神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話   作:プラハ

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暫くお仕事が忙しくなるので更新は週一になりそうです……


空が青いその理由

 チンという音ともに、最上階へとたどり着いた。『先生』たちとようやく合流することができた。恐らくはここにアリスがいるはずだ。

 

 「リオ会長、あなたの頼みの綱はもうありません。それでもまだ戦うつもりですか?」

 

 俺はサブマシンガンを構えてリオ会長に向ける。リオ会長はトキが敗れた時点で持って居る手札は全部消えたと言い、自身の敗北を認めた。リオ会長はアリスがキヴォトスに終焉を招く存在だとしても助けるのかと問うと、モモイはアリスのことをそんな風に言わないでと怒った。

 

 「リオが何を根拠に動いたのかは分からない。でも、1つだけはっきりと言える。君は誰にも相談せずに1人で全部判断して結論付けた。そして自分が正しいと思ったことを他人に強要した」

 

 「先生……貴方も私の行動が独り善がりだと言うの……? でも……私は……!」

 

 彼女の過ちを俺は全部間違いだとは思えなかった。組織の上に立つ人間は時に残酷な選択をしなければならない時がある。アリスと関わらなければ、俺も同じ選択をしていたかもしれないと、そう思ったから。だけど、このキヴォトスには『先生』がいる。どこまでもお人好しで『生徒』のためなら、絶対に諦めないそんな存在が。チヒロからアリスの居場所が分かったと連絡が入ると、モモイたちはそこに向かって行った。

 

「アリス……」

 

 アリスがいる場所に辿り着くとアリスは眠ったように動かない。声をかけても何の反応もない。『先生』がアリスの名前を呼んだ瞬間、電気が消えて、モニターが怪しく点灯する。モニターには『Divi:Sion』と表示された。俺の危惧していた通りの出来事が起きてしまったらしい。外から爆発音が聞こえる。チヒロとの通信にノイズが入ったかと思うと、通信は切断された。エリドゥのシステム全体がハッキングされたなんて生ぬるい状況ではない。都市全体が変質を始めた。

 

「早くケーブルを外してアリスを……!」

 

「いや、それは駄目だ」

 

「その通りです」

 

 声がした方向に視線を向けると目が赤く光っているアリス……ではなく『鍵』の姿がそこにあった。どこまでも無機質な瞳がこちらを射抜いている。『鍵』はアリスの表層人格は内部データベースの深層部に隔離されている、強制的に接続を解除すれば取り返しのつかない損傷が発生すると警告した。モモイはアリスに何をやっているのかと聞くが、ミドリはあれがアリスではないと気が付いたみたいだ。

 

 「アリス……、それはあなた達が私たちの『王女』を呼ぶ際の名称。『王女』に名前は不要です。名前は存在の目的と本質を乱します」

 

 「あなたは一体誰なの!? アリスちゃんを返して!」

 

 「私の個体名は『Key』。王女を助ける無名の司祭たちが残した修行者であり、彼女が戴冠する玉座を継ぐ『(Key)』です」

 

 『鍵』は語り続ける。我々を妨害していた攻撃が止まったことを確認した。これからエラーを修正し、本来あるべき玉座に『王女』を導かせていただくと宣言しプロトコルATRAHASISの稼働を開始した。何としても止めなければ……!

 

 「動かないでください」

 

 「なっ……!」

 

 俺がアリスのもとに向かおうとした瞬間、『鍵』がケーブルを手に取って俺の行動を制止させ、これ以上近づけばこれを引っこ抜くと『鍵』は言った。『鍵』は俺から視線を逸らさないようにじっと見つめて、何か1つでも妙な動きをすればケーブルを引っこ抜くつもりなのだろう。これでは俺は何もできない……。『鍵』は無名の守護者たちを呼び出すと、リオ会長がエリドゥの各地で無名の守護者たちが出現したと言った。

 

 「一体何が……」

 

 「この都市のシステムが逆に利用されてるというわけだ」

 

 「そんな……私は……」

 

 リオ会長が項垂れる。それは無理もないだろう。良かれと思って下した非情な決断が却って事態を悪化することになってしまったのだから。このままではキヴォトスが終わる。都市の変質が進んでいく。リオ会長は決意のこもった表情で立ち上がったかと思うと、俺たちに向かって逃げるようにと言い放った。自分の命1つで世界が救えるのならそれでも構わないと。

 

 ……………………。

 

 「リオ会長、その必要はないですよ」

 

 「そんなことを言ってる場合じゃ……!」

 

