神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話   作:プラハ

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大悪党VS悪の組織の構成員

 「はっはっは、準備完了だ!」

 

 夜通し準備を続け、時刻はもう15時過ぎだ。と言っても用意していたものは武器ではなく、移動手段だ。現在の便利屋68との距離は直線で300キロ以上離れている。足で歩いて追いかけることも不可能ではないが、それはあまりにも効率が悪すぎる。乗り物を作っても、渋滞などに巻き込まれる可能性もある。なら、どうすればいいか? 答えは簡単だ。空から行く。空からであれば、ある程度の高度であれば遮るものは何もない。

 

 「『さよならダイエットくん』起動」

 

 体が宙に浮かんでいく。『さよならダイエットくん』はざっくりと説明をするのであれば体重を0にする機械だ。風船が宙に浮かぶのは、風船の中にあるヘリウムが空気よりも軽いからだ。つまり、自分の体が空気よりも軽ければ、体は宙に浮かぶということだ。空を歩く方法に『右足をあげて、それが落ちる前に左足をあげる。それが落ちる前にもう一度右足をあげる』これを繰り返すという方法があるが、それよりはよっぽど現実的な方法だ。

 

 「ふふふ、今行くぞ……」

 

 窓を開けて、外に出る。そして空を思いきり踏んで、宙を翔けていく。思いきり宙を踏むのを繰り返して、どんどんスピードを上げていく。この分であれば、16時頃にはたどり着けるだろう。ただひたすらに目的地へと真っすぐに翔けていく。

 

 ――*――

 

 それはある一通の手紙から始まった。アビドス高等学校から来た救援の依頼。9億という途方もない借金を背負い、自分たちの学校を守るために戦う少女たちが奇跡を起こす物語。あの日々のことを私は今でも鮮明に覚えている。あれは、セリカを救出した次の日、ラーメン屋で出会った便利屋68が傭兵集団を率いてアビドス高等学校を襲撃してきた日のことだ。あの日のことは特に印象に残っている。なにせ()()()()()()()()()()()()んだから忘れるわけがない。

 

 「誰の差し金? ……いや、答えるわけないか……。力尽くで口を割らせるしか」

 

 「ふふふ、それはもちろん企業秘密よ? 総員攻撃!」

 

 一触即発の空気の中それは舞い降りてきた。

 

 「っ……! 何か来る!」

 

 「あれは人……!?」

 

 凄まじい音とともに大量の土煙が舞い上がる。

 

 「な、何なのよ!?」

 

 土煙が晴れるとそこには1人の少女がいた。真っ白なツインテールを靡かせて、ルビーのような真っ赤な瞳でこちらを見つめる人形のような少女がそこに立っていた。

 

「さて、てめえらが便利屋68(ろくじゅうはち)の陸八魔アル、浅黄ムツキ、鬼方カヨコ、伊草ハルカで合っているな?」

 

「え、ええそうよ! あなたは何者なの!?」

 

 アルの言葉を聞いた少女はギザギザした歯を覗かせてニヤリと微笑んだ。

 

 「おいおい、これから俺様に倒される相手に名乗る必要があんのかよ?」

 

「なんですって!? ふ、ふん! この数を前によくもそこまで言えたものね! しかも丸腰だなんて舐められたものね! いいわ! 身の程を教えてあげる!」

 

「ふーん、どうせ無駄だと思うけどやってみなよ」

 

「総員あの子目掛けて撃ちなさい!」

 

  アルの号令で一斉に弾丸が発射される。少女が弾幕の嵐の中で砂煙に包まれていく。

 

「総員止め! どう? これで思い知っ――無傷!? 一体どういうことなの!?」

 

「あんたらが動かない的に当てられねえほど下手くそだったってだけの事だろ? さて、俺様が何でここに来たか話してなかったなぁ?」

 

 砂ぼこりの中から現れた少女は全くの無傷だった。純白の白衣には汚れ1つついていない。少女は相手の狙いが悪いと言っていたが、相手は傭兵だ。この距離で外すことなんてありえない。つまり、あの少女が無傷でいられたのは何か理由があるということだ。

 

「俺様はてめぇらにデコピンをしに来た」

 

「は?」

 

 空気が固まる。この展開で『デコピン』というワードが出てくることは完全に予想外だったので、私も含めみんなその言葉を理解するのに時間がかかっていた。

 

「てめぇらまさか揃いも揃って誰もデコピンを知らねぇのか……?」

 

 少女は困惑していた。

 

 ――*――

 

 デコピンをしに来たと言ったら何故かみんな動きを止めてしまった。もしかしてデコピンを知らないのだろうか……?

