神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話 作:プラハ
小鳥の囀る声が響く。窓の外からは朝の陽ざしが差し込んでいる。俺とアリスはモモイが目を覚ましたことをきっかけにゲームをやめて、ヴェリタスに行ったモモイの帰りを待ちながら、アリスと話していると、ミドリが目を覚ますと慌てた表情で周囲を見渡している。アリスはそんなミドリに近づいて。
「ようやく気が付いたか……、無事に目を覚ましたようで何よりだ、君は運がいいな」
「あ、アリスちゃんか……調子はどう?」
「君の言葉を肯定しよう、必滅者よ……」
ミドリはアリスの言葉を聞いて、偏った言葉ばかり覚えてないかと驚愕する。ミドリが大きな声をあげたせいか、ユズも起き上がったので、俺はユズに挨拶をした。すると丁度そのタイミングでドアが開いて、モモイがヴェリタスから帰ってきた。モモイは右手にヴェリタスで貰ってきたであろうアリスの学生証を持っている。
「アリス、これ」
「アリスは『正体不明の書類』を獲得した」
「アリス、これはこの学園の学生証だ。簡単に言うとアリスは俺様たちの正式な『仲間』になった証ってことだな」
そう聞くとアリスは『仲間』と言う言葉の意味をしっかりと胸に刻み込んで、軽快な音楽とともに、「アリスが『仲間』として合流しました!」と嬉しそうにそう言った。正直な話をすれば俺でも出来たが、部活間の繋がりと言うのは大事なものだ。モモイもそれを見越しての行動なのだろう……。
「これで服装と学生証、それに話し方も解決できたから、あとは武器だね! アリス折角だからこの学園のこと案内するよ!」
モモイはこの学園で一番手っ取り早く、武器を手に入れられる場所について心当たりがあるらしい。エンジニア部、俺自身何度かその名前を聞いたことがあるし、勧誘も受けたことがある。俺はアリスに『機械関係の専門家、マイスターがたくさんいる場所』だと伝えると、モモイはそれに付け加えるように、機械全般だけじゃなくて、武器の修理や改造も行っているので使っていない武器などが残っているはずだと言った。
「というわけで、早速行ってみよっか!」
こうして俺たちはエンジニア部へと向かうことになった。
――*――
エンジニア部に辿り着くと3人の生徒がいた。モモイはウタハに事情を説明すると、ウタハはエンジニア部を訪れたのは素晴らしい選択だと賞賛して、色々な武器が置いてある場所に案内するとここにあるものであれば、何を持って行っても構わないと口にした。アリスがキョロキョロと見まわしているとヒビキがアリスに話しかけた。何でもいい武器を見繕ってあげるとのことだった。
「これは拳銃か。プラスチック製みたいだし、口径も小さいから反動も少なさそう……、ん……? NFCとBluetooth……? 何でこんなものが拳銃に……? 」
「すごいね……見ただけで分かるんだ。見た感じ戦闘経験はあまり無さそうだから、はじめてにはぴったりだと思う」
「その言葉は否定します。アリスはこれまでに人類を28回救い、魔王軍との49回に渡る戦闘を行い、三桁を超えるダンジョン探索を行ってきました。経験値はそれなりに豊富です」
「まーアリスの発言は置いといて、俺様としてはアリスにこの武器は合わないと思うぞ」
俺がすぐさま否定したのには理由がある。簡単に言うと耐久性の問題だ。それなりに耐久性はあるだろうが、プラスチック製なので、恐らくはアリスの握力に耐え切れず壊れてしまう可能性がある。モモイとミドリ、ヒビキは疑問符を浮かべている。アリスはハンドガンがお気に召さなかったのか別の場所に移動し始めて、あれはロケットランチャーだろうか……? それをジーっと見つめていた。見たところ重量は大体140から150くらいってところだろうが、アリスなら問題なく持ち上げられるだろう。
「これは……?」
「ふっふっふっ、お客さんお目が高いですね」
コトリが現れてロケットランチャーについて説明を始めた。何でも部の6か月分の予算のおよそ70%を使って作った『宇宙戦艦搭載用レールガン』らしい。おお……、宇宙戦艦……! とてもいい響きだと俺は思う。モモイはその言葉に呆れた表情を浮かべて、ミドリはコールドスリープ装置を作ったが風邪を引いてしまったという話をすると、ウタハがコールドスリープ装置もとい『未来直行エクスプレス』は冷蔵庫として使っているらしい。
「このレールガンは大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器! これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」
