神「オマエ転生さしてやるからちょっと頑張ってこい、ちなみにチートはナシじゃ」 俺「は?」   作:ND内

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第三話 エビワラーってわかりやすいような気がする。

 

 「…はぁ。」

 

 まずいなぁ、初日の野宿です、早くもまずいなぁ…。

 

 え?何がまずいかって?いやいや、野営関連は前世でしょっちゅうやってたんで問題ないんですよ、やろうと思えばホームレスできるし。てか一時やってたし、近所の公園にいたジモさん、元気してるかなぁ。

 

 …ってそうじゃなくて!まずいのはそうじゃない!まずいのは目の前に置かれたこの状況!

 

 なんでこんなことになってるかねぇ…。

 

 

 ー多分2時間ぐらい前〘トッカの散歩道〙

 

 「エビワラー、なんとなくで旅することになったけど、これからどうするよ。」

 

 「ワラワラァ…」

 

 エビワラーはどうしよっかなぁ、って感じで思考を放棄しています。わかります。できれば俺も思考放棄したいです。

 

 「だよなぁ、なんか、どうするかを考えるのもちょっと面倒臭いよなぁ…。」

 

 「ワラワラァ…。」

 

 エビワラーは軽く溜め息を付きながらすげぇわかる。みたいな感じで顔を縦に振り、俺に肯定する。

 

 なんだかんだ言って、この生気のなさには俺と似たような何かを感じるんだよなぁ…。

 

 なんていうかさ、この哀愁みたいな、黄昏みたいな、そういうの。ダメだ、これ以上ここに思考を費やすのも少し面倒臭い。

 

 レポートに書いとこ『エビワラーさん、今日も哀愁極まれり。』と。

 

 「ワラァ…。」

 

 そんなことを書いていると、エビワラーがパンチグローブをよくわからん方向に向ける。

 

 「どうしたエビワラー、指差しの代わりか?」

 

 「ワラワラァ。」

 

 まあそんなとこ。って感じで気怠そうにちょっとダラんと右腕をよくわからん方向に伸ばしている。その方向には座るのに丁度いいかもしれなさそうな岩が2つほどある。

 

 「ん?あぁ、休みたいか、わかる。10分ほど座ろうぜエビワラー。」

 

 「ワラワラァ〜。」

 

 流石わかってるなぁ。って感じでエビワラーはフラフラと岩に腰掛ける。俺も釣られて腰掛ける。

 

 「はぁ。あれだなぁ、なんか歩いて疲れた訳じゃないけど、なんかこのまだ日が昇ってるって言う事実そのものに疲れを感じるなぁ。」

 

 「ワラワラァ…。」

 

 わかるわぁ…。みたいな感じのイントネーションだったな。おいエビワラー、お前絶対今同意したろ。その惰眠精神嫌いじゃないぞ。

 

 「エビワラー、さっき買った缶コーヒー要る?」

 

 「ワラァ〜。」

 

 今のはあーっす(ありがとうございまーっす)って感じだな、なんかわかってきたぞ。

 

 「ほらよ。俺はブラック飲めないからやるよ。」

 

 「ワラァ〜。」

 

 エビワラーの哀愁感であったら飲みそうと思って買ったけどガチで好んで飲むとは思わなかったよ。ポケモンって何なんだろうな。レポート書いとこ。『哀愁極まるエビワラーさんブラックコーヒーで昼休憩。』と

 

 エビワラーはパンチグローブ型の手でどうやってか器用に缶コーヒーを開け、コーヒーを飲もうとした。

 

 ーパンチグローブから缶コーヒーが滑り落ちた。

 

 眠そうなエビワラーの目が珍しく「あ、やっちまった。」って感じに少しだけ開いてる。悲しいよな。開けて飲もうとした飲み物が自分の手から滑り落ちるあの無常。わかるぜエビワラー。

 

 そして岩にコーヒーがかかる。

 

 「ワラワラァ…。」

 

 まじやっちまったぜ…みたいな感じで項垂れるエビワラー。その格好でそれをやると真っ白な灰になった人みたいになるから辞めときな。ハイにまでならんでもええけど灰になるのは辞めときな?もっと惰眠貪ろうぜ。

 

 「エビワラー、まあ、そういう時も偶には、あるよ。」

 

 それなりの言葉だけど、こういうときは仕方ないと割り切って溜め息付きながら前に進むんだよ。それが大人の宿命ってもんだ。エビワラー。

 

 「ごぉぉろぉぉん!」

 

 エビワラーさん?

