神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話 作:プラハ
いつもありがとうございます!
私は『選択』を誤った。自分一人で突き進み、あと少しで取り返しのつかない事態を引き起こすところだった。だけど、そのおかげで私は『大切なこと』に気が付くことができた。
正直、自分の罪と向き合うのは怖かったわ。でも、ここで逃げたら一生後悔するって言ってくれた人がいたから、私は自分の罪と向き合う勇気が持てた。
心無い言葉を浴びせられる覚悟はあった。だけどいざ蓋を開けて見ると、そんなことを言う人は誰もいなかった。もちろんいろんな人から説教はされた。
私を憎む人はいなかった。当事者であった『ゲーム開発部』の子たちも怒ってこそいたけど、私に恨み言をぶつける子は誰もいなかった。
私はずっと1人だと思っていた。みんな私を嫌っているのだと勘違いをしていた。
でもそれは勘違いだった。ただ私が気が付かなかい振りをしていただけで、私のことを心配してくれる人たちがこんなにも近くにいたんだと、ようやく気付くことができた。
まあヒマリは相変わらず、私のことを『下水道』だの『腐った水』だのと言っていたが、最後には少しはマシになったと言っていた。
だから私はエルナには感謝している。あの子がいなければ私がこんなにも誰かに思われていたということに気が付くことはなかったかもしれない……。今の私は『歴代史上最悪の生徒会長』だなんて揶揄されている。私のしたことを考えればそれは揺るぎない事実だ。だけど私はもう逃げない。生徒会長の任期はもう残り僅かだけど、少しでもその評価を覆せるように私は最後の最後まで精いっぱい頑張ると決めた。
しかし、そんな私にかつてない苦難が訪れようとしている。昔の私ならこのまま迷走していたところだけど、今の私は違う。執務室をノックする音がしたので入室を促すとユウカとノアが入室する。ユウカとノアは私の表情を見るなり血相を変えて詰め寄ってきた。
「会長!? 顔色が悪いですよ!? 今日は帰ったほうがいいんじゃ……」
「ユウカちゃんの言う通りです。私たちに相談事をしてくれるのは嬉しいですが、あまり無理はなさらないほうが……」
「いいえ、今日じゃないと意味がないのよ!」
ユウカとノアは明日行うことの相談をするために呼び出している。寝不足でふらつく体をユウカとノアが両側から支えてくる。本当に私はいい部下を持ててよかったと感心していると、ノアが私の額に手を当てて「熱は無いみたいですね」と言うと、ユウカが心配そうな表情で保健委員を呼ぶべきか悩んでいた。
「私がふらついたのはただの寝不足だから問題ないわ」
「会長……。会長が最近頑張っているのは分かります。ですが、睡眠時間を削ってまでやらなくても……」
「違うわ。私がちゃんと0時ごろには帰っているのはユウカたちだって知っているでしょう?」
「会長? それはつまり家に帰宅してから仕事をしているってことですか?」
「してないわ……」
思わず目を逸らす。仕事を家に持ち帰ってないかと言われれば嘘になるからだ。でも、それはほどほどの所で切り上げている。睡眠不足が引き起こすパフォーマンスの低下を私は身を以て知っている。だから最近はちゃんと睡眠をとるようにしている。ユウカとノアが「あとの業務は私たちが引き継ぐので会長は仮眠室でゆっくり休んでください」と私を引っ張るので、私は踏ん張ろうとするが、日々の運動不足が祟ったのかまるで抵抗できない。私は今度トレーニング部の所に顔を出して、トレーニング器具を使わせてもらえないか交渉に行こうと決意した。
「ま、待ちなさいっ! 私が寝不足なのは明日エルナと遊びに行く約束をしているのに、まだ何も決められてないからなのよ!」
「えっ……?」
「確かに仕事を家に持ち帰って仕事をしていることは認めるわ。でもキリのいいところでやめているし普段はちゃんと睡眠時間をとっているわ。今寝不足なのはどこに行くべきかとか、どんな服を着て行ったらいいかを悩んでいたら、気が付いたら朝になっていたってだけなのよ……」