 リソース確保99%……。

 

 「ノア! 今よ! 電力という電力を全部落としちゃって!」

 

 「は~いユウカちゃん。その言葉を待ってました♪」

 

 ユウカとノアの声が通信機から響く。どうやらギリギリで間に合ったらしい。ノアの可愛らしい声とともにスイッチが押された。それによって『鍵』はリソースの確保に失敗したのかシステムが停止した。ユウカがこちらの安否を確認すると、モモイが何でここにいるのかと質問すると、ノアが最初は場所だけ教えるつもりだったがユウカがこれだけではダメだと最後までなんとかしないと言っていたと語ると『先生』がユウカを褒めた。

 

 「これくらい当然です」とユウカが得意げな表情を浮かべた後、リオ会長に向かって予算を横領してこんな都市を作ったことは後で説教を行うので覚悟しておくようにと宣言した。

 

「あとエルナ! どうせそこにいるんでしょ!? どうやって病室から抜け出したのか知らないけどあとでこっそり戻ってきても無駄だから覚悟しておきなさい!」

 

「何でバレた!? …………あ」

 

 モモイたちの視線がこちらに集まっている。しかし、今はそんなことをしている場合ではない。恐らく『鍵』は自身を保護させるために無名の守護者をここに集結させるはずだ。幸い『鍵』の視線は俺から逸れている。今なら外へ行けるはずだ。アリスのことはモモイたちに任せるべきだ。そう思って外へと駆けだそうとした瞬間、俺の首根っこをネルが掴んだ。

 

 「ぐぇっ! ネル先輩何をっ!?」

 

 「傷口開いてんだろ? 大人しくしとけっての」

 

 「いやいや! アンタ人のこと言えんのか!? どっちもどっちだろ!」

 

 「とにかく外のやつらはアタシに任せとけ」

 

 「そんなこと言われて……も?」

 

 肩をガシッと掴まれる。振り返るとニッコリと笑みを浮かべた『先生』がいた。『先生』は俺の耳元に口を近づけると帰ったらお仕置きだからね? と呟いた。常人よりも遥かに優れた五感を持つ僕にとって耳元で囁かれるというのはかなり効く。わずかに当たる吐息と低音の振動を感じて腰のあたりがぞくっと来た。耳を抑えて『先生』を睨みつける。

 

 「ってこんなことしてる場合じゃないって! 早く行かないと!」

 

 「ううん、大丈夫だよ」

 

 「邪魔者? 論理エラー発生、確認のため画面を表示します」

 

 『鍵』がモニターにエリドゥの様子を投影するとそこには無名の守護者たちと戦っている改造されたアバンギャルド君とエンジニア部の姿が映し出された。その名も『アバンギャルド君Mk.2』、宇宙戦艦でも使える兵器を搭載した兵器。これがあれば廃墟の怪物であっても敵ではないとウタハが言った。この短時間でこれだけの改造をするなんて……。

 

 ウタハの宣言通り、無名の守護者たちはアバンギャルド君Mk.2によって次々となぎ倒されていく。それを見た『鍵』が無名の守護者たちにアバンギャルド君Mk.2との戦闘を避け、ここに来るようにと命令を実行するが、それはもう無意味だ。

 

 「申し訳ありませんが、その子たちはここまで来られませんよ。タワーの入口でしたら、エイミとC&Cのメンバーが塞いでおりますので」

 

 何もないところから現れたヒマリの姿を見てモモイたちが驚愕する。いや、まあ最初からここにいたんだけどね……。エレベーターが最上階に辿り着く前にヒマリは俺の発明品である『CODE:XVIII』を使用した。恐らくはシャーレに保管してあったものを勝手に取ってきたのだろう。俺もそれなりに倫理観が欠けているほうだと自覚しているが、ヒマリに至っては間違いなく俺以上に倫理観が欠けていると言っても過言じゃない。

 

 「これが『Key』……。無名の司祭の『古代遺物(オーパーツ)』を稼働させるためのトリガーAIですね」

 

 「現状、『鍵』は詰んでる。だが、このままだとアリスの人格は『鍵』に置き換えられた後、『名もなき神々の王女』として覚醒する……」

 

 「そ、それじゃあ……」

 

 「エルナ……それって……もう……」

 

 「落ち着け! まだ手はある。多分皆なら出来るはず……。ううん違う、皆にしかできない」

 

 事態は一刻を争う状況だ。恐らくはもう無名の司祭は動き出している。

 

 「何をすればいいの?」

 

