神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話   作:プラハ

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恋と爆破と大悪党

 ここ最近ユウカの様子がおかしい。ポケーっとしているかと思えば急に赤くなって頭をぶんぶんするし、ニヘ〜っと笑みを唐突に浮かべる。はっきり言って異常事態だ……!

 

「ノア先輩も思うだろ? 最近ユウカ先輩の様子が変だってさ……」

 

 ユウカの親友のノアなら何か知ってるのではないかと思って俺はノアをハンバーガーショップに呼び出して聞いてみた。ノアは少し考える素振りを見せた後、こう答える。

 

「恋煩いだと私は思うんです♪」

 

「こ、ここここ恋っ!? ユ、ユウカ先輩が!?」

 

「最近のユウカちゃん前よりも、もっと可愛くなったと思いませんか?」

 

「た、確かに……?」

 

 最近の妙ちくりんな言動はひとまずとして、確かに前よりも魅力的に見える気がする。確かに『恋をすると女性は綺麗になる』という言葉がある。それが本当だと仮定するならば……。

 

「で、でも誰に恋をしたんだよ!?」

 

「それはもちろんシャーレの『先生』だと思います」

 

「や、やっぱり……?」

 

 そう言うとノアは頷いた。シャーレの『先生』……! 俺は中身が氷だけになってしまったジュースをじゅごごと吸い込みながら、ストローを噛む。

 

 最近のユウカは『先生』の話ばかりだ。セミナーを尋ねても不在なことが多くて、どこに行ったのかと聞くと『先生』のところに行ったと聞かされる。

 

「もしかして最近ユウカちゃんが構ってくれないから、エルナちゃんは拗ねてるんですか?」

 

「べ、別にそういう訳じゃ……!」

 

「エルナちゃん知ってますか? ストローを噛む人は『欲求不満』らしいですよ?」

 

「ぶほっ!!」

 

 ノアがいきなりそんなことを言うので俺はむせてしまう。い、いきなりなんてことを言うんだ……! ぺったんこに潰れてしまったストローの先が見える。完全に無意識の行動だった……。これからは気をつけよう……。

 

「そういうノア先輩こそ、ユウカ先輩が構ってくれないから拗ねてるんじゃねぇのか?」

 

「確かに、最近ユウカちゃんが構ってくれないので少し寂しいです。でも、それ以上に今のユウカちゃんはとっても楽しそうなので、その邪魔はしたくないんです」

 

 ノアは笑顔でそう言った。確かに最近のユウカはとても楽しそうだった。変な言動は増えたけど、幸せそうに見えた。本当は俺の頭の中でも『結論』は出ていた。でも、どうしても認められなかった。ユウカが騙されているのであれば止めたけど、ユウカの話を聞く限りではその兆候はない。

 

 ならばせめてと『先生』について調べるために、俺はシャーレにある『先生』の端末にアクセスして『趣味』を調べようとしたが、解析不能なセキュリティプログラムに防がれてしまった。

 

 だから俺が『先生』について知ってることは、ユウカから聞いた事とSNSで書かれていることしか分からなかった。

 

「ノア先輩は『先生』に会ったのか?」

 

「私はまだ『先生』にはお会いしてないですよ」

 

「そ、そっか! それは良かった……! あ! 別にノア先輩まで構ってくれなくなったら寂しいとかじゃねぇから! ノア先輩までぽけぽけしだしたらセミナーが大変なことになりそうで心配なだけだからな!」

 

 一口でそう言うと、ノアは分かってますと笑って頷いた。まあノアがユウカみたいにぽけぽけするとは思えないので、大丈夫だとは思うが……。大丈夫だよな……?

 

「そう言えばエルナちゃん、今日はやたらとそわそわしてるみたいですけど、何かあるんですか?」

 

「お、分かる!? 実は今日これが届くんだ~!」

 

 どうやら楽しみにしている態度が表に出てしまっていたらしい。俺はスマホの画面をノアに見せる。

 

「これはゲーム機……ですか……?」

 

「そうなんだよ~♪ この会社が最初のゲーム機を出してから50周年を記念して作られた特別なスペシャルエディションのゲームガールカラーSP……。100個だけ作った特注品……! その名もゲームガールカラーSP ハーフセンチュリーズアニバーサリースペシャルエディションDX!」

 

 争奪戦に参加するのはとても大変だった……。駄目もとで抽選に応募して当たった時の感動は半端じゃなかった。自分の『運』で手に入れられたというのは最高に嬉しいものだ。オークションではすでに300万円以上の値が付いていて、元の値段の60倍以上だ。ちなみに出品者は転売屋だったので、住所を特定され、ボコボコにされ、家にあったゲームガールカラーSPを含めて転売用の商品を全て奪われてしまったらしい。

 

