神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話   作:プラハ

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謎の天才美少女メイド現る

 シャーレの病室に入院してから2日経った。この2日間はとにかくいろんな人に怒られた。それでも最後には無事でよかったと涙を流していたので、自分がここまで誰かに大切に思われていたなんて思いもしなかった。特に怖かったのはノアだ……。あの笑顔で少しずつ追い詰めてくるのでとても怖かった。しかも夢にまで出てきた……。そして先生から今日が作戦決行日だと聞いている。

 

「さて……そろそろ出るか……」

 

 スマホのバイブが鳴動するので確認すると先生から『今日は絶対に大人しく休んでいること。アリスのことは私たちに任せて』とメッセージが送られてきていた。あまりにもタイミングが良すぎると思っただろう? 正解だ。今俺の部屋には大量のお見舞い品が置かれている。フルーツに花、小説、ゲーム、お菓子、ぬいぐるみなど。大量に置かれているが俺に隠れるように盗聴器が巧妙に隠されている。

 

 今俺が置かれている状況はこうだ。現状装備は全て没収されている。部屋には盗聴器が4台。窓は警報機付きで扉の外には監視カメラが仕掛けられている。おまけに不定期で巡回に来るロボットと腕に着けられたGPS 機能搭載の腕輪。この状況で抜け出すのは至難の業と言わざるを得ない。

 

 ちなみに腹の傷はもう塞がっている。と言っても塞がっているだけなので派手に動けば傷口が開くだろう。もしもまた傷口が開いてしまえば、その時はどうなってしまうのだろうか……。

 

 「きゅ、急に悪寒が……!」

 

 想像しただけで体が震えた。と、こんなことをしている場合ではない。脱出の算段を考えないと……。

 

 まずは腕輪。外す、壊す、付けたまま外出するなどの行為で先生に緊急連絡が行くようになっているエンジニア部謹製の腕輪。これについては問題ない。何ならもう外してすらいる。ようは外してもバレないようにシステムに腕輪が付いたままだと誤認させればいいというだけの簡単な話だった。

 

 次に監視カメラ、問題は外に出るまで何台あるか不明なことくらいだが、場所さえ分かってしまえば、俺が通過する5秒間の間だけ映像をループさせるように仕込めばいい。

 

 不定期に確認に来るロボットも状態を伝えるだけ、つまり正常だと言う信号を送るようにしてしまえばいい。だが、問題なのは誰かがここに来る場合だ。機械を誤魔化すことが出来ても人間を誤魔化すことはできない。仮に『CODE:XVIII』を使えたとしても、誤魔化せるのは視覚だけなので触られたらそこで終了だ。

 

 「お困りのようですね」

 

 ドアを開けて現れたのはヒマリともう1人……。確か名前は和泉元エイミだったはず。でも、どうしてここに……? 俺はてっきりアリスの救出の手伝いに行っていると思っていたが……。

 

「私は読んでいました。貴方は確実に病室から脱走を試みると」

 

「まさか監視要員か……?」

 

「違います! 私は先ほど言ったでしょう? お困りのようですね。と」

 

 つまりヒマリは病室からの脱走に手を貸してくれるらしい。いいのかと聞くとヒマリは呆れた表情でどうせ止めても行くつもりなのでしょうと返してきた。思わず言葉に詰まるとヒマリはため息をついて、ヒマリの指示には絶対に従うというのを守れば脱出に協力してくれるらしい。

 

「いや……ヒマリ先輩に絶対服従とか怖いからやめとくわ」

 

「いいんですか? ここで私に従わないと手が滑ってしまうかもしれません」

 

「お、脅しのつもりか……!? そんなものに俺様は屈しない……!」

 

「ふふふ、そんな態度をとっていいんですか? 実は、セミナーの会計さんの端末をハッキングしたら面白いものが手に入りまして……」

 

 ま、まさか……。ヒマリは右手にスマホを持ってとある音声データを再生しようとしたので慌てて止める。こうなってしまった以上、従う以外に道は残されていないらしい……。俺はヒマリを睨みつけるがどこ吹く風だった。エイミはとても楽しそうにしているヒマリを見てうわぁ……と引いていた。

 

 しかし、ここから抜け出すにしても1つだけ問題が残っている。それは仮にここに誰か人が来た場合、どうするかという事だ。それについてはどうするつもりなのかとヒマリに聞く。

 

「もちろん影武者を用意してあります」

 

「部長……私が影武者になるのは無茶があると思う」

 

「確かにそうだな。背丈が違いすぎる……」

 

「ちゃんとエルナに近い体型の人を呼んでいます! 『()()()』したら快く協力してくださるとのことだったので……」

 