 

「そういうわけだ便利屋68(ろくじゅうはち)覚悟の準備は「ちょっと待ってちょうだい!」何だよ?」

 

「私たちは便利屋68(ろくじゅうはち)じゃなくて、便利屋68(シックスティーエイト)なのだけど」

 

「それ……今言わなきゃダメか……?」

 

「当たり前でしょ!」

 

 さっきまでのピリピリした空気が霧散して、ゆるーい感じの空気感が広がっていく。別にいいだろ読み方なんて! 読み方とかどこにも書いてなかったし! あと何で訂正したお前が1番オロオロしてるんだよ!

 

「そういうわけだ便利屋68(シックスティーエイト)覚悟と準備は出来てるか?」

 

「さ、最初からやり直した……」

 

「クフフ☆」

 

「ふふふ、あなたのほうこそ今から私たちに倒される準備は出来てるのかしら?」

 

 外野がうるさい。周囲を見渡すとアビドス高等学校と書かれているプレートが目に入った。ここアビドスじゃねーか!  よりにもよって何でアビドスなんだ……。知ってれば絶対来なかったのに……! っていうかアイツらの隣にいる『大人』あれが『先生』か……。

 

「俺様は俺様で好き勝手に戦うからあんたらも好き勝手にしたらいい」

 

「ちょっと待ちなさ――って速っ!」

 

 俺はアビドス高等学校の生徒たちにそう言うと、傭兵集団の方へと突撃した。銃弾は俺の方へ飛んでくるが、銃弾は俺に届く前に消滅する。1人で戦うなら逸らすだけでいいのだが、一応共闘という形を取っている以上、流れ弾が当たる可能性がある。

 

 逸らすだけならエネルギーはそんなに消費しないが消滅させるのはエネルギーを大量に消耗する。短期決戦で決めないと……!

 

「社長! あの子の手品が分かった! 私たちの撃った弾、あの子に当たる直前に消えてる!」

 

「な、なんですって!? ま、まさか……」

 

「ご明察。俺様が銃弾に当たらなかったタネは超電磁装甲、分かりやすく言うとバリアってことだ」

 

 どうやら向こうにはそれなりに頭が切れるブレインがいるらしい。まさかこんなに早くタネに気がつくとは中々やるものだ。でも、それを見抜いたところで勝てる道理はない。

 

「タネが分かればどうということはないわ! ようは使えなくなるまで撃てばいいだけだもの!」

 

 その通りだ。この装備の弱点はエネルギー切れがあること。ただしこの装備は常時展開型では無く任意展開型、銃弾が当たる瞬間だけ展開しているためエネルギーのロスは極限まで少なくしている、まあエネルギーが切れるよりも全員倒すほうが圧倒的に速いだろう。もう1つは――。

 

「くらえ! バ〜ン! って嘘ぉ!?」

 

「爆弾ってのは爆風よりも早く動けばなんの問題ねえんだよ!」

 

 爆風や爆熱などだ。だがこれは爆風よりも早く動ける俺にとって何も問題にならない。あとはゴム弾など非電磁製の銃弾なんかは防ぐことが出来ない。最後にもう1つ。

 

「と、とりあえず撃ちます!」

 

 至近距離で撃たれること。口径や火力も影響してくるが最低でも50センチは離れていないとバリアで銃弾を消し切る前に体に到達してしまう。まあ近づかれなければどうってことないし、相手がいつ撃ってくるかが把握できる俺に弾が当たることはない。

 

 便利屋68はメインディッシュだ。まずは周りの奴らから片付けよう。俺は懐に入り込んでは吹っ飛ばし、懐に入り込んでは吹っ飛ばしを繰り返す。

 

「何アイツ!? 世界間違ってるって! 無双ゲーじゃないんだから!」

 

「あんなのいるなんて聞いてない! これじゃ割に合わない!」

 

 傭兵集団が4分の3程倒されたところで、恐れをなしたのか彼女たちは退散していく。俺の狙いは初めから便利屋68なので、わざわざ追いかける必要は無い。

 

「ちょっと! どういうことよ!? 帰っちゃだめ!!」

 

 陸八魔アルが去っていく彼女たちに声をかけるが、一切振り返ることなく彼女たちは去っていった。びゅーっと風が吹いたような気がした。

 

