神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話 作:プラハ
「…………」
俺は無言で、鉄の扉を思いっきり閉じた。あまりにも強く閉じすぎたせいか扉は少し歪んでしまった。俺は何も言わずにモモイとミドリの方を振り返って服の予備がないか聞くと、ミドリが持っているとのことだったので、俺は扉の先で見たものについて話した。
「は、裸!? 一体どうして!?」
「お、俺様にも分かんねぇよ! だから、モモイとミドリも着いてきて! あんたは……」
ここに残ってて、と言おうとして止める。もしもあれが『罠』だった場合、一人で残しておくのは危険だからだ。だからと言って、モモイとミドリだけ行かせて、俺がここに『先生』と残るというのもモモイとミドリを危険に晒す可能性がある。つまり、一緒に行くしかないということだ。
「目を瞑ってついてきて! 不安だったら手を繋いでやるから!」
そう言うと『先生』は俺の手を握って、律儀にも目を瞑って歩き始めたが、恐る恐る歩いているため、圧倒的に進みが遅く、何もないところで躓きそうになって、そして躓いた。
「わわっ!」
「もう……しょうがないなっと」
俺は転びそうになった『先生』を抱きとめると、握っている手を離して膝の後ろに手を入れて『先生』の体を抱え上げる。
「ほら、手を首の後ろに回してくれ。あーもうそこじゃないって目、開けていいからさ、空か俺様だけ見てろよな?」
「は、はいぃ……」
「あはは! なんだよそのなっさけない返事!」
思わず笑ってしまう。こうして抱えてみると分かったが少し軽い気がする。目の下にもクマが出来てるし、『シャーレの先生』というのはかなり激務なのだろう。なんてことを考えていると羨ましそうにこちらを見るモモイとミドリと目が合った。
「お姫様抱っこだ! いいなぁ〜。私もされてみたい!」
「お姫様抱っこ? こいつは別にお姫様じゃなくね?」
「そういう抱っこの仕方をお姫様抱っこって言うんだよエルナちゃん」
それは知らなかった。俺は今度やってあげるとモモイとミドリに約束すると、モモイとミドリはと嬉しそうにしていた。何でも『お姫様抱っこ』は女の子の憧れなんだとか。女の子の憧れ……ねえ。『先生』を見るとぽけーっとした表情で俺を見ていた。
「重くない?」
「別に? というかキヴォトスの住人ならほとんどのやつは軽く持ち上げられると思うぞ」
「ほ、本当に……?」
俺が頷くと『先生』は信じられないと言った表情をしていた。まあ外の世界から来た人間なので知らなかったとしてもおかしくはないだろうし、生徒側も『先生』を怪我させないように十分に配慮したうえで接していると思うので、知る機会もなかったと推測できる。俺は生徒に腕力勝負を不用意に挑んでぼろ負けして落ち込むなんてことにならなくてよかったんじゃないかと言うと、『先生』は微妙な表情を浮かべていた。
「返事が無い。ただの死体のようだ」
「不謹慎なこと言わないで! んーなんと言うか、この子死体というよりは『電源が入ってない』みたいな感じがしない?」
ミドリがそう言うと、モモイはペタペタと触り始めたので、傍から見ると意識がない女の子に悪戯してるように見えるのではと思ったが俺は何も言わなかった。
「あれ……? ここに何か書いてある? AL-IS? アリスって読むのかな?」
「ちょっと待って、よく見たら全部ローマ字なわけじゃなくて、AL-1Sかも……」
AL-1S……、その存在が意味する言葉は。
だが、俺が見る限りでは『AL-1S』にそこまでの脅威は今のところ感じられない。どちらかと言えば
「着せたよー!」
服を着させる時もひと悶着があったもののようやく『すっぽんぽん』状態ではなくなったらしい。俺は『先生』を地面に降ろして、『AL-1S』のもとへと向かった瞬間、『AL-1S』から電子音が鳴り響いた。
「な、何だ!?」
警報の類ではないかと身構えるが、それらしきものが来る気配が微塵もしない。そして。
『状態の変化、及び接触許可対象を感知。休眠状態を解除します』
『AL-1S』から可愛らしい少女の声が発せられる。『AL-1S』は目を開けて体を起こすと周囲を見渡している。
「状況把握――っ!」
そして俺と目が合った瞬間、『AL-1S』は素早い動きでディスプレイが着いている機械の後ろに隠れてしまった。モモイとミドリが俺を咎めるような視線で見てくる。
「いやいや! 俺様まだ何もやってねぇ! なんで隠れてんだ!」
「質問、人間?」
「…………へぇ、俺様の何を見てそう思ったのかきちんと教えて貰わねぇとなぁ?」
俺は『AL-1S』ににじり寄ると無表情のまま後ずさる。なんで俺様が悪者みたいになってんだよ……。いや、実際悪者なんだけどさ……。
「エルナの話し方が怖いからじゃないの?」
「とりあえず、優しい口調で話してみたら?」
「うっ……、分かったっての……」