ユウカとノアの引っ張る力が弱まると、ユウカとノアは微笑まし気な表情を浮かべて、そうならそうと最初から言ってくれればいいのにと言った。説明する間もなく連れていかれようとしたのだけれど……とは思ったけれど私はそれを口にしなかった。私はユウカとノアをソファーに座らせて、今回の件について説明を始めた。
明日エルナと遊びに行く約束をして、遊びに行くプランは全部任せて欲しいと言ったものの、今時の高校生がどこで遊ぶのか知らないので、インターネットを駆使しながら色々調べていたが結局どうするのか決められず今日になってしまったことを告白した。そして今回2人を呼び出したのは2人がエルナとそれなりに交友関係を結んでいるので、エルナのことを楽しませることができる場所を教えて欲しいからだと説明すると、2人は少しだけ考えるそぶりをした。
「エルナちゃんは大体どこに行っても楽しんでくれると思いますよ」
「エルナは人が楽しそうにしているのを見るのが好きみたいなので、会長が行きたい場所でいいと思います」
「そんなの分からないでしょう? もしかしたら内心ではつまらないって思われるかもしれないし……」
「そんなことないと思いますけど……」
「エルナが甘いものに目がないことくらいは知ってるんですけど、それ以外のことは何も分からないんですよね……」
私はエルナが甘いもの好きということを脳内のメモにインプットする。ユウカによるとエルナと遊びに行ったことは何回かあるものの、基本的に人の行きたい場所に合わせることしかないので、それ以外で何が好きなのか知らないのだと言っていた。それは困ったわ……。ノアの方に何か知らないかと声をかけるとノアは何かを考えこんでいるみたいで、神妙な表情を浮かべて口を開いた。
「エルナちゃんは本当に甘いものが好きなんでしょうか……?」
「えっと、どういうこと……?」
「もしかしたら私の勘違いかもしれないんですが、エルナちゃんが甘いものを食べている時の表情が何というか演技っぽく見えるんです。まるで誰かの行動をトレースしているみたいだったというか……。どことなく不自然に感じたんです」
沈黙が執務室内を包み込む。ノアは続けて語る。初めてエルナとケーキを食べた日、エルナは一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべていたと。ユウカも思い当たる節があったのか、確かにそうだったかもと頷いていた。私がエルナについて知っていることはあまりにも少ない。エルナが人工的に作られた生命であることは知っているが、それまでの足跡については何も知らないが、相当過酷な人生を歩んできたということは推測できる。
「今はエルナに楽しんでもらえるようなプランを考えましょう」
「会長……?」
「確かに私たちがエルナについて知っていることはあまりにも少ないわ。でも、それはこれから知っていけばいいのよ。時がくればきっと向こうから話してくれるはずだわ」
「そうですね。今は待ちましょう。きっとそのほうがいいはずです」
少し暗くなっていた雰囲気が元に戻る。今エルナが何を望んでいるのかは分からない。でもそれはみんな同じで、関わっていくうちに分かっていくものだと私は思う。人はお互いの分からないところを少しずつ知っていって『絆』を深めていくものだ。そうすればきっと私たちは本当のエルナを知ることができる。
「私たちで完璧なプランを考えて、エルナに最高の一日を過ごしてもらいましょう」
「集合場所はどこにするんですか?」
「駅前で考えているわ」
「そうなると、こことかいいんじゃないですか?」
それから私たちは白熱する会議を繰り広げ完璧なプランを作り出すことに成功した。このプランがエルナの心に響くかは分からない。でも、トライアンドエラーを繰り返して真実へと近づいていけばいい。私の心からいつの間にか『不安』という感情は消えていた。
――*――
集合の30分前に駅前まで行くとエルナは既にそこに来ていた。私は小走りでエルナの元へと向かう。
「もしかして待たせてしまったかしら……?」
「全然待ってないって! ここに着いたのもほんの2、3分前くらいだしな」
