神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話   作:プラハ

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テイルズ・サガ・クロニクルは最高の神ゲー

 アリスは史上最高の神ゲーである『テイルズ・サガ・クロニクル』のプレイを開始した。心なしかワクワクしているように見える。そして、ワクワクとした様子で『New Game』ボタンを押した。ミドリはこのゲームについて解説を入れる。画面にテキストが表示される。

 

 >コスモス世紀2354年 人類は劫火の炎に包まれた……

 

 やはりアリスはこのテキストの意味が理解できないらしい。あれから何度かプレイしているが結局この言葉がどういう意味だったのか今でも分かっていない。アリスはボタンを押して、次の画面へと進む。

 

 >チュートリアルを開始します。

 

 >まずはBボタンを押して、目の前の武器を装着してみてください。

 

 アリスは画面の指示通りにBボタンを押してしまった。

 

 ドガーーーン!

 

 >GAME OVER

 

 アリスは「GAME OVER」と表示されている画面を見て驚愕した表情で固まっていた。その気持ちは俺にもよく分かる。なんてことを考えていると、用事を済ませてきたのかモモイが笑い声をあげていた。アリスはコントローラーを見て首を傾げている。

 

「予想できる展開ほどつまらないものはないよね! 本当は「ストーップ!」」

 

「ネタバレは駄目だろ……。こういうのは自分の手で答えを探すもんだ」

 

「『話し方』を教えるためのものなんだから。さくさく進めたほうがいいんじゃない?」

 

 ミドリは俺にそう言った。まあ、ミドリの言う通りではある。それに今のアリスでは答えを見つけることができないような気がする。俺はモモイのほうに視線を向けて頷くと、モモイが実はBボタンではなくAボタンを押さないといけないと説明する。

 

 「そういえば、学生証はどうなったんだ?」

 

 「行ってきたんだけど、もう誰もいなかったの。だからまた明日行くつもり」

 

 「改めて思ったんだけど、この部分はちょっとひどいと思う」

 

 「そうか? 俺は別にそう思わないけどなぁ……。与えられた『命令』に従うことが絶対正しいとは限らないってことを教えてくれるんだからな」

 

 俺はアリスの目を見ながらそう言った。アリスは言葉の意味が分からないのか首を傾げている。まあ、今は分からなくてもいつか分かればいい。アリスはモニターに向き直ると再びゲームを再開した。

 

 「テキストでは説明不可能な感情が発生しています」

 

 「きっと『興味』とか『期待』とかだと思う!」

 

 「うーん……、『怒り』か『困惑』だと私は思うんだけどなぁ……」

 

 アリスはモモイの教えたとおりにBボタンではなくAボタンを押した。

 

 >武器を装備しました。

 

 >エンカウントが発生しました!

 

 画面に赤い文字が表示され、BGMも緊迫したものに変わる。アリスは初めての戦闘にドキドキしているのか、真剣な表情を浮かべている。モモイがAボタンを押すようにと言うと、アリスはモモイの言ったとおりにAボタンを押して、この時点での最強技『秘剣つばめ返し』を選択した。

 

 「秘剣! つばめ――」

 

 >ッダーン!

 

 >攻撃が命中、即死しました

 

 しかし、無慈悲なことにまたしても画面は「GAME OVER」と表示された。画面下部にはプニプニがこちらを煽るテキストが表示されている。アリスはまた困惑しているのか、コントローラーを握ったまま固まった。モモイはプニプニが「ふっ」と笑うのは不自然だったかもしれないと言うが、突っ込みどころはそこじゃないと俺は思う。そもそも何でプニプニが銃を持っているのか? とか、どうやって銃を持っているのか? とか言いたいところは色々あるがそんなことを気にしていたらキリがない。

 

「思考停止――。電算処理が追いつきません。リブート、再開します……」

 

「アリス、計算や解析でこのゲームを理解しようとしちゃだめだ。ますます理解不能になる」

 

 俺はアリスにアドバイスをするが言葉の意味が分からないらしい。まあゲームを続けていけば分かることだ。アリスは現実的な観点から銃の射程距離把握を行いながら、接近しないようにプニプニを倒すことを宣言すると、モモイは嬉しそうな表情で試行錯誤して答えを見つけることこそがレトロゲームの醍醐味だと語る。そして、アリスはプレイを再開し、何度か挑戦してプニプニを倒すことに成功する。それから『テイルズ・サガ・クロニクル』をプレイするアリスを俺は見守っていた。

 

「電算処理系統、および意思表示システムに致命的なエラーが発生」

 

「考えるな……感じろ……。ここを乗り越えればエンディングはもうすぐだぞ! 頑張れアリス!」

 

 >ごめんなさい。私は植物人間ですので、女性に対して気軽に声をかけることはできません

 

