神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話   作:プラハ

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ネタバレ:主人公が負けます

こんなに評価いっぱい貰えると思ってなかったので正直驚き……。

続けるべき……なのか……?


VS 早瀬ユウカ

 「はぁ……憂鬱だ……」

 

 鏡の前でスカートを片手にため息をつく。どうしてこんなものを履かなければならないのか……。こんな布切れ1枚で何が守れるというのか疑問だ。

 

 幸いなことに制服の改造は校則によって認められているので、初日の登校さえ乗り切ってしまえば直ぐにズボンへと変えるつもりだ。

 

「はぁ……」

 

 鏡の中で、真っ白な長いツインテールをした赤い目の可愛い系の女の子は憂鬱そうな顔をしている。特に鬱陶しいのはこの髪だ。結び目を解けば床に到達する程の長さがある。

 

 あまりにも鬱陶しいうえに邪魔なので髪を切ったのだが、直ぐに元の大きさに戻ってしまった。正直、これのせいで『神様』のような存在によって『容姿』が固定化されている説がより色濃くなってしまったのもこの憂鬱さを高めている原因の一つだ。

 

「はぁ……行くか……」

 

 本日何度目かのため息をついて、俺は『ミレニアムサイエンススクール』へと向かう。やっぱり煽りに乗るんじゃなかったと何度も思ったが、1度口に出して言ってしまった以上、やっぱやめるというのは俺のプライドが許さない。

 

 ――*――

 

 「あの子誰だろ〜?」

 

 「ちっちゃくてかわい〜!」

 

 さっきから視線が鬱陶しい。しかも学園へ向かうに連れてそれは増えていく。ストレスがどんどん溜まっていくが我慢だ……! 『感情』に振り回されるのは『2流』、真の『1流』である俺は『感情』なんかに振り回されたりなんかしねぇ!

 

「のわっ!」

 

 後ろから何かがぶつかってきて俺の体は吹き飛ばされる。どうやら誰かがぶつかってきたらしい。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「お姉ちゃんがごめんね……立てる?」

 

「あぁ……、別に問題ねえよ」

 

 俺は差し伸べられた手を使わずにゆっくりと立ち上がってから体全体を振り払う。もちろん笑顔は片時も忘れていない。だから俺は怒ってなんかいない。

 

 (な、なんかめちゃくちゃキレてない!?)

 

 (後ろからいきなりぶつかられたうえに転ばされたんだから当然じゃない?)

 

 (他人事みたいに言わないでよ!)

 

 (お姉ちゃんがちゃんと前を向いてなかったからでしょ? 私には関係ないし)

 

 俺の目の前で猫耳を付けた2人、顔の特徴から考えて双子だろうか? 双子たちは何やら言い争いを始めてしまった。まあ既に謝罪は受け取っているので、俺としてはもうここで終わりにしたい。あと、俺は別にキレていない。

 

「用がねえなら俺様は行くぞ? あと別に俺様は怒ってねえ。 この俺様を怒らせたら大したやつだって褒めてやるよ!」

 

「ま、待って! それ絶対怒ってるやつだよね!?」

 

「…………だからさぁ……怒ってねえって言ってんだろうが……。こっちは今日早めに来るように呼び出されてんだ。だから、おめでたい頭をしてるお前にも分かるよな? つーか分かれよ」

 

 『ピンク猫娘』の方が執拗い。それに何かを察してしまったのか、興味津々といった表情をしている。時間的にはまだ少し早いが、もう関わんのも面倒だ。ここは逃げさせてもらう。

 

「えーっ!? もしかして君って噂の転校生って……速っ!」

 

 去る直前に聞こえてきた『噂の転校生』というのは、恐らく『編入試験』の成績の仕業だと推測できる。見直しや自己採点はしていないが、当然結果は『満点』だろう。俺に『間違い』などありはしないのだ。それにテスト用紙の裏面に『おまけ』も書いてある。

 

 どうしてそんなことをしたのかって? そんなの『暇』だったからに決まっている。あの程度の問題に長時間拘束されるのは非効率の極みだ。まあ『おまけ』を書き終わった後は、速攻で退室を決めてやったがな。

 

 それにしても、『神秘』を取り込んでから、飛躍的とまではいかないが『身体能力』が向上しているのを実感する。このまま『神秘』を取込み続ければどこまで強くなれるのかと思うと、今から胸が期待でいっぱいになりそうだ。

 

