神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話   作:プラハ

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GWが終わってしまった……。


羽ばたきが変えたもの

 ついにこの時が来てしまった。

 

 『ホシノ先輩がカイザーPMCに拐われた。協力して欲しい』

 

 シロコから届いたメッセージを見て、俺は迷っていた。協力するということは自分の所属する組織を明確に裏切ったことになる。それで俺だけに報復が来るのであれば、別に構わない。でも、それが他の人に向けられてしまったら……。それに『正体』だってばれてしまうかもしれない。そう思うと怖い。怖くて震えそうになる。相手はたった一日だけ過ごしただけの関係性なのに、どうしてこんなに迷っているんだ……!

 

 そして気が付けば俺は『ごめん、行けない』とメッセージを送っていた。

 

「あ……」

 

 取り消そうと思ったが既読になってしまった。

 

『ごめん。急にこんなこと言って』

 

『私たちなら大丈夫だから』

 

『そんなに気にしないで』

 

 シロコから立て続けにメッセージが届く。心の中が罪悪感で満ちていく。ここで文句の1つでも言ってくれれば良かったのに、どうして……。

 

 「何が天才だ! 何が最強だ! やっぱりこんな力なんて何にも役に立たないじゃないか……!」

 

 ベッドの上で膝を抱えて座り込んだ。結局のところ俺は何も変わってなんかいなかった。自分が一番大事で『最低』な存在だ。時間だけが過ぎていく。そして気が付けば朝になっていた。

 

「学校……行かないと……」

 

 ふらふらと立ち上がる。いつもと同じように過ごすだけだ。なのに体が重くてしょうがなかった。

 

 ――*――

 

 「お待ちしておりました、先生。あなたとはこうして、お話してみたかったのですよ」

 

 そこには不可解な存在がいた。真っ黒なスーツを身に包み、右目は発光しており、そこから顔全体にひびが入っている。異形の人形。

 

「まずは、はっきりさせておきましょう。私たちはあなたと敵対するつもりはありません。むしろ協力したいと考えています」

 

「協力……?」

 

「私たちにとってアビドスなんて小さな学校は、全くもって大した問題ではありません。ですが先生、あなたは別です。私たちはあなたと敵対することは避けたいのですよ」

 

「お前たちは何者だ?」

 

「おっと、そういえば自己紹介をしていませんでした。私たちは貴方と同じキヴォトス外部の者。ですが、あなたとはまた違った領域の存在です。私たちのことは『ゲマトリア』とお呼びください。そして私のことは『黒服』と、この名前が気に入ってましてね」

 

 『黒服』は不気味な笑みを浮かべる。

 

「私たちは、観察者であり、探究者であり、研究者です。あなたと同じ『不可解な存在』だと考えていていただいても問題ございません。一応お聞きしましょう。私たちと協力するつもりはありませんか?」

 

「断る」

 

 即答した。『黒服』は少しだけ残念そうな雰囲気を醸し出していた。本気でこの提案に乗ると思っていたのだろうか? だとすると馬鹿げている。

 

 絶対にこいつらと協力するなんてありえない。そうして私と『黒服』の舌戦が始まった。『黒服』は何度も諦めるよう、アビドスから手を引くように促してくる。だけど、私はそれを否定する。それが『黒服』には理解できないらしい。何故、取る必要がない責任と取ろうとするのかと『黒服』が聞いて来る。だから、私は精いっぱい胸を張ってこう答えた。

 

「それが『大人』のやるべきことだから」

 

「ああ、そういうことですか。あなたにとって『大人』とは『責任を負う者』だと? 理解できません、あなたはキヴォトスの全てを手に入れられるチャンスがあった。だと言うのに、それを捨てるなんていう無意味な選択を、何故!?」

 

 今、ようやく分かった。こいつらとは絶対に相容れないと。『黒服』はホシノを助けたいかと聞いてきた。そしてあっさりとそれを教えた。だったら、もうこいつから聞くべきことはない。立ち去ろうとすると『黒服』から声を掛けられた。

 

「やはり『彼女』の言う通りになってしまいましたか……」

 

「『彼女』……?」

 

「ええ、『彼女』は言っていました。私たちとあなたは絶対に相容れない存在だと。どう事態が転がっても敵対する以外に道はないとね。『先生』、あなたがそうである限り、あなたは必ず『彼女』と会うことになるでしょう。いや、もう会っているかもしれませんね。ただ、1つだけ貴方に忠告を『彼女』とは戦わないことをお勧めします。…………ゲマトリアはあなたのことをずっと見ていますから」

