神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話   作:プラハ

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Vol.Sub
お弁当対決


 これは全ての物語が幸福な結末を迎えた後の物語。とある青春の一幕である。

 

「エルナ、あなたいつも菓子パンばっかり食べてるみたいだけど、栄養バランスとちゃんと考えてるの?」

 

「俺様天才だから問題ない」

 

「栄養バランスに天才かどうかなんて関係ないでしょ! あ、もしかしてエルナって料理ができないとか~?」

 

 生徒会室でユウカ、ノアと一緒に昼食を取っていると急にユウカがそんなことを言い出した。俺はユウカのことを鼻で笑う。俺に1つのことを除いて不可能なことなんてあるわけがない。

 

「そういうユウカこそ料理できんのかよ? 余計なことを気にしすぎるあまり失敗する未来が見えるぜ」

 

「そんなわけないでしょ! 料理くらい簡単よ!」

 

「そんなこと言って、お砂糖少々!? 少々って何よ!? 具体的に何グラムなのかちゃんと書いておきなさいよ! みたいなこと言ってレシピ本に怒ってる姿しか想像できなねえけどなぁ」

 

 「そういうエルナだって、鍋をかき混ぜる……? 具体的にどの程度の速さで何回混ぜるんだ……? 何でちゃんと書いてないんだよ! って言ってそうよね!」

 

 ユウカとお互いに睨み合う。ノアはそんな俺たちの様子をニコニコと笑いながら、俺たちに提案をしてきた。

 

「では『お弁当対決』と言うのはどうでしょうか?」

 

「流石だなノア先輩! それなら俺が料理も完璧だってことをユウカ先輩に見せられる!」

 

「冴えてるわねノア! 科学を理解している私に失敗なんてありえないもの!」

 

 そんなこんなで俺とユウカは『お弁当対決』を行うことになった。だが、その前に明確に勝負条件を決めておく必要がある。

 

「誰に審査してもらいますか? 例えば『先生』とかいかがでしょう?」

 

「「ぶほっ!」」

 

 俺とユウカが同時にむせる。飲み物を飲んでるときに言うのは駄目だろ……。俺はノアをジトーっと睨みつけた。

 

「『先生』は忙しいんだから、わざわざこんなことで呼べないわよ!」

 

「そうだぞノア先輩! それに『先生』は優しいからな。どっちかなんて選べないかもしれない……」

 

「確かにそうね! まったくしょうがない人なんだから」

 

「本当だよ。全く……」

 

 離反したとはいえ、俺は『ゲマトリア』の構成員だった。だと言うのに『先生』は、初めて会ったときに俺に誓ったことを守り抜いて、俺に勝った。しかも最後にはあんなことまで……!

 

 人間嫌いだった俺が恋愛的な意味で好きになるのはきっともう『先生』以外にありえないと胸に刻み込まれた瞬間だった。人はよく『運命の相手』だなんて比喩することがある。俺は運命何て知りもしないくせによくもまあ、そんなことを言えるものだと思ったが、今となっては分かる気がする。

 

 「ここはお互いに作った弁当を交換すると言うのはどうだ? それならユウカ先輩が俺の弁当を食べた瞬間に自分の敗北を悟るだろうからなぁ?」

 

 「ええ、それで構わないわ! でも、私が作ったお弁当で敗北を悟るのはエルナよ!」

 

 「はっ! やれるもんならやってみろ!」

 

 俺とユウカの間に火花が迸る。俺はルールを明確にするため、ホワイトボードに書き記す。

 

 1.お弁当の予算は500円以内に収めること。

 2.期限は明日の昼まで。

 3.勝敗はお互いに弁当を交換し合い、自ずと分かるものとする。

 

「お弁当の予算が500円以内っていうのはどういうことなの?」

 

「簡単に言えば、使う食材の高さで技術を上回ることがないようにするためだ、それとお弁当を安く作れるってことは、将来……け、結婚とかしたときにどれだけ家計の支えになれるかっていう指針にもなるだろ?」

 

「なるほど……未来を見据えたうえでの戦いってわけね……! 猶更負けられないわ……!」

 

 今ここに仁義なきお弁当対決が始まった!