 指定された場所で待っていると一人の女が現れた。確か、『編入試験』を受けた時の『試験官』だ。名前を聞いた覚えはあるが、覚えていない。女は俺の姿に気づくと、少し焦った様子でこちらに小走りで向かってきた。

 

 「ご、ごめんなさい! 時間的にはまだ間に合うはずだったんだけど……」

 

 どうやらこの女は自分が集合時間に遅れてきてしまったと勘違いしているらしい。ちなみに言うとこの女は別に遅れていない。何せ集合時間は10分後なのだ。相当バタバタしていたのか髪が少し乱れている、恐らくは忙しくて時間を確認していなかったと推測できる。

 

 「おいおい、人の前でスマホを取り出すなんて、マナー違反じゃねえのか?」

 

 ポケットからスマホを取り出して確認しようとする女の手を掴んで止める。スマホで時間を確認されると遅刻していないことがバレてしまうので、これはただの『嫌がらせ』だ。

 

 「ぐっ……! あ、そうそう『編入試験』の結果だけど、『全教科満点』じゃなかったわよ?」 

 「な、何だと!? 俺様の計算に間違いなどあるはずが……」

 

 「ええ、確かに『知識』や『計算』を問う問題は全て合ってたわ。でも……」

 

 女は俺に『文系科目』の答案用紙を手渡した。

 

 Q、以下の文章を読んで、作者の主張を30文字以上、50文字以内で述べよ。

 

 A、印税はいくらかな?

 

 何故かバツにされている。これ以上ないくらいに『完璧』で『完全』な答えだろう。ほかの問題も同じようなことを書いているのに、バツにされている。

 

 「ちっ……、採点ミスじゃねえか。どうやら俺様のテストを採点したやつはよっぽどの馬鹿らしいなぁ?」

 

 「因みにそれを『採点』したのは私なんだけど?」

 

 「へーじゃあ、お前が『よっぽどの大馬鹿』ってことか。全く俺様も運がない……」

 

 俺は自分の頭に手を当てながら、わざとらしくため息をつく。すると、女は額に青筋を浮かべて、拳を強く握りしめてプルプルと震えていた。『短気』そうな見た目をしていると思ったが、どうやらその通りみたいだ。女は大きく息を吐くと笑顔に変わった。

 

 「こういう問題は文章をきちんと読めば理解できるようになっているのよ! そんな簡単なことも分からないなんて貴方は馬鹿を通り越して間抜けよ! 間・抜・け! 大体何? 『印税いくらかな?』って! そもそも文字数足りてないじゃない!」

 

 「何だとてめえ! こういうのは『出題者』が勝手に『この作者はこんなことを考えているに違いない』って決めつけたもんだろうが! お前はこの文を作った作者に直接『答え』を聞いて確かめたんですか~?」

 

 「ああ言えばこう言うんだから……! 大体、その口の利き方は何? 私は貴方より年上よ?」

 

 いるんだよなぁ~、こういう展開になると自分の年齢を持ち出してくる奴。

 

 「おいおい、俺がお前よりも年下だって証拠がどこにあるんだよ?」

 

 「これを見なさい! 私が『2年生』で貴方が『1年生』、生年月日だって私の方が早い、これ以上ないくらい完璧な『証拠』だと思うけど?」

 

 そう言うと女は俺の前に『学生証』を突き出してきた。女の名前は『早瀬ユウカ』というらしい。名前の横には『2年生』と書いてあり、俺の『学生証』には『栄道 エルナ 1年生』と書いてある。 まあ、そんなことよりも自分の性別欄に『女』と書かれていることが心に響く。

 

 何というか改めて『女』になってしまったという事実を突きつけられた気がして、少し悲しくなってきた……。

 

 「はっ……! そのデータが正しいっていう『証明』はあんのかよ? 俺様が産まれてから、今日にいたるまで見てきたんですか~?」

 

 「なら、先に貴方が証明してみなさい!」

 

 「いや~証明してぇんだけど、生まれたのが54億年前だからなぁ~」

 

 「頭はいいみたいだけど、高校生にもなってそんな言い訳するなんて、精神は見た目相応なのねぇ……?」

 

 「んぎぎぎぎ……!」

 

 ユウカは完全に勝ち誇った眼で俺を見ている。すぐにでも言い返してやりたいが、今は何も思いつかない……! この俺が言い負かされるだと……? 認めてたまるか!

