神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話 作:プラハ
等価交換の原則
「なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
鏡に真っ白な長い髪の赤い目の女の子が、顔を驚愕に染めた表情で俺を見ていた。
さて、何故こうなってしまったのか? それは今からほんの少し時を遡らなければならない。
――*――
「ふふふふ、はっはっは! ついに! ようやく集まったぞ!」
俺の名前は『ミサンスロピスト』という。『ゲマトリア』という組織で『崇高』を作ることを目的とした組織に所属している。『崇高』とは『神秘』と『恐怖』を併せ持った『存在』らしい。
まだこの世界に来て日が浅い時に誘われて入った組織ではあるが、構成員どものやり方の甘さには正直呆れるを通り越している。
俺の自論だが、実験動物を無闇に死なせてしまう愚か者は『3流』、実験動物を使う臆病者は『2流』だと思っている。
実験動物を使うということはある程度『失敗』を前提しているからだ、だが『1流』である俺に『失敗』などありえない。
さて、長々と語ってしまって申し訳ない。『本題』に中々入れないのは『研究者』としての癖だ。さて、『本題』に入ろう。
俺のやろうとしていることはとても
――俺自身が『崇高』になることだ。
つまり『1流』とは、『己の体』で実験すること。『己の体』を使うということは『失敗』とはすなわち『死』へと繋がる。だが、俺は今日という日まで生きている。
つまりこれまでの全てにおいて『成功』してきたということ。それこそが俺の『1流』であるということの『証明』だ。
「まーさか、5年も掛かっちまうとは思わなかったぜ……」
この『神秘あつめるくん』はキヴォトスに住む人間から放出された『神秘』を空気中から収集し蓄積させる。必要量溜めるにはそれなりの時間が掛かるとは思っていたがまさかこんなに掛かるとは……。
「さーて、実験、実験っ!」
鏡には顔にあたる部分が培養ポッドの中に揺蕩う赤ん坊がいる姿が見える。この世界に来た時、この姿に変わっていたことには驚いたが、今では少し愛着が出てきたので少し名残惜しいものだ。
装置内へと入り、起動ボタンを押す。体に何かが流れ込んでくるような感じがする。なるほどこれが『神秘』というものか……。
「…………」
体に激痛が走る。そこで俺はほんのわずかだけ『失敗』だと認識した。『普通の人間』であれば、この痛みはショック死しかねないからだ。まあ、俺がこの装置を自分以外の人間に使うことはないので『失敗』ではない。
「はぁ……くそ長ぇな……」
大体5分くらい経過したところで俺は待つことに飽き始めていた。『神秘』の残量を見るに、残り時間は後『2時間』程度掛かるだろう。
「ここ数年、ほとんど寝てなかったしな。久しぶりにゆっくりさせてもらおうするかぁ」
常人なら耐え難い激痛の中、俺は欠伸をして眠りについた。
「んお? っ〜! ふーっ! 終わったかー……」
プシューという音で目が覚める。俺は起き上がって体を伸ばした。どことなく体に違和感を感じるが、『神秘』を取り込んだことで体の作りが変わってしまったのだから当然だろう。
「髪かこれ……? 長げぇなおい……」
思えばこの時から『嫌な予感』というものがあった。長い髪、妙に高い声、柔らかい体、そして奇妙な喪失感。それを見る前に『答え』に辿り着ける要因はいくらでもあった。
「さってとー、鏡々っと…………は?」
そして話は冒頭に戻る。幻覚の類を疑ってありとあらゆる視点から観測を行ったが、『女の子』になってしまったという『事実』を示すことに変わりはなかった。
「おいおいマジかよ……。つーか、なんでこうなった……?」
思考を重ねた結果、要因はひとまず2つまで絞り込んだ。『陰陽太極図』というものを知っているだろうか? 名前について知らなくても図を見れば分かる人も多いだろう。
簡単に言えば『神秘』を取り込んだことで体内の『陰陽』が『陰』の方に大きく傾いたことで『女の子』の体になってしまったという説だ。ぶっちゃけこっちの説がほとんど有力説だと断言してもいい。現に頭の上に浮かぶ『
もう1つは、『神秘』というものの『特性』から考えた場合だ、『神秘』というのは『人間では計り知れない不思議な物事』のことを指す。あーと、つまりあれだ。この姿は『神様ってやつの趣味』なんじゃないかっていう説だ。
なぜなら前者の方では、『性別』が変わった原因については触れているが、何故その『容姿』になったのか説明出来ないからだ。つまり、信じたくは無いが何者かの『意思』によってこの『容姿』になったのなら『納得』できる。
この件に関しては特に後者については確かめたくないと思った。何か恐ろしい目に合う気がするのだ……。
「ちっ……! そう言えば今日は『定例会』じゃねぇか!」
ぶっちゃけ行かなくても文句は言われないが、それはそれで面倒なことになる。具体的には「あらあら、『定例会』に出席すら出来ないなんて随分とまあ余裕がないんですね?」と『エバセブ』に煽られるからだ。
ちなみに『エバセブ』というのは『ever seventeen(永遠の17歳)』という意味で、いい歳(笑)して、生徒会長だなんて、未だに自分を女子高生だと思い込んでいる奴に付けたあだ名だ。
最高だろ?