確かに宇宙空間では非常に単純な作りの銃でないと撃つことはできない。空気がないから火薬が燃えないわけではない。空気自体は銃弾内部にあるため撃つこと自体は可能だ。しかし、問題なのは銃本体だ。真空状態では液体は一瞬で蒸発する。そうなるとばねによって押し付けられている金属がくっついてしまい、銃は正常に動かなくなる可能性が高くなる。その点、レールガンは宇宙での使用を目的とするのであれば非常に合理的だ。
「ですが今は中断してまして……」
「えええっ!? なんで!?」
コトリは予算を掛けすぎた影響で、宇宙戦艦の製造は中断していると語る。確かに宇宙戦艦となると億単位のお金では到底足りない。そんなこと開発段階で分かることなんじゃないのかとモモイが言うと、そこにウタハが反論する。
「愚問だね、モモイ。ビーム砲はロマンだからだよ」
「その通りです! ビーム砲の魅力が分からないなんて……」
「全くもってその通りだ……」
俺が同意するとモモイが呆れた表情で「馬鹿だ……、頭がいいのに馬鹿の集団がいる……。それにエルナまで向こう側だったなんて……」と言った。天才と馬鹿は紙一重と言う言葉があるが俺はその通りだと思っている。いわば真の天才とは一見すると馬鹿な行為でも取り組むことが出来るような人間のことだ。
「エンジニア部の情熱が注ぎ込まれた、この武器の正式名称は『光の剣:スーパーノヴァ』!」
「ひ、光の剣……!?」
ウタハがレールガンの正式名称を告げるとアリスの目が光り輝いて、興奮し始めた。さながら欲しいおもちゃを前にした子供みたいと言ったところだろうか? アリスはこれが欲しいと『光の剣』を指さすが、エンジニア部のメンバーは難色を示した。どうも『光の剣』には個人の火器として扱うには大きくて、重すぎるらしい。基本重量だけで140kg以上、もろもろを足したうえで砲撃を行った場合の瞬間的な反動は200kgを超えるらしい。撃ったら本体の排熱で手が大火傷するとか、1回撃つために30分チャージが必要とか、根本的に人間が扱うのに問題があるならともかく、でかくて重いだけなら何も問題はないだろう。
「持っていけるのならば、本当にあげたいところなのだけれど……」
「……? ……!」
ウタハの言葉を聞いた瞬間、アリスは満面の笑みを浮かべて、その言葉に嘘はないかと尋ねる。ウタハはあれを持ち上げるつもりなのかと問うが、そんな質問は愚問だろう。アリスはコクリと頷いて『光の剣』へと近づいていき、そして『光の剣』に手を掛けた。
「この武器を抜く物……此の地の覇者になるであろう!」
「ま、まさか……」
アリスは『光の剣』を持ち上げて構える。まあたかだか150kgだ。アリスに持ち上げられないことはない。アリスはトリガーのようなものを見つけると、『光の剣』の銃口を空に向ける。ヒビキが止めようとしたが、それは間に合わなかった。アリスは高らかに叫んで、トリガーを引いた。
「……っ、光よ!!!」
大きな音の後、天井には巨大な穴が開く。コトリは涙目で巨大な穴が開いた天井を見つめていた。なかなかの威力だ……。アリスはこの武器を気に入ってしまったようで、この武器を装着すると宣言した。俺はアリスのほうへと近づいて、俺もこの武器を持ってみてもいいかとアリスに聞いた。
「お主にこの武器を抜く資格があるのか……?」
「ふっ、愚問だな」
アリスが『光の剣』を床に置いたので、俺はそれを持ち上げた。こういうのは実際に触ってみないと分からないものだ。アリスは驚いた表情で俺を見ていた。自分にしか持ち上げられないと思っていたのだろう。思ったよりも軽い。これなら携行兵装として扱っても問題はないだろう。モモイとミドリ、それからエンジニア部の人たちは何故か俺から距離を取っていたので、何でそんなに距離をとっているのかと聞くとモモイが大きな声で叫んだ。
「エルナが笑顔でぶんぶん振り回してるからに決まってるじゃん!」
「もしかして手からすっぽ抜けるとか思ってんのか? そんな初歩的なミスはしないから安心しろって! あ、そういえば、こいつの耐久力ってどの程度なんだ? 例えばこれで敵をぶん殴ったり、0距離でぶっ放したりしても大丈夫なのか?」
「宇宙空間での使用を前提としているので、それなりに耐久性は十分なので大丈夫だとは思いますが……、ひ、人に向けてやりませんよね……?」
コトリがドン引きした表情でそう聞いて来るので、俺はそんなことするわけないだろうと言うと、袖をアリスに引っ張られる。アリスのほうに視線を向けるとアリスは涙目でこちらを見つめていた。俺は慌ててアリスのほうに体を向けて弁解を始めた。
