神秘を得た代わりに○ん○を失ってしまったゲマトリアのクソガキ構成員が『先生大好き勢』になる話 作:プラハ
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まさか、バーが赤一色になるとは……!
教室に入ると、無数の視線が俺を出迎える。興味深そうに見るもの、愛おしそうに見るもの、畏怖の念を込めた視線で見るもの、その視線の意味は様々で、少しだけ鬱陶しい。俺はスタスタとホワイトボードの前まで歩く。
「俺様の名前は『栄道エルナ』だ。『短い間』だがよろしく頼む」
俺はここに長く通うつもりなんてさらさらない。『神秘』がどうやって放出されるのか? それさえ『解明』できれば、この場所に用はなくなる。『解明』さえできてしまえば、あとはそれを『再現』すればいいだけの話なのだ。だから、初めから仲良くするつもりなんてない。
「あ~っ! さっきの子だ! やっぱり『転校生』だったんだ!」
『ピンク猫耳娘』が勢いよく立ち上がって、俺を指さした。よりにもよって、『ピンク猫耳娘』と同じクラスになってしまうとは、自分の『運』のなさに『嫌気』が差してくる。こんなことになるなら、『実験』に踏み出すのはもっと待ってから行うべきだった。
「私は才羽モモイ! エルナちゃん、よろしくね!」
「……………………」
「無視なの!? やっぱり今朝のこと怒ってる……?」
『ピンク猫耳娘』ことモモイは、ショックを受けた表情で俺を見る。何でこの席しか空いていなかったのか……? 俺は自分の運命を呪った。やっぱ『世界』ってのはいつだって思い通りにいかないものだと心から思った。だからこそ俺は『崇高』を追い求めているのだが……。『崇高』とは何なのか? 『神秘』と『恐怖』を併せ持つ存在だと『ゲマトリア』のやつらは言っていた。俺の予測では『崇高』とは『自然現象』のように『
つまりは『
「はぁ……」
「ため息まで!?」
「いい加減しつこいなお前も。俺に関わるな。そうするなら俺は怒ったりしないから安心しろ」
「いきなりフラグが消滅!? そ、そんなぁ~」
そんな泣きそうな表情で見られても困る。まるで俺が悪者みたいに見えるだろうが。というか『フラグ』って何だ? 意味が分からない。しかも今は『授業中』だ。俺に構ってないで『授業』に集中するべきだろう。だが、残念なことに俺の手元に『教材』はまだない。まあ、今更勉強しなければいけないことなんて俺には存在しないので、あってもなくても変わらないというのは救いだ。
だが、せめて勉強するフリだけでもしておかないと、それはそれで目立つだろう。俺は鞄から『自作』の『タブレット端末』である『最強タブレットくん(8代目)』を取り出した。とことん拘って作り上げたこの『最強タブレットくん Ver.8』は現行の『タブレット端末』のスペックを大きく上回り、ありとあらゆる防御性能を施し、『デサイン』も『マエストロ』と一緒に考えてとにかく拘りぬいて作り上げた『最高傑作』の1つだ。
「な、なにそのタブレットかっこいい~っ!」
「おい」
「あぅ……、ごめんなさい……」
「お前、なかなか話が分かるやつじゃねーか!」
「エルナちゃんの目がすごいキラキラしてるっ!」
初めは二度と関わりたくもないと思っていたが、この『最強タブレットくん』の良さが分かるなら、話は別だ。ならば語らなければならない。
「ふっ、この『最強タブレットくん Ver.8』は、今この世界に存在する全ての携帯端末のスペックを凌駕する処理性能を誇る上に、防塵、防水、防炎、防弾機能を搭載している。しかもバリアまで展開できる優れものだ。これよりもすごい『タブレット端末』は存在しないと俺様は断言するぞっ!」
「す、すごすぎる……!」
「はっはっは! そうだろうそうだろう! なんたってこれは俺様が作った最高傑作なんだからなっ!」
「自分で作ったの!? 超天才じゃん! すごーっ!」
モモイからの純粋な賞賛がとても心地いい。自分が作ったものを褒めてもらえると言うのはとても嬉しいものだ。さっきまで感じていたストレスが嘘みたいに消えていく。
「って、教科書は……?」
俺はモモイから目を逸らした。モモイは得意げな表情で俺を見る。
「謎は解けたっ! エルナちゃんは教科書を持ってないのがバレたくないから、カモフラージュとしてそれを出したんだね?」
「ぐっ……!」
「もーっ! そういうことならちゃんと言ってよー! ほら、私と一緒に見よ!」
そう言うとモモイは椅子を俺の隣に置いて肩を寄せて来る。距離が近いせいか、モモイの甘い良い匂いがする。
「ち、近いわっ!」
「でも、こうしないと2人で見れないじゃん!」
「俺様のタブレットに入れればいいだろうが! 画面も大きいから、見やすいはずだ!」
「ダメダメっ! これは必須イベントなんだから!」
モモイはそう言うと更に体を近づけてきた。顔なんてもはや頬が引っ付くんじゃないかと言うくらいには近い……! こうなったら、モモイのタブレット端末にアクセスして教材データを盗み出すしかない……!