「はぁ……気は進まねぇが、一方的に煽られるよりはマシだ」
俺はさっさと着替えて準備をする。幸い体のサイズはほとんど変わっていなかったので、着る服に困ることはなかったので、いつも着用している特注サイズの黒スーツに身を包んだ。
――*――
「ぷっ! あっはははははっ! クソガキが随分とまあ可愛らしい姿になったものねぇ! これからはクソガキじゃなくてメスガキって呼んだほうがいいのかしらねぇ? あっはははははっ! ひーっ! あっはははははっ!」
「だあああああああっ 黙れクソババア! 離しやがれ! ゴルコンダ! マエストロ! あいつをぶっ飛ばせねえだろうが!」
怒りのあまり『エバセブ』こと『ベアトリーチェ』に殴りかかろうとする俺を『ゴルゴンダ』と『マエストロ』が羽交い絞めにする。『黒服』は心底愉快そうにその様子を眺めていた。
「落ち着きなさい『ミサンスロピスト』」
「普段は冷静な貴方がどうして『ベアトリーチェ』が絡むと冷静でなくなるのですか? いや、ある意味冷静ではありますか。貴方が本気で暴れれば、我々は一溜りもありませんからね」
「まあ、そういうこった!」
俺は大きく舌打ちをして、体に入れていた力を抜くと、『ゴルゴンダ』と『マエストロ』が体を離したので、俺は『ベアトリーチェ』を睨みながら、椅子にドカリと座る。
「とっとと始めようぜ。俺様はここに『無駄話』をしに来たんじゃねえんだからな」
「さて、それでは『定例会』を始めましょう」
『定例会』でやることは主に近況報告くらいだ。俺たちは『崇高』を作ることを目的としているが、それに至るためのアプローチは全員バラバラだ。正直、俺はほかのやつらがどうやって『崇高』に至るのかということに興味はない、だから俺は有用そうな話以外は聞き流している。
「俺様は『神秘』の獲得に成功した。前々から言ってた『神秘あつめるくん』が集めた『神秘』がようやく規定量に達したからな。その証拠がこれだ」
俺は頭に浮いている『
「それにしてもなぜそのような姿に?」
「ああ、いくつか仮説はあるが、『証明』には至ってねえ。恐らくは体内の『陰陽』のバランスが『神秘』を取り込んだことで崩れちまったってのが一番有力だな。そんなに気になるなら試してみるか?