 RPGの醍醐味と言えば仲間を増やすこと。アリスは仲間を増やすためにNPCへと話しかけた結果、表示されたテキストを読んだ瞬間、アリスは一瞬固まって動かなくなった。理解不能なワードに困惑するアリスは疑問をぶつけるが、それについて思考してしまったのだろう。

 

「エラー発生! エラー発生!」

 

「が、頑張ってアリスちゃん! クライマックスまであと少しだから!」

 

「リブート……。プロセスを回復、ふう……」

 

 ここまで再起動を行った回数はすでに両手の指では数えられないほど行われている。しかし、アリスはめげずに『テイルズ・サガ・クロニクル』を続けている。それに少しずつではあるが、表情にバリエーションが増えているような気がする。本当にゲーム開発部が作ったものはすごい。俺では言葉を教えることが出来てもこんなことはできない。アリスはキリっとまじめな表情になってゲームを再開した。そして、それから1時間後待望のクライマックスへとたどり着いた。

 

「こ、ろ、し、て……」

 

「たった3時間でクリアするなんて……!」

 

 アリスは途中途中教えてもらいながらもわずか3時間でトゥルーエンドに到達した。俺なんて12時間以上かかったのに……。そう思うと今すぐにでもプレイしたくなってくるが、その気持ちを抑える。ミドリはアリスの『話し方』がどんどん多彩になっていることに気がついたらしい。

 

「勇者よ、汝が同意を求めるならば、私はそれを肯定しよう」

 

 俺は思わず頭を抱える。ユウカへの対策のために『話し方』を覚えさせるという計画だったが、ゲームから『話し方』を覚えた影響で、だいぶ不自然だ。これ……本当に大丈夫なのか……? まあ、でも最初と比べれば随分マシになったし、最悪カンペでも読ませればいい。そう思っているとモモイとミドリは自分たちのゲームは面白かったのかとアリスに質問した。

 

「説明不可」

 

「な、何で!?」

 

「類似表現を検索、ロード中」

 

 アリスは暫く考え込んでいる。ミドリは悪口を探しているのではないかと不安になっているが、俺は違うと思っている。だって、このゲームは面白い。それにアリスはこのゲームを通して感じたはずだ。テキストやグラフィックでは表現されていないものを。だから大丈夫だと俺はミドリを安心させると、アリスはようやく思考が終わったのか喋り始めた。

 

「面白さ、それは明確に存在。プレイを進めれば進めるほど、まるで別の世界を旅しているような……。夢を見ているような、そんな気分……もう一度……もう一度……」

 

 そこまで言うとアリスは涙を流し始めた。俺も初めてこのゲームをクリアしたときは同じことになったものだ。俺はアリスの頭を優しく撫でる。ゲームを通じて分かり合えたなら俺たちは『友だち』で、そして『()()』として『後輩』を導いてやらなければならない。

 

 「ありがとうアリス! その辺の評論家の言葉なんかより、その涙のほうがずっと嬉しいよ!」

 

 モモイは笑顔でアリスにお礼を言う。そして、ユズにも早く教えてあげたいそう言うと、声が聞こえた後、ギギーっという音ともにロッカーが動き出して、小さな人影が現れる。モモイはお化けだと驚いて、プライステーションを投げようとするが、ミドリがそれを必死に止めた。そろそろ壊れると言っていたので、結構な頻度で投げているのだろうか……? ちなみに人影の正体はやはりユズだった。どうやらロッカーの中に隠れていたみたいだが、いつから隠れていたのだろうか? 少なくともアリスが『テイルズ・サガ・クロニクル』を始めてからは何も感じなかったので、少なくともアリスがここに来てからいたことにはなると思うが……。

 

 ミドリがいつからロッカーに居たのかと聞くと、廃墟から帰ってきたと時からと言った。

 

 「その時からずっとロッカーの中にいたの!? モモトークか何かで伝えてくれたら良かったのに……」

 

 「アリスは初めてだよね。この人が私たちゲーム開発部の部長、ユズだよ」

 

 モモイがアリスにユズのことを紹介する。ユズは顔を赤くしてアリスのほうへと少しずつ近づいていく。そして少しの間、口をパクパクと動かす。その様子を俺は見守っていた。

 

 「ありがとう……! ゲーム面白いって言ってくれて、もう一度やりたいって言ってくれて……! 本当にありがとう……!」

 

 ユズがアリスに一歩近づく。アリスはきょとんとした表情を浮かべている。

 

 「私たちの作ったゲームをここまで思ってくれたのは二人目だけど、やっぱりとっても嬉しい……!」

 

 ユズは笑顔を浮かべると、アリスを歓迎した。アリスは『テイルズ・サガ・クロニクル』で出てきたセリフを引用して、喜びの表情を浮かべる。それで合ってるかとユズに尋ねると、ユズは少し困った表情を浮かべて大体合ってると言って、本当に自分たちが作ったゲームを楽しんでくれたんだと喜んだ。

 

「もしRPGを面白いなって思ってくれたなら……、わたしが他にもおすすめのゲームを教えてあげる」

 