 それはお願いと書いて脅迫と読むのではないだろうかと言うと、エイミはヒマリに非難の視線を送ると、ヒマリはそんなことしていません! 私のことを何だと思ってるんですか!? と憤慨して、むしろこっちが困るくらいに食いついてきたと言って、咳払いをすると控えめにドアをノックする音がして、1人の女生徒がとても緊張した面持ちで病室に入ってきた。あの子の名前は確か七篠ネムという名前で、セミナーに所属している生徒だ。

 

 「影武者になるってことは、ノア先輩を裏切ることになるんだけどネムはいいの?」

 

 「は、はひ! 大丈夫でしゅっ!」

 

 「ホントに大丈夫……? なんか顔赤いし、息切れしてるけど……」

 

 何と言うか本当に任せても大丈夫なんだろうか……? ネムは絶対に大丈夫です任せてくださいの一点張りだ。あまりの勢いに少し気圧されてしまいそうになったので、ヒマリの方に視線を向けると無言で目を逸らした。多分だが、ヒマリもあの勢いにやられてしまったのだろう……。まあ背丈が近いのは事実なので、ウィッグとかを被せればそれっぽくなるだろうが、とても不安だ……。

 

 「さて、これで全ての憂いは無くなったわけですが……、人にものを頼むには相応の態度というものがあります」

 

 「土下座でもしろってか?」

 

 「いいえ♪ エルナには『ヒマリお姉さま、どうか僕に協力してください』と言ってもらいましょうか♪ そうすれば協力しましょう」

 

 「なっ……!」

 

 ヒマリは心底愉快そうに笑みを浮かべる。だが、ここで従わなければ、あの音声が拡散されてしまううえに、脱走を企てたことがバレてしまう。どうあがいてもこの状況は詰みだった。エイミはヒマリに抗議するような目線を送っているし、ネムはわくわくした表情で成り行きを見守っている。どうやら誰も助けてはくれないらしい。だけど、その程度でどうにかできるのならプライドなんて安いものだ。

 

「ヒマリ……お姉さま、どうか……僕に協力してください……!」

 

「はうっ……! こ、これは……なかなか……」

 

「ひょわっ!」

 

 ヒマリは胸を押さえながら顔を赤く染めていた。そして何故かネムは奇声を発して倒れそうになったので僕が慌てて支えると顔を真っ赤にして気絶した。そんな様子を見たエイミは深いため息を吐いている。ヒマリは少し興奮した様子でもう一度だけお姉さまと呼んで欲しいと僕に迫るが、『契約』はきちんと果たせば協力すると言ったのだから、協力してもらうと言うと、ヒマリは露骨にがっかりした表情をした。俺は気絶してしまったネムを抱えてベッドの上に寝かせた。

 

「その恰好のまま行くつもりですか?」

 

「あ……」

 

 ヒマリの指摘で俺が今、患者服を身に纏っていることに気が付いた。今から家に戻って服を着替えるだけの時間はない。ヒマリに着替えはあるのかと聞くと、持ってきていないらしいが、着替えならあると言って、とあるものを指さした。あ、あれは……。

 

「えっと、どうしてもあれじゃないとダメか……? た、例えばここから向かう途中で買うとか!」

 

「そうしている時間も惜しいと言う状況だと言うのはエルナも分かっているでしょう?」

 

「わ、分かった! 着るっての! もうっ! どうしてこんなことに……!」

 

「自業自得では?」

 

 ヒマリの言っていることは正論だったので何も言い返すことは出来なかった。仕方なく俺は服を脱ぎ捨てて、『それ』に身を包んでいく。まさかまたこれを着る羽目になるだなんて思いもしなかった……。

 

 「良く似合ってますよ」

 

 「う、うるさい! さっさと行くぞ!」

 

 こうして俺たちは病室からの脱走を成功させた。絶対に救ってみせる……。

 

 ――*――

 

 私たちは窮地に立たされていた。『アバンギャルド君』の圧倒的な火力と固い装甲の前に足止めされていた。まさかこんなところに伏兵が潜んでいたとは思わなかった。おまけにAMASはどんどん数を増やしている。徐々に逆転までの道筋が遠のいていくのを感じる。このままでは……。

 

「C&Cがいない今、それは会長にとって『先生』を制圧できるチャンス……」

 

「ってことは、ここまで全部会長の手の平の上だったってこと!?」

 

「最初から仕組まれていた罠だったんだ……」

 

 リオは語る。C&Cと先生を分断することそうすればこちらの計画が伝わることなんて万に1つもないのだと。どうやらリオの方が戦略においては一枚上手だったらしい。最後通牒が宣言される。しかしそれに割り込むように、スピーカーからヒマリの声が響く。

 

「1つだけ忠告しておきます。確かにあなたは優秀です。よくもまぁ、バレずにこのような都市を建設できたものだと……ある意味感心します」

 