「もーっ! ダメだよ! 今は授業中なんだから!」
しかし、そうしようと『最強タブレットくん』に触ろうとした瞬間、モモイによって止められてしまったので、その手は封じられてしまった。
まあ明日になれば『教材』が手に入るので、今日くらいは我慢するか……。俺は『タブレット端末』の映像を見る振りをしながらチラッとモモイを見る。どうやら『教材』の内容をあまり理解出来ていないらしい。
この程度の簡単なことも分からないとは、この先一体どうやって生きていくつもりなのかと『心配』になってくる。だが、これなら退屈な時間は潰せそうだ。
俺はため息をついてカバンからノートを取り出した。
「どこが分からねぇんだ? 言ってみろ。この俺様が直々に教えてやるよ」
「えーっと全部?」
「なるほど、そもそも『前提』のところで『理解』出来ないまま進んだって訳か。1度映像止めるぞ」
俺はモモイにも分かりやすく説明するために、ノートに分かりやすくまとめていく。始めの方は首を傾げて唸っていたが、徐々に理解出来てきたのか頷く回数が増えてきた。どうやら最初の『理解』で躓いていただけで、モモイはそれなりに頭がいいらしい。『理屈』さえ『理解』できてしまえば、『数学』はただの『パズル』に過ぎない。
「おお~! ありがとうエルナちゃん! これなら次のテストでハイスコア叩き出せるかも!」
「調子に乗るな。今はまだ『基礎』にすぎねえ。だが、なかなかの『理解力』だな。まあ『
「えへへ~そっか~。褒めてくれてありがと!」
モモイは嬉しそうにそう笑うと、俺の顔を覗き込んできたので、俺は顔を逸らすと、何が嬉しいのか「にへへっ」とモモイは笑っていた。何だか今日はずっと調子が狂わされっぱなしだ。常に『冷静』なはずの俺の『脳みそ』が湯だったように、『温かく』なったように感じたので、頭を振り払う。
「別に褒めてねえっつーの! 俺様に褒めて欲しかったら……、そうだな俺様に『一度』でも勝ったら褒めてやるよ!」
「ふ~ん、じゃあ放課後になったら『勝負』を申し込むからね!」
モモイはニヤリとほほ笑んで俺にそう言った。なかなか自信ありげに見えるので、相当自信があるのだろう。だが、それでも俺様の『勝利』は揺るがない。それから、俺はモモイに勉強内容を教え続けて、1時間目の授業は終わった。
授業が終わると俺の周りに人だかりができる。集まってきたクラスメイト達は俺に質問を次から次へと投げかけてくる。ふっ、それは事前に想定済みだ。どんな質問が来ようと俺にこたえられない質問などない!
Q.どこから来たの?
A.『外の世界』から。
Q.好きな食べ物は?
A.特にない。食べられるものなら何でもいい。
Q.ここの暮らしにはもう慣れた?
A.それなりに時間が経ったので、もう慣れた。
Q.趣味は?
A.実験。
Q.好きなタイプは?
A.タイプ……? 何のタイプだ……?