 

「帰る」

 

 帰る途中、『黒服』の言った『彼女』という存在がずっと頭の中に残っていた。いつか会うことになるということは『彼女』は『生徒』だということなんだろうか? 私は首を横に振ってその考えを放棄する。私は『大人』だ。例え『彼女』が相容れない存在(ゲマトリア)だとしても、私は絶対に諦めない。何度だって手を伸ばして、何度だって止めて見せる。

 

 ――*――

 

 気が付けば昼休みになっていた。

 

「ねえ、何かあったの?」

 

「何も……」

 

 モモイが心配そうな表情でそう聞いて来るが、俺はそう答えることしかできなかった。心の中はずっともやもやとしていて、晴れることがない。頭の中ではとっくに結論を出したのに、胸の中で何かがぐるぐると回っている。

 

「そんなわけないじゃん! エルナさっきからずっと上の空だし、ひどい顔してるよ?」

 

 モモイは鏡を取り出して、俺の顔を写した。モモイの言う通り、そこには今にも泣きだしそうな不安でいっぱいな表情をしている自分の姿があった。確かに、この顔で何もないと言うのは無理がある。モモイに聞けば、この胸の中のぐるぐるの答えを出せるだろうか? 俺は少しだけぼかして、聞いてみることにした。

 

「そうだな例えば、男は自分と敵対している組織の連中と一日だけ時間を一緒に過ごした。でも、敵対している組織の連中は男が自分たちと敵対する存在であることを知らないから、男に助けを求めた。男はどうすべきだと思う?」

 

「助けにいけばいいんじゃない?」

 

 モモイは即答した。

 

「そんな単純なことじゃない。助けにいくってことは裏切るってことになる。男は自分が敵対者だとバレたくないし、男にも守りたいものがある。裏切ったことがバレれば、どうなるかだなんて簡単に分かるだろ?」

 

 モモイはそう聞くと少しだけ考え込んで答えた。

 

「うーん……その男の人がどうすべきかじゃなくて、どうしたいかなんじゃないの?」

 

「どうすべきかじゃなくて、どうしたいか……」

 

 この言葉には聞き覚えがある。

 

『もー! きみはすべきべきすべきって! すべき星人なの!? きみ自身がしたいことはないの!?』

 

 あの時、俺は答えを出せなかった。だって、あの頃はただの『兵器』で『心』なんてなかった。考えるリソースを割くだけのロジックじゃなかった。少しずつ、心のぐるぐるが晴れていくのを感じる。

 

「多分、その男の人は助けにいきたいって思ってるんだよね? だったら助けにいくべきだって! 男の人が怖いのは裏切ったことがバレることなんでしょ? だったらばれないようにすればいいんじゃん!」

 

 そうか最初から『答え』は出ていた。問題はそこに至る『解き方』が分からなかっただけ、だが考えてみれば単純なことだった。ようはバレなければいい。ははは、なんだこんなに簡単だったなんて。やっぱりモモイはすごい。いつだって、俺に何かを教えてくれる。そうと決まれば、もうここに居る理由はない。俺は菓子パンを口の中に勢いよく詰め込んで飲み込む。

 

「エルナ! どこに行くの!?」

 

「人助け!」

 

「エルナ! ここ8階だよ!」

 

 ああ、完全にもやもやが晴れた。とてもすっきりしている。俺は窓枠に足をかけると、外へと飛び出した。風がとても気持ちい。地面に見事に着地した後、窓枠から顔を出して、驚いた表情をしているモモイと目が合った。

 

「モモイ! 俺様のことは適当に誤魔化しておいてくれ!」

 

 俺はそれだけ言って走り出す。後ろからモモイの絶叫が聞こえた気がする。そして、俺は自分の研究室へとたどり着いていた。とあるシステムを起動させる。わずか0.8秒で音速に到達する機械の翼を搭載した飛行式ユニット。この装備のことを知っているのはまだ俺しかいない。だが、この装備はまだ未完成なのだ。武装はまだ一部しか完成しておらず、音速に到達するのも1.5秒程度かかる上に操作性は劣悪そのもの。またパイロットを保護する機能がないため、俺以外の人間がフルスペックを引き出そうとするとGで死ぬ。まあ、これに関しては別に問題ない。

 

 「DEUSセットアップ」

 

 服を脱ぎ捨てて、そう言うと、光の粒子と共に専用のボディスーツが形成され、体に装着される。そして次いで、俺の背中に機械の翼が生え、顔にバイザーが装着される。

 