 

「よちよ~ち! エルナちゃんは、かわいいでちゅね~」

 

「て、てめえっ……! 俺様に触るなっ!」

 

「もしかして照れてるの? 可愛いところもあるじゃない」

 

 ユウカは俺の頭を撫でまわしてきたので、俺は急いで距離を取る。何故かは分からないが、俺とユウカは絶望的に相性が悪いかもしれない……! 何というか絶対に勝てないような気がするのだ。だが、だからと言って諦めるわけにはいかない! 熱くなりそうな顔を気合で堪える。身体に起こる反応はどのようなメカニズムで起こるか『証明』されている。つまり、それさえ分かっていれば『気合』でどうにかできるのだ……!

 

「うっせーばーか! ばーか! 太ももムチムチ! 大根女!」

 

「何ですって! 人が気にしていることをっ……!」

 

「なら、何度でも言ってやるよ! ばーか、ばーか! 太ももむっちり! 頭でっかち!」

 

「あああああああああっ!」

 

 ユウカの顔が怒りで真っ赤に染まる。『冷静さ』を欠いているらしい。この戦い、俺の『勝利』だ……! ユウカは暫く俯いて震えていたかと思うと、ゆらりと顔を上げる。

 

「表に出なさい! 貴方のその態度! 叩き直してあげるっ!」

 

「はっ! 一人で外にも出れないんでちゅか~! ユウカちゃんは可愛いでちゅね~! あははははっ!」

 

「上等よ! この場で成敗してあげるから、覚悟なさい!」

 

 俺とユウカは互いに睨み合う。目を逸らしたら負けだ。お互いの顔が近づいて行って、額がぶつかる。力の押し合いはほぼ互角だ。

 

 「ぐぎぎぎぎ……!」

 

 「ぬぬぬぬぬ……!」

 

 お互い一歩も引けない状態で押し合う。このままでは永遠に決着がつかない。だけど、この戦いから逃げるのは自分のプライドが許さない。それはどうやらユウカのほうも同じようで、膠着状態が続いている。

 

「おいおい、いい加減やめようぜ? 時間の無駄だろこんなの」

 

「あんたが『負け』を認めるならやめてあげるわよ?」

 

「はぁ!? 絶対嫌だね! お前が『負け』を認めろ!」

 

「仕方ないわね、じゃあ私が『カウントダウン』をするから、その後に同時に止めましょう」

 

「分かった……。いや待て、それだとお互いの認識に齟齬が出んだろうが! 『1』か『0』のどっちで止めるか決めておくべきだろうが!」

 

 危なかったぜ……! このままユウカの提案に乗っていたら、互いの認識齟齬を使った罠に引っかかるところだった。このまま提案に乗っていれば、俺だけ止めて敗北することになるところだった……。

 

「それもそうね。じゃあ『0』って言った瞬間に止める。これでいいわね?」

 

「ああ、問題ねえ」

 

「それじゃ行くわよ。3、2、1、0」

 

 しかし、お互いの姿勢はさっきと全く変わっていなかった。もちろん、俺は力を抜いていない。そしてそれはユウカも同様だ。「こいつ……やりやがった……!?」とお互いにそんな表情で睨み合う。

 

 「てめえ! 『0』で止めるって言ったのに止めてねえじゃねえか!」

 

 「私は貴方が止めないのを読んであえて止めなかったのよ!」

 

 「俺様もそれを読んでたんですぅ!」

 

 なおも睨み合いは続く。お互いに『引く』という『行動』をするつもりはない。この戦いは最早『泥沼』状態に陥っていた。どちらも、これが無駄だと言うことは分かっているが、もう自分では止められない。頼むから誰かこの戦いを終わらせてほしい……。ずっと体に力を入れているせいで、もういい加減疲れてきた。

「ユウカちゃん、何をしてるんですか?」

 

「ノ、ノア!? どうして、ここに!?」

 

「どうしても何も、いつまで待っても栄道さんが来ないと連絡があったので、何かトラブルが起きたんじゃないかと心配になって探しに来たんです」

 

「こ、これは違うのよ!」

 

 ユウカは俺から凄い勢いで離れた。恥ずかしさでいっぱいになっているのか、耳まで真っ赤に染まっている。俺は『ノア』と呼ばれた女の後ろに回り込むと、嘲るような表情でユウカを見た。ユウカが俺を睨みつけるが、俺はそれを鼻で笑った。

 

「ノア先輩! 聞いてくださいよ! ユウカ先輩ったら酷いんです! お前は生意気だから表に出ろって!」

 

「なあっ……!」

 

 ノアを見上げながら、そう言う。ユウカは信じられないと言った表情で俺を見ていた。ノアは楽しそうに笑うと、俺の頭の上に手を置いた。

 

「フフフ、分かってますよ。一部始終をずっと見てましたから♪」

 