 「『Key』の起動でデータベースの深部に隔離されてしまったアリスを起こすのです。そうすればこの事態を止める事ができるでしょう」

 

 「でも、そんなのどうやって……? 私たちがいくら声をかけても駄目だったのに……」

 

 「アリスの精神世界に侵入する。そのための設備はここにあるよね?」

 

 「ええ、あるわ。でもそれはあまりにも危険すぎる……! 下手をすれば二度と戻って来れなくなってしまうのよ!」

 

 リオ会長の言う通りだ。だが、最早四の五の言っている余裕はない。それに僕は信じている。『先生』と『ゲーム開発部』の皆なら絶対にアリスを連れ戻すことができると。確かに危険はある。だが、それは全力でこちら側がサポートすればいい。可能か不可能かなんてことは問題じゃない。可能にする。それが僕たちがやるべきことだ。俺は皆に視線を向けると、すでに心は決まっているのか。

 

「やります。それでアリスちゃんを連れ戻せるのなら。例えどんな危険が待ち受けていようと絶対に……!」

 

「よし! ヒマリ先輩! 早速始めるぞ!」

 

「いえ、エルナ……貴方も行くんですよ?」

 

「え……、でも俺はゲーム開発部じゃないし……」

 

 届けたい言葉はある。僕が『戦闘人形』から『人間』へと変わるきっかけになった言葉。でも俺の言葉じゃきっとアリスに届かないかもしれない。それに俺が関わることでアリスの救出に失敗してしまうかもしれない。そう思うと足が竦んで、動けなくなる。怖い、自分の選択がアリスを失う切欠になってしまうかもしれないということが。いくつもの失敗パターンが頭を過っては消えていく。だってこれまで『戦うこと』はできても『誰かを救うこと』なんて今まで一度だってできたことは無かった。だからきっと今回だって……。

 

 「エルナ!」

 

 モモイの呼びかけで負ネガティブな思考ループから意識が逸れる。モモイは真剣な表情で僕を真っすぐ見ている。

 

 「アリスを助けたいの? それとも助けたくないの? どっち!?」

 

 「そんなの……助けたいに決まってるだろ……でも……僕がいることで失敗したら……」

 

 「絶対大丈夫だよ! だって私たちがついてるんだから!」

 

 「何の根拠があってそんなこと……」

 

 「できる! 絶対にできる! だから行こう! 一緒に」

 

 モモイが僕に手を差し伸べる。僕はその手を少しの間だけ見つめて、モモイの顔を見た。その顔には微塵も失敗の可能性なんて考えていない。どこまでも未来を、夢を、希望を見ている表情をしていた。その表情がかつての誰かの表情と一瞬だけ重なって見えたので、俺は目を見開いた。ああ、そうだ。そうだった。何を怖がっていたんだろう。こんなところで足踏みしてたらアイツに笑われる。それにこんなこともできないようじゃ僕は『世界』を救えない。僕はモモイの手を握って笑う。

 

「うん、行こう一緒に」

 

「それでは始めましょう」

 

 服を着替えた後、ヒマリが精神ダイブ装置を作動させると、一瞬だけ意識が落ちる。そして次の瞬間、見覚えのある場所に辿り着いた。ここはアリスと初めて会った場所。その中心でアリスは目を瞑っていた。モモイがアリスに声をかけるとアリスはゆっくりと目を開けて辺りを見渡している。そんなアリスのもとに皆が集まっていくと、アリスは悲痛な表情を浮かべた。

 

「モモイにミドリ……ユズ……先生……それにエルナも……。どうして……ここに……?」

 

「そりゃ家出したアリスを迎えに来たんだよ!」

 

「アリスちゃん、帰ろう? 私たちの場所に」

 

「できません……。アリスは……アリス……は……」

 

「王女よ、あなたが見てきた光景を忘れましたか?」

 

 アリスの後ろからアリスと全く同じ姿形をした存在が姿を現した。あれは『鍵』。アリスをここに閉じ込めた元凶。『先生』はアリスが見てきた光景とは何のことかと質問すると『鍵』は空中に映像を投影する。映し出されたのはここまでの戦い。そのなかで俺たちがどれだけ走り、転んで傷ついてきたのかが鮮明に表示されていた。『鍵』は言う。何故このようなことになってしまったのか、その答えをアリスが知っているのではないかと。

 

 「アリスは……帰れません……アリスがみんなのそばに居たら……みんなはその分傷ついてしまいます」

 

 「アリスちゃんそれは違うよ!」

 