「よし、行こう!」

 

 脚部及び背面ブースターをチャージする。そしてそれを解き放つ! 研究所の上部ハッチが丁度人2人分くらい開くと同時に、空へと飛びたつ。それから程なくして、速度は音速に到達。俺は一条の光となって空を進んでいく。

 

 ――*――

 

「何かがこちらへ接近してきています! 速度はマッハ9!? 到達までおよそ10秒!」

 

 アヤネが切羽詰まった声でそう言うと、空からキーンと言う音が響いて来る。そして10秒立つよりも早くそれは降りてきた。私たちの前に現れたのは巨大な機械の翼を背中に携えた天使。顔はバイザーで隠されているため、誰なのか分からない。ただ分かるのはこれを着ているのは『女の子』ということだけ、あと、露出が激しい。隠されているのは急所の部分だけで、それ以外は肌が見えている。でも、とても……とても……。

 

「カッコイイ……!」

 

「せ、先生の顔が見たことないくらい輝いてる……」

 

「待って先生。敵かもしれない……」

 

 シロコが謎の少女に銃を向けると少女はそれを全く意を介さずに、カイザーPMCの兵士たちにロングライフルを向けると引き金を引いた。

 

 銃口から青白い光線が発射され、それはカイザーPMCの兵士たちの中心に着弾すると大爆発を引き起こした。ただし、周りの建物には一切傷がついていない。的確に敵だけを吹き飛ばしていた。

 

「ビームライフルまで!? はわぁ……!」

 

「えっと、カイザーを攻撃しているということは、私たちの味方ってことなんでしょうか……?」

 

「同意。私はDEUS。当機の製造目的は理想郷を乱すものの排除です。ここは当機にお任せを」

 

 DEUSから合成音声が発せられる。DEUSはどうやらたった一人で敵を受け持ってくれるらしい。だが、何故こんなことをしてくれるのか分からない。

 

「ちょっと、たった1人であの数と戦うつもり!? いくらなんでも無謀よ!」

 

「否定。当機は世界を相手にして戦うことを想定されています。未だ未完成ではありますが、あの程度の小物集団では相手になりません。貴方たちは大切なものを救いに来た。であるならば早く行くべきです」

 

「……! みんな行こう」

 

「シロコ先輩!?」

 

 シロコがそう言って、走り始めたので、私たちは慌ててそれを追いかけていく。後ろを振り返るとDEUSが凄まじいスピードで戦場を飛び回りながら敵を倒していく様子が見えた。本当に大丈夫なんだろうか……?

 

「DEUSなら大丈夫。それにホシノ先輩を助けた後で加勢すればいい」

 

「シロコちゃんは、あの子が誰か知ってるんですか?」

 

「うん、知ってる。でもあの子はそれが知られたくないみたいだから秘密」

 

 どうやらシロコはDEUSの正体を知っているらしい。だが、DEUSの意向を汲んで言わないことにしたらしい。それから走り続けて、私たちはついにカイザーPMC理事のもとに辿り着いた。

 

「何故だ!? 何故こうもうまくいかない!?」

 

 そこには周囲にあたり散らかしているカイザーPMC理事の姿があった。余裕がないのか、全くこちらに気づく様子がない。

 

「あの小娘さえいなければ……! お前たちは対策委員会!? あれだけの兵力をどうやって突破したというのだ!?」

 

「私たちだけじゃ突破できなかった。でも、私たちに協力してくれる人がいる。だからここまで来られた」

 

「あんたの企みもここで終わりよ!」

 

「どいてください! さもないと……!」

 

 皆が銃を構えながらそう宣言する。カイザーPMC理事は肩を震わせて叫んだ。

 

「あの小娘も! 対策委員会も目障りだった! お前たちのせいで私の計画がっ! 私の計画があぁぁぁっ!」

 

 これが最後の戦いだ。カイザーPMC理事が兵力を呼び寄せるが、ここまで見てきた兵力に比べればかなり少ない。私たちだけでも十分突破可能だろう。行こう皆!

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 ――*――

 

 戦いは私たちの勝利で終わった。

 

「馬鹿なっ!? 何故だ!? 何故勝てない! データは完璧なはずだった! だというのに何故だぁぁぁっ!?」

 

 カイザーPMC理事が絶叫を上げる。

 

「ふん! あんたみたいなやつが何をしようと、私たちの心は絶対に折れたりしないわよ!」

 

「ホシノ先輩を返してもらうよ」

 

「私たちはあなたみたいな情けない大人には負けません!」

 

 カイザーPMC理事はふふふと笑いながら立ち上がった。まだ何かしてくるつもりなのだろうか……?

