気づいていた癖にどうしてそんな顔をするんだ。俺が『悪』でそっちが『正義』なら、もう……。
「お前たちの……『敵』だ」
そこまで言うと俺は前を向いて、走り出した。必死に呼ぶ声が聞こえるが振り返らずに走り続ける。最初からこうなるって分かってたはずなのに、どうして……。どうしてこんなに……。
熱いものが零れていく。視界がぼやけて、足取りがふらつく。それでも構わずに走る。走る。目を背けていた真実から逃げるように。
走る。今になって思えば、あの時からすでに運命は回り始めていた気がする。
止まる。気が付けば、俺は自分の研究室に辿り着いてた。それと同時に俺は地面に座り込んで
――*――
「はぁ……最近のキヴォトスはどうなってんだ?」
風力発電所がシャットダウンし、銃弾があちらこちらで飛び交っている。元々治安はそれほど良くなかったが、ここ最近の治安ははっきり言って『異常』だ。まあ、そんなことはどうでもいいが、風力発電所がダウンしたのは頂けない。おかげでモモイたちとゲームをしている最中に停電によってデータが吹っ飛んだ。
「うるせぇ……」
爆音、銃撃、飛び交う怒号。うるさい。俺は弾幕と爆撃の嵐を平然と歩く。騒ぎを起こしている
「は!? 当たらない!? どうなってんだ!?」
「俺様、おとめ座だからさぁ。ほら朝のテレビでも言ってただろう? 今日のおとめ座はスーパーラッキデーだってな」
「今日の『おはクロ』の占いで運勢1位はうお座だ! おとめ座は5位だろうが! 適当なこと言ってんじゃねえ!」
不良のリーダーと思われる厳つい恰好をした生徒がそう言った。占いとか見るタイプなんだ……と周りの不良たちが生暖かい目を不良リーダーに向けると、不良リーダーは顔を真っ赤に染めて、俺にアサルトライフルの銃弾を放つ。が、銃弾は一発も当たらない。
「くそっ!」
「まあ? 俺様は毎日がスーパーラッキーデーだからなぁ。 まあ、お前らにとっては? 今日は人生で一番不幸な日になるかもなぁ?」
俺がそうやって煽ると、不良たちは怒ったのか突撃してくる。どうして、分からないかなぁ……。これだから『無知』なやつは嫌いなんだ。どうせ俺に勝つことは誰にもできないのにさ。
「ば、化け物……」
ボロボロになった不良たちが地面に倒れ伏している。まだ意識があったのか不良リーダーが恐ろしいものを見るような視線でそう言い放った後気絶した。塵1つとしてついていない真っ白な白衣が風になびく。この体で戦闘行為を行ったのは、初めてだがちゃんと戦えるらしい。一応手加減はしたので、大きなけがはしていないはずだ。
「お前の言う通りだよ。俺様はこの世界で最も強い化け物だ」
ひび割れて隆起したアスファルト、折れた水道管から大量に噴き出している水、倒壊した廃ビル、真っ二つに引き裂かれた戦車。全部俺によって引き起こされた事象だ。俺は自嘲的に笑って、あれ? この惨状の修繕費って誰が払うんだとめちゃくちゃになった景色を見て、俺はそう思った。
「や、やべえぞ……、ユウカに知られたら何て言われるか……!」
ここ最近、キヴォトスで起こっている異常事態の対応に連日連夜追われているせいで、ユウカの機嫌はすこぶる悪い。それこそ、いつ連邦生徒会に殴り込みをかけてもおかしくないと思ったくらいには怒っていた。そんな中で、俺がこれをやったとバレれば、間違いなくキレる。俺の頭の中に角が生えたユウカの姿を幻視して、体がブルリと震える。心なしか気温が下がったような気がするのは気のせいだろうか……?