「さて……、どうする?」

 

 俺は陸八魔アルの肩に手を置いて笑顔で尋ねる。ギギギ……と壊れた機械みたいにこちらを振り向いて、少しだけ顔を青くしている陸八魔アルと目が合った。

 

「くっ……! 私の部下に手は出させないわ!」

 

「へぇ、じゃあ他の奴らの分も合わせて4回受けるってことでいいんだよな?」

 

「ええ! その通りよ! さあ来なさい!」

 

「分かった。陸八魔アル、自分の大切なものを守ろうという強い意志に敬意を評して1回で済ませてやる」

 

 そう言うと、陸八魔アルの顔がぱあっと明るくなる。俺は何度がデコピンの素振りをすると、びゅおんびゅおんと風を切る音が鳴った。指を構えて陸八魔アルの額へと近づけると顔が真っ青に染まっていく。

 

「ちょ、ちょっと待って! おかしいでしょ!? 指から出ていい音じゃないわよ!」

 

「動くなって! さっきの覚悟はどこにいったんだよ!」

 

「い、いやよ! だって絶対痛いなんてレベルじゃ済まないじゃない!」

 

 陸八魔アルは上を見上げて俺のデコピンから逃れようとする。身長差があるせいで指が届かない。

 

「わ、分かった。じゃあ小指にするから、大人しくしてくれ!」

 

「そう言って直前になって指を変えるんでしょう!? 私には分かるもの!」

 

「変えねぇよ!」

 

「絶対よ!?」

 

「ああ、じゃあ……いくぞ?」

 

 ようやく覚悟を決めたのかこちらをまっすぐ見つめる陸八魔アルと目が合った。俺は小指に力を込めて、それを親指でせき止める。そして、それを一気に解き放った。ビュンッと風切り音が鳴った直後、バッチーンという音が周囲に鳴り響く。

 

「うわ〜痛そ〜。あれ絶対痛い奴だよ〜」

 

「アル様ぁ……!」

 

 陸八魔アルは額を抑えて蹲る。しかし、苦悶の声はあげなかった。大した奴だ……。いくら小指だったとはいえ、声もあげないとは……。

 

「あなた名前は……?」

 

 陸八魔アルが立ち上がって俺に名前を聞いてくる。

 

「俺様の名前は栄道エルナだ。よーく覚えておくんだな!」

 

「ええ、そっちこそ覚えておきなさい! 栄道エルナ! この借りは必ず返させてもらうわ! 退却するわよ!」

 

 そう言うと便利屋68は凄い逃げ足で去っていった。さて、俺も目的を果たした事だし、帰るとしよう……。はあ……ゲームガールカラーSP……。まあ、最悪どこかのゲームショップで買うとしよう……。

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

 肩を掴んで止められる。後ろを振り返ると、非常に怒った顔をしている、黒い髪の猫耳娘がこちらを見ていた。

 

「何か用? お礼なら別にいらねえけど、俺様が好き勝手にやったことだし」

 

「何か用かですって……、あれを見なさいよ! あれを! どうしてくれるのよ!」

 

 黒い髪の猫耳娘が指をさした方向を見ると、そこには3メートル弱のクレーターが出来ていた。周囲のアスファルトはひび割れて、かなりひどい有様になっている。多分、俺が空から登場したときに出来たものだろう。

 

 「あ、あー……、襲撃した奴が悪いってことにならない?」

 

 「なると思う?」

 

 「な、ならない……」

 

 「じゃあ、どうすべきか分かるわよね?」

 

 黒い髪の猫耳娘は笑顔で俺に聞いて来る。恰好をつけて空から飛び降りて来るなんてインパクトのある登場を選ぶべきではなかった……。

 

「直してくる……」

 

 俺は自分が作ったクレーターの元へと向かって端末から修復に必要なものを送るようにと指示を送る。お金で済ますことも考えたが、この場所に工事業者が現れて修復を行うよりも、俺が作業したほうが圧倒的に早い。この程度なら22時には作業が完了するだろう。早速作業を開始しようとしたところで、声がかけられる。

 

「いやぁ~さっきは助かったよ~。私は小鳥遊ホシノだよ~」

 

「小鳥遊……ホシノ……!?」

 

 思わず驚愕の声をあげてしまう。『黒服』が目をつけているキヴォトスで現在最も強い『神秘』を宿している生徒、見た目はゆるい雰囲気でにこやかにほほ笑んでいるが、瞳はこちらを見極めるように鋭くなっている。下手なことを喋れば、碌なことにはならないだろう。