 

 ――*――

 

『ノア! もしも時間があったら手伝ってほしいことがあるんだけど!』

 

『ノア先輩! もしも時間が合ったら手伝ってほしい!』

 

 ほぼ同じタイミングで届いたメッセージを見て私はほほ笑む。ユウカちゃんとエルナちゃんはよく言い争いをしている。でも、2人とも似た者同士で、とても仲良しだ。息ぴったりなので、私はそんな2人の関係にたまに嫉妬することだってある。まあでも、そんな二人を眺めているのはとても楽しくて見ていて飽きない。まずはユウカちゃんのほうから行こう。私はユウカちゃんに『今から行きます』とメッセージを送って、エルナちゃんのほうには『1時間後くらいに向かいます』と返事を送った。すると、ほぼ同じタイミングで返信が来た。

 

『ありがとうノア! 第8調理室で待ってるわ!』

 

「ありがとうノア先輩! 第9調理室で待ってる!」

 

「ふふっ、本当によく似たお二人ですね。しかもすぐ隣の部屋だなんて……」

 

 きっと同じタイミングですぐ隣の部屋に入ることになって、そこでもまた言い争いをしていた光景が目に浮かぶ。私は『第8調理室』へと足を運ぶ。きっと私は同じ理由で呼び出されたのだろう。2人は明日の『お弁当対決』に向けて試作品を作っているはずだ。つまり私の役目はそれの試食だ。2人ともああは言っていたものの料理の経験はあまりないはずだ。でも、どちらの手先が器用でレシピは完全に守るタイプ、つまり『大失敗』は起こらない。少なくとも食べられないものが出てくることはないだろう。

 

 しかし、私は2人の『性質』を忘れていた。少しでも思い至ることが出来ていれば、私は『試食役』なんて絶対しなかったのに……。

 

「ノア! いい所に来てくれたわね! 丁度料理ができたところなの!」

 

「あ、あの……、ユ、ユウカちゃんこれは一体……?」

 

『第8調理室』に入るとそこには大量の小さなハンバーグと卵焼き、俵型のおむすび、ほうれん草とベーコンのバター和え、ひじきの煮物があった。どう考えても食べきれる量じゃない……!

 

「エルナはきっと『完璧』に仕上げてくるはず。だから私は『完璧』以上に仕上げないといけないの。先輩としてそれに『先生』の将来のは、伴侶としても負けるわけにはいかないわ!」

 

 ユウカちゃんは至って真面目そうな表情でそう言いながら、入れた調味料の量をコンマ1グラム単位で変えたこと、焼く時間をコンマ1秒単位、ひっくり返す回数、かき混ぜた回数を変えているということを説明する。あまりの本気っぷりに私には苦笑いすることしかできなかった。

 

「ノア! まだまだいっぱい作るからどんどん味見して感想を教えて頂戴!」

 

 どうやらまだ増えるらしい。このままでは確実に色々と大変なことになる。私はコユキちゃんをここに呼び出すことにして、ユウカちゃんが作った料理を食べ始める。どれもよく工夫されていることが分かって、とても美味しい。だけど、まるで終わりが見えない。

 

 「どれもとても美味しいです」

 

 「ありがとうノア! でも、まだ私が目指す『完璧』には程遠いわ……!」

 

 ユウカちゃんは自分が作った料理に納得していない様子で、悔しそうに表情を歪めていた。すると『第8調理室』のドアが開かれた。どうやらコユキちゃんが来たらしい。

 

「ノアせんぱ~い! 急にこんなところに呼び出してなんの用事で……す……」

 

 『第8調理室』に入った瞬間、コユキちゃんの表情が固まった。部屋の様子を見て大方の事情を把握したらしい。逃げ出そうとするコユキちゃんを捕まえて椅子に座らせる。コユキちゃんはすでに泣きそうな表情になっていた。

 

「ユウカちゃん、私だけでは意見が偏ってしまうかもしれないので、助っ人を呼びました」

 

「確かにその通りね……、コユキ! 私のことは遠慮しないでいいから、屈託のない意見を貰えると助かるわ!」

 

「はいぃ……」

 