「えーっと……まあ……あれだ。敗者ってのは勝者の言うことには絶対服従っていうのが世の宿命だ。俺様はモモイにそう教えてもらったからな。恨むなら弱い自分を恨んでくれ」
俺は占い好きの不良リーダーの首に『私たちが全部やりました。責任は全部私たちが取ります』と書いた木の板を首にぶら下げて俺はその場所から後にした。今度戦う時は壊さないように気をつけよう。銃でも作るか? でも、殴る蹴るのほうが速く済むんだよなぁ……。まあどうせ使うならロマンっぽい武器にしよう。2丁ビームガンブレードとかカッコよくないか……? 考えるだけでテンションが上がってきた。帰ったら設計図を書こう……。
――*――
「だ、誰もいねえ……」
教室に入っても誰も来ていなかった。まさかと思って、スマホを見ると、どうやら治安悪化の影響で今日は休校になっているらしい。俺のスマホにその旨が書かれたメールが届いていた。ぜ、全然気が付かなかった……。しかし、学校まで来てしまったのは事実、わざわざ学校まで来たのに、今から帰るのもあれなので、俺はセミナーのほうに向かうことにする。ユウカとノアは登校してきているだろうし、折角なので手伝いでもすることにしよう。
「どうぞー」
部屋のドアを3回ノックするとノアの声が聞こえてきたので、入室する。ノアは少し驚いた表情を浮かべた後、少し困ったような表情になって俺の所まで来た。
「エルナちゃん? 今日は休校ですよ? どうしてここに!?」
「メールに気が付かなくてな! 折角ここまで来たわけだし、手伝ってやろうと思って――ってそんなに触んな! どこにも怪我なんてしとらんわっ!」
俺がそう言うと、というかそう言う前にノアが慌てた様子で俺の体をこねくり回す。ひとしきり俺の体を触診して満足したのか、ノアはほっと安堵の溜息をついた。
「ノア先輩は知らないかもしれないけど、俺様最強だから、怪我なんてしないんだぜ?」
「本当にエルナちゃんが強いんだとしても、私の大切な可愛い後輩なんですから心配になるんです」
「そ、そっか……」
ノアと出会ってからもう『1か月』くらいになるが、俺は未だにノアに慣れない。こうも『そういう感情』をぶつけられると、なんというか調子が狂って仕方がない。でも、不快ではない。このまま一緒にいたら、何というかおかしくなりそうだ……。ユウカの姿を探すが、どこにも見当たらない。
「そういえばユウカ先輩はどこに?」
「ユウカちゃんなら『連邦生徒会』に」
「殴り込みに行ったのか……」
「エルナちゃん? そんな言い方は……」
俺の言葉にノアが苦言を呈すが、俺が間違ってるかと視線を投げかけると、ノアは曖昧に苦笑いを浮かべるだけだった。ここ最近のユウカは色んな処理に追われていた。そこらのチンピラが見れば間違いなく腰を抜かすのではないかと思う程度には迫力が凄かった。でも、とうとう限界に達してしまったらしい。
「ユウカ先輩は大丈夫なのか? その色々と……。俺様助けに行ったほうがいいか……?」
「まあユウカちゃんなら大丈夫です。他の学園の方々も『連邦生徒会』へ向かっているみたいなので、よほどのことがない限りは何もないでしょうし」
「そっか、なら良かった……」
安堵のため息をつく。ひとまずは安心していいだろう。ならせめてユウカが帰ってきたときに、楽ができるようにしてあげるべきだ。俺は膨大なほどに積みあがった資料の山を見る。もはや山なんてレベルではない、山脈あるいは大地と言ってもいい。
「そう言えば、ノア先輩は怪我せずに学校まで来れたのか?」
「私は暫く書類整理に追われていたので、しばらく学校で書類整理をしていたんです……」
ノアが力なく笑う。巧妙に隠されてはいるが、目の下にかなり大きなクマが見える。多分2、3日は寝ていないんだろう……。俺はため息をついて、手を招いてノアを呼び寄せると、ノアは「はーい」と言いながら俺の隣に来た。そして俺はノアの腕を引っ張る。
「わわっ、エルナちゃん!?」
ノアが驚いた声をあげるが連日の疲れからか、全く抵抗出来ないようだ。俺は倒れて来るノアの体を優しく抱き留めると、ソファーで横にさせる。1つ計算外だったのは、思ったよりノアの体が大きかったのでノアの頭が丁度俺の膝の上に載ってしまったことくらいだ。まあ、立たなくても書類はこっちに引き寄せられるし問題はない。
「疲れてんだろ? だから少し休んでな」
「エルナちゃんにだけ仕事をやらせて私が休むわけには……」
ノアが起き上がろうとするので、俺はそれを止める。少し困ったような表情で俺をノアが見上げていた。俺はノアが施しているファンデーションが取れてしまわないように気をつけながら、ノアの目を塞がせる。すると、やっぱり疲れが溜まっていたのか、ノアはすぐに寝息を立てて眠りについた。俺はノアの頭を一撫ですると、書類を手に取って仕事を始める。
「全く……、いっつも思うけどさ。お前らは頑張りすぎなんだよ。少しくらいは休んだっていいのにさ」
ユウカもノアも、ミレニアム学園が大好きだからこそ、頑張っているのだろうが、それは俺だって同じ気持ちだ。そうでなければ、わざわざ手伝いになんて来ない。俺は凄まじいスピードで書類を片付けていく。その中で、あることを考えていた。
「今回の『騒動』……、確実に黒幕がいる……」
ぱっと思い浮かぶのは『ゲマトリア』の仲間たちの顔、こんな騒動を起こして何をするつもりなのか、分からないが、ユウカとノア、それにこのミレニアム学園の生徒たちが大変な目に遭っている。だから『落とし前』はつけさせないといけないとなぁ……?
