神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話   作:プラハ

39 / 44
エピローグ ミレニアムサイエンススクール

 夜の帳が落ちた頃、俺はとある場所で待っていた。当然誰にも内緒で、性懲りもなく病院から脱走してここまで来た。犯した責任から目を背けようとしているもう1人を止めるために。机の上に座りながら足をプラプラと揺らして待っていると、待ち人は訪れた。

 

「よう、ここに来ると思ってたぜ」

 

「なっ! どうしてここに……!?」

 

「どうしてって決まってるだろ? リオ会長、あんたを止めに来た」

 

 リオ会長は俺がここにいることに気が付くととても驚いた表情を浮かべていた。その右手には紙が握られている。その正体は見なくても分かる。恐らくは謝罪文か何かだろう。そしてリオ会長は会長を辞めるつもりだということは分かっている。だが、そんなことをさせるつもりはない。

 

 これは俺のエゴだ。確かにリオ会長は大きな過ちを犯した。だけど人間は過ちに気づいたとき、一歩前進することができる。その過ちから目を背けずに真正面から向き合うことを選択すれば……だが。

 

「あなたには関係ないでしょう?」

 

「いーや、関係あるね。ここで逃げる選択をするなら、俺様は一生あんたを許さない。いいか一生だ。でも」

 

 ここで言葉を一度区切って前に進む。リオ会長が俺から目を背けようとしたので、顔を掴んで無理やり目を合わせさせる。リオ会長の瞳は不安な感情で揺れていた。誰だって自分の罪と向き合うことは怖いものだ。アリスだって、残酷な真実と向き合うことを恐れ目を背けようとした。だけど最後にはアリスは自分が滅びを招く存在であるということから目を逸らさずに真実と向き合った。

 

 だったら次はリオ会長が真実と向き合う番だ。ここで向き合うことを選択しなければ、一生後悔することになる。そんな選択をさせたくない。これは俺のエゴに過ぎないのかもしれない。そうだとしても俺はこの人に前を向いて生きて欲しい。

 

 「僕はあなたを許すよ」

 

 「なにを……言っているの……?」

 

 「確かにリオ会長は許されないようなことをしたのかもしれない。だけど僕はそれを許すよ。1人でみんなと向き合うのが怖いなら、怖くなくなるまで僕がそばにいるからさ」

 

 僕がそう言うとリオ会長は顔を伏せた。

 

 「どうして……そこまで……してくれるの……? 私は……ひどいことを……」

 

 「うーん、放っておけなかったから……かな。何ていうか結構センスが似通ってると思うんだよね。僕たち」

 

 特にアバンギャルド君はかなりいいネーミングセンスとデザインだと思うし。何故かみんなは分かってなかったみたいだけど……。そう言うと「何よそれ、たったそれだけのことで?」とリオ会長はクスリと笑った。そのタイミングで俺はリオ会長の右手から紙を抜き取ると、それを空中に放り投げるとビームで焼失させた。だって、これはもういらないものでしょ? と俺が言うと、リオ会長はポカンとした表情を浮かべていた。

 

 「そうね……。私は自分のしたことにちゃんと向き合うことにするわ」

 

 「うん、それがいいよ」

 

 「ありがとう……」

 

 リオ会長が頬を赤く染めて小さな声でそう言った。さて、そろそろ戻らないと……。俺はセミナーの執務室から退出しようとすると、リオ会長が俺を呼び止めた。

 

「明日、お見舞いに行くわ……。だから……その時は……」

 

「ん? もしかしてモモトークの交換?」

 

 リオ会長がコクリと頷いた。俺も最近ようやくモモトークを使いこなせるようになったので、リオ会長にはいろいろと伝授してあげることにしよう。もちろんOKだと言うとリオ会長は表情には出ていないが、とても嬉しそうにしているのが雰囲気から伝わってくる。

 

「じゃあ、また明日」

 

「ええ、また明日」

 

 リオ会長と別れの挨拶を交わして、俺は病院へと戻っていった。

 

 ――*――

 

「つ、疲れた……。それにしてもノアとユウカめ……あそこまで怒ることは無いだろうに……!」

 