「はぁ!? ずっと見てたなら何で止めなかったんだよ!」

 

「ユウカちゃんも、エルナちゃんも楽しそうに見えたので……つい……」

 

「別に楽しくなんて……あと、ちゃんって呼ぶなっつーの」

 

 ノアから顔を逸らす。何が面白いのかノアは笑みを浮かべて、俺の頭を撫でようとしたので、それを手で振り払う。ユウカは俺を微笑ましいものを見る目で見ていた。何故かは分からないが、俺は『ノア』には絶対勝てないような気がした。

 

 「私はセミナーの生塩ノアです。エルナちゃん、これからよろしくお願いしますね? 困ったことがあったら何でも相談してください。私が力になりますから」

 

 「俺様は栄道エルナだ。俺様は天才だから頼ることなんてないだろうが、その……よろしくしてやる……」

 

 「ふふっ、じゃあ行きましょうか?」

 

 ノアは俺の手を握る。柔らかい手からは温かな温度を感じる。ユウカは「しょうがないわね……」とため息をつくと、俺の反対の手を握った。

 

 「別に俺様は子供じゃねえ、だから手を繋がなくたって問題ねえ……」

 

 「私が『エルナ』ちゃんとそうしたいからそうしてるんです」

 

 「そうね。私たちは『エルナ』を案内するように頼まれているのよ。だから大人しく手を握ってなさい」

 

 「ちっ……、そこまで言うならそうしてやる。だが、勘違いするなよ!」

 

 そう言うとノアは「分かってますよ」と言ってほほ笑む。それから俺たちは『教室』へと向かっていった。少しだけ昔の記憶が頭を過ったのを、俺は振り払った。

 

 ――*――

 

 「ここが、今日から貴方が通う教室です」

 

 教室の前までたどり着くと繋がれていた手が離れた。感じていた温かさが失われる。

 

 「あっ……」

 

 「もしかして寂しいの? あんだけ嫌がってたくせに~?」

 

 「うるせえ……、用が済んだならとっとと行けってーの!」

 

 顔を逸らしてそう言うと、ユウカは俺の背中を叩いた。何するんだと睨みつけると、ユウカは優しく微笑んでいた。

 

 「あんだけ私に啖呵を切れるんだから、エルナなら大丈夫よ。だから、安心して行ってきなさい」

 

 「そうですよ。『あの』ユウカちゃんとあれだけ言い合えるんですから、そんなに不安にならなくても大丈夫ですからね?」

 

 「ノ~ア~! 『あの』ってどういう意味~?」

 

 「ふふっ、ユウカちゃん私たちは行きましょうか?」

 

 「ちょっと! もうっ! エルナ、貴方がどんな『事情』を抱えてるのかは知らないけど、この『ミレニサムサイエンススクール』ならきっと、楽しい学園生活が送れるわ」

 

 ユウカは俺にそう一言告げて、頭を軽く撫でてから去っていった。去っていく二人の背中を見ていると、こちらを振り向いたノアと目が合った。ノアは口を動かして『頑張れ』と口パクで伝えた。俺はふんっと鼻で笑って教室のドアのほうに体を向けると、教室のドアに手をかけてドアを開く。そして、俺は新しい(希望)の一歩を踏み出した。

 

 「俺様の名前は栄道エルナ。短い間だがよろしく頼む」

 

 「あ~っ! さっきの子だ! やっぱり『転校生』だったんだ!」

 

 朝、俺にぶつかって吹き飛ばしてきた『ピンク猫娘』が俺を見て大きな声をあげた。どうやら、俺の『学校生活1日目』にはもう一波乱あるらしい。俺は大きくため息をついた。




 『原作』世界戦における『ミサンスロピスト』くんは物語中で名前だけ明かされる的なイメージです。『先生』に対するスタンスは『無関心』で関わることはない的な感じでした。

この世界戦では『ミサンスロピスト』くんが『実験』に踏み切ったことで分岐して産まれた世界っていうわけですね。

 モチーフ的には『童心』、売れるとかそういうのを一切考えずに好きなものを詰め込みたいというタイプです。なので、『先生』がそれに興味を示すとめちゃくちゃなつきます。

 5000円以上の買い物には相談が必要と言う話を聞くと、きっちり4999円で済むように材料をそろえてくれたりします。『先生』も『ミサンスロピスト』くんは見た目があれなだけで子供なので放っておけない存在なんですね。

まあでも『ミサンスロピスト』くんは『ゲマトリア』の一味なんで……
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