「カイザーコーポレーションねぇ……」
中でも気になったのはこの会社だ。ここ最近急激に業績を伸ばしている。確か『黒服』が手を貸している企業だったはずだ。何をするつもりなのかは全く分からないが、これ以上好き勝手をするというのであれば……潰す。俺はニヤリと笑みを浮かべる。それなりの軍事力を保持しているらしいが、所詮はそれなりだ。俺の敵にはならないだろう。
――*――
作業を始めてから大体3時間ほど経過した後、ドアが勢いよく開かれて、ユウカが姿を現した。機嫌は悪くなさそうだ。いや、むしろよさそうに見える。ただ、少し変だ。
「ノ~ア~聞いて~……エ、エルナ!? どうしてここに!? 今日は休校の……」
ユウカが大きな声を出したので、俺は静かにとジェスチャーをすると、ノアが眠っていることに気が付いたのか、ユウカは慌てて静かになる。ノアは少しだけ瞼が動いたが、まだ眠っている。ユウカはスマホを取り出して、ノアの寝顔を写真に収めていた。
「簡単に言うと、休校のメールに気が付かなかったから、ついでに手伝いに来た。以上!」
「全く……、そういうのはちゃんと確認しないとダメでしょ? 怪我はしてない?」
「ノアにも聞かれたぞそれ……。俺様そんなに危なっかしく見えんのか……?」
そう聞くとユウカは頷いた。見えるのか……。まあ確かに、この体は身長139センチ、体重27キロとおおよそ戦える人間には見えないというのはあるかもしれないが……。それでも俺は最強だ。怪我なんてするわけがない。そう言うが、ユウカは「それが本当だと仮定しても、心配になるのよ」とノアと同じようなことを言った。本当に仲のいい二人だと俺は笑う。
「で、どうしたんだよ? そんなに機嫌が良さそうにしてさ」
「実は――」
ユウカは笑みを浮かべて今日あった出来事を語り始める。連邦生徒会が新たな部活『連邦捜査部』通称シャーレを立ち上げたらしく、その顧問として、『先生』と呼ばれる『大人』が着任したらしい。『シャーレ』と呼ばれる機関についての説明は省略するが、要は学園の壁を越えて生徒を所属、介入できる機関らしい。何だかんだでユウカはそのシャーレを奪還するための作戦に巻き込まれ『先生』の指揮のもと戦うことになったらしい。
なんでも『先生』の指揮は非常に的確でいつもより戦いやすかったと笑顔で語っている。どうやらユウカはその『先生』とやらをかなり気に入ってしまったらしい。
「ふ~ん……道理で機嫌がいいわけだ。ところで書類は全部片づけておいたぞ」
「うそでしょ!? だってあんなに沢山……。本当に片付いてる……」
ユウカは驚いて、少し大きな声をあげて俺が終わらせた書類を確認し始める。それにしても『先生』……ねぇ。俺は気に入らないと思った。何故なら、ユウカを戦わせたからだ。『大人』っていうのは『子ども』を守るためにあるべき存在だと俺は思っている。『先生』が外の世界から来た人間だから、銃弾一発で致命傷になることはユウカから聞いている。
だとしても、認めることなんてできない。もしもいつかその『先生』とやらの指揮を受けることになっても俺は絶対に従ってなんかやらないと俺は心に誓う。『大人』なんてどうせ、どいつもこいつも一緒だ。その身の内に『欲望』を抱えている。だから俺はそれを白日のもとに晒して、皆の目を覚まさせてあげなければならない。
「ありがとうエルナ~! とっても助かったわ~!」
ユウカが俺の頭を撫でる。何というかいつもよりテンションが高い。これは相当疲れている。今すぐにでも眠らせてあげたいが、ソファーはすでに満員だし、俺自身ノアの頭が膝に乗っているため移動できない。どうしたものかと考えているとユウカが座ったまま眠りについていた。このままでは首を痛めてしまいそうだ……。確か近くに仮眠室があったはずなので、ノアともども運んだほうがいいかもしれない。俺はノアを起こさないように、慎重に、慎重に動く。
「ふぅ……よかった……」
俺は座ったまま眠っているユウカを起こさないよう慎重に抱えて、仮眠室へと運ぶが、そこでとある問題に気が付いた。ベッドが1つしかないのだ。でも、そこそこの大きさがあるので、2人を一緒に寝かせておいても問題はないだろう。俺はユウカを仮眠室のベッドへ横にならせる。
「よしっ! 完璧っ!」
あとはノアを運ぶだけだ。俺はノアを運んで、仮眠室のベッドの上に置いた。すやすやと眠りについている2人を見て俺は笑みを浮かべる。
「お疲れ様。いつもありがとう……」
俺はそう言うと、仮眠室の鍵を施錠して、プレートを使用中に変更する。これで問題ないはずだが、このまま置いて帰るのもどうかと思ったので、俺は二人が起きるまで、セミナー室で2人を待つことにした。SNSを見てみると、すでに『先生』の話題で持ちきりだった。全体の流れを見てみると、概ね好意的な意見が多い。まあ、外の世界から人間を『黒服』が放っておくわけがない。確実に干渉するだろう。
もしも『黒服』の誘いに乗るような『大人』であれば、その時は『■■』として……会いに行こう。
「そんな未来にはさせないでくれよ? なぁ『先生』?」
俺は誰かが撮ったであろう、カメラに目線が合っていないSNSに挙げられた『先生』の写真を見てそう呟いた。