 「楽しみだなー、楽しみだなー♪」

 

 届くのは夕方ごろ、すでにモモイやミドリ、ユズからおすすめのゲームは聞いてあるし、ノアと会う前に全て購入済だ。明日は土曜日なので、届き次第日曜日の夜までぶっ通しでゲームをプレイするつもりだ。どんな冒険が待っているのか、今からとても楽しみでたまらない。

 

「ノア先輩、今日は色々と話とか聞いてくれてありがとな」

 

「いえいえ、私もエルナちゃんと一緒にお話しできて楽しかったですから」

 

 席を立とうとしたところで少しと奥のほうから爆発音が響いて来る。ここ最近のキヴォトスでは慣れた……いや慣れてしまった状況のせいか皆一様に落ち着いている。ため息が漏れる。遠くからはサイレンの音と銃撃の音が鳴り響いていた。

 

「ノア先輩、家まで送ろうか?」

 

「ありがとうございます。でも、私は大丈夫ですから。こう見えて私も結構やるんですよ?」

 

 ノアが首を横に振る。俺とノアは店の前で別れの挨拶を交わして、それぞれの家へと向かって行く、外に出ると、丁度高速道路がある方角からもくもくと黒い煙が上がっていた。

 

 ――*――

 

 「早く届かないかなー♪」

 

 家に帰った俺はその時を待っていた。お届け予定は18時から20時の間。現在時刻は18時30分ごろ、そろそろ届いてもおかしくない。買ったゲームの説明書を見ながら、俺はその時を待つ。そして、来訪者を知らせるベルの音がする。

 

「来たー!」

 

 俺はうきうき気分で玄関モニターを確認する。配達員の人だ! 俺はエントランスのドアロックを解除して、配達員の人が自分のいる部屋の前に着くのを待つ。セキュリティを考えて、そこそこいいマンションに住んだのは失敗だったかもしれない。この時間がこんなにも待ち遠しいなんて……! ドアの前で俺は待機する。ピンポンの音だ!

 

「誠に申し訳ありませんでしたー!」

 

 ドアを開くと、こちらに向かって土下座をする配達員の人がいた。何が申し訳ないのか聞くために俺は配達員の人の頭を上げさせる。すごい嫌な予感がする……!

 

「実はお客様への荷物を配送するトラックが爆破されてしまいまして……、その荷物が……木っ端みじんに……」

 

「え……?」

 

 俺の手から印鑑が滑り落ちる。ば、爆破……。木っ端みじん……? 現実が受け止めきれない……。

 

「荷物の分は私共のほうが負担いたしますので……」

 

「爆破ってどういうこと!? っていうかいったい誰がそんなことを!?」

 

 配達員の人の肩を揺らして尋ねるが、誰がやったのかは分からないらしい。弁償とか正直どうでもいい。も、もしかして今日ハンバーガーショップから出た時に聞こえた爆音って、トラックが爆破された時の音だったのか……!? その後俺はどうしたのか分からないが、気が付けば1時間ほど時間が過ぎていて、配達員の人はいなくなっており、傍らには商品代金を弁償するための口座情報を記入する紙が残されていた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁん! ひどい! ひどいよ!」

 

 折角、48時間分のスケジュールを組んでいたのに、それが丸つぶれになってしまった。悲しみに明け暮れていると、ノアから『楽しみにしていたものは届きましたか?』とメッセージが来たので俺は『爆破された』というメッセージと泣いている猫のスタンプを送ると、すぐにノアから電話がかかってきた。

 

「エルナちゃん! 大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫じゃない……。僕のゲームガールカラーSPが爆破……、楽しみにしてたのに……、倍率1000倍の抽選にも勝ったのに……、すっごい楽しみだったのに……」

 

 たどたどしくも俺はノアにゲームガールカラーSPを積んだトラックが爆破されてしまい、ゲームガールカラーSPが木っ端みじんにされたことを話した。ノアは俺を優しく慰めてくれたので、哀しみが薄れて少しずつ怒りがふつふつと沸き立ってくる。

 

「許さない……! 絶対に報いは受けてもらう!」

 

「エ、エルナちゃん、落ち着いてください」

 

「落ち着けるもんか! 世界に100個しかないうちの1つが永遠に失われたんだ! もう絶対手に入らないのに……」

 

 ノアがそう言う。確かに報いを受けさせたところで、ゲームガールカラーSPが戻ってくることはない。それでもそうしないと気が済まない……。そう言えば、モモイが言っていた『頭はクールに心はホットに』と……。俺は息を大きく吸って吐いた。うん、落ち着いた。

 

 「ありがとうノア先輩、おかげで落ち着いたよ。じゃあ俺様これからちょっとやることがあるんで、じゃ」

 

 「エルナちゃんまっ――」

 