 

 「エビワラー、お前そんな屁のこき方したっけ。」

 

 「ワラワラァ!?」

 

 俺じゃないよ!?と言わんばかりの慌てよう。いや、だって今エビワラーの足元から大きな音が…

 ん?足元から?

 

 「エビワラー、もしかしなくてもさ、俺等が座ってる岩ってさ…。」

 

 「ワ、ワラワラ…。」

 

 ま、まさか…。だろ、もうわかるよそれは。

 

 「ごぉぉろぉぉぉぉん!!」

 

 「ゴローンじゃねえか!!」

 

 「ワラワラァ!?」

 

 なんでイシツブテすっ飛ばしてまとめて二匹のゴローンなんだよ!?色々かじっててもゴローンは限界あるわ!!

 

 「逃げるぞエビワラー!」

 

 「ワ、ワラワラァ!」

 

 俺たちは走り出した。

 

 俺は走った。しかし…

 

 「エビワラー!?お前足遅かったの!?」

 

 「ワ、ワラワラァ」

 

 めっちゃ急いだ影響か、こいつ肩で息してる。

 

 格闘タイプとは。

 

 …まぁゴローン撒けたからいっか!

 

 「んでエビワラーよ、ここはどのあたりなんだろうな。」

 

 「ワラァ?(さぁ?)」

 

 「だよな。まあいっか。」

 

 なんかわからんが、意思疎通はそれなりに取れるような気がする。不思議だ、日本語じゃないのに。レポートレポート『エビワラーさん、端々のイントネーションとジェスチャーで何を言ってるか大体察せられる。』と

 

 …こいつ割と表現力豊かだよな。

 

 「てか日が傾いて来てるじゃねえか!道路は逸れた森だからとりあえず野営できるぐらいの場所を探すぞ!?」

 

 「ワラワラァ!」

 

 「そうだ、流石にそれは頑張らなきゃいけない。睡眠は大事だ!」

 

 って感じで森を散策して広い場所を見つけただけなんですよ。

 見つけただけなんですよ!!

 

 「ッブイ…。」

 

 なんでボロボロに弱ったイーブイさんが横たわってんのよ!

 

 「…はぁ。」

 

 この様子に周りの分布を考えると、付近のポケモン達の縄張り争いに巻き込まれた感が否めないんだが…。

 

 「エビワラー、とりあえず寝具は後にするわ。」

 

 「ワラワラァ。(仕方ないですね。)」

 

 「ありがとよ。手当てするか。」

 

 それにしてもすごい傷だな…。火傷に切り傷。なるほどな…。

 

 「エビワラー、オニドリルとヘルガーには気をつけろよ。」

 

 「ワラ?ワラァ。(えっ?あっはい。)」

 

 「大丈夫だからな、イーブイ。今治すからな。」

 

 俺は出立前に購入したキズぐすりとやけどなおし、そして消毒綿を取り出した。

 

 「イーブイ、染みるぞ。ちょっとだけ我慢してくれよ。」

 

 「っぶい…。」

 

 なるべく痛くなり過ぎないように、そして痕が残らないように素早く丁寧に処置していく。これも前世の経験様々だなぁ。免許とか持ってなかったけど。無人島の時の経験だな。

 

 「よし、これでとりあえず大丈夫だ。よく頑張ったな。大丈夫。大丈夫。」

 

 そう言いながらイーブイの頭を撫でる。ポケモン関連の知識は知識だけしかないが、前世の対人経験を含めるとちょろいものよ!フハハハハ!