 「ミドリの言う通りだよ。アリスちゃん、私たちはそんな事……」

 

 「でも、みんなはアリスのせいで怪我をしてしまいました。エルナも……あんなに血を流して……」

 

 アリスは涙を流しながらそう言った。それは覆しようのない事実だ。それでも僕は……。

 

 「アリスは……勇者ではなく魔王ですから。いつか世界を……キヴォトスを滅ぼすかもしれない魔王として、産まれた……から……アリスがここにいたいと願ったことで大切な誰かが傷つくならいっそ……アリスは……アリス、はこのまま消えるのが正しいのです」

 

「『テイルズ・サガ・クロニクル2』は……! 私たちが一緒に作ったゲームは! 特別賞を貰ったよ! キヴォトスの終焉? 何を言ってるの? アリスがいるだけでみんなが傷つく? 誰がそんなバカなことを言ってるの!?」

 

 モモイは語る。アリスに会えたおかげでゲームを作ることができて、ミレニアムプライスで賞を貰えて、部活を守ることができたのだと。それにミドリとユズ、『先生』が同意する。アリスは困惑した表情でモモイを見つめていた。アリスがいたからここまで来れた。魔王だから消えなくちゃいけないだなんてそんなことは絶対に納得できないとモモイは叫ぶ。

 

 「アリスのせいで……みんな怪我したのに……なんで、みんな……アリスを怖がったり……憎んだりしないで……そうやって……」

 

 「だって! アリスちゃんは私たちの仲間(友だち)だから……!」

 

 「この前……アリスちゃんが言ってくれたことあったよね?」

 

 ミドリがRPGのタイトルを挙げていく。どんなゲームでも主人公たちは決して仲間を諦めないと。例えアリスが魔王だったとしても関係ない。魔王なんてものはただのジョブに過ぎないとモモイは言った。それに自分が誰なのか、それは自分自身で決めるものだと。アリスがなりたいジョブを選べばいいとモモイは言う。

 

 「戦士、騎士、魔法使い、僧侶――なんでもいいよ、アリスちゃん。もちろん他の職業でも」

 

 「その……勇者もいるよ」

 

 「だからアリスの本音を聞かせてほしいな」

 

 「その必要はありません王女。いくらそうなりたいと願っても王女、あなたの本質は『滅ぼすもの』。それが変わることはありません」

 

 「アリスは……アリスは……」

 

 アリスは迷っている。自分の中で答えはとっくに出ているはずなのに、一歩踏み出すことを躊躇っているように見えた。

 

「アリス」

 

「エルナ……」

 

 俺がアリスに声をかけるとアリスはビクッと体を震わせて俯いた。だから俺はもう一度アリスに声をかけるとアリスは顔を上げた。

 

 

 「アリス……、それから『Key』二人には俺の出す質問に1つだけ答えてもらう」

 

 「質問……?」

 

 「それに答える必要性が感じられません」

 

 「いいや、俺の出す質問に正解できれば俺たちは何もせずここから帰ってもいい」

 

 「なっ!?」

 

 「いいでしょう」

 

 モモイが驚愕の声をあげるが『鍵』はそれを了承してしまった。だが、絶対に大丈夫だ。だってこの質問に僕は正解できなかったのだから。この質問に答えると言った時点で僕たちの勝利はもう決まっている。

 

「どうして空は青いと思う?」

 

「大気中の分子によって光が散乱し波長の短い光を私たちは青として見ているからです」

 

「王女の言う通りです」

 

「ぶっぶーハズレー。つまんない答えだね」

 

「いいえ、私たちの回答に間違いはありません」

 

「いーや、違うね。そんなのは誰かが勝手に決めた理屈に過ぎない。俺と皆の見ている『青』が同じ青だってどうやって証明する?」

 

「屁理屈を……」

 

『鍵』が俺を睨みつける。僕も最初にその質問をされた時同じような回答をしたものだ。あの頃の記憶は今でも鮮明に思い出すことができる。

 

「いいか、よく聞け。空が青い理由。それは俺が決めたからだ。だから空は何色であってもいいし、俺が望む限りどこまでもだって続いていくし、望む限りどこにだって空はある」

 

「何を……」

 

「世界ってのは個人の主観によって形成される。つまり世界ってのは自分の主観でどんな風にも変えることができる。だから誰かに言われた答えは真実じゃない。自分の意志で決めたことが答えなんだ。だから聞かせて欲しい」

 

 アリスが望む空の色は何色なのか? アリスが望む世界はどんな世界なのか? アリスが望んでいる未来は? アリスが求めている幸せは? アリスが叶えたい夢は? アリスが守りたいものは? アリスが本当にやりたいことは?