 

「……私のこと知ってるの?」

 

「ま、まあ名前を聞いたことがあるくらいだな。聞いたことがある名前が聞こえたからつい驚いちまっただけだ」

 

「ふ~ん、ミレニアムの子に名前を知られてるなんて、おじさんびっくりだよ~」

 

 空気が少しずつ重たくなっていく。正直な話、あの反応をしてしまった以上、誤魔化すことは無理だったらしい。

 

「言いたいことがあるならはっきり言ったらどうなんだ? お前は私たちの敵なんですか? ってさぁ……」

 

 俺が小鳥遊ホシノに対して感じている感情、これは『同族嫌悪』みたいなものだろう。だけど、選んだ道が違う。どうやら俺にはそれが気に食わないらしい。一触即発の空気の中、俺の身体が柔らかいものに包まれた。

 

「喧嘩はダメですよ〜っ!」

 

「止めて欲しいならあっちに言えよ! っていうか離せ〜!」

 

 じたばたともがくがかなり完全に体が浮いている状態なので抜け出すことが出来なかった。

 

「おじさんはあんまり戦いたくないからね〜」

 

「何言ってんだてめー! 何で俺様が喧嘩売ったみてぇになってんだよ!!」

 

「も〜! 『女の子』がそんな言葉遣いしたらめっ! ですよ!」

 

 体の動きを止める。何と言うか改めて『女の子』扱いをされてしまうと結構落ち込む……。というか、あっちは自分のことおじさんって言ってるけどそれはいいのか……? おじさんとは男性に使う言葉のはずだ。

 

「あの〜、すっごい体重が軽いみたいなんですけど、ちゃんとご飯食べてますか?」

 

「……? 餓死しない程度には食べてるけど」

 

 俺は食事自体は嫌いじゃないが、研究の方が大事なため、しょっちゅう食事を取らないことが多い。ミレニアム学園に通う前は餓死寸前位まで研究し続けることは割と日時茶飯事だった。まあ今となっては平日は最低でも1回は食事を取っている。

 

「それって1週間にどれくらいですか?」

 

「最近は1週間に5回くらいだけど、何か問題でもあるのか?」

 

 そう言うと俺を抱きしめていた少女は俺を降ろすと、顔を引き攣らせた後、俺の身体をまさぐり始めた。小鳥遊ホシノ含め、他のアビドスの生徒たちも心做しかドン引きしているように見える。

 

「問題しかないですよ〜!」

 

「もしかして食べるお金に困ってるの?」

 

「別にお金に困ってる訳じゃねえぞ? 単純に食べるのって時間が掛かるだろ? その時間を無駄にしたくないってだけ」

 

 例えば1回の食事に掛かる時間を10分とするとそれを1日2回、それが1年間続くとした場合、その時の時間の無駄はおおよそ20時間となる。それだけの時間があればどれだけ研究が進められるか……。そう力説すると呆れたような視線を向けられた。

 

「それじゃいつか病気になっちゃいますよ!?」

 

「俺様は天才で最強だから別に問題ないし……。やっと来た……、俺様さっさと修復作業終わらせたいんで、それじゃ」

 

 修復に必要な物資が届いたので、俺は修復作業を開始しようとすると、横から手が伸びてきて、物資のひとつを奪われてしまった。

 

「私も手伝いますから早く終わらせちゃいましょう!」

 

「別にお前の手なんて借りなくてもいい。俺様1人でやった方が早いし」

 

「私はお前って名前じゃないですよ〜」

 

「いや、俺様名前知らないし」

 

 そう言うと少女はそう言えばそうでしたと納得したような表情になる。俺は物資を取り返そうと手を伸ばしたが、少女は手を上にあげてしまっまたので、手が届かない位置に行ってしまった。

 

「私はアビドス高等学校の2年生、十六夜ノノミでーす☆」

 

「ミレニアムサイエンススクール1年生栄道エルナ」

 

「エルナちゃん、これからよろしくお願いしますね!」

 

 ノノミはそう言うと笑顔で作業を始める。すると他のアビドスの人たちもこちらに向かってきた。

 

「ん、私は砂狼シロコ2年生、私も手伝う」

 

「はぁ……しょうがないわね。私も手伝うわ。あと私の名前は黒見セリカよ」

 

「私は奥空アヤネです! 私にも手伝わせてください!」

 