俺は出来るだけ優しい表情を浮かべながら、座り込んでいる『AL-1S』と同じ視線の高さになるようにしゃがもうとした瞬間逃げ出して『先生』の後ろに隠れてしまった。
「な、何故だ……!?」
「何故だも何も顔凄い引きつってたじゃん! 逆に怖いって!」
「そんなはずは……」
ミドリの方を見ると首を横に振っていた。『先生』は『AL-1S』に 正面から向き合うとまずは何者なのか、ここがどこなのかと質問すると、自我と記憶、目的が喪失状態にあるため答えられないという旨の回答をした。長い時間を経て消えてしまったのか、誰かが意図的に消したのか、理由は色々と思いつくがどれも推論止まりでしかない。
「ど、どういうこと? 攻撃したりとかして来ないよね?」
「肯定。接触許可対象への遭遇時、本機の敵対意志はありません」
ミドリがそう訪ねると『AL-1S』は俺の方を見ながらそう答える。もしかしてさっきから俺から逃げているのは俺の戦意を感じ取っているからということなのかもしれない。だが、俺の知ってる通りの存在なら戦いになるかもしれない以上備えておくのは当然のことだ。
「エルナこの子は大丈夫だよ」
「何で分かるんだよ? まだ分かんねぇだろ。油断した所をドーンってされるかもしれねぇんだぜ?」
「私を信じて」
「信じろって言われてもねぇ……。判断材料がない以上はそんなこと無理だね」
「エルナ、お願い」
あまりにも真面目な表情で『先生』がそう言ったので、俺はため息をついて、腰に着けていた『ディーオデード』を外して床に置いて、少し距離をとると、『AL-1S』も心做しか少し安心したような表情をしているように見えた。
「これでいいか?」
「うん、ありがとう」
そして『先生』は接触許可対象とは何なのかと聞いた。確かにそれは俺も気になっていた。少なくとも『AL-1S』が作られたであろう頃にはまだ『先生』はキヴォトスに来ていないし、産まれてもいないはずだなぜなら。『AL-1S』が作られたのはずっと昔のことだからだ。
1番怪しいのはここを立ち入り禁止区域にした現在行方不明中の『連邦生徒会長』だが、確かめる術がない以上何も分からないだろう。
「肯定。同時に接触許可対象については回答不可。本機の深層意識における第一反応が発生したと推定」
「エルナは何か分かったの?」
「…………………………」
俺が言い淀んでいると、モモイとミドリが首をかしげていた。『AL-1S』の方を見るとキョトンとした表情でこちらを見ている。「こいつは滅びを齎す存在かもしれない」なんて言えるわけがない。
「この世界にはさ、知らなくちゃいけないことと、知らない方がいいこともあんだよ」
「そんな言い方されると余計気になるじゃん!」
「どうしても聞きたい?」
モモイとミドリは頷いた。『AL-1S』もその話に興味があるのか、ジッとこちらを見つめている。どうやら言わないと納得してくれなさそうな雰囲気だ。仕方ない適当に誤魔化すしかないか……。
俺はここに誰かがほんの数か月くらい前まで出入りしていた可能性があることを話すと、目を見開いて驚いていた。
「長年放置されてたにしてはここは少し綺麗すぎると思わないか?」
「そう言われてみると確かに……」
「あれ……? でも、だったらどうしてこの子は裸で「ミドリ!」エルナちゃん?」
「それ以上は……考えちゃだめだ……」
どうやら上手く誤魔化すことが出来たらしい。そう思っているとモモイは別のことを考えていたのか、急に得意げな表情になっていいことを思いついたと言い始めた。
「モモイ? まさかとは思うが……」
「そのまさかだよエルナ!」
「おいおい……犬や猫とは訳が違うんだぞ?」
「でも、ここに置いて行くわけにもいかないでしょ!」
モモイはどうしても譲る気はないらしい。まあ俺としても思うところはある。それにデータを失っている以上、今のところ危険性はないと考えてもいい。たとえ『AL-1S』が想像通りの存在だったとしても俺が『あれ』を壊せばいいだけの話だ。まあそうなった場合、俺の研究がかなり遅れることになってしまうが、世界が滅びることに比べれば些事だ。
それに『どう在れ』と望まれようと『どう在る』かを選ぶのは結局自分だ。もしも『AL-1S』が自分の役目を思い出してしまうようなことがあれば俺はとある質問を投げかけるつもりだ。それで踏みとどまるならよし、そうでないならその時は……。
まあそもそも、自分がどんな存在なのか思い出させなければいいだけの話だ。余計なことをしなければ特に問題はないだろう。
「ま、モモイの言う通りか……」
「というわけで、一緒に行こう! ねっ? アリス!」
「承認。本機の名称『アリス』に設定」
「ちょ、ちょっと待って! 勝手に決めちゃっていいの!? 『AL-1S』ちゃんて呼ぶのが正解なんじゃ……」
「否定。本機は『AL-1S』ではありません。アリスです」