 

 僕は質問を投げかける。

 

 「アリスの望む空……、アリスの望む……世界は……」

 

 「アリスが産まれた目的は覆せない。だけど! どう生きるかは自分で決めていんだ! だから拒絶しろ! だってアリスは『勇者』なんだろ!」

 

 「そうだよ! 魔王だって勇者になっていいんだよ」

 

 「最近だとそういうお話がヒットしてるからね!」

 

 「もしそういうブームがなかったとしても私たちが、次回作として作ればいい」

 

 アリスが真っすぐ俺たちを見つめる。そして高らかに宣言を始める。

 

「アリスは……魔王として生まれました。でも……アリスは……勇者になりたい! だからアリスはアリスの生まれた目的に、アリスに下された命令を拒絶します! アリスは『AL-1S』でも『名もなき神々の王女』でもありません! アリスはゲーム開発部の部員で! 光属性アタッカーで! 勇者です!」

 

 突如としてアリスの目の前に巨大なものが現れた。それはまるで担い手を長い時間待っていたかのような時の流れを感じさせる。

 

「これは……!」

 

「勇者の剣……アリス! これ!」

 

「勇者の剣を……!」

 

「抜くんだよ、アリスちゃん!」

 

「一体どういうことですか!? ありえません……こんなことは……!」

 

「何もおかしいことはない。ここはアリスの世界。アリスが望むならどんなことだってできる。さあ、抜けアリス勇者の剣を!」

 

「…………はい!」

 

『光の剣』に手をかけて、アリスは引き抜こうとするが、ビクともしない。まるでセメントで固められているかのように。だが少しずつ動いている。ゆっくりと着実に。

 

「アリスはもう真実から逃げません! たとえどんな残酷な真実や絶望があってもアリスは立ち向かい続けます! だってアリスは勇者なんですから!」

 

『光の剣』が完全に台座から離れる。苔むしていた砲身は引き抜かれると同時に綺麗に光り輝いて、砲身に光が収束してゆく。『鍵』はそんな様子を呆然とした表情で眺めた後、俺の方に視線を向けて叫ぶ。

 

「あなたなら分かるはずです! 私たちと同じく滅ぼすために産みだされたあなたなら! なのにどうしてこんな……!?」

 

「そんなの決まってるだろ。それを達成しても俺自身が嬉しくないからだ。お前は与えられた命令を果たしたとき、そこに喜びを感じられるのか? 達成感を得られるのか?」

 

「それは………………」

 

「たっぷり反省してから出直してこい。また出てきた時は一緒にゲームでもやろうぜ」

 

 光の収束が終わる。臨界点に到達したそれは『鍵』へと向けられる。そして引き金は引かれた。

 

「光よ――――――!」

 

 真っすぐと放たれていく光は『鍵』へと向かっていく。

 

「王女よ……あなた……は……」

 

「アリスのクラスは『王女』ではありません! 『勇者』です!」

 

「理解……不能……」

 

『鍵』が光に包まれる。そして俺たちの意識も遠のいて…………。

 

 目を覚ますと元の状態に戻っていた。これでこの一連の騒動も完全に終わりを迎えた。

 

「はっ!? アリスはどうなったの!?」

 

「アリスちゃん! 起きた!?」

 

「アリスちゃん!」

 

 みんなもほぼ同時に目を覚ましたらしい。それと同時にみんなはアリスの方へと向かって行く。

 

「あの子たちはどんな不可能だって可能にする。だってあの子たちは勇者とそのパーティメンバー(ゲーム開発部)だからね」

 

 涙を流しながら抱き合っているみんなとアリスの様子を俺は眺めていると、みんながピタリと動きを止めて俺の方に視線を向けた。僕もあそこに入れということなんだろうか? なんてことを考えていると『先生』が僕の背中をポンと叩いて、エルナも行って来たら? と言った。

 

「そうだよ! エルナも!」

 

「はい! エルナはアリスの大切な仲間なんですから!」

 

「でも……」

 

「エルナは強情だなぁ……むしろこっちからいっちゃおう!」

 

「うん、そうだね!」

 

「うわぁ! ちょっ!」

 

 みんながあっという間に僕を取り囲んで、皆に抱きしめられる。でも、悪くない気分だ。自然と口角が上がっていく。ああ、本当にこの学園を選んで良かったと僕は心の底からそう思った。

バッドエンドIFって書いたほうがいいですか?

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