それが本当かどうかはさておき、ユウカからエルナはいつも一番最初に集合場所にいると聞いていたので早めに出ておいて正解だった。えっと、次は服を褒めるといいのよね? 確か私が見たサイトにはそう書いてあったし……。エルナの服装をサラッと観察する。もうすぐ夏が近づいていることもあって、エルナの格好はかなり涼し気だ。タンクトップにショートパンツ、サンダルという恰好だ。私ももう少し涼しい恰好にするべきだったかもしれない……。さっき少し走ったこともあって、少し汗をかいている。
「えっと……その服似合ってるわよ」
「ありがとな! リオ会長もその服可愛いと思うぜ」
「か、かわっ……! あ、ありがとう……」
「あははっ! なんだかデートみたいだわ」
デート!? それって男女同士でしか使わない言葉なのでは……? と疑問に思っていると、エルナが最近ゲーム開発部でやった恋愛シミュレーションゲームに同じような展開があったらしい。それに最近は同性同士で遊びに行く時もデートという表現をすることは割とあるらしいとエルナが語る。それは知らなかった。
「今は2人きりなんだから私のことは呼び捨てで構わないわ」
「分かったよ。リオ」
「ええ、それじゃあ早速行きましょう」
前から思っていた。会長呼びは少し距離がある感じがすると。でも、今こうして名前で呼ばれているので少し距離が縮まったように感じる。私が右手をエルナの方に差し出すと、エルナは少し戸惑いながらも左手で私の手を握った。私は早速、最初の目的地である水族館に向かった。水族館では多種多様な魚が泳いでいる。エルナはその様子をジッと見つめていた。その様子が私には少し浮かない表情でそれを見ていた。
「水族館はあまり好みじゃなかったかしら?」
「え? そんなことないけど……?」
「本当に? 少し浮かない顔をしていたから、もしかして楽しくないんじゃないかって思ってたの」
「えっ? そんな顔してた?」
私が頷くと、エルナはガラス越しに映る自分の顔を揉みながら確認していた。それから少し考えるそぶりをして思い当たる節があったのか。
「もしかしたらだけど、自分がいた場所って海が無かったから少し感傷的になってるのかも」
エルナはガラスに優しく触れて、昔自分が住んでいた場所には海が近くにない。内陸地に住んでいて、『海』が見てみたいと言っていた友達がいたんだと、懐かしむようにそう言った。エルナの境遇を考えると、その『友だち』はもう……。私はエルナの手を優しく両手で握る。
「今度は皆で海に行きましょう」
「う、海!? それはちょっと……だって、泳げないし……」
「そうなの? エルナは何でもできると思っていたのだけれどできないこともあるのね」
「僕だって『人間』だからね。できないことくらいあるしっ!」
エルナが頬を膨らませてそう言った。エルナは泳ぎ方の知識はあるものの、何故か体が浮かないと言っていた。確かにエルナの体型では体脂肪が少ないせいで浮くことができないのだろう。エルナは脂肪があれば……と嘆いたので、あまりそういうことは人前では言わないほうがいいと私は忠告した。それに海で遊ぶのは泳ぐだけじゃない。砂浜で遊んだり、浮き輪で浮かぶだけでも十分に楽しめるはずだと伝えると、エルナは興味津々に聞いていた。
「もうすぐ夏も近いのだから、今度一緒に水着を買いに行きましょう?」
「水着かぁ……。流石にそれは勇気が足りない……」
エルナが微妙そうな表情を浮かべる。エルナも年頃の少女らしく自分の体型が気になるのだろう。私も最近少し二の腕とウエストのあたりが少し……。幸いなことに夏までは時間がある。それまでに体型をベストな状態にしなければ……。折角だからユウカとノアを誘って見るのもありかもしれないわね。1人だとうまくモチベーションが保てないかもしれないけれど、誰かと一緒ならやれそうな気がする……。
「かっ、かわいいっ!」
さっきの場所から少し進んだところにペンギンとの触れ合いゾーンがある。エルナはペンギンに一目惚れしてしまったのか、恐る恐るペンギンに触れて、撫でまわしているのを見て私は微笑ましい気持ちになった。一匹のペンギンが私を見つめて、くちばしをグワァと開く。………………!