 まさか、朝一からリオ会長が来るだなんて思わなかった。お目当てのモモトークの交換を終えて暫く談笑していると、ズカズカという足跡ともにユウカが病室に入ってきたのだ。それからリオ会長と一緒にユウカから説教を受ける羽目になって、途中でノアも合流。リオ会長がうっかり昨日の夜、俺が病室から抜け出したことがバレてしまい、余計怒られる羽目になり、2時間以上お説教は続いた。

 

「それにしてもリオがあんな風になっちまうなんて、昨日の夜何したんだ?」

 

「罪から逃げるなって言っただけだけど?」

 

「絶対それだけじゃねーだろ!」

 

 ちなみに今は病院をシャーレの医務室から移ってミレニアム学園近辺の病院で治療を受けている。ネルは隣の病室で、何かあると度々俺の病室までやってくるので、こうして談笑したり、モモイたちがお見舞いの品として持ってきたゲーム機で対戦をしたりしている。ちなみに今の所ゲームの戦績は俺が全戦全勝だ。というかネルの戦法は基本的に攻撃は最大の防御みたいな感じなので守っていれば簡単に勝てる。

 

 一度俺みたいに、相手の筋肉の動きや呼吸から次の手を予測して先行入力して対処すればいいしネルならできるでしょ? と言ったら多分出来るがそんなやり方でやっても楽しくねえと言われてしまった。

 

 「ぐあああーっ! くっそ! 全然勝てねぇ!」

 

 「ネル先輩は覚えたてのコンボとかテクニックばっか使うのやめた方がいいんじゃない?」

 

 「うるせえ! もっかいだ!」

 

 ネルと格闘ゲームをするが、ネルは焦るとレバガチャをして何とかしようとする癖はどうにかしたほうがいいと思う。磨けば光るタイプのゲームセンスの持ち主なので、このまま鍛え続ければアリスにもいつか勝てるようになるかもしれない……。まあ、アリスも最近どんどん強くなっていっているので追いつくことは出来なさそうだが……。今の所アリスとの格闘ゲームの戦績では俺がかなり勝ち越しているが最近では7:3くらいの勝率になっているので、いずれはアリスの方が強くなるかもしれない。

 

 ちなみに言うとユズとの対戦成績は今の所全敗だ。俺がユズの筋肉の動きから動きを先読みしても、時折フェイントを挟んでくるので全く通用しない。

 

 「ん……?」

 

 「ご、ごめんなさい! 楽しそうな声が聞こえたから……」

 

 「こっちこそうるさくしてごめんね?」

 

 ネルと格闘ゲームで対戦を続けていると、ふとドアの方から気配を感じたので、そちらを見ているとドアが僅かに開いていることに気が付いた。そして、その隙間からこちらを覗いている少女と目が合った。少女は俺が覗いていたことに気が付いたことを知ったのか、ドアを開けて律義に謝罪をした。彼女の名前は『茨姫ネムリ』といういらしく、つい最近までは病室から出ることが許されていなかったが、今は病院内だけなら歩き回っていいらしいので、こうして色々と歩き回っているらしい。

 

 「ねえ、外の世界のこと聞いてもいい?」

 

 「うん、いいよ」

 

 ゲーム機をスリープ状態にしてネルと一緒に外の世界について話した。ネムリは外の世界に興味津々らしく目を輝かせながら話を聞いて、あれこれと質問を投げかけてきた。その中でもゲヘナの風紀委員会のことについて興味があるらしい。何でも1年くらい前にこっそり病室を抜け出した際に、不良に襲われかけ発作を起こしたところをゲヘナの風紀委員長である空崎ヒナに助けて貰ってから、ゲヘナの風紀委員のファンになったらしい。

 

 ネムリが持っていスクラップブックには、風紀委員のことについて纏められている記事などが沢山張り付けられているのを見せてくれた。

 

「綺麗に纏められてるじゃねえか……」

 

「ありがとうネルちゃん! これは私の『宝物』だから、そう言ってもらえるととっても嬉しい!」

 

「お、おう……。そうか……」

 

 ちゃん付けされることに慣れていないのかネルは少し照れくさそうにしていたのが、少しおかしくて俺は思わずクスっと笑うとネルが俺を睨みつけた。だって、ネルがちゃん付けで呼ばれているのはあまり似合わないし、ネムリはネルが年下だと絶対勘違いしている。