 

「認めよう。どうやらお前たちは私にとって一番の障害だと! 本当は小娘を殺すために用意していたが、ここで使わせてもらおう! 見るがいい! カイザー技術部が三日三晩休まずに総力を上げて作り上げた最高傑作の姿を!」

 

 カイザーPMC理事は懐から取り出したスイッチを押した。

 

「あいつ……まだ!」

 

「でも、私たちなら負けない……!」

 

「はい! その通りです! 折角ここまで来たんです! ホシノ先輩を連れ帰りましょう!」

 

 砂ぼこりとともに何かが落ちて来る。しかし、そこに在ったのは巨大なロボットの首だった。ついさっき引きちぎられたのか、首の部分からスパークが発生している。そのすぐ傍らにはDEUSが立っていた。カイザーPMC理事は現実を受け入れられないのか、ボタンを押した状態のまま固まっていた。

 

「ど、どういうことだ!? この化け物めっ!?」

 

「同意。当機は化け物です。人間であるあなたに化け物に勝てる道理はありません」

 

 シロコのアサルトライフルから銃弾が発射されてカイザーPMC理事に命中する。カイザーPMCは膝から崩れ落ちた。DEUSの元へシロコが向かって行く。

 

「DEUSは化け物なんかじゃないよ。私が知ってるDEUSは親切で優しい子だって知ってる」

 

「…………………………提案、あなたはここに来た目的を果たすべきだ、当機はここで待っていますので、ここから先はあなたたちだけで向かってください」

 

 そして私たちはホシノを救出に向かった。

 

 ――*――

 

 俺はホシノを救出に行った。アビドス対策委員会たちと『先生』の姿を見送る。ここから先に自分は行くべきではないと思ったからだ。だから俺に出来ることはもう祈ることだけだ。無事に帰ってきて欲しいと必死で祈っていると、ホシノを抱えて出てきた姿が見えた。ホシノはゆっくりと目を覚ます。どうやら無事だったみたいだ。

 

「良かった……本当に……」

 

 俺はただいまとおかえりを見届けた後大空へと飛び立っていく。見たいものは見れた。暁の空の中俺は笑みを浮かべて飛んでいく。そんな中、誰かからメッセージが届いた。バイザーに搭載されているディスプレイにメッセージを表示させる。

 

 『ありがとう』

 

 シロコからメッセージが届いていた。ああ、そういうことか。あれは失言だった。大切なもの(ホシノ)を取り戻しに来たことを知っていたから、バレてしまったみたいだ。まあ、他の人は何も言わなかったので、恐らくは秘密にしておいてくれるのだろう。俺は『何のこと?』とだけ返した。

 

 『ごめん、間違えた』

 

 『もしもあの子に会えたら私の代わりにお礼を言ってあげて欲しい』

 

 シロコから立て続けにメッセージが送られてくる。俺はそれを見てほほ笑むと『分かった』とだけ返して、俺は空を飛び続けて、研究所までたどり着いた。

 

 「何の用だ『黒服』」

 

 「今日は大変興味深い方に出会ったので、あなたにもそれを共有したかったのですよ」

 

 家に帰ってから大体5分くらい経過したくらいに『黒服』から電話がかかってきた。凄まじく嫌な予感がしてきた……。

 

 「あなたの言ったとおり、『先生』は私たちの仲間にはなっていただけないようです」

 

 「だから言ったじゃねーか」

 

 「ええ、非常に残念です。『先生』から協力していただければ、私たちはさらに先に進めると思ったのですが、あいにく嫌われてしまいまして……」

 

 俺はため息をつく。むしろ何で嫌われないと思ったのか、俺に教えて欲しいくらいだ。『黒服』は今日あった出来事を若干興奮気味に話してくる。俺は少しげんなりしながらそれを聞いていた。話をかいつまんでみれば、どうすれば『先生』と仲良くできるのか知りたいらしい。いや、これもう無理だろ……。

 

「あー、直接会うと警戒されるだろうし、まずは文通から始めてみたらどうだ? それに俺以外のやつの意見も聞いてみるべきだと思うぜ?」

 

「なるほど『文通』ですか……私は他の方にも共有してきますので、では」

 

 そう言って電話が切れた。俺は窓の外から月を見上げて、申し訳ないと謝罪した。

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