「よろしければ餌やりの体験をしてみませんか?」
「えっ!? いいの? やるやる! やりたいっ!」
エルナが嬉しそうにそう答えると、飼育委員のロボットがエルナに餌のやり方のレクチャーをしている。エルナはそれを真剣そうな表情でそれを聞いていた。そして飼育委員のロボットから餌の魚を受け取るとエルナは緊張した様子でペンギンの前に魚を差し出す。
「…………っ!」
ペンギンがエルナの差し出した魚を食べると、エルナは感嘆した声をあげる。すごいすごい! とエルナは喜びの声をあげて、手を洗った後私の所まで戻ってきたので、楽しかった? と聞くと、とても満足げな表情で頷く。最初は緊張したけどとっても楽しかったと言った。
「リオはやらないの?」
「えっ? わ、私は遠慮しておくわ……」
「えー……もったいない……」
ペンギンの口の中の光景を思い出す。何というか少しグロテスクで怖かった。見た目は可愛いのに、少し怖い一面もあると知ってしまったので、少し近づきがたい。エルナは残念そうにしているが、強要するつもりはないのかそれ以上は何も言わなかった。
「エルナはペンギンが好きなの?」
「うん、だって可愛いし。特に子どものペンギンはすっごく可愛かった……。モフってしてるし!」
エルナはとても嬉しそうな表情でそう言っていた。そう言えば、最近流行っているらしい『モモフレンズ』にペンギンがいたはずなので、今度それをプレゼントしてみるのもありかもしれないと私は思った。その後はイルカショーでずぶ濡れになりかけたところをエルナに助けて貰ったり、多種多様な水槽を見て回っているとあっという間に時間は過ぎていった。水族館内にあるレストランで魚介系の料理を食べるのは少し複雑な気分だったけれど、とても美味しく感じた。
「楽しかったー!」
「それなら良かったわ」
エルナが楽しんでくれて良かった。私が袋からペンギンを模したキーホルダーを取り出すとエルナが同じこと考えてたみたいだと笑う。エルナの手にはイルカを模したキーホルダーがあった。私とエルナは互いにキーホルダーを交換すると、エルナはそれを愛おしそうに見つめていた。
「ありがとうリオ。素敵な思い出ができた」
「こちらこそ、感謝するわ。私も今日は楽しかったもの」
水族館の後は駅の近くにあるカフェでパンケーキを食べたり、ショッピングを楽しんだりとかなり充実した時間を過ごすことができた。時刻はもう夕方。駅前にあるベンチで私たちは他愛のない話をしていた。大体10分ほど話したところで、エルナがふとこんなことを言った。
「もしも過去をやり直せるとしたらリオはどうする?」
エルナは真剣な眼差しで私を見つめる。思ってもいなかった質問に私の思考は一瞬停止するが、答えはすぐに出た。
「たとえ過去をやり直す機会があったとしても私はそれを選ばないと思うわ」
「どうして……? 今までの失敗も全部なかったことにできるのに?」
「そうね……。確かに過去に戻れば私は同じ過ちを犯すことはなくなるかもしれない」
「だったら……!」
「でも、それは私の望みじゃないわ。私は過ちを犯した。それをなかったことにするっていうことは罪から目を逸らすことと同じだもの。だから私はこの罪を背負って、ちゃんと向き合いたいってそう思っているわ」
私は自信をもってそう答えると、エルナは俯いた。私はエルナの頭を優しく撫でていると、エルナが何かを呟いていたが何も聞き取ることは出来なかったので、何か言ったのかと聞くとエルナは顔を上げて何でもないと笑って言ったので、私は何も追求できなかった。その時の私はこれ以上エルナの心に踏み込むことができなかった。
今になって思えば、この時もっと深く踏み込んでいればと私は少しだけ後悔している。
「さてっと、そろそろいい時間だし帰ろっか!」
「そうね……」
エルナが勢いよくベンチから立ち上がる。丁度エルナの真後ろに太陽があるせいで、エルナがどんな表情をしているのか私には分からなかった。私もベンチから立ち上がって、駅まで向かう。エルナとは乗る路線が違うのでここでお別れとなる。
「それじゃリオ、また明日」
「ええ、また明日」
エルナは私に笑顔で小さく手を振ると、自分が乗る電車のホームへと向かって行った。自分が乗る電車のホームで電車を待っているとスマホが震えたので、確認するとユウカとノアからメッセージが来ていた。内容はどちらも今日のことについてどうだったのかと確認する内容で私は少し頬が緩みながらも、今日のことについて2人に返信した。
すると丁度そのタイミングで電車が来たので私は電車に乗り込む。そして、今日の思い出を思い返しながらこれからのことについて思いを馳せた。
バッドエンドIFって書いたほうがいいですか?
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いる
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いらない