神「オマエ転生さしてやるからちょっと頑張ってこい、ちなみにチートはナシじゃ」 俺「は?」 作:ND内
Side-エビワラー
「はい、お疲れさん。」
「イ、イロース!!」
どうも、
これはなんの道具なのか私にはわかりかねますが、水晶の様なツルツルの筒の中のパルシェンの内部みたいな部分を我が主とあの二本角の暴君に向けないといけないのはなんとなくわかります。
まあ遡ること少し前、我が主曰く「丈夫な屋根の下でうまい飯を食っていい布団で寝るため。」と、このカメラという道具と夏にある屋台とかで置いてそうな仮面と、変な形の黒くてこだわりのあるメガネを購入し、野外でお菓子を作り始めました。
…毎回思いますが、主の作る料理は正直おかしい。
これは以前、私が
野外で食べられるとは思えない料理が毎晩野外に出る。
極めつけはサシカマスのカマを塩の塊で閉じ込めて焼いて「これは野外飯のロマンだ!」とか、様々な食料を鍋という道具にスープと入れて、ヤドンのしっぽを「この手の珍味はこう食うのがきっと旨いよ!」とか、私には難しいことを沢山してらっしゃる。
…そしてものの見事に毎回美味しい。間違いなく野宿で食べられる料理のレベルが野宿熟練者のそれだと思う。
そんなことを思い出しながらカメラを構えている間に、一通り作り終わったみたいで、裏である私もそこに入りはしませんが、主に拾われてホの字であるノエル殿、その手持ちのラルちゃん殿や私にもきちんと用意されている。流石我が主。抜かりがない。
ラルちゃん殿、私の後ろでウズウズされても私は動けないのだ。私もあの『パンケーキ』と言われる料理は凄く食べたいのだ。あのそそりたつ甘い香り。何やら甘いミツのような材料やクリームというものをかけることで、よりその甘い香りがそそりたつ。我が主、私は缶コーヒーのようなスッキリな味わいも好きですが、目の前にあるもののような甘い味わいのものも好きだと思いますぞ!!あぁ、食べてみたい…。
ーそんな私の小さな夢は泡沫に消えてしまった。
突然森の壁のような低木から飛び出してきた一本角のポケモン、ヘラクロスが、私とラルちゃん殿用に残してもらっていた生地の片方に飛びついて貪りだしたのだ!
私の脚の後ろにいるラルちゃん殿が涙目である。私も正直ショックでままならない。私の、私達の、パンケーキが…。
「ヮ、ヮ…。」
我が主は(恐らく)目で「すまんエビワラー、後で缶コーヒー渡すから。今は引き続きで頼む。」と仰られたので、私も瞬きで肯定の意思を示す。
私は嘆きたかったが、つい先刻我が主に「すまないエビワラー、それを持ってる間はあんまり音を立てちゃいけないんだ。お前なら出来るって俺、信じてるからな。」と言われた手前、その約束を反故にすることなど私には出来ず、その哀しみの光景にこのカメラという道具をただひたすら無心で
何か口の中にしょっぱい物が入った。なんだこれは。
…はっ!!
ー『泣いてないからしょっぱくねぇ。』
マ、マ、
私がそんな虚しさの感傷に浸っていたら、ノエル殿とイーブイ殿がヘラクロスに物凄い黒いオーラを向けながら圧をかけている。…普段争っている者同士が手を取り合うと、天変地異をも引き起こすことができる、ですか。これも我が主の格言の一つでしたね。流石我が主の格言は全てを見通してらっしゃる。
…まぁイーブイ殿の個性は、とてつもなく強烈ですからね…。我が主から常に離れず、常に『私かわいい?見て!見て!』って感じで我が主を恋簿の方で独占したい欲が隠せないほど出ているものですから、新しく入ったバチュル殿は気にはしてない様子でしたが、あそこは不可侵推奨なのはわかっていただけて、何よりです。
ただ我が儘なだけなら私も少しは腹が立ったでしょうが、誠に残念なことに彼女はとても強いのです。そして我が主さえ関係していなければ凄く頭も回る。…ただ我が主の前では形無しですが…。
そして我が主はそれら知っている上で敢えてそのままにしている。
多分我が主はあんまり他者と深く関わることに興味がないのだろう。実際今も、許されたヘラクロスに対してイーブイ殿がオレンの実をわざわざ木から落として足で蹴って渡しているのをイーブイ殿自身の成長と(恐らく)わざと勘違いして感極まっているが、あれはイーブイ殿の特性『きけんよち』を己の恋路に使った結果だろう。彼女は言っていた。