 

 「ぷくく……」

 

 「てめぇ……」

 

 ネムリはそんな俺たちの様子を首を傾げて不思議そうに見守っていた。それからネムリと俺たちは暫く談笑する。ネムリはいつかこの病院から退院したらゲヘナ学園に入って、ゲヘナの風紀委員に入ることが私の夢なんだと語っていた。僕はそれに対して、絶対になれると言うと、ネムリはそうだといいなぁと少しぎこちない笑みでそう言った。

 

 ………………。

 

 ネルが僕を咎めるような視線で見てくる。僕も、ネルも、そしてネムリも、本当は分かっている。ネムリの夢が叶うことは無いと。今まで出ることを禁じられていたネムリが急に病院内限定で歩き回ることを許された理由はきっと……そういうこと……なんだろう。でも、僕が言ったことは『嘘』なんかじゃない。『嘘』なんかに……しない。

 

「茨姫さーん! 診察の時間ですよー」

 

「はーい! 今行きまーす!」

 

 ナースがネムリを呼ぶ声が響く、どうやらもう終わりみたいだ。ネムリは寂しそうな表情を浮かべている。きっとまだ話し足りないんだろう。ネムリがナースの方へと向かって行く。

 

「あと1週間はここにいるから、何だったら明日も来てよ」

 

「…………いいの?」

 

「もちろん! ネル先輩もいいでしょ?」

 

「あたしは構わないぜ」

 

 ネムリが足を止めて、こちらに振り替える。その表情は今にも泣きそうな表情を浮かべている。ネムリは目元を拭うと笑って。

 

「じゃあ、また明日も来るね!」

 

「うん、また明日」

 

「また明日な」

 

 ネムリは手を振って病室から出て行った。それから一週間、俺たちとネムリは毎日のように会話をした。ネムリは心臓にあまり負荷を掛けられない体質らしく興奮や緊張を伴う、格闘ゲームやFPS、ホラーゲームなどはプレイできないらしいが、それでも楽しくて仕方がないといった様子でその様子を見守っていた。この1週間でネムリは多くの人と出会い、友達を増やしていって、自然な笑みを浮かべることが多くなった。特に『先生』からヒナのサイン入りブロマイドを貰った時は狂喜乱舞していたくらいだ。

 

 でも、それと比例するようにネムリはふと悲し気な表情を浮かべることも増えた。

 

 そしてある時、俺は見てしまった。それはある日の夕暮れのことだった。ネムリの病室からすすり泣く声が聞こえてきた。

 

「いやだ……死にたくないよ……。わたし……まだ……やりたいこと……いっぱい……あるのに……」

 

 ネムリはどんどん迫りくる死の恐怖に怯えて泣いていた。僕はそれをただ隠れて聞くことしか出来なかった。だって、どうすればいいか分からなかった。大丈夫、病気はきっと治るよだなんて無責任なことは言えなかった。ネムリの『未来』はどうしようもないくらいに絶望的だ。僕の持っている知識ではネムリの病気を治すことは出来ないし、今からどうにかしようと思っても絶対に間に合わないだろう。どうしようもないくらいに自分は無力だと僕は痛感した。

 

 ――*――

 

 ネムリと始めて会った日から1週間が過ぎて、俺が退院する日になった。ネムリのいる病室に目を向けるとネムリと目が合ったので、俺はネムリに向かって手を振ると、ネムリは笑って手を振り返してきた。少し寂しそうな表情を浮かべているがネムリと俺は約束を交わしている。

 

『退院しても、定期的に会いに行く』

 

 そう約束を交わしている。だからここで永遠の別れにはならない。病院の前で待っているみんなと合流する。何でも今日は僕とネルの退院パーティを行うらしく、『先生』の奢りでかなり高めのレストランに行くとのことだ。

 

 パーティに参加するとみんなは笑みを浮かべていた。この一連の物語は見事にハッピーエンドを迎えることができた。でも、この笑顔の裏で泣いて、苦しんで、絶望して、明日を迎えられない誰かがいる。そう思うと胸が苦しくてやるせない気持ちになる。レストランに併設されている展望フロアから星空を見上げる。

 

 「あ! エルナ! ここにいたんですね!」

 