『黒服』にそう問いかけると、やつは首を横に振った。
「いいえ、やめておきます。あなたの言うそれは
「はっ! 賢明な判断だな」
まあ、お願いされたところで絶対に使わせるなんてことは絶対にするつもりはないので、どちらにせよ結果は変わらない。俺がこいつらの一歩先にいるという事実は覆らないのだ。
「私から貴方に『提案』があります。『学園』に通うつもりはありませんか?」
「はぁ!? 俺様が? おいおい、『学園』ってのは一般的な知識を学ぶ場所だろーが、今更俺様が学ばないといけないことなんかねえよ。てめえ俺様を馬鹿にしてんのか?」
「そんなつもりはありません。『学園』に通うことは貴方の『研究』に必要なことでは?」
最初聞いたときは悪ふざけで言っているのかと思ったが、『黒服』はそういうことをするようなやつではない。必要か不必要かは俺が決めることだが、聞いておいて損はないだろう。俺は続きを話すようにと『黒服』に促した。
「あなたはキヴォトスの住民から『神秘』が放出していることに気が付きました。ですが、それがどのようなメカニズムで起きる『事象』なのか『解明』できていないのでは?」
「ぐっ……それはっ……そうだが……!」
俺は思わず、言葉に詰まる。何せ『黒服』の言っていることは純然たる『事実』だったからだ。俺がこの世界に来て一番最初に発見したのは、この世界の空気中に『
だが、何故それが放出されるのか? 放出されたものはどこへ向かうのか? それらの疑問に対する『解』は『仮説』すら立てられていない。
「だからこそ、貴方は『学園』に通い、キヴォトスに住む住民を観察し、彼女らがどのように『神秘』を放出しているのかを調べるべきでは? それに貴方が作った『
「ぐぐぐ……」
『黒服』の言う通りだ。『神秘あつめるくん』で集めた『神秘』の量は実験において必要な最低限度の量だ。『崇高』に至るための量としては圧倒的に足りていない。今のペースで『神秘』の収集を行う場合、500年以上かかる計算になる。寿命の問題はとっくに解決済みなので、時間は問題にならないが、500年間動かし続けられる機械を作ることはできない。
正直な話、画期的な手段がなければ、この先に進むことはできない。頭では取るべき選択肢は分かっている。だが、それは……それだけは……選びたくない……。
「無駄よ。このクソガキがまともに学園生活なんて送れるわけないじゃない」
「は?」
「まあ、無理でしょうね」
「まあ、無理ですね」
「無理だな!」
「…………」
「上等だ! そこまで言うなら行ってやるよ! 俺様は超!天才っだからな! とっとと『解明』して、くそみてぇな『学園生活』からおさらばしてやんよ!」
俺が机をバンと叩いて立ち上がると、『黒服』は待っていたと言わんばかりに俺の前にタブレットを差し出して、「お好きな学園を選んでください。手続きは私がやりますので」と言った。どうやら、そこにはキヴォトスに存在する学園について纏めてあるらしく、俺はそれを流し読みしていく。
まあ無難に考えるなら、ゲヘナ、トリニティ、ミレニアムのいずれかだろう。人数が多いということはそれだけ観察対象が増えるということなので、効率がいい。だが、『ゲヘナ学園』お前は駄目だ。
『ゲヘナ学園』は『自由』を校風にしているらしく、『温泉開発部』と『美食研究会』とかいうぶっちぎりにイかれたやべーやつ奴等の本拠地らしい。そんな奴らがいるような場所で学園生活を送れば俺は間違いなくストレスで死ぬ。
次に『トリニティ総合学園』だが、『ベアトリーチェ』の計画を邪魔するためだけに入るのも悪くないが、逆に俺の実験を邪魔されても面倒なので却下だ。
となると、『ミレニアムサイエンススクール』一択だ。最先端の技術を追及するという校風は俺の思想に沿っているため、抱えるストレスも少なくて済みそうだ。
「ここ一択だな」
「『ミレニアムサイエンススクール』ですか分かりました。ところで登録する名前はどうしますか? さすがに今の名前のままというわけにもいかないでしょう」
「名前だと……? 少し待て、考える……。よし、そうだな俺様の名前は『
俺がとっさに考えた名前を告げると、『黒服』は少しあきれた表情をしていた。どうやらこの名前の意味に気づいたらしい。
「そういう名前の付け方はよろしくないのでは?」
「はっ! さいっこーに活かした名前だろうが」
「まあ、貴方がそれで良いと言うのであれば、私は構いませんが……」
こうして俺は『栄道エルナ』として、ミレニアムサイエンススクールで学園生活を送ることになった。
好評であれば続きを書きます