 ノアがまだ何か言っていたが、構わずに切る。ノアから電話がかかってきているが、今そんなことをしている場合じゃない、一刻も早く下手人を特定して、罪の重さを知らしめる……! 俺は特注品のノートPCを取り出して、高速道路付近の監視カメラの映像記録を見るためにデータベースにハッキングを行う。

 

「ふふふ、駄目じゃないか。こんなあまあまなセキュリティじゃ……」

 

 次々と映像を見ていく。しかし、下手人の姿は確認できない。映像を見る限り、トラックは真横から爆破されている。その時の爆発をトラックの荷台は耐えていたが、その衝撃で扉が開き、恐らくは俺の荷物が後ろから来るトラックに踏みつぶされたのが見えた。思わず空き缶を握りつぶす。いや、あのトラックの運転手は悪くない……。そもそも何の目的があって、あのトラックが爆破されたのか、積み荷のリストを確認してもそれらしきものは何もなく、積み荷を奪いに来た存在もいなかった。

 

 「一体どういうことだ……」

 

 煮詰まってきたので、少し休憩にしよう。スマホの画面を点灯させると、ノアから通知が20件くらい来ていた。メッセージの内容はどれもこちらの身を案じるものだったが、最後に『もしかして、何か悪いことをしようとしてるんじゃないですか?』とメッセージが来ていたので、俺は『そんなことしてない』と返す。ノアの質問は未来系の質問で、俺がハッキングをしたのは過去のこと、つまりノアの発言に対する回答として嘘にはならないのだ。

 

 数泊置いてノアからメッセージが返ってくる。

 

『もしかして、もう悪いことしちゃったとかじゃないですよね?』

 

 俺は既読だけつける。嘘はつきたくないので、どう返そうか迷っていると……。

 

『なるほど』

 

『月曜日、放課後になったら私のところに来てくださいね?』

 

「なんでばれたんだ……? まさか盗聴あるいは盗撮か……? それはないか……。つけられてたら俺様絶対気づくし」

 

 この部屋のセキュリティは万全だ。何者であっても侵入することは不可能だ。それに俺はその手の機械類には敏感だ。つけられていれば普通に気づく。というか、何度か取り付けられていたことがあったので、それはきちんと『お礼』をしている。まあ、ひたすらに肉の焼ける音を垂れ流しにしただけだが……。ふふふ、盗聴しようとしたやつはさぞかしお腹を空かせたことだろう……! っと、そんなことを考えている場合じゃない。

 

『返事はまだですか?』

 

 ノアからさらにメッセージが届く。俺は反射的に『はい、分かりました。必ず行きます』と返信した。……当日までに何とか誤魔化す術を考えておこう……。ノアは淡々かつ着実にこちらを追い詰めて来るタイプだ。予め完璧な回答を用意しておけばどうにかなる……はずだ……。どうにかなるかなぁ……。

 

「えーいそんなことを気にしたってしょうがないだろっ! もうやってしまったものは仕方ねえ! こうなったら最後までやるぞ!」

 

 俺はさらに監視カメラの映像を取得する範囲を広げていく。時間だけが過ぎていくなか、俺はついに下手人のもとへとたどり着いた。

 

「…………、そんなことってあんのか!?」

 

 俺がたどり着いた真実は偶然によって引き起こされた出来事だった。下手人の正体はゲヘナ学園の4人組の生徒たちだった。と言っても引き金となったのは高速道路から200メートルほど離れた場所で、その4人組は戦っていた。そしてそのうちの1人が投げた爆弾が爆風によって飛ばされ、偶然それが俺のゲームガールカラーSPを積んだトラックに命中したというわけだ。悪意を持ってやったのであれば、相応の対処をするつもりだったが、全て偶然によって起きたことだ。

 

 でも、せめて1人につきデコピン1回くらいは許してほしい。というかそれくらいはやらせてほしい。そう思った俺は例の4人組について調べ始める。

 

「便利屋68(ろくじゅうはち)! 覚えたぞその名前……」

 

 ノートPCに表示された便利屋68(ろくじゅうはち)のメンバーたちが移った写真を見ながら俺は笑う。情報によると奴らは所謂金さえもらえればどんな仕事でも請け負う何でも屋で、『真のアウトロー』を目指しているらしい。『真のアウトロー』というのが何を意味するのか分からないが、どことなくいい響きだ。

 

 俺はニヤリとほほ笑んで、準備を進めていく。追跡装置はすでに仕込んである。あとは装備の準備が完了次第追いかけるだけだ。待っていろ! 便利屋68(ろくじゅうはち)! 世界一痛いデコピンを喰らわしてやるからな……。

 

 なお、この後も何度も便利屋68(ろくじゅうはち)を追いかける羽目になること、そもそも名前の読み方を間違えていることを俺はまだ知らない。

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