「じゃあおじさんは部屋で眠ってこようかな〜」

 

「ホシノ先輩も手伝ってください!」

 

「何で……?」

 

 理解不能だ。この惨状は俺の手で起きたものなのに何で手伝うだなんてことを言うのか分からない。それこそ終わるまで適当にどこかで休んでいればいいし、不安なら終わるまで監視でもしてればいい。

 

 「借りを返したいからじゃないかな? あ、ちなみにわ「知ってる。シャーレの『先生』だろ? あんたの事はユウカからよく聞いてるからな」…………私も手伝うよ」

 

「正直私たちじゃ危なかったかもしれないし、ここは素直に受け取りなさい!」

 

「ふんっ! せいぜい俺様の足を引っ張るなよ!」

 

 そうして、アビドスの人たちと始めた修復作業が始まって22時に終わると思っていた作業は19時で終わった。

 

「じゃ、俺様帰るから」

 

「この時間だともうミレニアム自治区までの電車ってないですよね? そこからどうするんですか?」

 

「そんなの歩いて帰るに決まってるだろ?」

 

「いやいや! どんだけ距離あると思ってるのよ!」

 

 今日の戦いの影響でエネルギーをかなり消費している。『さよならダイエットくん』で行けるのはせいぜい100キロくらいまで、残りの200キロは歩いて帰ることになる。まあ走ればそんなに時間はかからないだろう。

 

「あの……宜しければ泊まって行きませんか? さすがに歩いて帰るのは無理があると思うんですが……」

 

「無理じゃねぇよ! 高々200キロとかなんざ余裕だっての!」

 

「私たちと一緒にいるの嫌……ですか?」

 

 悲しそうな顔でノノミがこっちを見てくる。俺はこの場所に『黒服』が何かをしようとしていることを知っている。だから俺はこれ以上干渉すべきでは無い。裏切りと判断されればどうなるか分からない。

 

「まあまあ、そんなこと言わずに泊まっていきなよ〜」

 

 ホシノの俺を見る視線はいつの間にか険しく無くなっていた。このわずか数時間で一体どんな心境の変化があったのだろうか? まあいい、すべきことはもう終わったんだから逃げてしまえばいいだけだ。

 

「今逃げようとしてたよね~?」

 

 ホシノに腕を掴まれる。そしてあっという間に俺は包囲されていた。どうやらどう足掻いても避けられないらしい。まあそれなら寝静まったタイミングか、トイレに行くふりでもして、その時に抜け出そう。

 

「そこまで言うなら泊ってやるよ。それでいいか?」

 

「皆でお泊り会だなんて楽しそうですね~☆」

 

「ん、私が案内する」

 

「別に手なんて握んなくたって逃げないっての」

 

 シロコに手を握られて、俺はアビドス高等学校の中を案内された。その後、柴関ラーメンという二足歩行で喋る柴犬がいるラーメン屋に連れていかれてラーメンを食べさせられたり、ここに来た経緯を話すことになったりと帰ることが出来ないまま時間だけ過ぎていった。そして時刻は深夜2時、皆はもう眠っているだろう。俺は物音を立てないように起き上がると、外へと向かって行く。書置きは残しておいたので、何か言われることもないはずだ。

 

「やあやあ、そろそろ来ると思ってたよ~。おじさんと少しお話しない?」

 

 校門まで来たところで、ホシノがそこに立っていた。

 


 

おまけ

 

「そういえば、エルナちゃんはどうしてあの子たちを追いかけてきたんですか?」

 

「俺様が楽しみにしてたコレを奪われたから……」

 

「何かと思えばゲーム機じゃない……。こんなもののためにわざわざここまで来るなんて……」

 

「こ、これはゲームガールカラーSP ハーフセンチュリーズアニバーサリースペシャルエディションDX!?」

 

「先生知ってるの?」

 

「限定100台しか生産されていないレア物中のレア物だよ。まさか、倍率1000倍を勝ち抜いて抽選に当たった人が本当にいるなんて……」

 

「わぁ~、エルナちゃんは運がいいんですね~」

 

「運が良かったらここまで追いかけてきてないっての! 積んでたトラックが爆破されたんだよ! 爆破! とんでもなく貴重な品だから絶対二度と手に入らないし……。オークションが300万くらいの値がついてたけど、多分もっと上がると思うし……」

 

「詳しく聞かせて……!」

 

「何でこの人こんなに急に目を輝かせてんだよ!?」

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