「どういう意味かしら……?」

 

「あなたは自身が正しいと信じたら振り返らずに突き進むでしょう? それはあなたの長所であり、同時に弱点でもあります。あなたは一度でも誰かに相談しようとしたことはありますか? 人間一人で出来ることなんてたかが知れているのです。自分一人でどうにかできると思い込んだ。その思い込みこそがあなたの最大の弱点なのですよ」

 

「一体何を……」

 

 リオがそこまで言ったところで、空からミサイルの雨が降ってきた。スピーカーからリオの驚愕する声が聞こえる。取り囲んできていたAMASは全滅したが『アバンギャルド君』は未だに健在だ。一体誰が……?

 

 空を見上げるとメイド服にヘルメットを装着した小さい少女が月をバックにビルの頂上に立っていた。爆風によって生じた煙が完全に晴れるとビルの上に立っていた謎の少女はビルから飛び降りてきて軽やかに着地する。

 

 「これ……本当に言わなきゃダメか……?」

 

 「……………………」

 

 「わ、分かったって言うよ! 言うっての!」

 

 謎の少女は誰かと通信機でやり取りしているらしい。恐らくその通信相手はヒマリだと思うが、この謎の少女は一体誰なんだろうか……? 謎の少女は『アバンギャルド君』の方に体を向ける。

 

「わ、私は謎の天才美少女メイド! ルナ! わるーいご主人様にはご奉仕しちゃうぞっ☆」

 

 謎の天才美少女メイド改めルナはビシッと決めポーズをした。空気が凍った。皆ピシリと固まったように動かない。ヒマリは本当にやると思わなかったと大爆笑している。ルナはそれを聞いて帰ったら絶対に覚えておけと低い声で言うと、カーテシーのポーズを取った。

 

「では、参ります」

 

 ルナの両手にはいつの間にかサブマシンガンが握られていたかと思うとそれを即座に発砲する。しかし、銃弾は全て弾かれてしまったようだ。アバンギャルド君の銃身がこちらに向けられるがそれも気にせずルナは撃ち続ける。その程度の銃弾で『アバンギャルド君』の装甲は貫けないとリオは自信あり気に言うが、撃たれるとそう思った瞬間に『アバンギャルド君』の銃身が落ちた。

 

「なっ……!? いったいどういう事!? 何が起こっているの!?」

 

「アバンギャルド君……いいネーミングセンス……それにカッコ良いと可愛さを両立しているいいロボットだと思う」

 

「そ、そう……」

 

 リオは少し嬉しそうにしているような声がスピーカーから聞こえる。

 

「確かにアバンギャルド君の装甲は堅牢……ですが、関節部はどうでしょう?」

 

「ま、まさか……関節部だけを狙い撃ちしたっていうの……!?」

 

「そういうことでございます。では終わりにいたしましょう」

 

 つまりルナがやったのはフルオートで発射される弾丸を全て関節部の脆い部分に全て命中させたということになる。あまりの神業に私たちは驚きを隠せなかった。だが武器は使えなくなったとはいえ、アバンギャルド君はまだ動く、その巨体を活かしてこちらに突進攻撃を仕掛けてきた。ルナはそれを飛んで避けると、アバンギャルド君に飛び乗ってひょいひょいとアバンギャルド君の体を登っていく。

 

 アバンギャルド君はルナを振り落とそうと暴れまわるが全く通用していない。

 

「これを壊すのはとても惜しい。だから一時的に機能停止させてもらうぜ! ……でございます」

 

 ルナがアバンギャルド君の頭部に触れるとルナの手の周りが一瞬だけ発光した。スタっと地面にルナが着地する。

 

「ご奉仕……完了」

 

 そう言うと同時にアバンギャルド君が完全に停止する。最初は割と嫌がっていたように見えたのに、今では結構ノリノリだ。今もちゃっかりと決めポーズまでしている。

 

「すご……」

 

「もしかしてメイド部の6人目のメンバーなのかな……?」

 

 ルナはゆっくりとこちらに向かってくると、ここからは私も協力すると協力を申し出てくれた。こんなに強い子が協力してくれるなんて百人力だ……。でも、あのヘルメットの下が私は気になってしょうがない。そう思っているとモモイがどうしてヘルメットを被っているのかと質問を投げかけた。ルナは少し焦っている。恐らくは立場上本来はリオ側についていないといけない立場の人なのかもしれない。私も気にはなるが詮索は後でいくらでも出来るはずだ。

 

 本番はこれからだ。でも不思議とここにいるみんなと力を合わせれば、きっとどんな困難でも突破できるって……そう思った。

バッドエンドIFって書いたほうがいいですか?

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