「なっ!? 俺様もユズのおすすめのRPGやりたい!」

 

「いいよ。でも今日はアリスちゃんが優先」

 

「むぅ……」

 

 早速ユズがおすすめのRPGを紹介しようとすると、そこにモモイが待ったをかけた。良質なゲームをやるほど話し方が自然になって、計画の成功率が上がるからと、『英雄神話』、『ファイナルファンタア』、『アイズエターナル』という作品をあげた。どれも全部俺のやったことがないゲームだ……。俺はその名前を頭の中に刻み込む。するとミドリが割り込んできて、アリスはゲーム初心者なので『ゼルナの伝説』から始めるのが一番だと言い始めた。このゲームはミドリから勧められてプレイしたことがあるが、確かにあれはいいゲームだった。

 

「ここだけは譲れない、次にやるべきは『ロマンシング物語』だよ」

 

 とさらにユズが反論する。アリスはそんなみんなの様子をほほ笑みながら眺めて、次のゲームはどんなものなのかと期待に胸を膨らませている。羨ましい……。後ろで見てるだけだとこっちもゲームがしたくなってくる……。

 

 そして部長権限で3回先に勝った人のゲームを最初にやるということになり、白熱したじゃんけん大会はユズが制した。まあ、正直な話、コンマの世界を見切れるユズに最初から勝ち目なんてないに等しいのだが、俺は何も言わなかった。別に本気モードのユズに圧倒されたからなんて理由ではない。

 

 それから何時間もぶっ通しでアリスはゲームを続けていく。気がつけば時刻はすでに0時を過ぎている。モモイ、ミドリ、ユズは疲れてしまったのかもう眠りについている。

 

「アリス……そろそろ交代しないか? アリスも疲れただろ……?」

 

「まだ休息の時ではない」

 

「じゃ、じゃあゲームオーバーになる度交代ってのはどうだ?」

 

「良かろう。あっ……」

 

 意識を画面から逸らしてしまったせいか、敵の攻撃を受けてゲームオーバーになってしまった。アリスは涙目になりながら震える手でこちらにコントローラーを渡そうとしたので、俺はそれを止める。

 

「まだスタートって言ってないからまだやっていいって! はい、今からスタートね! 次ゲームオーバーになったら本当に交代ね!」

 

「…………!」

 

 アリスはパッと表情を明るくして再びゲームに戻る。それから大体30分後、魔王に負けてしまったのか俺はアリスと一度交代する。俺はさっきの情報をもとに確実に勝てるであろうレベルまでレベルを上げてから魔王に挑む。パターンも分析済みなので負ける通りはない。戦いを挑み、危なげなく攻略してく、そして魔王は最終形態へと移行し、あと少しと言うところでアリスが寂しそうな表情で画面を見つめていることに俺は気がついた。

 

「あっ……」

 

「まったくしょうがないなぁ……」

 

 アリスは寂しそうな表情で画面を見ていたので、俺はコントローラーを半分渡す。アリスは俺の行動の意図が分かっていないのか首を傾げる。

 

「俺様の計算通りだと、魔王は次の一撃で倒せる。だから最後の一撃は2人でやろう。せーので一緒にボタンを押すぞ」

 

「了解した」

 

「よし、行くぞ?」

 

 俺はアリス目を合わせて互いに頷く、コントローラーを床に置いて、Bボタンの上に一緒に指をおいた。

 

「せーのっ」

 

「「光よ!!!」」

 

 『魔王をたおした!』

 

 画面にはそうテキストが表示される。俺は片手をあげてアリスに手の平を見せる。アリスは意図が分からないのか首を傾げながらも、俺の真似をした。俺はアリスの手をぱちんと叩く。

 

「こうやって何かを協力して成し遂げた時はこうするんだよ。ほら、アリスもやってみな」

 

「こうですか?」

 

「痛っ! 力入れすぎだ馬鹿っ! 俺だから良かったけど、他のやつだと吹っ飛ぶぞ? そうだな、今の力を100として、大体1くらいの力だな。そうそうそんな感じだ」

 

 俺とアリスはハイタッチを交わした。アリスはハイタッチをした方の自分の手をまじまじと見つめていた。俺はその姿を微笑みながら見つめて、アリスの頭を撫でる。さて、次のゲームへと行こう。俺はまだ終わっていないゲームのパッケージを見せてアリスに次はどれをやりたいかと聞くと、アリスは『ドラゴンテスト』を指さした。

 

「よし! じゃあそれをやろうぜ! そうだ! 俺がコントローラーの左側を担当するから、アリスは右側を頼む」

 

「ふっ、私の動きについて来れるか?」

 

「ふっ、愚問だな」

 

 俺とアリスは互いに見合ってお互いに笑みを浮かべる。それから、時にはお互いのプレイ方針で揉めたり、時には熱い展開を前に同じ感情を共有したりしながら俺とアリスは朝までゲームを続けた。

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