「ち、違うんだアリス……! 別にアリスの武器を取ろうとしたわけじゃないんだ。ほ、ほらすぐに返すから泣かないでくれ……」
『光の剣』をアリスに返すと、アリスは絶対に渡さないとばかりに『光の剣』を抱きしめる。
「取らないから安心しろって! 俺には専用の武器があるから! ちょっと触ってみたくなっただけなんだって! あ、そうだ! どうせなら『必殺技』とか一緒に考えてやるからさ!」
「…………それは真か?」
「本当だって! 」
俺がそう言うとアリスは目を輝かせた。つい勢いで『必殺技』を考えると言ってしまったが、まあよっぽど無理のない範囲であれば、大丈夫だろう。『光の剣』を使用するうえでの問題点は触ってみていくつか分かったので、その問題点に対処できるものが相応しいはずだ。コトリは本当に使えるとは思っていなかったらしく困惑している。やはりこの武器を使用するには相当お金がかかるらしく、できれば別のものにして欲しいと言った。俺はアリスをチラッと横目で見るが譲るつもりは全く無さそうだ。
「いや……、構わないさ、持っていってくれ」
「いいのか?」
「ああ、君に使う気がないなら、この子以外には使えないだろうからね」
ウタハはそう言うと、ヒビキに後でアリスが持ち運びやすくするために、肩紐と取っ手を作ってあげて欲しいと言うと、ヒビキは早速作業に取り掛かった。モモイはアリスに向かっていいものを貰えてよかったねと笑うと、エンジニア部に向かって礼を言った。
「あ、ありがとうございます!」
「いや、お礼にはまだ早いさ」
ウタハはそう言うと、『光の剣』に肩紐と取っ手を取り付けえ終えたヒビキに処分要請を受けたドローンとロボットを全部出すようにと言った。なるほど、そういうことか……。首を傾げるミドリとアリスに俺は「この武器を本当に使える『資格』があるか、我らを倒して証明してみせよ」ってことだと教える。モモイはうんうんと頷いて、アリスは目を輝かせる。
「そこの子の言う通り、他の武器なら喜んで渡しただろう。だが、その武器については確認が必要だ」
わらわらと戦闘型ドローンとロボットが集まってくる。数は25機と言ったところだろうか……。アリスは真剣な表情を浮かべて『光の剣』を構える。俺は最後方に移動して『ディーオデードくん』を構えた。今回はアリスが『光の剣』を扱うのに相応しいかを確かめるための戦いだ。
「俺様はアリスを全力でサポートする! だからアリスは好きなようにしろ! 銃弾は俺様がどうにかする!」
「アリス、行きます!」
そして戦闘が始まった。隊列を成してロボットが接近してくる。ドローンは後方に構えて銃弾を放つが、俺はその中で直撃するものだけを見極めて銃弾を当てて弾道を曲げる。だが、歩兵ロボットはそれに構うことなく進んでくる。が、それに対して……。
「貫け!バランス崩壊!」
アリスの『光の剣』から光が放たれる。その光は一度に5機分の敵を貫いた後、後方に着弾し、その衝撃でドローンが爆発する。見たところ狙いは正確だし、完璧なタイミングを見計らって撃ったことが分かる。現状の問題は次を撃つまでに時間が掛かると言うところだが、この辺はどんどん動きを最適化させて早くすればいいし、誰かが足止めをすればそれは問題にならない。第二陣もアリスの『光の剣』で打ち抜かれ、これで残り5機。
「ドローンが放つ銃弾を正確に狙って弾道を曲げるって、あなた本当に人間ですか!? 実は未来から来たロボットとかじゃないですよね!?」
「おいおい、俺様がロボットに見えるのか? 健康診断だってちゃんと受けてんだからな!」
第二陣が来る。残り6機と言ったところで、ミニガンを構えたコトリが涙目で現れた。流石に俺でもミニガンはどうにもならない。なので天井を一部崩落させる。これで射線は封じた。もちろんミニガンで撃ち続ければ瓦礫を破壊できる。だがそれをする前に『光の剣』が瓦礫を吹っ飛ばして、コトリに到達するほうが速いだろう。つまり、これで完全に『詰み』だ。
「降参です! 降参します!」
コトリは両手を上げて降参の意思を示した。アリスは構えていた『光の剣』を背中に背負った。俺はアリスに近づくと、右手をあげるとアリスは手を出してハイタッチした。小気味良い音が辺りに鳴り響く。ちゃんと教えたとおりの力加減なので俺は安心する。アリスの初めての戦いは見事な『完全勝利』で終わった。
実はここだけの話、エルナとアリスを隣り合った状態で編成すると、戦闘終了時のボイスが2人のどちらかだった場合ハイタッチします。