「ねえ! エルナちゃんって『外の世界』から来たんだよね?」
「ああ、そうだが」
モモイが興味津々と言った態度で俺に聞いて来る。周りの人間もどうやら聞き耳を立てているようだ。ああ、もしかして、こいつらって『外の世界』に出たことがないのか……? もしもそうだったなら、『外の世界』から来たと言わないほうが良かったかもしれない。そう言えば、『キヴォトス』の『外』って一体どうなっているんだろうか……? 今度機会があれば行ってみるのもありかもしれない。そんなことを考えていたが、モモイの次の発言で俺の『思考』は完全に『停止』した。
「『外の世界』ってどんななの?」
「外の……世界、俺様がいた世……界は……」
思わず言葉に詰まってしまう。脳裏に自分がいた世界の記憶がフラッシュバックする。モモイは心配そうな表情で俺を見ていた。別にお前は悪くないだろ。悪いのはこんな質問が来ることを想定できていなかった自分なのだから……。俺は1回深呼吸をして心を落ち着かせる。
「外の世界は……こことそんなに変わらない世界だ。まあどこに行こうが『世界』ってのはどこも似たようなものなのかもな」
俺は絞り出すようにそう言った。あながち間違いってわけでもない。違うところがあるとすれば、俺がいた世界の『人間』には『ヘイロー』がなかったくらいしかない。
「大丈夫……? 顔色悪いよ?」
「大丈夫に決まってるだろ……。ちょっと『疲れ』が出たのかもな」
少し『空気』が重くなってしまったのを感じる。皆、俺を心配そうに見つめている。興味なさげにしつつも密かにこちらを伺っていた『才羽妹』も心配そうに俺を見ていた。この世界に来てからもう『6年』になる。『過去』を忘れるつもりは毛頭ないが、あの時の『感情』は今でも俺を蝕んでいるということなのだろうか……? まあいい、それも『崇高』を手に入れてしまえば『解消』できる『問題』だ。
「ねえ! エルナちゃん! モモトーク交換しよ!」
「モモトーク……? それはお前が作ったのか?」
「ち、違うよ! モモトークの『モモ』は私とは全く関係ないから! ほら、スマホ出して! やり方教えてあげる!」
重くなった空気をぶった切るようにモモイがそう言って、俺にスマホを出すように言われたので、スマホを取り出した。モモイは俺にスマホの画面を見せて、『モモトーク』をインストールするように言ったので、その通りにする。どうやらこのアプリはメッセージや通話を行う専用のアプリのようだ。
「連絡くらいなら『メール』とか『電話』でできるから別にこれでやる必要はないんじゃねぇのか?」
俺がそう疑問を口にするとモモイは分かってないなぁと少し呆れたような表情をしていた。
「登録できたー? なら、早速交換しよ!」
「あ、あぁ……。分かった」
モモイはスマホの画面にQRコードを表示する。モモイの指示で俺はカメラでQRコードを読み込んで、モモトークに『才羽モモイ』が『友だち』に追加されたのを確認した。『友だち 1 』と表示されているリストを眺めているとモモイから早速通知が届いたので、開いてみる。
「ほら! モモトークはメッセージだけじゃなくて、こうやってスタンプを送ったりできんだよ!」
「そうなのか……」
「あ! っていうことは私がエルナちゃんのお友達1号ってことじゃん! やったー!」
モモイから『よろしく!』と言っている可愛らしい猫のスタンプが送られてきていた。どうやって返せばいいのか分からない……。どうやらスタンプはお金を払わないと手に入らないらしい。早速、スタンプを購入しようとしたら、モモイはそれを止めた。
「エルナちゃんの初めて記念に私からの『プレゼント』だよ!」
「お、おう……」
モモイから送られてきたメッセージを確認する。『受け取る』を選択すると、俺のモモトークにスタンプが追加された。どうやらこのスタンプはさっきモモイが使っていたスタンプと同じシリーズのものらしい。ほかにも色々な場面で使えそうなものもあるが、どこで使うんだこれは? というものある。ここで返すべきスタンプは何なのだろうか? と考えていると、俺の前に沢山のスマホの画面が差し出される。
「エルナちゃん! 私とも交換しよ!」
「私も!」
「私も交換したい!」
「わ、分かったから順番に並んでくれ……」
「「「はーい!」」」
俺はカメラを使って、次と次と、『友だち』に追加していく。気が付けばリストに表示されている画面には『友だち 39』と表示されていた。それから、多種多様なスタンプが送られてくる。つ、ついていけない……!
「な、なあ! モ、モモイ! こ、これってどう返事したらいいんだ?」
「んー? そんなの適当でいいんじゃない?」
「全員同じスタンプやメッセージで返すのは、よくねえんじゃないのか? だからと言って、人によって違うスタンプやメッセージを送るのも、人によっては不満が出るかもしれない……! 適当って何だ……!? 言葉の『意味』は知ってる。だが適度って何だ!? 何をもって『適度』と判断すればいいんだ!? わ、分からない……!?」
思わず頭を抱える。スマホには相も変わらず『メッセージ』が届き続けている。
「大丈夫だよ! 皆そういうの気にしないって!」
「だけど、人の心は見えないだろう? もしかしたら、気が付かないうちに心の奥に不満が溜まっていくなんてことも……!」
「き、気にしすぎだって……!」
そうは言っても不安なものは不安なのだ。こんなことになるなら、あらかじめ頭に入れておくべきだったか……! モモイが俺の肩に手を置いた。
「じゃあ、まずは私と練習しよ!」
「なるほど、で、でもこういうのは出来るだけ早く返すのがマナーってやつなんじゃないのか……?」
「皆知ってるから大丈夫! ねっ!」
モモイがそう問いかけるとクラスメイト達が一斉に頷いた。「俺は後で完璧な返答を返す」とクラスメイト達に約束をして、俺とモモイはメッセージのやり取りを休み時間のたびに行った。