どうやら『AL-1S』はモモイがつけた名前を気に入ったらしく、その名前を胸に刻み付けるように報告する。モモイが嬉しそうに気に入ってくれてよかったとまた名前を呼ぶと、『AL-1S』のほおがほんのり緩んでいるような気がした。
「もうこんな時間だし、今日は一旦戻ろうぜ? こいつ「否定。アリスはこいつという名称ではありません」……」
「アリスです」
『AL-1S』が俺の方にズイっと詰め寄ってくる。どうやら名前で呼んで欲しいらしく、少しだけ眉の付け根が上がっているような気がする。急に来るとは思っていなかったので、思わず仰け反ってしまうと、さらに近づいてきた。
「ア、アリス……。これでいいか?」
「肯定」
アリスは俺が名前をちゃんと読んだことに満足したのか、俺から離れるとモモイとミドリの方へと向かっていこうとしたところで、段差に躓いて転びそうになったので俺は慌ててアリスを支える。
「ったく、危なっかしい……。色んな意味で目が離せねえわ」
データがないということは、今のアリスは赤ん坊のようなものだ。これからどんどん色んな事を知って『本来の役目』なんて忘れて輝かしい未来を『ミレニアム学園』で築いていって欲しい。なんてことを考えていると、『先生』が隣に立って「今のエルナってお母さんみたいだね」と言った。
「親……ね。なれるもんならなってみてぇもんだがな……」
『先生』が首をかしげる。俺はただの独り言だから気にするなと言って、俺たちはしばらくモモイとミドリ、アリスが戯れているのを見守っていた。
――*――
ゲーム開発部の部室に到着すると、アリスがミドリのWeeリモコンを口に咥えたり、モモイのゲームガールアドバンスSPに齧りついたりと一悶着があった後、モモイはアリスをゲーム開発部の部員にするために、ミレニアムの生徒として偽装してもらえるようにお願いすると言って、俺たちにアリスに『話し方』を教えてあげて欲しいと言い残してヴェリタスへと向かっていった。
「うーん……、話し方を教えてあげてって言われてもどうすればいいのかな……? こういうのって周りの会話や動画から自然に習得するものだけど……」
「ヘッドホンとヘッドマウントディスプレイを装着させて、動画を垂れ流しにするって方法があるが……」
「いやいやいや! 何その洗脳してるみたいなやり方! 絶対悪影響あるって!」
「だよなぁ……。ん?」
アリスにどうやって『話し方』を教えるべきかをミドリと話し合っていると、アリスが何かを見つけたのか、それを興味深そうに見つめている。
あ、あれは……いつぞやの『テイルズ・サガ・クロニクル』をクソゲーだと貶した雑誌……! 俺は何回かこんなものは捨ててしまおうと進言したが、「戒めとして残したい」というモモイたちの発言によって今も不肖ながら残されている。だが、今となっては英断かもしれないと俺は思った。そうだ……、どうして気が付かなかったのか。
「これがあるじゃないか……!」
「ちょっ! エルナちゃん!?」
「アリスこれはモモイとミドリ、ユズが作った最高に素晴らしいゲームなんだよ! アリスもやってみないか……? そうすれば分かるはずだ……」
「ま、まあ会話しながらできるからある意味いいのかな……?」
よし! そうと決まれば早速やらせなければ……! そして感じてもらおうこのゲームの素晴らしさを! 俺はかつてないスピードで準備を終えると、アリスを椅子に座らせる。
「アリスはゲームを開始します」
アリスはコントローラーを握って『テイルズ・サガ・クロニクル』のプレイを始めた。
以下ちょっとした妄想です。
名前:
Lv.■■
攻撃タイプ:不明
装甲タイプ:不明
役割:Striker
クラス:アタッカー
ポジション:Free
EXスキル:不明
COST:99
現在はストーリーの戦闘にのみ登場。
戦地を縦横無尽に駆け回る超高速アタッカー。速度だけで見ても全生徒最速。
部隊移動時、あまりの速さにカメラが置いて行かれてしまい、カメラが到達する前に出現した敵を全滅させることがあるので、キャラが走るのを眺めるゲームや、風景を楽しむゲームと化す。
攻撃タイプ、装甲タイプともに不明であり、アイコンのカラーは黒色になっている。ストーリー中の発言から、攻撃タイプ:ビーム、装甲タイプ:超電磁装甲なのではと推測されているが、ストーリー中の戦闘において敵を一撃で倒し(ダメージ表記なし)、またダメージを一度も受けていないため、相性に関する情報は一切不明。
またスキルコストが「99」のためいかなる手段を用いても発動することができない。ストーリー中の発言で「自分より弱い奴には従いたくない」とあるので、そのためだと思われる。なお、発動コストはストーリーが進むにつれて下がっていく。
また仕様として、エルナが戦闘に参加している時、味方キャラはダメージを受けず、よく見ると攻撃モーションに入った敵から優先的に倒していることや、銃弾が途中で方向転換していることが分かる。