 

 「ぶぃ…ぶぃ〜…。」

 

 イーブイは気持ちよさそうに眠りについた。

 

 「よしエビワラー、寝床の確保だ。」

 

 「ワラワラァ。(うぃーっす。)」

 

 やっと一息つけるな…。

 

 「ヘルルルルゥ!!」

 

 「ケェェェェン!!!」

 

 あらら、こっち来ちゃったのね。

 

 「エビワラー、すまん、残業っぽい。」

 

 「ワッラワラァ…。(うわ、仕事増やしたやつ許せねえ…。)」

 

 「エビワラー、気持ちはわかる。奴らにはお灸を据えなければならん。これが終わればゆっくり休もう。重役のように。」

 

 「ワラワラァ!(激しく同意!)」

 

 やっぱ哀愁が…。

 

 レポートレポート『エビワラーさん、定時で帰れなくてキレる。』と

 

 エビワラーの技構成とステータス。そして個性と足の遅さはわかっている。

 

 「エビワラー、お前、あいつらに勝てる自信ある?」

 

 「ワラ?ワラー、ワラワラァ…。(えっ?あー、多分ないですねぇ…。)」

 

 「お前自信なさそうだなぁ…。そりゃそうだよなぁ、レベル20だし。」

 

 そう言うとエビワラーはやっぱそうだよなぁって感じでいつもより強めの哀愁を放つ。

 

 これは次から突っ込むのは控えよ…。

 

 「だけど俺ならお前を勝たせてやれると思う。」

 

 まあ、思うと言うより確信してるけどな。

 

 「ワラァ!?」

 

 嘘だろ!?って感じだよな、わかるわかる。

 

 「嘘じゃないさ。エビワラー、お前は足が遅い。だが早く走れないだけで、持久力もあれば足腰もえげつないのはさっきの走り方を見ていればわかった。」

 

 そう、俺はエビワラーの現状のスペックを見抜いた。前世でなにかの動きを細かく見たり、興味のあることは全て調べて知識にしていたからこそ出来る芸当である。

 

 俺のエビワラーは、持久型だ。

 

 「エビワラー、今のお前の技構成に俺の知ってる動きを組み上げれば、ーーーやつらに勝てる。」

 

 「ッ!!」

 

 エビワラーも流石に絶句し、目を見開いた。

 

 「俺は教えることができる。教えることは俺の特技のようなもんだ。それにお前がついてくるなら。折角だし、まずはこの地方で最強になろうと思う。」

 

 エビワラーは黙って俺の顔を見ている。

 

 「一緒にやるか?エビワラー。」

 

 「ワラワラァ!!」

 

 エビワラー、珍しくやる気じゃん。

 

 そうだよな。やりたいことにはやる気出るよな!

 

 「っしゃやるぜエビワラー!この動きを覚えろ!」

 

 付け焼き刃の訓練が始まった。

 

 

 

 ー30分ぐらい後

 

 「エビワラー、そろそろやつらの縄張り争いの火がこっちにかかってくる。倒すのはやつらのトップだけでいい。やるぞ。」

 

 「ワラワラァ!」

 

 エビワラーも気合入ったな。

 

 30分で教えられることなんてたかが知れてる。たかが知れてるからこそ絞って重点的に教えた。勝利へ必要なプロセスを!

 

 「デルルルルゥ!」

 

 ヘルガーの進化前のデルビルか。

 

 「行くぞエビワラー、間合いに入ってグロウパンチ!!」

 

 エビワラーはすかさずデルビルの懐に潜り込み、下から頭部を揺らし打つように下からグロウパンチを叩き込む。

 

 足が速くなくても、詰め方次第で速さは騙せる。

 

 懐に入ればこちらの勝ちだ。

 

 頭部を揺らせば相手はふらつく。動物の理だ。

 

 「更にアッパーを叩き込め!グロウパンチ!」

 

 「ワラワラァ!」

 

 軌道に乗ったエビワラーは更に2発グロウパンチを叩き込み、デルビルを倒した。

 

 最初の分を含めて3回当てた。これなら可能性はある。

 

 すぐ近くでヘルガーとオニドリルが激しく争っている。俺たちは穏やかに眠りたいんだ。早く終わらせてやる!