「私とマサオは運命の番同士だから、マサオに変な虫が付くタイミングにきけんよちをフル稼働してるの!マサオは優しい色男だからすぐ女の子にモテるけど、マサオの一番は私なんだから!浮ついてたら噛んであげてるのよ。うふふふふ。」
…なんという珍しい特性の無駄遣いであろうか。そして彼女と話すと毎回思うが、我が主の話題のときは必ず情緒不安定である。以前イーブイ殿をモンスターボールから出してないタイミングで我が主は言っていた。
「俺、ケモナーじゃないからポケモンでヤンデレ系のガチ恋のリアコはちょっとなぁ…無理があるよなぁ…。」
難しい単語を使っていたが、大体わかった。我が主はイーブイ殿を主従の元でお世話をするのは当たり前だが、そんなイーブイ殿から恋簿を向けられても困るだけなのだろう。
「エビワラーはどう思う?」と聞かれたが、私はそこに突っ込むことは出来ない。…それだけはどちらの意見にも寄れない。我が主には絶対なる恩義と忠誠があるし、イーブイ殿に反対したらそれこそ明日無事で起きられるかわからない。
ーイーブイ殿に一度「我が主に対してそれは少し難しいと思うが。」と言ったことはある。
次の日のまだ少し薄暗い頃に起きたら草タイプのポケモン辺りがなにかの拍子で落としたであろうツルを大量に使って少し離れたところに全身ぐるぐる巻きで投棄されていた。何故?と思ったが、技を使って脱出後、ツルを調べたら幾千もの蹴り跡がついていたので、恐らくひたすら絶妙な威力に調整された『にどげり』で起きないように運ばれたのであろう。
あの日の私は風向きと僅かな火の臭いを頼りに野営地まで戻った、彼女は我が主の寝床を狙ったが、防がれた上で怒られている様だ。因果応報だとは思うが、逆らうのはやめよう…。
ーと、言う理由で私の意識の根底に『彼女は敵に回したら凄く怖い。』というものが刻まれている以上、彼女が何をしてようと、我々は基本的に不干渉なのである。
ーおっと、つい話が逸れてしまったが、どうやらヘラクロスはカイロス達に住処を追われて、仲間の食料を少しでも減らさない為に抜けてきたみたいだ。そんなことをするくらいなら戦えばいいものを、こいつ、力は強くても心は弱いのだろうな。
我が主はその住処に乗り込みに行くらしい。私も闘いたいと思ったが、主の佇まいで「すまん、今回は我慢してくれ」みたいな意思を感じたので、渋々このカメラという道具を持ち続けることにする。
ヘラクロスに案内されてる途中から、少し我が主からほろ苦い感情を感じる。
これはこの一行の中では一番最初から旅に同行している私ですら、偶にしか感じないのだが、誰かが意味もなく傷つけられている時、そんな時に少し哀しげな表情を我が主はいつも見せている。
今回は仮面を付けているので表情は見えていないが、恐らく初日のあの時に近い感情なのだろう。
そして、カイロスの群れがふんぞり返っている大きな木の前まで来た。
我が主のあの四角い箱が話せるとは私も今日まで知らなかったが、彼の事は嫌いじゃない。口は悪いがなんだかんだ言って我が主を信頼している。動きと表情で丸わかりだ。そんな表情私でも我が主には見せられんぞ。是非一度会話してみたいものだ。
「カーイロースくーん、あーそびーましょー。」
我が主がカイロスの群れに会話による平和的解決を持ちかけた。なんと思いやりの深い。
…しかしカイロス達は我が主の温情を無下にしてしまった。
私は怒っている。あの虫ども、道路で引きずり回して道端に纏めて積んでやろうか…。と思うくらいだったが、我が主はそれでも怒りはせず、不思議なニュアンスの言葉で挑発した。
…なんと思慮深い方だろうか。我が主は基本的にやる気がないように見えるが、やる時はとことんまでやるお方なのだ。
そしてリーダー格のカイロスを土俵に立たせ、敢えてカイロスに有利に見える単純なルールの決闘でカイロスを調子づかせる。
…お前らには我が主の恐ろしさなど、万に一つもわからんだろうな。
そしてカイロスから仕掛けて始まった闘いが。
「なに?お前5回も負けてるのにまだやるの?往生際悪いよ?」
既に5回終わっており、その圧倒的力量差とそれに付随する絶望感が、リーダー格のカイロスの無力さを際立たせていた。
いつになったらジムバトルするんですか?作者である僕が一番知りたいです。
後編書こうとしたら興が乗ってエビワラー視点の閑話になりました。許せ後編、また今度な。
そんなわけでエビワラーさん、バチュルほどじゃないけど結構マサオのオタクです。