 1人で星空を眺めているとアリスから声を掛けられた。誰にも言わずに抜け出してきたので、もしかしたら探させてしまったかもしれないと思うと少しだけ申し訳ない気持ちになった。アリスはスマートフォンで多分俺がここにいたことをみんなに伝えた後、俺の隣に座って、星を眺めてから口を開いた。

 

 「実はケイを否定したことをアリスは少し後悔しています。本当はちゃんとケイと向き合うべきだったんじゃないかって思うんです」

 

 「それは……」

 

 「あれから色々アリスは考えました。それで分かったんです。世界を滅亡に導く『鍵』であることがケイの存在理由なら、きっと苦しかったんじゃないかって」

 

 「………………」

 

 「アリスはどうすべきだったんでしょうか……? もしも知っているのならアリスに教えてくれませんか?」

 

 アリスが真剣な眼差しで俺を見つめる。

 

 「それは俺様にも分からないな。でもそれはきっとアリス自身が見つけなきゃいけない『答え』だと思うから」

 

 「エルナにも分からないことがあるんですね……」

 

 「俺様だって分からないことくらい沢山ある」

 

 「よしっ! アリス……決めました!」

 

 アリスが椅子から勢いよく立ち上がる。

 

 「今はまだアリスには『答え』が分かりません。でも、アリスはアリスなりに『答え』を見つけます!」

 

 そう宣言するアリスの笑顔はとても輝いて見えた。俺は立ち上がってアリスの頭を撫でる。思えばこうするのも随分と久しぶりのような気がする……。頭を撫でているとアリスは気持ちよさそうに目を細めていた。

 

 「じゃあまずはケイの体を作ってあげないとな!」

 

 「ケイの体を……ですか? でもそんなことできるんでしょうか……?」

 

 「出来るに決まってるって! だってアリスには頼れる仲間がいっぱいついてる……そうだろ?」

 

 「! そうですね! そうと決まれば早速、みんなに相談しないと!」

 

 そう言ってアリスはレストランの方へと走って、少し進んだところで急に立ち止まって俺の方に戻ってきた。何か忘れものでもしたんだろうかと椅子の方を見てみるが何も無さそうだ。何でもアリスは俺に聞きたいことがあるらしく、アリスは一枚の紙を俺の前に差し出した。

 

「エルナもゲーム開発部に入りませんか? 今なら入部特典もありますよ!」

 

「ううん、遠慮しておく」

 

 入部特典が何なのか少し気になったが、俺はやりたいことがある。だから入ることはできない。アリスは少し残念そうな表情を浮かべて、入部申請書を2つに折ってポケットの中にしまい込んだ。

 

「むぅ……、好感度はもう十分あげられたと思っていたのですが……。はっ!? もしかしてエルナはシナリオを進めないと仲間に出来ないタイプということですか……?」

 

「あはは……どうだろうね」

 

「アリスは絶対に諦めません! それではアリスは皆の所に戻ります! エルナはどうしますか?」

 

「もう少しここで星を見ておくよ」

 

 アリスが去って行った。柵に手を置いてまた星空を眺める。

 

 「それがアリスの願いなら僕が叶えるよ」

 

 ……やはり計画は実行すべきだ。

 

 『崇高』という存在を知った時、僕が作り出した計画。『人間』では世界を救うことなんてできやしない。だけど、僕自身が『崇高』になることで僕は『人間』という枠組みから外れ『神』へと至る。そうすれば『全ての人間』を救うことができる。あらゆる苦痛や哀しみ、後悔、絶望から解放される。そんな世界を僕は創世する。それが僕の望みで、やりたいことだから。

 

 だから皆には少しだけ待っていて欲しい。

 

あなただけの理想郷(Your Only Utopia )計画』

 

 その完遂を。

 

 そうすればきっと、みんな幸せになれる。




お気にり2000ありがとうございます!
まさかここまでいけるとは思っていなかったのでとっても嬉しいです!


さて、ここからの物語ですが2,3話か閑話挟んだ後オリジナルを書こうと思っていますのでお楽しみにしていてください!


最後にバッドエンドIFを書いたので曇らせや死ネタに耐性のある方は是非お読み下さい。

バッドエンドIFって書いたほうがいいですか?

  • いる
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。