 それから1時間ほど、私とコユキちゃんはユウカちゃんが作り続ける料理を食べ続けた。お腹はもうかなり限界へと近づいている。コユキちゃんもかなり苦しそうな表情をしている。だけどユウカちゃんは満足していないのか、まだ料理を続けている。

 

「ユウカちゃん、実は私これから予定があるので、もう行かないといけないんです」

 

「そうなの? まあコユキがいるし、大丈夫よね!」

 

「ノア先輩!? 嘘ですよね!?」

 

「ごめんなさいコユキちゃん、予定があることは本当なんです」

 

 涙を流しながら必死に手を伸ばすコユキちゃんを尻目に私は『第8調理室』から退出した。正直、次の場所には行きたくない。嫌な予感しかしない。

 

 でも、一度行くと言ってしまった以上は行くしかない。私は意を決して、『第9調理室』のドアを開けると、そこには『ゲーム開発部』の人たちが地面に倒れている姿があった。

 

 「アリス……もう食べられません……」

 

 「うぷ……もう……無理……」

 

 「誰か……助けて……」

 

 「もう……ダメ……」

 

 「ノア先輩! ちょうど良かった〜! モモイたちは少食みたいでもう限界みたいなんだよ! いや~よかった~ノア先輩が来てくれて助かった~。出来立てもあるんで、よかったら」

 

 エルナちゃんが出来立てほやほやの小さなハンバーグを皿に置いていく。机の上には小さなハンバーグと卵焼き、俵型のおむすび、ほうれん草とベーコンのバター和え、ひじきの煮物がそこにあった。

 

「ユウカ先輩は絶対『完璧』に仕上げてくる。だから俺様はそれの上を行かないと……! それに負けられない理由だってあるし……!」

 

 エルナちゃんはとても真面目な表情で入れた調味料の量をコンマ1グラム単位で変えたこと、焼く時間をコンマ1秒単位、ひっくり返す回数、かき混ぜた回数を変えているということを説明した。私にはもう笑うことしかできなかった。

 

「ささ、ノア先輩! 味見お願いします!」

 

 私の意識が徐々に遠くなっていく。私は今日思い知った。恋する乙女の恐ろしさを。それともう2人の味見役には何があっても絶対に何か理由をつけて断ろうと心に決めた。

 

 ――*――

 

そして次の日がやって来ました。

 

「さてユウカ先輩! 勝負の準備は出来てるか?」

 

「ええ、私の完璧なお弁当を見せてあげる」

 

「お手並み拝見といこうじゃねぇか!」

 

 ユウカちゃんとエルナちゃんはお互いにお弁当を交換して、お弁当箱の蓋を開けて固まった。

 

 何せお弁当のメニューが全く同じだったのだから当然だ。2人は顔を見合わせて笑った。

 

「「いただきます」」

 

 2人は同時にまずはひじきの煮物、ほうれん草のバター和え、卵焼き、ハンバーグ、俵型おむすびの順に食べた。そして、全部食べ終わった後、ゆっくりと箸を置いてお互いに向き合う。

 

「俺様の負けだ」

 

「私の負けね」

 

「何言ってんだユウカ先輩! 俺様の負けだって言ってんだろ!」

 

「いいえエルナ! 私の負けよ!」

 

「自分の勝利を認めろよ!」

 

「そっちこそ認めなさい!」

 

 何と言うかお互いこういうところは素直なので、私は何となくこうなる気がしていた。ユウカちゃんとエルナちゃんはお互いに睨み合いながらバチバチと視線をぶつけて、最終的には今回は『引き分け』ということになりました。な、納得がいかない……!

 

「あれ? ノア先輩今日は昼ごはん食べないのか?」

 

「ノア、昼ごはんは食べないと午後から力が出ないわよ?」

 

「実は昨日少し食べ過ぎてしまって……」

 

 誰かさんたちのせいでと目線に意味を込める。

 

「へー、ノア先輩もそういうことあんのか……」

 

「少し意外だわ」

 

「それ冗談で言ってますよね?」

 

 私がそう聞くと、2人は揃って首を傾げるだけでした。本当に分かってないみたいでした。これから暫く間私のスケジュールにランニングが追加されました。

 

 なおこれから数ヶ月後バレンタインのチョコ作りの試食として呼ばれてしまうということを、この時の私はまだ知らなかった。

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