 

 「まずはオニドリルだ!エビワラー!やつを引きずり下ろしてやろうぜ!ヘルガーに猫騙し!」

 

 エビワラーの猫騙しでヘルガーを怯ませる。オニドリルが先なのにって?

 

 これは布石だ。

 

 怯んで隙が産まれたヘルガーにオニドリルはドリルくちばしで突っ込んでくる。

 

 そうだよな。お前の有効打点がそれだからな。

 

 「エビワラー!決めてやれ!オニドリルの右顎にバレットパンチ!」

 

 「ワラワラァ!」

 

 それは、鉄の拳を持つエビワラーの速さを無視する先制技。

 グロウパンチも猫騙しも、全てがこれからの布石に過ぎない。

 

 「ケェェン!?!?」

 

 唐突に頭が揺れたオニドリルは、軽い錯乱状態に入る。グロッキーだな、こりゃ。

 

 「今だエビワラー!上体を使え!オニドリルにひたすらバレットパンチ!」

 

 これがエビワラーに叩き込んだたった一つの動き。

 

 強い足腰を持ち、鍛えられた身体を存分に使い、左右の下方からひたすら相手を乱打圧倒するボクシングの技。

 

 ーデンプシーロール

 

 …これからエビワラーじゃなくてマ○ノウチって呼んだほうがいいかな…。

 

 エビワラーだからなのかわかんないけど、妙に様になってんだよな。

 

 そしてオニドリルが倒れて縮小化する。瀕死状態の休眠だ。どうやらポケモン特有の能力らしい。まあ、あれだったらポケットに入るわな。モンスターボールとかの原理とかもあれだもんな。

 

 怯みから立ち直ったヘルガーがマジな顔でこっちを強く睨みつけている。

 

 「おうおう怖いって。元はと言えばお前たちの縄張りとは言え、俺がここで寝たかっただけなんだよ。某RPGの金髪イケメン陰キャ主人公の言葉を借りるけど、悪く思うな!」

 

 某Fが2つ揃ったRPGの7作目である。

 

 「決めてやれエビワラー!ドレインパンチ!」

 

 攻撃が上がりまくったエビワラーのパンチを効果抜群のヘルガーが耐えられるわけもなく、ヘルガーとオニドリルは倒れてどこかへ去っていった。

 

 「なんとかなったな、お疲れ、ありがとうエビワラー。」

 

 「ワラワラァ。」

 

 仕事上がりましたね〜って感じのエビワラーをねぎらって、確保した場所で寝床を展開しに行く。

 

 …って、イーブイはまだ寝てたのか。

 

 安心しきった様子でずっと寝てたようだ。

 

 野生でこれは物凄く心配しかないな!?!?

 

 「とりあえずあれだな、米ないからシチューだな。」

 

 寝床を確保した俺は思考を放棄して夕食を作り始めた。

 

 その日の焚き火は、何故か心も暖かくなった。

 

 俺は知っている。この暖かさは、なんかちょっと虚しいときに『あー、一人ってあれだなー、寂しくないのはそうだけど、虚しいよなぁー。』って強がってるときの虚しい暖かさだ。

 

 なんだかなぁと思いながらシチューの芋を頬張った。

 

 「泣いてないからしょっぱくねぇ。」

 

 「ワラワラァ。」

 

 エビワラーと共に何故か凄く虚しい気がした。

 




 エビワラー ♂
 特性 てつのこぶし
 わざ グロウパンチ ねこだまし バレットパンチ ドレインパンチ
 TIPS 身体の知識の一端をマサオに叩き込まれた。マサオへの視線が苦労的な同士ぐらいの評価から頼れるいい上司ぐらいの評価に変わりつつある。しかしマサオは大してその機微には気づいていない。
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